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末路

その頃誠と圭一郎は、殺し屋たちを必死に追跡していた。銃声が激しくぶつかり合っていく中、二人は殺し屋たちの攻撃をかわしながら応戦を続けていたが、体力の消耗を防ぐために、しばらく息を潜めて殺し屋たちの様子をうかがっていた。

「警部、東郷はかなり訓練をしている殺し屋を送り込んでいるようですね」

 圭一郎がささやくような声で言う。

「だけど俺たちは負けるわけにはいかない…これは警察とマスコミへの奴らへの挑戦状なんだから」

 誠が言う。

「そろそろいくか」

「ええ」

 誠と圭一郎はうなずきあうと、殺し屋たちの注意を引くために、拳銃を天井に向けてわざと発砲した。

「なにっ!」

 遠くから殺し屋が怒鳴る声がした。

「いくぞ!」

 誠は弾倉を一杯にすると、殺し屋たちに向かって体当たりするようにして走り出した。虚を突かれた殺し屋たちを圭一郎が次々となぎ倒していく。二人は殺し屋たちの肩口を狙って発砲しながら、中央手術室へ入っていった。

「何事だ!」

 驚く東郷たちに誠は、

「警視庁広域捜査課の黒田だ。東郷、森川、白石、お前たちの企みもここまでだぞ!」

 と言った。が、その時、

「お前の娘が死んでもいいのかい、刑事さん」

 とダーティーが誠に飛びかかり、ナイフで肩口を切りつけた。誠は必死になってダーティーの腕を締め上げる。しかし、

「警部!」

 ととっさに誠をかばった圭一郎が、腹にキックを浴びて倒れこんだ。

「人でなし!こんな悪党の言いなりならないで。お父さん!」

 手術台にくくりつけられたかおりが絶叫する。

「うるさい!おまえは親父を殺せば用済みだ!」

 ダーティーはそう言うと、かおりの身体に高圧電流を流した。

「ギャャャーッ!」

 かおりは悲鳴を上げぐったりしてしまった。

「お前の娘の身体で、いろんな実験をさせてもらったぜ。ゼトラマックスを超える薬の研究のためにな。フフフフ…」

 東郷が不気味な笑い声を上げた。

「ふざけたまねしやがって!」

 圭一郎が怒鳴る。

「まもなくお嬢さんは口が利けなくなるはず。ゼトラマックスと併用した薬の効果でね」

 白石が言う。

「そうなれば、我々の計画が世間に知られることは一〇〇%ない。お前の仲間たちにも薬が効いてくる頃だからな」

 森川も続く。

「ちくしょう!」

「こんな悪党の言いなりになるな。お前は刑事の誇りを貫け!」

 悔しがる誠に向かって、竜治と一郎が後ろ手に縛られた姿で叫ぶ。

「俺たち警察をバカにするな!お前らは全員逮捕だ!」

 誠は怒りに任せ、殺し屋たちを撃った。が、

「向こう側を見ろ!あの医者がどうなってもいいのか!」

 とダーティーがいった。

「なにっ!」

 圭一郎が振り向くと、すぐ後ろで殺し屋の一人が南原を締め上げて銃をちらつかせ、ドアにロックをかけていた。そして、

「今度の事件で我々の検挙に失敗すれば、警察は市民から信用を失う事になっていくはず。ハハハハハッ」

 と森川が高笑いをした。そしてダーティーが、

「お前たちも死んでもらう」

 と部下の殺し屋と共に、誠と圭一郎に殴りかかった。

 思うように動きがとれず、足を撃たれた誠は、

「うわっ」

 と膝をついて倒れこんだ。それをかばった圭一郎も、殺し屋に投げ飛ばされ、気を失ってしまった。

「これでもう真相は闇の中も同然。後はダークパンサーだけだ」

 東郷がほくそ笑み、森川、白石と高笑いした。

 が、その瞬間、

「ガッシャャャーン」

 という音がしたかと思うと、中央手術室のドアが、

「ドォォォォン」

 という大音響とともに木っ端微塵になった。その衝撃で殺し屋たちが壁や床、棚に叩きつけられ、東郷たちも床に叩きつけられた。

「な…何事だ!」

 東郷が怒鳴ると、

「人の命を守る研究と見せかけて、その研究で作った薬で人殺しをしておいて、さらにそれが明るみに出るのを恐れて警察、マスコミに圧力をかけて、殺し屋たちを使ってスキャンダルをもみ消そうとした悪党め!あんたたちを待っているのは血の制裁よ!」

