巨悪
それから一夜が明け、一郎と誠が入院している病室を哲夫が訪ねてきた。
「二人とも危ないところだったな、でも助かってよかった」
哲夫がほっとしたように言った。
「哲ちゃん、どうしてこんなところにいるんだ?」
誠が怪訝そうに言った。一郎も、
「俺たちがあの連中に襲われて意識をなくす前に聞いた声も、なんか哲ちゃんっぽかったのになぁ」
と不思議そうに言った。余りに哲夫とダークパンサーの声が似ていた為に、誠も一郎も不思議な感じがしたのである。
「いいんだよ、そんなことは。そうだ、一郎これを渡しておくよ」
哲夫はそう言って、黒のアタッシュケースから青い色の封筒を取り出し、一郎に渡すと出口へ歩き出した。
「哲ちゃん、どこに行くんだ」
誠が聞くと、哲夫は、
「小夜ちゃんの様子を見てくる」
と言って誠たちのいる病室を出て行った。
小夜子は辛うじて一命をとりとめたものの、大事をとって病棟の個室に入れられていた。哲夫が部屋に入ると、小夜子は包帯だらけの痛々しい姿でベッドに横たわっていた。
「小夜ちゃん、大丈夫か」
哲夫は優しく声をかけた。しかしその心の奥には小夜子をこんな目に遭わせた者たちへの怒りが静かに渦巻いていた。こんなかわいい女の子にひどいケガを負わせた奴の正体を絶対暴いてやると。
「うっ、ううっ、痛い!」
やがて小夜子は傷の痛みで目を覚ました。
「よかった。君のケガが一番ひどいと聞いて心配して来たんだよ」
哲夫はほっとした様に言った。
「黒木さん、どうしてここへ?」
「君のお父さんとおじさんに渡したい物があってね」
哲夫はそう言って小夜子のベッドの元へ歩み寄り、彼女の手をしっかりと握ってやった。
「黒木さん…」
小夜子が悲しそうにつぶやく。
「君たち家族を殺そうとし、君にそれだけのけがを負わせたのは誰なんだい?」
「背後から狙われたからわからない。おじさんを狙っていたみたいだけど、なぜなのかわからない。おじさんに動いてもらっちゃ困るって言っていたけど」
小夜子が言った。その声と体は昨夜の恐怖を思い出したせいか、かすかに震えていた。
「そうか。いよいよ見えない悪が動き出したと言うわけか」
「えっ、見えない悪が動き出したですって?」
「かおりちゃんからその後連絡はあるかい?」
「ないわ、全くない」
「何かとんでもない悪の陰謀に君たちは巻き込まれてしまったようだな」
「黒木さん、どういうこと?それにダークパンサーは何者なの?」
小夜子は必死に問い詰めた。小夜子もまた、ダークパンサーの声を薄らいでゆく意識の中で聞いていたのだ。
「教えて!私たちを助けてくれたダークパンサーが何者なのか」
哲夫は首を横に振った後こう言った。
「今は明かすことは出来ない。でも彼は巨悪と戦い続けているんだ。闇の中でうごめく悪と戦っているんだ」
「わかったわ。でも、とんでもない悪の陰謀って何なの?」
「落ち着け、傷に響くぞ」
哲夫は優しく諭し、小夜子に布団をかけてやった。そして、少し息を整えてから、静かに言った。
「辛い事を聞かせてしまうが、実はかおりちゃんは、君たちを襲った連中に誘拐された可能性があるんだ」
「なんですって!なぜかおりがそんな目に!」
小夜子はそういうと、うつむいてそっと涙をぬぐった。かおりを助けようとして力尽き、瀕死の重傷を追っていた事を後でドクターから知らされながら、小夜子はかおりのことが気になってどうしようもなかった。誘拐されているかもしれない。その現実を知った小夜子は、ベッドでじっとしていなくてはいけない今の自分がもどかしかった。
「辛いことを聞かせてしまって申し訳ない。でも同じような事件が最近連続して起きているんだ。それに巻き込まれているのは警察関係者や新聞記者、ジャーナリストがほとんどで、何人か殺された者もいるんだ」
「えっ?そんな事が」
「しかもその事件は、決まって東光大学病院での一連の事件と重なるようにして、起こっているんだ」
「じゃ、どうして私たちが皆揃って奴らに?」
「おそらくマスコミと警察にプレッシャーをかけるのが目的だと思う。奴らの実体がつかめていないから、今のところはこれだけしか言えないが、俺は一連の事件に奴らが絡んでいると思う」
