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決意

その頃、哲夫は小夜子を寝かせ、誠からの連絡を待っていた。

「何事もなければいいが…」

 哲夫がふとつぶやいたその時、、

「黒木さん!」

 と窓ガラスが割られ、二階の自室で悲鳴を上げる小夜子の声が響いた。

「小夜ちゃん!」

 哲夫はとっさにシャドーアクセプターのスイッチを押してダークパンサーに変身すると、すぐさま二階に駆け上がり、小夜子の部屋に走った。すると、

「このやろう!」

 と小夜子がベッドのはしごを使って、男たちに殴りかかっていた。

「今いくぞ!」

 ダークパンサーはそう言うと、男たちを次々とキックで倒していった。

小夜子はその間に自分の机の椅子を出して、

「えーい!」

 と力いっぱい男たちのほうへ投げつけた。とっさに出た怪力のせいか、小夜子の投げた椅子は、男たちの一人の顔面に強烈にヒットした。

「野郎ッ、女だてらに俺たちが倒せるものか!」

 椅子をぶつけられた男がナイフで小夜子の顔を切りつけようとした。小夜子はすぐに廊下に出ると、男の横に回りこみ、回転投げで男を階段から投げ落とした。

 ダークパンサーも残った男たちに回し蹴りをヒットさせる。

 しかしその時、かおりの部屋に隠れていた三人組の別の男たちが小夜子に襲いかかってきた。投げ技をかけようとした小夜子は、背後から別の男に首を絞められてしまった。

「うっ、苦しい!」

 小夜子がうめき声をあげる。

「許さんぞ」

 ダークパンサーはブーメランを手に男たちに切りかかった。小夜子を何とか守らなければ。ダークパンサーはその思いでブーメランを剣のように振るう。

「うわっ!」

 男たちの肩口から血が流れていく。が、次の瞬間、

「ダークパンサー、死ねッ!」

 とブーメランで切りつけられた男たちの中の一人が、ダークパンサーを連続キックで背後から襲ってきた。

「うああっ!」

 もんどりうって倒れこんだダークパンサーは、別の男にもキックを決められ、吹っ飛ばされてしまった。

「ダークパンサー!」

 小夜子が叫びながら、男にキックを決める。

「許せない、かおりを奴らに殺させることだけはさせない!ダークパンサーも、皆も!」

 小夜子は最後の力を振り絞って、ダークパンサーを襲った男を、再び回転投げで階段から投げ落とした。そして、何とか立ち上がったダークパンサーも男たちを再びなぎ倒した。

「ちくしょう、覚えていやがれ!」

 男たちは命からがら逃げていった。

 その時、一階の電話が鳴った。小夜子は急いでかけ降りると、

「もしもし、黒田です」

 と言った。

「小夜子か…お父さんだが、南原さんと兄さんと竜治が捕まった!今聖ホーリー医大病院に向かっている」

「えっ!?じゃあ奴らの車か何かを追っているのね」

 誠が今の様子を知らせてきたのが、すぐ小夜子にはわかった。

「その通りだ。日比谷公園の事件の事もお父さんの部下が調べてくれているが、今までにわかったこと教えるぞ」

 誠はそう言ってから話を続けた。

「二人は中学時代からの親友だったらしいが、ゼトラマックスの秘密を何かのきっかけでたまたま知って、真相を二人で探って告発しようとしていたようなんだ。ただ開発に関わった人は社内で嫌がらせを受けたり、白石社長や直属の上司からセクハラを受けたりしていた挙句、別の部署に左遷されちゃったらしいんだよ。関係者の人が話してくれた」

