4月生まれの君へ
今日は私の誕生日。
私宛に手紙が届いていた。
あの人からだ。
『4月生まれの君へ。
もうすぐ君の誕生日だね。
少し早いけど、おめでとう。
僕は残念ながら君の誕生日を祝うことが出来ない。
何故なら僕はこの世界からいなくなるから。
お別れは寂しいね。
君は「残された人の気持ちを考えてよ!」と腹立たしくも悲しい気持ちになると思う。
それはもう謝るしかない。
すまない。
しかし僕もこの世界から飛び立つに当たって、寂しさが無いかと言われると嘘になる。
出来ることなら君との思い出ごと持って旅立ちたい。
しかし、閻魔大王が言うには、持っていけるものは一つのようだ。
そして、もし君との思い出を持っていってしまうと、君の中に僕との思い出が残らないそうだ。
それは避けたい。
君には覚えていて欲しいからね。
だから僕が持っていくのは、LINEのアカウントだ。
そうすることで、この世を去ったとしても連絡が取れるはずだ。
僕が去った後も、僕のLINEは消さないで欲しい。
僕が去ったらすぐに、僕のLINEにメッセージを送って欲しい。
魂はもうこの世には無いけれど、やり取りは出来る。
だからいつでも声をかけてね。
それじゃあ、もう時間だから、続きはまたLINEで。
最後に、誕生日おめでとう。』
私はあの人がもういなくなるなんて知らなかった。
手紙を見て、涙が出たけど、すぐにLINEでメッセージを送った。
『手紙ありがとう。そちらの生活はどうですか?』
しかし1時間、3時間、1日、一週間、いつまで経っても返信が来ない。
-あの世-
「お世話になります。閻魔大王が一つだけ持っていっていいとのことで、LINEのアカウントを持ってきました!これなら現世の人と連絡が取れますよね?」
閻魔大王は言った。
「スマホが無いのにどうやって連絡を取るんだ?」
end