「新薬の臨床試験か何かで、何人か患者が亡くなっているのは私も知っているわ。それに奴らが絡んでいる可能性があるというのね」
「ああ」
「でも、なぜそんなことを。許せない!絶対に私も真相を探ってやるわ。それにかおりを絶対助けなくちゃ。ひどいことしていたらただじゃおかないんだから」
小夜子は静かに怒りを込めて言った。なぜこんな事になったのか今はわからないけど、かおりが誘拐されたかもしれない上に、その裏に恐ろしい陰謀が隠れているのなら、真実を知りたい。小夜子はそう思っていた。
「そんなことをしたら、君の命が危なくなる。奴らの実体がわからない中でむちゃはするな。何をしてくるかわからないんだぞ、奴らは」
「だって、そんなこと言ったって」
「奴らの陰謀はダークパンサーがつぶす。大丈夫だ」
反論しようとした小夜子に、哲夫は力強く言った。
「わかったわ」
「ごめんな。とにかく今はゆっくり体を休めることだけを考えるんだ。お父さんたちが元気になるまでのことは俺に任せろ。悪いようにはしないから」
「怖いわ、私。また何かあったら」
「大丈夫、君がちゃんと眠りにつくまで俺がいてやるから。ゆっくりお休み」
哲夫はそう言って、小夜子の右手を再び軽く両手で握ってやった。
「ありがとう」
小夜子は安心したのか、ふっと息をつくと軽く目を閉じた。
哲夫は小夜子のその様子を見て、小夜子たちを危険な目に遭わせかおりを奪った「見えない巨悪」に対し、激しい怒りを燃やしていた。
「なぜ奴らは、平和に暮らしている小夜ちゃんたちをこんな目に。何の目的でこんなことを。俺は奴らを決して許さない!」
そして哲夫は、窓の外を見つめながら、ふと腕時計型の黒光りするメカを目にやると、悲しそうにつぶやいた。
「出来ることならもうこの力は使いたくなかった。でも最近の一連の事件で奴らの陰謀のためにたくさんの人が死んでいるのを知った以上、俺が奴らと戦わないと犠牲者がますます増えるだけだ。この力を今自分の意思で使えるのは俺だけなんだから。まして小夜ちゃん、誠、一郎を助けるために、俺は自分で封印を解いてしまったんだ。俺はもう一度、闇の仕置人・ダークパンサーに戻らなければいけなくなってしまったな」
その時、小夜子の頭が小さくコトンと動いた。
「もう大丈夫だな」
哲夫は、小夜子が完全に眠りに落ちたことを確かめ、もう一度、
「小夜ちゃん、いい夢を見るんだぞ」
とスヤスヤと眠っている小夜子にささやいた。そして、左腕についている黒光りするメカを見つめながら、自分自身にしっかりと誓ったのだった。
「どんなことがあっても奴らの陰謀は絶対に叩き潰す。奴らと戦えるのは俺しかいないんだから。今は」
哲夫は小夜子の眠る病室を出て病院を出ると、自分のブラックボディのゼファーで家路に着いた。その上で夜空は哲夫の思いを映すが如く悲しくきらめいていた。
ダークパンサー、それは哲夫の今ひとつの姿である。
二十年程前、哲夫は警視庁の特別捜査チーム・アルファスターのメンバーだった。
アルファスターとは、凶悪化してくる犯罪やテロなどに対処するために特殊な訓練を受けた警視庁の犯罪捜査のプロフェッショナル集団である。哲夫はその行動班・チームZATTのリーダーで、仲間の四人の刑事と犯罪捜査にあたっていた。哲夫とその四人には特殊な強化アーマー・メタルサイバースーツが渡されており、いざとなればそれを装着して捜査のスピードアップを図っていたのである。小夜子の父・誠もアルファスターのメンバーで、哲夫たちの活動を後方支援していたことがあるのだ。
ところが、十五年前東京で起こったテロ事件の際、ZATTのメンバー二人はテログループの凶弾に倒れ殉職してしまい、生き残ったのは哲夫と誠、そして後の小夜子の母・美咲だけになってしまった。更に哲夫は、アルファスターに技術協力をしていた黒木重工の社長でもある父・健一を、その事件のあおりで目の前で失ってしまう。優秀な技術者だった健一は、城北学院大の海堂博士とメタルサイバースーツを共同開発していたのだが、その開発技術がテロ組織・ザインバックの標的になってしまったのである。だが、命と引き換えにメタルサイバースーツのデータを守り抜いた健一は、息子である哲夫にメタルサイバースーツの改良型であるメタルアーマー・シャドーテクターと、その設計データを死の間際に託したのである。