「ひどいよそれ!そんなことが許されるなんてどうかしてるよ」

「それから、哲ちゃんの推理通り、南製薬は聖ホーリー医大…メディカの本元に、ゼトラマックスを売りつけていたよ。…そっちはどうだ? 」

「私が寝ていた時にメディカの連中が!ダークパンサーがまた助けてくれたけど、彼がけがしちゃった」

「なんだって!そういえば哲ちゃんはどうした」

「黒木さんはずっと起きてくれているみたいだけど、どこにいるかわからない」

 誠の質問に小夜子は更に半べそになった。その時、

「ダークパンサーの事を見ていてやれ」

 と誠は優しく言った。

「えっ?」

「お前は何度も彼に助けられているだろう。彼が傷ついた時ぐらいそばにいてやれ」

 面食らう小夜子に誠はさりげなく言った。

「哲ちゃんに言ってくれ。ゼトラマックスは筋肉に異常を起こす作用を持つ毒薬だって、俺の部下が知らせてきたと…じゃあな」

「わかったわ、気をつけてね」

 小夜子は電話を切ると、右手の拳に力をこめた。その拳にはそんな薬をたくさんの人を欺いて売りつける悪党は許せないと言う思いが一杯に込められていた。


 小夜子が慌てて二階に戻ると、

「ううっ」

 とうめき声をあげながら、哲夫が廊下でうずくまっていた。

「黒木さん!…大丈夫? 早くベッドで横になったほうがいいわ」

 小夜子は哲夫のそばへかけ寄ると、自分の部屋に哲夫を連れて行き、部屋を片付けつつ哲夫に横になるように促した。哲夫は横になると、

「今度はダークパンサーが助けられちゃったな」

 と苦笑いした。

「今の電話はお父さんからか」

「ええ、聖ホーリー医大に向かっているって。…こうなったら私も戦う。何も知らないで、ゼトラマックスの副作用で殺された人たちのためにも!」

「小夜ちゃん…、戦うのはダークパンサーだけでいい。俺は小さい頃からよく知っている君をこれ以上危険な目に遭わせたくない」

「待って!お父さんが教えてくれたの。黒木さんにも伝えて欲しいって言ってね。ゼトラマックスは、筋肉に異常な作用を起こす作用を持つ毒薬だったって!」

「なんだって!やはりそうだったのか」

「それだけじゃないわ。お父さんの仲間が調べてくれている日比谷公園の事件だけど、被害者の人は中学時代からの親友だったらしいけど、ゼトラマックスの秘密を何かのきっかけでたまたま知って、真相を二人で探って告発しようとしていたらしいの。ただ開発に関わった人は社内で嫌がらせを受けたり、白石社長や直属の上司からセクハラを受けたりしていた挙句、別の部署に左遷されちゃったらしいってお父さんが言ってたわ」

 小夜子は冷静に話そうとしたが、怒りが押さえられなくなっていた。

「そうか、そういうことだったのか。…奴らが君たち家族を狙ったのは、お父さんが刑事である事を知っている者…たぶん森川光三郎がメディカの黒幕にお父さんを殺すように依頼したんだと思う。伯父さんが狙われたのもそれと関係あるに違いない。今までの事件もね」

「黒木さん、邪魔者は消せと言うことなの?じゃあ、私が殺されかかったり、かおりが誘拐されたりしたのも森川がその黒幕に頼んだことかも知れないのね」

「おそらくな…あの夜は皆揃っていた時に襲われただろう?」

「冗談じゃないわ!森川の悪党ぶりは知ってたけど、スキャンダルから自分の身を守るために人を殺そうとするなんて」

 小夜子はまた怒りを爆発させた。そしてマシンガンの様に思いをぶつけた。

「なんでそんな悪党がもっとらしい顔して国会議員をやってるのよ!どうしてお父さんたちや東京地検は、森川を逮捕できなかったの?」

「落ち着くんだ、小夜ちゃん」

「黒木さん、何の関係もないのにかおりは誘拐されちゃったのよ。その悪党に!私にダークパンサーみたいな力があればいいのに。皆を助けることが出来るのに!お父さんたちが森川たちを逮捕できないなら、私と黒木さんで懲らしめればいいじゃないのよ」

 と小夜子は言った。話していくうちにその声は嗚咽交じりになっていた。そして小夜子は泣きながら、

「皆を…かおりを助けたい!森川たちを懲らしめてやりたい!でも…どうしたらいいのよ!」

 と続けた。すると、

「小夜ちゃん…わかったよ。君の気持ちは。でも本気でメディカのような恐ろしい奴らと戦うつもりなのか。命の保障はないんだぞ。本当にそれを覚悟できるのか」

 哲夫は静かに言った。

「君にもしものことがあったら、本当に辛い思いをするのは、お父さんとかおりちゃんなんだぞ」

「黒木さん、確かに言う通りだわ。でもメディカの奴らと森川たちのあくどい陰謀の影で泣いている人もいるのよ。ゼトラマックスを使ったために死んだ人だっているんだよ。それなのに森川と白石は、メディカと組んで更に恐ろしい事をやろうとしている…。こんな不条理が許されてたまるもんですか!」

