18話【落ちていく】ト【セーター】
夕食の後食器洗いを終えて家事が一段落した頃、萌香の母親がリビングのソファで寛いでいる萌香に話しかけた。
萌香の母親「今朝ね、とても懐かしい夢を見たのよ」
萌香「どんなのぉ?」
萌香の母親「パパと出会う前。ママがそうね……萌香くらいの歳だったかな、高校生の時にあった夏の思い出の夢よ」
萌香の母親は夏休みに入ってすぐ、手当たり次第モデルやアイドルの新人発掘オーディションに応募していた。
当時の夢が女優になることだったので、その下積みとして先ほど述べた職業に応募したが、どれもことごとく全て一次審査で落ちていくのだった。
夏休み期間+大手の芸能プロダクショが募集していたこともあって応募人数が通常の2、3倍は集まり審査する側は大変だったとオーディションを取材していた雑誌の編集者は翌月の雑誌で特集を組むくらい数ページに渡って記事にしていたらしい。という情報をゴシップ好きの友達から話を聞いた。
モデルやアイドルの道を諦めることが出来なかった、萌香の母親は高校生2年生のある日大人気シリーズのホームドラマの撮影が近日、地元であるという噂を近所の奥様達が井戸端会議をしているのを偶然耳にした。
実はそのドラマのエキストラを募集しているそうだ。萌香の母親は早速調べて応募してみたが、結果はまたしても落選してしまった。
萌香「マミィの夢って女優だったんだ、初めて聞いた」
萌香の母親「そうよ。何度、応募しても落ちるばかりでね……」
萌香「もし受かっていたらパパと出会わなかったの?」
萌香の母親「かも知れないわね(笑)」
ジリリリーンと一本の電話が鳴る。萌香の母親はパタパタとスリッパを鳴らし電話の受話器を取った。電話の相手はパパだったらしく母親は嬉しそうに話している。その様子を温かいミルクティーの入ったマグカップをスプーンでくるくるとかき混ぜながら萌香は、母親の電話が終わるのを待っていた。
_______________________
祖母が私の名前を何度も呼んでいる。
祖母「可崘ちゃん、可崘ちゃん」
委員長「何?おばぁちゃん」
祖母「今年の冬はすごく寒くなるらしいじゃない。だから今からお祖父さんの為に手編みのセーターを編もうかなって思うんだけど今年はどの色がいいかしら?」
手先の器用な祖母は編み物が趣味でセーターは勿論、手袋、マフラーを毎年手編みしている。まだ夏だというのに準備が早いなぁと毎年思っていた。
委員長「去年は、黒だったから。今年はベージュとか柔らかい色がいいじゃないかな」
祖母「ベージュ?……あぁ!?肌色ね」
祖母には聞き馴染みのない色だったが、すぐに理解してくれた。祖母は毛糸ボックスと書かれた箱から毛糸を探しいたがベージュ色は無かった。
すると祖母は少ししょんぼりした顔で———。
祖母「明日お店に行こうかしら、珍しい色だけど売ってると思う?」
委員長「大丈夫だよ。もし売ってなかったらネットで私が買うわ。だから心配しないで一度確かめに行ってみって」
その言葉を聞いた祖母はにっこりと微笑んだ。
18話End
お題【落ちていく】24‘11/24
【セーター】24‘11/25