「森川光三郎、お前が白石健一郎と組んで、厚生労働省と中央薬事審議会に圧力をかけていたのは、調べがついてるぞ!」

 と声がした。

「おまえら一体何者だ!」

ダーティーが怒鳴る。

 と、次の瞬間、黒のブーメランと紫のバラをモチーフにしたかんざしのようなものが宙を舞い、殺し屋二人の左腕に突き刺さった。

 そして、

「悪党め!いい加減に観念しなさい!」

「貴様らの企みもこれまでだぞ」

 と声の主である小夜子と、ダークパンサーが現れた。

「やっちまえ!」

 東郷が怒鳴り、殺し屋たちが二人を取り囲んだ。ダークパンサーは挑みかかった殺し屋を投げ飛ばすやいなや、

「俺の姿は怒りの化身!人に隠れて闇を切る!」

 と言い放ってワルサースナイパーを抜き、剣に変化させると、殺し屋たちを次々に切りつけていった。

「ぎゃっ」

「げっ」

「ぐああっ」

 殺し屋たちが切りつけられ次々と倒れていく。

 小夜子はその間に誠と圭一郎に、

「しっかりして!」

 と言って二人を起こした後、近くにいた竜治と一郎を縛っていたのロープをレーザーナイフで切った。そして手術台からかおりを助け出すと、

「皆、早く逃げて!」

 と叫んだ。

「わかった!」

 一郎が竜治と一緒にかおり、誠、圭一郎をかばいながら、南原と走る。

 小夜子は、

「バイオレットベレッタ・アタックモード!」

 と光線銃・バイオレットベレッタを抜くと、殺し屋の右腕に光弾をヒットさせた。

「ぐあっ!」

 男がうめき声をあげてばったり倒れこんだ。

 ダークパンサーは軽くジャンプすると、森川の腹にキックを命中させた。そして、

「天罰!」

 と叫ぶと、イーグルスライダーでスーツの上着を切りつけた。

「な、なぜだ!なぜ我々がここにいるのがわかったんだ、お前ら」

 東郷が震える声になった。その時、

「その答えは俺が教えてやるぜ、悪党ども!」

 と竜治が現れた。

「なにっ!」

 白石とダーティーが怒鳴る。すると、

「俺たちが貴様らに捕まる前からつけていたネクタイピン、それがダークパンサーに今の位置を知らせる発信機になっていたのさ」

 と竜治が答えた。そしてダークパンサーも、

「ついでにもう一つ教えてやろう。そのネクタイピンには、超高性能の盗聴器もセットしてあったのさ。つまり貴様らが南原さんを襲ってからの一部始終は、俺と警察に筒抜けだったんだ。それからお前たちの捕まえた南原さんをよーく見ろ!」