「そうか…」

「原因もわからない病気に苦しみながらも、健気に生きている子供たちがいる陰で、人の命を守る責任のある製薬会社と政治家がつるんで悪い事をしてるなんて…私、絶対に許せない!」

「君の気持ちはわかるが、俺は君を巻き込みたくない。奴らは本当に恐ろしい敵なんだぞ。戦うことがどんなに怖くて恐ろしいか君はわかっていない!お父さんは命がけで町の平和を守っている。それは本当に厳しくて大変なことなんだぞ」

「それを覚悟で言ってるのよ、私は。お願い!奴らと戦える力を」

 小夜子は哲夫に訴えた。父が摘発出来ないだけに危険な組織なのはわかっている。でも人の命を救うためと見せかけて、陰で悪事に関わっている者を警察が逮捕できない現実を、黙って見過ごすことは出来ない。小夜子はそう思っていた。

「どうしてお父さんたちが森川を逮捕できないかはわからないけど、今は会期中ではないでしょ?それにそんな政治家に日本を任せちゃいけないって、黒木さんも言ってたでしょ」

「小夜ちゃん、君の言うとおりだ。でもそんな巨悪と君は本気で戦うつもりなのか。君にはこれから輝く未来があるのに。君にはそんなことはして欲しくない」

哲夫はそう言うとゆっくり起き上がり、

「ダークパンサーを信じろ。奴らの陰謀は絶対つぶすから」

 と言って静かに歩き始めたが、メディカの殺し屋と思われる男たちにキックされた背中の痛みで、うっと一瞬顔を歪めた。

「その身体でそのまま戦うなんてムチャよ!」

 小夜子は必死に止めようとするが、

「君たちを死なせたくないんだ、俺は」

 と哲夫は傷だらけの体で、顔をゆがめながら歩いていた。

「だめよ黒木さん!そんな体で戦ったら死んでしまうわ!私も行かせて!一緒に戦うから。お願い!」

 小夜子が泣きそうになりながら言うと、

「だめだ、断る!小夜ちゃん、戦う事の意味を君は本当にはわかっていない!お遊びなんかじゃないんだぞ」

 とものすごい勢いで怒った。

「どうして…どうしてわかってくれないの!」

 怒りといらだちをぶちまける小夜子。しかし、

「君には俺がなぜ戦っているのかわかるまい、いや、わからないほうがいいだろう。一人で行かせてくれ」

 と哲夫は小夜子を振り切って、黒のゼファーで走り去ってしまった。

「どうしてなの、黒木さん」

 小夜子は思わずポロポロ涙ぐんだ。しかしすぐに涙をぬぐうと、意を決したように外に出て星空をじっと見つめた。

「黒木さんがダークパンサーなのかなんてどうでもいいわ!だけど、ダークパンサーにも黒木さんにも、皆にも死んで欲しくない!絶対メディカは許さない。奴らに皆を殺させはしないわ!」

 小夜子はそうつぶやくと、自分の白いバンディットに乗り込み、スロットルを全開にして、哲夫の後を追って疾走していった。

 ダークパンサーが黒木さんだろうとそうでなかろうとかまわない。だけどこんな恐ろしい陰謀にかおりが巻き込まれた。そのために死んだ人だってたくさんいる。表向きには人の役に立つ研究のように見せて、裏でこんなひどい事をしている大人がいるなんて絶対に許せない!お父さんたちが頑張ってもダメなら私とダークパンサーが戦うしかない。絶対こんな陰謀は阻止してやるんだから。小夜子は胸の中で炎のように燃える怒りをエンジンに伝えるかの如く、アクセルを解き放った。