その後、父の死の真相を誠たちと調べた哲夫は、ザインバックの黒幕にある大物政治家がいることを突き止めるのだが、その捜査に携わっていくうちに上層部から圧力をかけられ、逮捕寸前のところで捜査を一方的に打ち切られてしまう。
哲夫はそのやり方に納得がいかず、アルファスターのチーフを通して捜査続行を願い出るが、上層部は聞き入れようとはしなかった。哲夫はそのことがきっかけで警察の捜査能力の限界を感じ取り、自分で社会の悪と戦う決意を固め、警視庁を辞めた後に東西新聞社に転職したのだが、誠や同僚の刑事たちには、警視庁を辞める際に一言も理由を話していなかったのである。
そして新聞記者の仕事を利用して、銀行の不正融資の実態を暴いたり、子供を虐待する養護施設の真実を暴いたりという形などで、社会の悪と戦ってきたのだが、その悪人どもを懲らしめる時に、父から託された黒の腕時計状のシャドーテクターのシステムメカ・シャドーアクセプターを起動し、黒豹をモチーフにしたアーマーを装着。闇の仕置人・ダークパンサーとなって、夜ごと現れては悪人どもを懲らしめていたのである。
小夜子たちを見舞った後に白金高輪にある自宅のマンションに戻った哲夫は、シャワーを浴びた後、自分のノートパソコンに向かい、いつもの通り記事をまとめていた。
その時机の上の電話が鳴った。哲夫はおもむろに受話器を取ると、
「もしもし、黒木です」
といつもの調子で呼びかけた。すると、
「黒木じゃないか。どうしたんだ。ったく、何度かけてもいないから心配したぜ!もう」
と、大学時代からの親友であるカメラマン、黒沢竜治の声が返ってきた。
「いやぁ、悪い。ちょっといろいろあってね」
哲夫はそう言って頭をかいた後に、
「実は東光大学病院の事件のことなのだが」
と続けた。
「ああ、そのことか。どうしたんだ」
「誠と一郎と小夜ちゃんのところに行ってきた。三人とも元気だったが、まだもう少し退院まで時間がかかるらしい」
「そうか、全くひどいことをしやがるぜ」
「奴らの実体がよくわからないから何とも言えないが、俺は、奴らの狙いは、東光大学病院の事件のことで警察とマスコミにプレッシャーをかけることじゃないかと思うんだ。
「ということは、誠たちや一郎が知らないところで、とんでもない巨大な悪が動いている可能性があるんだな」
「いや、奴らは一郎に動かれると困ると言っていたらしい」
「なんだって!」
「小夜ちゃんから聞いたんだ」
「そうか」
哲夫からこれまでのことを知らされ、竜治は心配そうにつぶやいた。
「黒木、ずっと事件を追っていくのか」
「もちろんさ」
「俺に何か手伝えることがあれば言ってくれよな」
「ああ」
哲夫はまかせとけという感じでうなずいた。
「じゃあな、奴らには用心したほうがいいぜ」
竜治はそう言って電話を切った。
哲夫は、受話器をゆっくり置くとふっとため息をつき、そばにあった缶コーヒーを一気に飲み干した。そして再びノートパソコンで丁寧に記事をまとめ上げていった。
「奴ら…絶対俺は許さない!誠の家族まで巻き込むなんて。絶対陰謀を暴いてやる!」
哲夫は、右腕に光るシャドーアクセプターを見つめながらつぶやいた。
それから十日が過ぎた。小夜子たちは日赤医療センターに入院していた。
「かおりを助け出す方法を考えなくちゃなぁ」
誠は、父としてかおりを助けられなかった責任を感じていた。
「でも、お前が下手に動くとまずいぜ。父親だから責任を感じるのもわかるが、奴らの実体がまだつかめていない以上、うかつに動くと奴らを刺激することになる」
一郎が落ち着いた口調で言った。と、その時、
「お父さん、おじさん、大丈夫?」
と隣の病室から小夜子が入ってきた。
「小夜子……お前こそ大丈夫なのか?」