 と言った。

「なにっ!」

 東郷が怒鳴ると、白衣を脱ぎ捨て、

「お前たちがかおりちゃんの事に気を取られている隙に、南原と相談して入れ替わって色々と調べさせてもらった。臓器売買の証拠も手に入れさせてもらったぞ!」

 と一郎が人工皮膚をはがし、正体を見せた。

「なにっ!」

 東郷がぶ然とした表情を見せる。

「一郎、やるじゃないか!」

 竜治はびっくりした表情を見せたが、

「なあに、俺も誠たちの証拠探しに協力したかったからさ。ジャーナリストが危険恐れてどうするんだよ!」

 と一郎は言った。

「さすがの殺し屋たちもネクタイピンとお芝居にはだまされたようね。観念しなさい!」

 小夜子が言った。

「おのれ…四人とも生かして返すな!」

 ダーティーが悔しそうに怒鳴り、残った殺し屋たちが三人を取り囲んだ。

「そうなの、自分たちの罪に対して悪あがきしたいのならば、やむを得ないわね」

 小夜子は冷ややかに言った。

「お前らの様な奴の為に人知れず社会の悪に泣く人を、俺たちはほっておけないんだ!」

竜治が言った。

「その為に私は野獣になった。悪党たちを懲らしめる野獣にね」

 小夜子はそう言うと、

「社会の巨悪に宣戦布告!」

 と続けた。そしてダークパンサーが、

「闇にうごめく悪を斬る!」

 とドスをきかせた。

「やれ!」

 東郷の声と共に殺し屋たちが四人に向かってきた。

「一郎、ここは俺たちに任せて安全な所へ逃げろ!」

「わかった」

 殺し屋を投げ飛ばしたダークパンサーの言葉にうなずき、一郎はすぐさま外へと駆け出して行った。

「暗闇にうごめく悪に死のバラを…我は紫紺の悪を追う影!」

 小夜子はゆっくりと静かに言いながら、殺し屋たちをバイオレットベレッタで倒していった。そして、

「成敗!」

 と叫んでジャンプし、東郷に回し蹴りをお見舞いした。さらに東郷が倒れこんだところで竜治がすかさず巴投げを炸裂させた。東郷の身体が宙を舞い、その身体が壁に当たってバウンドする。そこへダークパンサーがとどめのストレートキックを決めた。

「うおっ」

 東郷がうめき声をあげると、

「覚悟!」

 と小夜子はかんざし状の武器・ローズクロードを投げつけた。

「ぎゃっ」

太ももに刃が突き刺さり東郷は悲鳴をあげる。

 その間に竜治は、倒された殺し屋たちのマシンガンを手にし、ドドドドッと一気に殺し屋たちを打ち倒していった。だがその時、白石が隙を見てダークパンサーに発砲し、逃げ出そうと走り出した。しかし、