その頃、聖ホーリー医大病院の一室に放り込まれた竜治と一郎は、かおりと共にベッドにくくりつけられていた。

「ちくしょう!こんな事になるなんて思わなかったぜ」

「奴らの狙いは俺と誠だったんだ。竜治じゃないぜ」

 悔しがる竜治を一郎が慰める。

「おじさん、でも私、ずっと一人で暗いところに閉じ込められていたのよ。それで薬の実験で殺されるなんてあんまりだわ。早くお姉ちゃんに会いたい!どうしたらいいのよ!」

「なんだって!本当か、かおりちゃん」

「お父さんに無事なの知らせようと思って、見張りがいないところを見計らって電話のあるところに行ったら、偶然森川たちの話立ち聞きしちゃったの。奴らはゼトラマックスより恐ろしい薬を、厚生省に圧力をかけて認可させようとしているの。その為に臨床試験データを集めているみたいなんだけど」

「ふざけたことしやがって!」

 一郎が叫んだ。すると、

「どうあがいてもムダだ。ゼトラマックスとニトロを打たれたら一巻の終わりだからな。フフフッ」

 とかおりを連れてきた男が不気味に笑った。そして注射器をかおりの顔のほうへとちらつかせた。

「やめてーっ!」

 かおりが悲鳴をあげる。

「この三人さえいなくなれば、後は警察とダークパンサーだけだ」

「この事件が闇に葬られれば、警察も動きようがあるまい。一気に権威は失墜するはず」

 森川も薄笑いを浮かべて言う。

「川島理恵と北原悠里、あの二人も愚か者めが。ゼトラマックスの秘密を街頭で告発しようとしていたらしいがな。東郷の配下が始末してくれたからいいようなものの、あれがもっと広がったら大変な事になっていた。だが後はゼトラマックスの秘密を知っているもう一人の男・南原をじっくり殺せばいい。そうなれば真相は闇の中だ」

