表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミナミのおばちゃん、異世界で心の影を救います  作者: ぽそまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

110/124

第110話:『おばちゃん、“氷の精霊”に試される』

氷の峠が姿を現してから数時間。

トモエたちは雪原を進み、

ついに峠の麓へと辿り着いた。


目の前にそびえるのは、

白銀の壁のような巨大な山。


風は鋭く、

雪は舞い、

空気は凍りつくほど冷たい。


ユウトが震えながら言う。


「おばちゃん……

 あれ……

 ほんまに登るんか……?

 めっちゃ高いで……!」


カイルは地図を確認しながら答えた。


「氷の峠は、

 ノルディアへ続く唯一の道です。

 しかし……

 この高さ……

 そしてこの寒さ……

 普通の旅人では到底越えられません」


リリアはマフラーを押さえながら震えた。


「寒い……

 森よりずっと寒い……

 息が痛い……」


セイルは静かに言った。


「ここから先は、

 “影の冬”の中心に近づく領域。

 心も体も、

 常に冷えにさらされるでしょう」


エルミナは峠を見上げた。


「……この峠には……

 “氷の精霊”が住んでいます……

 彼らは……

 古い影の気配を感じると……

 侵入者を試すのです……」


トモエは眉をひそめた。


「試す……?」


エルミナは頷いた。


「はい……

 氷の精霊は、

 “心の温度”を見極めます。

 心が凍っている者は……

 峠を越えられません」


ユウトが青ざめた。


「心の温度……

 また心の話か……!」


トモエは笑った。


「せやな。

 心の旅はまだまだ続くみたいや」


---


◆ ◆ ◆


◆ 氷の峠の入口 ―― “白い門”


峠の麓に近づくと、

雪の中に巨大な“白い門”が現れた。


氷でできたアーチ。

その表面には、

古い文字のような模様が刻まれている。


カイルが息を呑んだ。


「これは……

 精霊の門……

 氷の精霊が作った結界です……!」


リリアは震えた声で言う。


「なんだか……

 門から冷たい視線を感じる……」


セイルは静かに言った。


「この門を通るには、

 “心の温度”を示さなければならない。

 氷の精霊は、

 心が凍った者を拒む」


エルミナは杖を握りしめた。


「……皆さん……

 どうか……

 心を強く持ってください……

 この門は……

 嘘をつけません……」


トモエは門に手を触れた。


冷たい。

しかし――

その奥に、

どこか優しさのようなものを感じた。


(氷の精霊……

 あんたらは敵やないんやな)


---


◆ ◆ ◆


◆ 氷の精霊の出現


その瞬間――

門が光り、

雪が舞い上がった。


ユウトが叫ぶ。


「おばちゃん!!

 なんか出てくるで!!」


雪の中から、

ひとつの光が現れた。


それは――

人の形をした“氷の精霊”だった。


透明な身体。

白い髪。

青い瞳。

氷の結晶が舞うように揺れている。


精霊は静かに言った。


『……光の継承者……

 そしてその仲間たちよ……

 ここは“氷の峠”……

 心の温度を試す場所……』


トモエは一歩前に出た。


「うちらはノルディアへ行きたいんや。

 通してくれへんか?」


精霊は首を振った。


『……通すことはできぬ……

 あなたたちが……

 “心の温度”を示すまでは……』


ユウトが叫ぶ。


「心の温度ってなんや!!

 どうやって見せるんや!!」


精霊は静かに手を広げた。


『……心の温度とは……

 “凍らない心”……

 恐れに負けず、

 後悔に沈まず、

 仲間を思う温かさ……

 それを示せば……

 門は開く……』


カイルは息を呑んだ。


「つまり……

 また心の試練……!」


リリアは震えた。


「怖い……

 でも……

 進まなきゃ……」


セイルは静かに言った。


「光の継承者。

 あなたが先に進むべきです」


トモエは深呼吸した。


(心の温度……

 うちは……

 ちゃんと持っとる)


---


◆ ◆ ◆


◆ 試練 ―― “心の温度を示せ”


精霊が手をかざすと、

雪が渦を巻き、

トモエの前に“氷の鏡”が現れた。


鏡の中には――

トモエ自身が映っていた。


しかし、

その表情は冷たく、

瞳は凍りついていた。


ユウトが叫ぶ。


「おばちゃん!?

 なんで鏡の中のおばちゃん、

 めっちゃ怖い顔してるんや!!」


カイルは震えた声で言う。


「これは……

 “心が凍った未来の姿”……

 恐れや後悔に飲まれた場合の……

 可能性……!」


リリアは涙をこらえた。


「そんなの……

 そんなの……

 おばちゃんさんじゃない……!」


精霊は静かに言った。


『……光の継承者よ……

 あなたの心が凍らぬことを……

 示してみせよ……』


トモエは鏡に向かって歩いた。


鏡の中の“凍ったトモエ”が言う。


「あんたは……

 いつか心が折れる。

 誰かを守れなくなって……

 自分を責めて……

 凍りつくんや」


トモエは首を振った。


「うちは折れへん。

 守れへん時が来ても、

 それでも前に進む。

 うちは――

 誰も置いていかへん」


鏡の中のトモエは揺れ、

やがて砕け散った。


精霊は静かに言った。


『……心の温度……

 確かに感じた……

 あなたの心は……

 凍っていない……』


門が光り、

ゆっくりと開き始めた。


ユウトが叫ぶ。


「おばちゃん!!

 門が開いたで!!

 すごい!!」


カイルは息をついた。


「おばちゃん先生……

 やはり強い……」


リリアは涙を拭った。


「よかった……

 本当に……よかった……」


セイルは静かに言った。


「光の継承者。

 あなたは“心の温度”を示した。

 これで峠へ進めます」


エルミナは深く頭を下げた。


「……ありがとうございます……

 あなたがいてくださって……

 本当に……心強い……」


トモエは門の向こうを見つめた。


(古い影……

 うちは必ず眠らせたる)


「よっしゃ。

 行こか、みんな。

 氷の峠へ」


虎柄シャツが風に揺れ、

おばちゃんは門をくぐった。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。


第110話では、

氷の峠の入口で“氷の精霊”が登場し、

おばちゃんの“心の温度”が試されました。


後悔、恐れを乗り越えた先に、

今度は“凍らない心”という新たなテーマが現れ、

物語はさらに深い領域へ進んでいきます。


次回、第111話では

氷の峠の本格的な登攀と、

峠に潜む“氷の影”との戦い

が描かれます。


これからも、おばちゃんの物語を

どうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