「白石、俺にはそれは通じないぞ。イーグルスライダー!」

 とダークパンサーのイーグルスライダーが宙を舞い、その刃が白石の右腕を直撃した。

「うああっ!」

 絶叫と共に倒れる白石を見つめるダークパンサーと竜治。

がその時、その背後からダーティーがロケットランチャーを発射しようとしていた。

「危ない!」

 とっさに叫んだ小夜子は間一髪ジャンプして攻撃をかわし、ダーティーの背後に回りこんだ。ダークパンサーも竜治をかばってその場に身を伏せた。

「なにっ!」

 すぐ後ろに現れた小夜子の姿にダーティーは一瞬ひるんだ。そして手にしていたロケットランチャーを落としてしまった。

「たあっ!」

 小夜子は大きくジャンプしてダーティーの胸元にキックを決めた。そして、

「黒い闇…希望に変えるバラのとげ…。ローズクロード=シャドーファイナル!」

 と叫んでローズクロードをダーティーの両肩に投げつけた。

「ぐああっ!」

 がっくりと膝をつきダーティーは断末魔のごとき絶叫と共に倒れこんだ。

 その様子を逃げ回りながら見ていた森川は、

「お前ら一体何をしているんだ」

 と半狂乱状態になっていた。

「お、お前ら、私を殺す気か!」

 森川がおどおどした口調になる。

「殺しはしないわ。その前にこれをどうぞ」

 小夜子はドスをきかせて言いながら、ピンクのバラの花をかたどったタブレットを森川の口の中に放り込んだ。そして森川に、

「あなたにバラの精の祝福がありますように!」

 と水を渡し、ダークパンサー、竜治と共に森川のいる部屋から姿を消した。

「野郎ッ!」

 三人を追って残った殺し屋たちが三人に向かってきた。しかしその時、

「それっ!蜘蛛の巣にでもくっついちゃってなさい!・シルキースパイダー」

 と小夜子が手甲の部分から白いネットを殺し屋たちの方向へ投げ込んだ。

「なにっ!」

 殺し屋の一人がひるんだ次の瞬間、そのネットは襲いかかって来た殺し屋たちをまとめて縛り上げ、壁に貼り付けられた状態にしてしまった。

「おのれっ…う、うわあっ!」

 殺し屋の一人がネットの糸を解こうとしたが、糸は中々解けない。それどころかシルキースパイダーには電気ショックの仕掛けが組み込まれていた。

「大きな蜘蛛の巣に引っかかるのと、警察に捕まるのとどっちがいいかしら。バイバイ!」

 小夜子はいたずらっぽく言って、ダークパンサー、竜治と共に姿を消した。


 その頃、小夜子に言われるままにタブレットを飲み込んだ森川は、やがて秘書の一人に電話をかけようと携帯電話を取り出した。

「あ、もしもし、私だがすぐに迎えに来てくれないか。場所は東光大学病院だ。これから玄関に向かう。後でゼトラマックスの…」

 森川がここまで言いかけたその時だった。

「ううっ、からだがしびれる…ぐああっ!」

 森川の身体を強烈なしびれが襲ってきた。森川は携帯電話を落としてしまい、その場に立っていることが出来なくなってしまったのだ。

「あの小娘野郎…」

 苦しそうに森川が何とか立ち上がろうとしたその時、

「お前の悪事はいずれ明るみになる」

「お前たちの陰謀のために死んでいった人たちの代わりに」

「森川光三郎、地獄に送ってやるわ!」

 とダークパンサー・竜治・小夜子が現れた。

「お、お前ら…まさか」

 森川が驚きの表情を見せたその時、

「えいっ!」

 竜治が森川のあごにかかと落としを決めた。

「成敗!」

 ダークパンサーが連続パンチを浴びせた。そして、

「たあっ!」

 と小夜子が森川の身体を鮮やかに投げ飛ばした。

「ぐああっ」

 森川は小夜子の投げ技が効き過ぎたせいか、気絶してしまった。

「よし、行こう!俺たちの正体がばれるとまずいからな」

 竜治が言った。

「でも森川にはばれないかしら」

 小夜子が不安そうに言った。

「大丈夫、君に渡したバラの花のタブレットは、しびれ薬と一時的に脳の記憶中枢を麻痺させる薬を混ぜて作ってあるものだから、そんな心配はいらないさ」

 ダークパンサーは言った。


 小夜子、ダークパンサー、竜治は病院の裏口に出た。そして小夜子とダークパンサー=哲夫は、シャドーテクターの装着を解除し、元の姿に戻った。その時、

「ううっ」

 と小夜子が疲れのために倒れこんだ。

 哲夫が小夜子の体を受け止め、

「小夜ちゃん、大丈夫か」

 と声をかける。

「黒木さん、竜治さん、かおりは…無事なの?…皆は? 」

 小夜子は息を切らしながら哲夫と竜治に聞いた。

「大丈夫さ、けがをしたのはお父さんとお父さんの仲間だけだし、かおりちゃんも歩くぐらいは平気だよ。一郎も南原さんも大丈夫。もちろんこの俺も。お父さんたちもひどいけがではないさ」

 竜治が言った。

「よかった…」

小夜子はほっとしたようにつぶやいた。

「黒木、また戦いが始まるな」

 竜治が哲夫に言う。

「ああ、でもやるしかないぜ俺たちが。森川たちの様に、金と権力にものを言わせて影で悪事を働いている人間の為に犠牲になるのは、いつも弱い立場の人間だからな」

「そんな悪事を働く奴らに、この社会を託しちゃいけないぜ」

「そうだな。俺たちはその為に…皆の笑顔の為に戦ったんだから。本当はこの力はもう使いたくなかった。でもやるしかない。昔以上に大変な戦いになるかもしれないが」

哲夫が苦悩の表情を浮かべてつぶやいた。

 その時小夜子が、

「黒木さん、竜治さん、私も一緒に戦うわ」

 と言った。

「森川たちみたいに金と権力にものを言わせて悪事をやっているずるい大人たちのいる一方で、戦争で親を失ったり大けがをしたりして障害を持った子供たちがいる。病気の治療法がわからずに長生きできない子供もいるのよ。こんな不公平絶対おかしい!」

「君の言うとおりだよ」

 竜治がうなずく。

「私は絶対に許せない!金と権力にものを言わせて悪事を働いてのうのうとしている大人たちが!それにそういう大人に限って、殺し屋を使って真相を暴こうとする者を殺している。そういう奴らと戦うことが危険なことはわかっているわ。でも、そういう事をしてまで権力にしがみつく大人たちがいる中で、黒木さんみたいに命がけでその悪と戦っている人がいるのを知って、私真剣に思ったの。力になりたいって…。だから私は仕置人になろうと決意したの」