 白石が確信したように言うと、三人は、

「ハハハハハハ…」

と大きく高笑いした。

「ふざけやがって!」

 竜治が怒りを必死に押し殺す。その時、

「小娘から始末してやれ、ダーティー。じわじわ苦しめるほうが面白いだろう」

 と東郷がかおりを連れてきた男・ダーティーに命じた。

「やめて!誰か、誰か助けてー!」

 かおりは泣きながら絶叫した。

「いやぁぁぁっ!」

 だがその時、その悲鳴が聞こえたかのように、ドアが破れガラスが割れる音が響いた瞬間、

「そうはさせないぞ、東郷、森川、白石!お前の部下の一人・シルバーホークこと水沢は我々が逮捕したぞ!」

「俺たち警察をなめるんじゃないぜ」

 と誠と圭一郎がそこへ駆け込んできた。

「なにっ!」

 東郷が怒鳴り、殺し屋たちを呼びつける。

「どうして私のことが警察に…やれ!」

「警部、ここは俺に任せて、お兄さんたちを」

 圭一郎は誠をかばいながら、殺し屋たちに独り立ち向かっていった。

 殺し屋たちと圭一郎の銃声が錯綜する中、誠は銃弾をかいくぐりながらかおり、一郎、竜治を助け出した。

「皆大丈夫か」

「お父さん!!」

 父の声を聞いたその瞬間、かおりはドッと声を上げ泣き崩れた。

「怖かった…お父さん。死ぬかと思ったよ」

「俺たちの前では、こんなにひどく泣かなかったけど、かおりちゃんの身体は傷だらけなんだ。奴らにされたリンチのせいで…許せないぜ」

「でもかおりちゃんはお前が来てくれるのを信じて頑張っていたんだ」

 一郎と竜治が言った。

「かおり、よく我慢した。えらいぞ。お前にひどい事をした奴らはお父さんたちが捕まえるから安心しろ」

 誠はそう言ってかおりをしっかり抱きしめてやった。

 そして、

「兄さん、竜治、かおりを頼む」

 と言って圭一郎の元へ走っていった。

「行こう、かおりちゃん。おぶってあげるからしっかりつかまって!」

 一郎はそう言うと、かおりを背中におぶって立ち上がった。そして、

「竜治、行くぞ!」

 と走り出した。

 だが、東郷の差し向けた別の殺し屋たちが一郎たちに襲い掛かってきた。

「なにっ!」

 一郎が殺し屋たちをかわしながら一瞬戸惑いを見せた。竜治は、

「よし、俺に任せろ。俺の方に奴らの注意をひきつけておくから、その間にかおりちゃんを安全な場所に連れて行くんだ」

 と一郎の耳元でささやいた。

「わかった」

 一郎はうなずいて、再びかおりを背中に背負ったまま走り出した。

「やい、悪党!やれるもんならやってみろ。俺が相手になってやるぜ」

 竜治はそう言って殺し屋たちを自分のほうへ引き付けた。

「野郎ッ!やっちまえ!」

 殺し屋たちが竜治めがけて飛びかかってきた。竜治はヘルメットで殺し屋にパンチした後、

「お前らみたいな卑怯者どもを黙って見過ごせないんだよ。俺は!」

 と言い放ち、殺し屋たちの攻撃にパンチとキックで応戦した。しかし、殺し屋たちはナイフを手にしており、とどめを刺すところまでには中々いかない。

「しつこい奴らだぜ、まったく」

 竜治は歯がゆい気持ちになっていた。

 だがその時、再び黒いブーメランが宙を舞った!そして殺し屋の一人が肩を切りつけられて倒れこんだ。

「うわっ!」

 他の殺し屋たちも腕を切りつけられ悲鳴を上げる。

「あ、あれは!」

「なにっ!」

 殺し屋たちが同時に声をあげた先にはダークパンサーの姿があった。

「素手で戦おうなんてムチャだぜ。俺も加勢するからな!」

 ダークパンサーが言った。

「おう!」

 竜治がうなずいた。

「野郎ッ、またも邪魔を…」

「生かして返すな!ダークパンサーもろとも殺せ!」

 殺し屋の一人と東郷が怒鳴る。

「そうはいくか!ワルサースナイパー!」

 ダークパンサーはワルサースナイパーを引き抜くと、殺し屋たちに向けアタックビームを次々と発射していった。

「うっ!」

「ぐああっ」

「うあっ」

 殺し屋たちがうめき声をあげて次々と倒れていく。

 ダークパンサーは、逃げる殺し屋たちを追って病院内を駆け抜け、殺し屋たちを次々と倒していき正面玄関を目指す。だがその時、

「うあっ!」

 シャドーテクターに凄まじい電撃を受けてしまい、悲鳴をあげるダークパンサー。

「ハハハハハハッ」

 東郷が高笑いを上げる。

「電磁バリアの網に引っかかりおったな。」

「なにっ!?」

 竜治が言った。

「そこは一万ボルトの電磁波が流れている空間だ、ダークパンサーも思う様に動けまい」

 東郷が冷ややかに言う。

「ちっくしょう…」

 ダークパンサーは,苦しそうな声を上げながらも必死に立ち上がろうとする。戦士としての彼の思いが苦痛を跳ね返す力になって溢れ出す。

「大丈夫か!」

 竜治が駆け寄ろうとしたその時、

「そこから離れろ、危ないぞ!俺はまだ大丈夫だ!」

 とダークパンサーが絶叫した。

 竜治が振り向くとダーティーがロケットランチャーを二人のいる方へ向けていた。

「なにっ!」

 竜治が驚きの表情を見せたその時、

「死ねッ!」

 ダーティーがロケットランチャーの引き金を引いた。しかしその時、

「危ない、逃げろ!」

 とっさにダークパンサーは竜治の身体を安全な場所へ投げ飛ばした。その瞬間、強力な火炎弾が立ち上がろうとしたダークパンサーに襲い掛かった。

「うああっ」

 強力な爆風に吹き飛ばされたダークパンサーの身体が、受付の部屋のドアを破り壁に叩きつけられた。さらにそれを待ち構えていたように、別の殺し屋たちがダークパンサーに襲いかかってきた。

「おのれ、ちくしょう…うっ!」

 必死に抵抗するダークパンサーだが、ダメージのために思うように立てなくなってしまっていた。度重なった攻撃のダメージで、シャドーテクターをつけた哲夫は満身創痍の状態だったのだ。

