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ミナミのおばちゃん、異世界で心の影を救います  作者: ぽそまる


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108/124

第108話:『おばちゃん、“恐れの影”に立ち向かう』

幻影の霧を抜けたあと、

トモエたちは北の森のさらに奥へと進んでいた。


木々はますます黒く、

枝は氷のように鋭く、

風は心の奥を刺すように冷たい。


ユウトが肩をすくめながら言う。


「おばちゃん……

 なんかさっきより寒いで……

 森の奥に行くほど、

 心まで冷える感じする……」


カイルは魔力を探りながら答えた。


「影の冬の中心に近づいています。

 “心の温度”が下がるのはそのせいです」


リリアは胸に手を当てた。


「なんだか……

 怖い……

 理由はわからないのに……

 胸がぎゅってなる……」


セイルは静かに言った。


「この先は“恐れの区画”。

 幻影の霧が“後悔”を映すなら、

 ここは“恐れ”を映す場所です」


エルミナはローブを握りしめた。


「……皆さん……

 どうか……気を強く持ってください……

 この区画は……

 心の奥に潜む“恐怖”を形にします……」


トモエは深呼吸した。


(後悔の次は……恐れか)


---


◆ ◆ ◆


◆ 森の最深部 ―― “恐れの霧”


森の奥へ進むと、

突然、黒い霧が立ち込めた。


白い霧とは違う。

重く、冷たく、

心の奥に沈んでいくような霧。


ユウトが叫ぶ。


「おばちゃん!!

 なんやこれ!!

さっきの霧より……

 もっと怖い!!」


カイルは顔を青くした。


「これは……

 “恐れの霧”……

 心の弱い部分を刺激し、

 恐怖を形にする……

 危険な霧です……!」


リリアは震えた。


「怖い……

 怖い……

 なんで……

 こんなに……」


セイルは静かに言った。


「恐れの霧は、

 “未来への不安”を映し出します。

 後悔よりも厄介です」


エルミナは杖を握りしめた。


「……皆さん……

 絶対に離れないでください……

 この霧は……

 仲間の声すら幻に変えてしまう……」


ユウトはトモエの手を握った。


「おばちゃん!!

 絶対離れへんからな!!」


トモエは頷いた。


「うちも離れへん。

 みんな、しっかりついてきぃや」


しかし――

その瞬間だった。


黒い霧が渦を巻き、

視界が真っ黒に染まった。


ユウトの声が遠ざかる。


「おばちゃん!!

 おばちゃ――」


トモエは叫んだ。


「ユウト!!

 どこや!!」


しかし返事はない。


(また……

 はぐれた……!?)


---


◆ ◆ ◆


◆ 幻影 ―― “おばちゃんの恐れ”


黒い霧の中に、

ぼんやりと影が浮かび上がった。


トモエは息を呑んだ。


(また……

 うちの幻影か……?)


影はゆっくりと近づき、

やがて姿を現した。


――それは、

ユウトだった。


しかし、

その表情は見たことがないほど冷たかった。


ユウトは静かに言った。


「おばちゃん……

 なんで助けてくれへんかったん?」


トモエは目を見開いた。


「ユウト……?

 何言うてんねん……

 うちは――」


ユウトは続けた。


「おばちゃんが強いのは知ってる。

 でも……

 いつか絶対、

 助けられへん時が来るんやろ?」


トモエは息を呑んだ。


(これは……

 うちの恐れ……

 “守れなくなる恐怖”……)


ユウトはさらに言う。


「おばちゃんがいなくなったら……

 俺、どうしたらええん……?」


トモエは拳を握った。


「ユウト……

 うちは――」


しかし、

ユウトの姿は揺れ、

次の瞬間、

“影のユウト”へと変わった。


影のユウトは叫んだ。


『おばちゃんは……

 いつか俺を置いていく……!!』


トモエは胸が締め付けられた。


(これが……

 うちの恐れ……

 “ユウトを守れなくなる恐怖”……)


影のユウトが迫る。


『おばちゃんは……

 俺を守れへん!!』


トモエは叫んだ。


「守る!!

 うちは絶対に守る!!

 ユウトも、みんなも!!

 うちは――

 誰も置いていかへん!!」


光が弾け、

影のユウトは霧の中へ消えていった。


黒い霧が少しだけ薄くなった。


---


◆ ◆ ◆


◆ 仲間の声


そのとき――

遠くから声が聞こえた。


「おばちゃん!!

 どこや!!」


ユウトの声だ。


トモエは叫んだ。


「ユウト!!

 ここや!!」


霧が割れ、

ユウト、カイル、リリア、セイル、エルミナが姿を現した。


ユウトが駆け寄る。


「おばちゃん!!

 無事やったんか!!

 めっちゃ心配したで!!」


トモエは笑った。


「大丈夫や。

 ちょっと怖いもんに会うただけや」


カイルは息をついた。


「恐れの霧……

 おばちゃん先生でも危険でしたか……」


リリアは涙を拭った。


「よかった……

 本当に……よかった……」


セイルは静かに言った。


「光の継承者。

 あなたは“恐れ”を乗り越えた。

 これは大きな一歩です」


エルミナは深く頭を下げた。


「……ありがとうございます……

 あなたがいてくださって……

 本当に……心強い……」


トモエは空を見上げた。


(古い影……

 うちは必ず眠らせたる)


「よっしゃ。

 行こか、みんな。

 森の出口はもうすぐや」


虎柄シャツが揺れ、

おばちゃんは再び歩き出した。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。


第107話に続き、

第108話では北の森の“恐れの区画”で、

おばちゃんが自分の恐怖と向き合う姿が描かれました。


“守れなくなる恐怖”。

“置いていかれる恐怖”。

誰かを大切に思うほど、

心の奥に生まれる影。


それを正面から受け止め、

乗り越えたおばちゃんは、

またひとつ強くなりました。


次回、第109話では

北の森を抜け、ついに“氷の峠”へ到達する回

が描かれます。


これからも、おばちゃんの物語を

どうぞよろしくお願いいたします。

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