「そうだったのか…君らしいな。俺が君にシャドーアクセプターを渡したのは、君の純粋さに俺の心が動いたからかもしれない。だが、これからは命がけだぞ」

「わかったわ」

「でも、俺はいざとなったら、君の事は自分の命に代えても守って見せる。俺は独り身だけど君の事は小さい頃から知っているからな。まあ俺は兄貴代わりしか出来ないけどな」

「黒木さん、私…」

 小夜子が言いかけた。

「どうしたんだ、小夜ちゃん」

 哲夫が聞き返す。

「私…黒木さんほど心の優しい行動力のある人が、たった一人でどうしてこんな危険な戦いをしなくちゃいけないのかと思っていたの。本当は…。黒木さんが活躍できる場所、他にもありそうなのに。黒木さんの身体の傷を見たら辛くなりそう」

 小夜子はそう言って泣き出した。そして泣きながら、

「でも私、黒木さんが信念を持って悪と戦ってきたのがわかるから、戦いの中で命を散らしてほしくない。私のお母さんが昔、黒木さんと一緒にテロ組織に立ち向かっていたのは、お父さんからもよく話は聞いていた。だから今度は私が、私のお母さんの代わりに黒木さんの力になりたいの!お父さんと同じ位、黒木さんは尊敬できる人だもん」

「君は本当に勇気があるな。若い頃の君のお母さんに本当にそっくりだ」

 哲夫はかつて一緒にテロと戦った美咲の勇姿を、小夜子に重ね合わせていた。

「皆が笑顔で生きられる世界を作りたい…。お母さんはよく言っていたわ。その為にお母さんは地雷から子供たちを救おうとして志半ばで死んでいった。だからお母さんの思いを継ぎたいの!一人一人の命が同じように大事にされる社会になってほしいから」

「その通り、いろいろなところに悪は形を変えて存在しているけど、その為に人知れず泣いている人たちがいる事を忘れちゃいけないんだ。俺たちが戦うべき敵は社会の中で見えにくい悪。その見えない悪からみんなの笑顔を守るために、俺は戦い続けてきたんだ。これ以上見えない悪の為に涙を流す人がいなくなればと、俺はいつも思っている」

「その気持ち、俺も一緒さ。黒木」

「森川のような悪党にこの社会を託したらとんでもない事になるもの。でも、そんなことは絶対にさせない!」

 小夜子は涙を拭いてきっぱりと言った。

「俺たち3人、何とか頑張ろうぜ」

「うん」

 哲夫の言葉にうなずく小夜子と竜治。三人を月が優しく照らしていた。


 それから二週間後、東京に戻っためぐみの告発と哲夫たちの取材、南原とかおりの証言が決め手になり、森川光三郎と白石健一郎、そして東郷裕一とその部下が同時に逮捕された。だが警察は、彼らを痛めつけたダークパンサーと謎の女戦士の正体を突き止めることは出来なかった。そしてマスコミも二人の活躍を話題にしていたものの、正体を突き止めるまでには至らなかった。


「小夜ちゃん」

 哲夫が小夜子に呼びかけた。

「後悔してないか」

「正直言うとまだ戸惑っているわ。それにいつ普通の生活に戻れるかわからないでしょ?ちょっぴり後悔している…かな?」

 小夜子は素直な気持ちを打ち明けた。

「正直でいいな」

 哲夫はそう言って優しく微笑んだ。

「でも、もういいの。せっかく悪と戦う力を手に入れたのなら、私、その力を絶対皆のために役立てて見せるわ」

 小夜子はきっぱり言った。

「よし、約束だぞ。パープルシャドー」

「えっ!?」

 哲夫の言葉に小夜子は一瞬戸惑った。

「どうやらダークパンサーは現代の黒騎士と言われているみたいだが、小夜ちゃんの変身したあの姿は、紫頭巾やくの一みたいだって噂になっているらしいからね。それで浮かんだのさ」

哲夫はそう言っていたずらっぽく笑った。

「あらら、そんなに大騒ぎになっちゃったの?でもまあいいか!」

 照れくさそうに小夜子が微笑む。

「これからも頼むぜ、小夜ちゃん」

 哲夫はそう言うと小夜子の肩をポンと優しくたたいた。その上には澄んだ色の青い空がどこまでもさわやかに広がっていた。



(了)


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