 さらに殺し屋に痛めつけられるダークパンサー。

「とどめだ…これで真相は闇の中も同然だ」

 様子を観に来たダーティーがそう言ってほくそえんだ後、

「やれ!」

 と言った。

 そして、殺し屋の一人がシャドーテクターを破壊しようとレーザーブレードを抜き、胸元を切りつけようとブレードを振り上げた。

「ううっ」

 うめき声をあげるダークパンサー。

「パンサー!」

 竜治が絶叫しながら走ってきた。そしてレーザーブレードを持った殺し屋めがけてジャンプし、外へ飛び出した次の瞬間…、一瞬の沈黙を破って、疾風の如く凄まじいバイクの爆音がとどろき、激しく入り口のガラスを突き破った。

「なにっ!」

 ダーティーが驚いて振り向くと、白いバンディットにまたがった小夜子が猛スピードで疾走してきた。赤のヘルメットが車体によく映えている。小夜子はフルスピードで正面玄関にオートバイごと突っ込んだのだ。

「何者だ!」

 殺し屋の一人が怒鳴る。

「悪党連中!これ以上の勝手はさせないわ!」

 小夜子はバンディットを止めて言った。

「やっちまえ!」

 ダーティーが怒鳴り、殺し屋たちが小夜子に向けて飛びかかってきた。

「デカの娘をなめるんじゃないよ!」

 小夜子はべらんめえ調でタンカを切ると、一気にスロットルを全開にして殺し屋たちに体当たりした。そしてオートバイから降りると、向かってきた殺し屋を鮮やかに投げ飛ばしていった。

「うわっ」

「ぎゃっ」

「ぐあっ」

 殺し屋たちが悲鳴を上げその場に倒れていく。

「なにをしているんだ。やめろ、ムチャするな!」

 ぐったりした姿でダークパンサーが必死に叫んだ。

「お願い!…ダークパンサー、死なないで! 」

 小夜子は悲しみの中で絶叫した。父と同じ位尊敬し、大切にしている人を失いたくない。その思いで小夜子は、必死に力を振り絞って殺し屋たちに立ち向かった。そしてその身体にはやがて服を切り裂かれたために出来た傷跡が痛々しく刻まれていった。その時、

「飛んで火に入るなんとやら…二人揃って地獄に落ちろ!」

 とダーティーが不気味に冷ややかな表情で言い放ち、ダイナマイトを小夜子とダークパンサーに向けた。

「そうはいかないわ!」

 小夜子は大きくジャンプして壁で反動をつけると、素早くダーティーの背中にキックした。

「ぐあっ」

 よろめくダーティー。

「あんたたちの思う通りになんかさせはしないわ!」

 小夜子は傷ついたダークパンサーを守ろうと必死に走った。しかし、

「危ないッ!」

 小夜子をかばおうと残っている力を必死に振り絞ったダークパンサーが、小夜子の方へダイビングしたその瞬間…、

 時限爆弾が建物を揺るがす大音響と共に爆発し、二人の身体が宙を舞い床にたたきつけられた。そして同時に周りを取り囲む炎。だが一方のダーティーも悶え苦しんでいた

「うああっ!」

 なんと小夜子を守るためにダイビングした時、ダークパンサーは手首から強力な電磁針をダーティーの腹部に向けて発射していたのだ。ダーティーはうめき声をあげながら殺し屋たちと一時退却していった。


 それからしばらく時間が過ぎた頃…

「小夜ちゃん…小夜ちゃん…しっかりしろ!」

 哲夫が必死に叫ぶ。爆発のダメージで戦闘不能になり、ダークパンサーから元の姿に戻ってしまっていたのだ。

 小夜子は傷だらけになっていた。そして哲夫の声に答える様子もなかった。

「どうしてこんな傷を負ってまで、小夜ちゃんは俺を…」

 傷だらけになって倒れている小夜子を見つめながら、哲夫は苦悩した。

「奴らがあれだけ恐ろしい敵だと言うのに、小夜ちゃんはほとんどといっていいほどひるまなかった。おそらく俺がここに向かってすぐに、急いでここに乗り込んできたんだろうな。俺は命がけで戦ってきたし、死線をさまよった事もあるから、闇の仕置人というものの大変さと戦いの苦しみを痛いほど知っている。だから俺は、小夜ちゃんにはこんな事はして欲しくなかった。だが…小夜ちゃんは身体を張って俺を助けようとしたゆえに、こんなひどい傷を負ってしまったんだ」

