第115話:『おばちゃん、“古い影の分身”と向き合う』
ノルディアの門を越え、
凍りついた街へ足を踏み入れたトモエたち。
静寂。
冷気。
そして――
心の奥を締めつけるような“影の気配”。
ユウトが震えながら言う。
「おばちゃん……
なんか……
ここ、空気が重いで……
息するだけで胸が痛い……」
カイルは魔力を探りながら頷いた。
「影の濃度が……
氷の峠よりも高い……
これは……
“古い影”の中心に近づいている証拠です……」
リリアは凍りついた家々を見つめながら言った。
「誰も……
動いてない……
街全体が……
眠ってるみたい……」
セイルは静かに言った。
「古い影は、
人々の“心の底”に入り込み、
眠りへと誘う。
その結果が……
この凍結だ」
エルミナは震える声で言った。
「……ノルディア……
私の国……
どうして……
こんな……」
トモエはエルミナの肩に手を置いた。
「大丈夫や。
まだ間に合う。
うちは……
必ず助けたる」
エルミナは涙をこらえながら頷いた。
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◆ ◆ ◆
◆ ノルディア中心部へ ―― “影の脈動”
街の中心へ向かうほど、
空気は重く、
影の気配は濃くなっていった。
ユウトが胸を押さえながら言う。
「おばちゃん……
なんか……
心臓がドクドクする……
影の音みたいなんが聞こえる……」
カイルは顔を青くした。
「これは……
“影の脈動”……
古い影が目覚めかけている……!」
リリアは震えた。
「怖い……
でも……
進まなきゃ……
みんなを助けるために……」
セイルは静かに言った。
「影の脈動は、
“心の底”にある不安を刺激する。
気を強く持て」
エルミナは杖を握りしめた。
「……この先に……
ノルディアの中心広場があります……
そこに……
“古い影の分身”が……
現れるはず……」
トモエは前を見据えた。
(来るな……
これは……
ただの影やない)
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◆ ◆ ◆
◆ 中心広場 ―― “凍りついた時間”
広場に到着すると、
そこには――
凍りついた人々が立ち尽くしていた。
子どもを抱いた母親。
荷物を運ぶ途中の商人。
笑顔のまま凍った若者。
ユウトが震えた声で言う。
「おばちゃん……
これ……
みんな……
生きてるんやんな……?」
カイルは魔力を探った。
「生命反応は……
微弱ですがあります……
ただ……
心が完全に凍っている……」
リリアは涙をこぼした。
「こんなの……
こんなの……
ひどすぎる……」
セイルは静かに言った。
「古い影は、
“心の底”にある弱さを凍らせる。
それが積み重なれば……
人は動けなくなる」
エルミナは膝をついた。
「……みんな……
どうか……
どうか……
生きていて……」
トモエは広場を見渡した。
(これは……
世界の涙とは違う。
もっと深い……
もっと古い……
“心の凍結”や)
そのとき――
空気が震えた。
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◆ ◆ ◆
◆ 古い影の分身 ―― “黒い霧の王子”
広場の中心に、
黒い霧が集まり始めた。
ユウトが叫ぶ。
「おばちゃん!!
なんか出てくるで!!
でっかい!!」
霧は渦を巻き、
やがて人の形を成した。
黒いローブ。
影のような髪。
瞳は深い闇。
その存在は、
氷の王とは違う“冷たい悪意”をまとっていた。
影の分身は静かに言った。
『……光の継承者……
よくぞ来た……
我が眠りを妨げる者よ……』
トモエは一歩前に出た。
「うちはノルディアを救いに来たんや。
あんたの好きにはさせへん」
影の分身は笑った。
『……救う……?
愚かだ……
この国は……
すでに“心の底”まで凍っている……』
ユウトが叫ぶ。
「嘘つけ!!
おばちゃんがおったら何とかなるんや!!」
影の分身はユウトを見た。
『……その子の心にも……
凍りつく影がある……
恐れ……
不安……
孤独……
それらは……
我が糧となる……』
ユウトは震えた。
「や、やめろや……
おばちゃんは……
俺を守ってくれる……!」
影の分身はトモエを見た。
『……光の継承者よ……
お前の心にも……
影がある……
それを認めぬ限り……
我を眠らせることはできぬ……』
トモエは拳を握った。
(うちの心の影……
それがなんぼのもんや)
「うちは逃げへん。
自分の影も、
あんたの影も、
全部まとめて向き合ったる」
影の分身は静かに言った。
『……ならば見せてみよ……
お前の“心の底”を……』
黒い霧が広場を覆い、
影の試練が始まった。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
第115話では、
ノルディア中心部で“古い影の分身”がついに姿を現しました。
凍りついた街。
眠らされた人々。
そして、影の冬の核心へと続く“心の底”の試練。
氷の王が言った通り、
おばちゃん自身の心にも影がある。
それをどう向き合うかが、
これからの物語の鍵になります。
次回、第116話では
古い影の分身が見せる“心の底の幻影”と、
おばちゃんが直面する“最も深い影”
が描かれます。
これからも、おばちゃんの物語を
どうぞよろしくお願いいたします。




