第6話 最後の試練①
カムイが川の逆流の方角へと歩き始めて、すでに数時間が経っていた。
日は暮れ、あたりはすっかり夜の帳に包まれている。
幼い頃から馴染んでいた猟の技を思い出しながら、カムイは猪を仕留め、焚き火を起こしてその夜を凌いだ。
「やっぱり、ただ焼いただけの猪じゃ地味だな……」
そうぼやきながらも、空腹には勝てず、カムイは貪るように肉を頬張った。
(俺は――植田に川へ蹴り落とされて、流されて……気がつけば師匠の家にいた…)
肉を噛みながら、カムイは頭の中で出来事を整理していた。だが、ふと一つの疑問がよぎる。
(待てよ……師匠はどうやって、川に流されてた俺を見つけたんだ? さすがに偶然ってわけじゃないよな)
――ガサガサッ。
焚き火の光が揺れる中、草むらの奥で何かが動く音がした。
「ん?」
カムイは眉を逆八の字にひそめ、その方向に目を向けた。
「……感じ取れ、感じ取れ」
榊原の教えを思い出しながら、目を閉じて意識を集中させる。
──数日前。
「妖気? なんだそれ?」
「そうだ。すべての妖怪が戦闘態勢に入ったときに放つ“気”のようなものだ。妖怪と戦う時は、まずその妖気を感じ取り、どこにいるか、何をしようとしているのかを探るんだ」
──そして今。
(この妖気……でかい)
カムイは第六感を研ぎ澄ませ、妖気の動向に意識を集中させた。
「……攻撃が、来るッ!」
――ガサッ! ガサガサガサッ!!
???「ウガァァァァァッ!!」
カムイの予感は的中した。
草むらから飛び出したのは、兎のような姿をした巨大な妖怪。
体長は二メートルを超え、前歯は鋭い刃のように光っていた。
【妖獣──暴兎】
「出たな……妖怪!」
???「シャァァァァァ!!」
暴兎が獣じみた雄叫びを上げながら、カムイへ襲いかかる。
(まずはこいつを倒さないと……)
シュッ――!
カムイは素早く横へ身を翻し、攻撃を回避する。その身のこなしは、かつて誰かを彷彿とさせる動きだった。
「……まるで、俺と同じ動きだな」
すかさず、大刀を振り上げる――。
スパッ!
鋭い一閃が、妖獣の右足を切断した。
「ウギャァァァァ!!」
悲鳴を上げながらも、なお襲いかかろうと、妖獣は腕を振り上げる。
ブンッ!!
「遅い」
カムイは軽やかな足さばきで再び回避し、切っ先を腕へ――。
ジャキッ!
「オラァッ!」
妖獣の右腕が宙を舞った。
「ウギャァァァァ!」
もはや反撃の力も失い、うずくまる暴兎。その好機を逃さず、カムイは大刀を構え、跳躍。
「……死ねッ!!」
――ドガァァァァァァァ!!!!
衝撃音とともに大刀が妖獣の頭部へ深く突き刺さった。
その一撃に込められた霊力は、周囲の空気を震わせ、遠くまで響き渡った。
――シュウウウ……
頭から足先へと、妖獣の亡骸が音もなく焼かれていく。まるで火事の後の残骸のように。
「……やった。初めて、狩ったぞ」
カムイが拳を握って、歯を食いしばりながら笑う。
翌日
カムイが再び川の逆流の方向へと歩き出す。
カムイ「おっ...」
カムイが見覚えのある場所へ辿り着く。そして、崩壊した村が並でいた。
カムイ「みんな...」
カムイがその見覚えのある村を見て、そこにいる義母、村の人たちを思い出した。
カムイ「ただいま」