 哲夫自身も身体のいたるところに傷を負っていた為、デニムのシャツとジーパンを血でにじませていたが、小夜子の身体には、ダークパンサーを守ろうとして爆発を受けて出来た傷跡が痛々しく刻まれていた。小夜子はフルフェイスのヘルメットをかぶっていたので、顔にこそ傷はつかなかったが、爆発で受けたダメージでヘルメットは傷だらけになってしまい、服もズタズタになり、そこからかなり血が出てしまっていた。

 哲夫は小夜子の頭を動かさないように注意しながら、ウエストポーチに忍ばせておいた救急セットで小夜子の傷の手当てをしてやった。

「小夜ちゃん…こんなにひどい傷を負うのを覚悟で、君はお父さんたちや俺に協力しようとしていたのか。俺を助けようとしてこんなけがをしてしまった今、小夜ちゃんに俺が出来ることはなんだろう…」

 小夜子の傷の手当てをしながら、哲夫はしばらくの間必死に考え込んでいた。

 その時、

「ううっ…」

 と小夜子が、ヘルメットの中で目を開けた。

「気がついたか…しっかりしろ、小夜ちゃん!」、

「黒木さん、ごめんなさい…。でも皆を助けたかったから来てしまったの。かおりはどこにいるの?会ったの?」

「ムチャするなって言ったのに、どうしてここに来たんだ君は!かおりちゃんなら一郎と竜治と一緒だったが…」

「皆を助けたいからに決まっているでしょ!だからダークパンサーをかばったんだから。死んで欲しくないもん!ものすごい音がしたから夢中で正面玄関に回ったら、ダークパンサーがメタメタにされていて、見ていられなかったんだからね!」

 小夜子はむきになって哲夫に言った。

「黒木さんがダークパンサーなのかはどうでもいいことだけど、一人だけで戦おうなんてそれもムチャよ!私だって命をかける覚悟でいるから、ダークパンサーを助けようとしたんだから」

「もっと危険な目に遭うかも知れないぞ。それでも大丈夫なのか」

「そんなの覚悟しているわ、本当に悪い奴らと戦うためならば」

「こんなケガをしても殺し屋に立ち向かうつもりだなんて…それじゃ命がいくらあっても足りないぞ」

 哲夫はそう言って、デニムシャツのポケットから黒光りするものを取り出し、それを小夜子の左腕につけてやった。デニムシャツの袖口から哲夫のシャドーアクセプターがほんの少し光を見せる。

「えっ!まさか…」

「本当は君にはこれを渡したくなかった。命の保障のない戦いに君を巻き込みたくなかった。でも君には負けたよ、小夜ちゃん。そこまで言うなら君の言葉を信じようか、俺も」

 哲夫は優しく言った。そこまでして戦う決意があるのならば、小夜ちゃんの言葉を信じてみよう…小夜子の思いに触れ、哲夫は小夜子を信じてみようという気持ちになり始めていた。

「ひょっとしたら君は、俺がダークパンサーである事を見破っていたのかもしれないが、そんなことはもういいさ。ただしこれは、俺と小夜ちゃんだけの秘密だからな。このシャドーアクセプターのことも…約束だぞ」

「そうだったの。やっぱり…。でも私、だからこそ黒木さんを助けたかったの。ごめんなさい」

 小夜子はそう言って、涙を拭いてうなずいた。その時、

「小夜子!大丈夫か」

 と暁が駆け込んできた。

「君は…暁君じゃないか!」

「暁、どうしてここに!?」

 哲夫と小夜子が驚きの声を上げた。

「何か胸騒ぎがして、もしかしたら親父さんの追っている事件の絡みでここにいるかなと思ったんだ。でもそんなひどいけがしてまで戦おうだなんて。ムチャだぜ小夜子。あ、黒木さん…ごめんなさい。俺、今話してたの聞いてました」

 暁は小夜子に怒鳴った後、申し訳なさそうに哲夫に謝った。

「暁君、俺を助けてくれたのは小夜ちゃんだ。そのためにけがをしたんだ」

「えっ!ムチャしやがって…小夜子、そこまでしてお前は何を守りたいんだよ!」

「皆の笑顔。今はそれしか言えないわ」

 小夜子は言葉を選ぶように言った.

