9話【一筋の光】ト【柔らかい雨】
1学期のテスト期間が始まった初日。HR後、教室のドアに指を掛けた直後僕はまたしても大神に呼び止められた。
大神「船星〜。話あるから帰らんといてぇ!!」
船星「話って何?僕はありませんけど……」
大神「そう言うなって(笑)まぁ立ち話もなんやし座りぃや」
言われるがまま僕は大神と向かい合うように自分の席ではないクラスメイトの席に座った。
因みに大神の席は窓際で後ろから2番目の位置だ。自分(船星)の席からさほど遠くない右斜め前の席である。
春の遠足以来二人きっりで話をするのは初めてである。あの時言いそびれた誤解を解くチャンスだ。
しかし僕を呼んだのは大神だ。自分の話をするのはそれからにしよう。
船星「失礼します……で話って何?」
大神「お前、最近めっちゃ暗かったやん。ナンパの失敗がものすっごいショック受けてんのかな思うてなぁ。俺そこで思ったんや!もう1回あの子らをナンパしてみぃひんか!どうや?」
船星「ま、またナンパ!?僕はもう嫌だよ」
大神「何言うてんねん!1回目がダメでも2回目なら大丈夫かも知れんやろ!今度は作戦立ててみようや!」
そう言って大神は僕を強引にまたナンパに誘う。
誤解が解けると思い一筋の光が見えたのは僕の勘違いだったみたい。
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大神とナンパ作戦を考えていたら、僕達の担任である。アルキメ◯スに似た数学教師龍骨先生が僕達に向かって声を少し荒げた。
龍骨「あなた達、いつまで教室にいるの?明日もテストあるんだから早く帰りなさい!」
大神「えぇやないですか。ちょっとくらい」
龍骨「よくないわ。あなた達が居る所為で日直の人が教室閉めれないってクレームがあったのよ」
大神「それやったら俺らが閉めますさかい。な、船星」
船星「え、あぁ。うん」
龍骨は大神と船星をしばらく睨みつけ後教室を出た。数分後教師の中で一番生徒にウザがられている、筋肉自慢の元ボディービルダーだった男子体育教師を呼んで再度龍骨は現れた。
龍骨「牛海先生お願いします」
牛海「龍骨先生から聞いたぞ!『体力が有り余っているから筋トレがしたいそうじゃないか!?』」
牛海はニヤニヤした顔でジリジリと僕達の方に歩み寄ってくる。
大神・船星「は?」
船星「ぼ、僕そんなこと言ってません」
大神「!?ッ。あんのぉ、先生人が下手に出たったのに……」
龍骨は大神らが教室を閉めるなんぞ最初から信じていなかった。自分で教室を閉めたいが為に嘘までついて偶然職員室に居た牛海を呼んで来たのだ。
それに気づいた大神は船星に荷物を持って急いで教室を出ることを話した。足の遅い船星を先に逃した後、大神は牛海に捕まり、強制筋トレをさせられた。
靴箱の前で船星が少し俯き泣きそうな顔をして大神に謝って来た。
船星「先に逃げてごめん」
大神「気にすんなや、えぇ運動なったし。牛海がまた来る前に帰ろうや」
学校の校舎を出ると夏の強い日差しに混じり柔らかい雨が降っていた。大神は空を仰ぎ
大神「狐の嫁入りかいな」
船星「何それ?」
大神「知らへんの?」
船星「聞いたことないよ」
大神「関東では何て言うやろうな」
9話End
お題【一筋の光】24‘11/6
【柔らかい雨】24‘11/7