「母さんはその志半ばで地雷に体をバラバラにされて死んでしまった…。子供達の笑顔のためにとボランティアでカンボジアに行っていた時だった。今もこの町のどこかで悪い奴の為に泣いている人がいる…。皆の笑顔を守る為にお父さんだって頑張ってる。だから刑事の娘としてお父さんのために力になりたい。大好きなお父さんに殉職して欲しくないから。黒木さんはお父さんの友だちでもあるの。なぜ戦ってるかはわからないけど、きっと気持ちは私といっしょだと思う」

「小夜子、そこまで言うなら俺もお前を信じるぜ。ただ、黒木さんから悪い奴らと戦う力を託されたなら、戦いの中で死ぬなよ」

 暁はそう言って小夜子を抱きしめると、

「俺は…俺は…小夜子のことが好きだから。これからもずっと!」

 というのがやっとだった。

「わかった、絶対帰ってくるから。待ってて。暁」

 小夜子はしっかりとした口調で言った。

「黒木さん、小夜子の事頼みます。おてんば野郎だけど、心はとても優しいのは俺もよく知ってますから」

 暁はそう言って、めちゃくちゃになった正面玄関を後にした。その時、

「お姉ちゃん、助けて!」

 と哲夫のシャドーアクセプターを通して、かおりの悲鳴が響いた。

「かおり!…きっとまた、奴らに皆捕まっちゃったんだわ」

 小夜子は傷の痛みをこらえてゆっくり立ち上がった。すると、哲夫がシャツの袖をまくって歩きだそうとしていた。

「まさか…そんな身体で戦うなんてムチャよ。黒木さん」

 小夜子が止めようとすると、哲夫は、

「こんなケガ、なんてことはないさ。俺も行くぞ」

 と言った。そして、

「シャドースパーク!」

 と叫んで右腕を大きく回した後両腕をクロスさせ、シャドーアクセプターの黒のボタンを押した。

 するとシャドーアクセプターから黄色い光が放射され、シャドーアクセプターから光が溢れ出していった。さらにその光が哲夫の身体を凄まじいスピードでかけぬけていき、哲夫の体を繭の様に包むと、ダークパンサーの黒いシャドーテクターのパーツが足から上へと順に装着されていった。そして、哲夫の姿がダークパンサーに変わると、黄色い光は再びその体をかけぬけ、火花となって散っていった。

「かおりちゃんたちがどこにいるかは、大体の見当はついている。ここは俺に任せとけ!」

 哲夫はしっかりとした口調で言った。

「黒木さん、そんなに一人で頑張らないで。私も一緒に行く。皆の笑顔を守りたいから」

小夜子はそう言うと、

「シャドースパーク!」

と叫び、シャドーアクセプターの紫色のボタンを押した。

 すると、シャドーアクセプターから紫色の光が放たれ、小夜子の身体を包み込んだかと思うと、小夜子の体を強烈な輝きを持つ虹色の光がかけめぐっていった。そしてそれと共に小夜子の身体をシャドーテクターのパーツが、腕、脚、腰、胸、頭部の順に装着されていくと、紫色の光は小夜子の身体から弾けるようにして消えていき、小夜子の姿は、ジャガーを模した頭部を持つ紫色のシャドーテクターをつけた姿に変わっていた。

「これは…これが私のもう一つの姿なのね」

 小夜子はガラス越しに映った自分の姿に一瞬戸惑った。自分の今ひとつの姿がこのようになるとは、全く思っていなかったのだから。

その時ダークパンサーが、変身した小夜子に歩み寄ってきた。

「小夜ちゃん、約束できるか?決して中途半端に関わらない事を」

「黒木さん、これは皆の笑顔を守る為に私が選んだ道だから、私を信じて下さい」

「わかった」

 小夜子の言葉に哲夫がうなずき、二人は走り出した。


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