「まだ手術の跡が少し痛いけど平気よ!そういえば、今日のニュース見た? 気になることがあったんだけど」
「気になること?」
「東光大学病院で亡くなった人たちは、皆同じ会社の薬を投与されてから十時間後に亡くなっているの。そういえば、お父さんとおじさんのところに黒木さんは来たのかしら」
「哲ちゃんならお父さんたちのところにも来たけど」
「うん、それで黒木さんが教えてくれたことがあるのだけど、一連の事件と同じ時期に重なるようにして、何人か刑事さんや新聞記者、ジャーナリストが殺されているんだって」
「なんだって!」
「奴らの狙いは俺たちだけじゃなかったというわけか…」
誠と一郎は驚いたように顔を見合わせた。
「困ったなぁ、これじゃ思うように仕事も出来ないじゃないか」
「おじさん、それなら私にまかしといて!」
「まさか小夜子、一人で事件を探るつもりなのか。まだ抜糸してなかったら何かあったら大変なことになるんだぞ」
「もう抜糸しちゃったし、明日退院だもん!」
「お前は本当にタフな娘だな。お父さんも負けそうだよ」
「そういうけど、俺たちだってあさって退院だろう?」
「それなら話は早いじゃん、三人でいろいろ調べてみようよ」
「哲ちゃんも協力してくれるって言っていたしね。…かおりから何も連絡がないのが気になるけど」
「そういえば黒木さんが、かおりは奴らに誘拐されているかもって言っていたわ」
「えっ?」
小夜子の言葉に、一郎が声を荒げた。
「それなら余計に早く何とかしなくちゃ!」
翌日小夜子は、家に一足早く戻ると哲夫の携帯電話の番号をプッシュした。
「もしもし、黒木です」
数回の呼び出し音の後、哲夫の声がすぐに入ってきた。
「黒田です。小夜子ですけど、今病院から戻りました」
小夜子が呼びかけた。
「小夜ちゃんか…。もうケガの具合は大丈夫かい?」
哲夫が小夜子の体の傷を気づかって声をかけた。
「ええ、父もおじさんも明日退院します」
「よかった。ところで、今日のニュース見たかい?」
「はい、それで気になることがあるんですけど、黒木さんの方でちょっと調べてもらえますか?」
「どういうことかな」
「例の事件ですけど、東光大学病院で亡くなった人は皆同じ会社の薬を投与されてから十時間後に亡くなっていると報道されていたんです。その薬を出している会社と薬の名前や種類を調べることは出来るかしら」
「ずいぶん細かいな。さては小夜ちゃんなりに何か感づいたのか」
「だって、ニュースだとその薬は抗がん剤と言っていたけど、普通抗がん剤でなんかそう簡単に人は死なないはずですよね。確かにあんまり大量投与すると生命に危険が及ぶ可能性があるといったって、お医者さんがうまく処方すればほとんど安全なんだから」
「なるほど、抗がん剤と言うことで出している薬の中身に裏があると見たのかな」
「ええ、なんか変な感じがするんですよ」
「よし、そういうことならまかしとけ!俺の職場でもそれを調べようとしていたところだったんだ。……ところで小夜ちゃんはどうするんだ、これから」
「かおりのことを探しに行くつもりです」
小夜子は言った。が、
「まだ下手にあちこち動き回るのはやめておくんだ」
と哲夫が言った。
「えっ?」
「小夜ちゃんが入院していた間に、俺の方でも手を尽くしていろいろ調べたが、君たちを襲った奴らの実体が未だにわからないんだ。かおりちゃんからもまだ連絡がないから、誘拐と見て間違いない」
「なんですって!」
「奴らの目的が、本当に一連の事件のことでマスコミと警察にプレッシャーをかけることだったとしたら、俺たちの行動が奴らに監視されている可能性も十分にあるぞ」
「冗談じゃないわ。かおりがわけもわからずひどい目に逢っているかもしれないのに!」
小夜子は怒りにまかせてまくしたてた。
「小夜ちゃん、落ち着くんだ。君の気持ちはよくわかる。だけど、今下手に動いたら君は殺されるかもしれないんだぞ」
「でも……」
小夜子は口ごもった。
「明日お父さんとおじさんが戻るのなら、それから動いたほうがいい。俺も出来る限り力になるから」
「わかったわ」
小夜子は少し悲しそうに言った。
「今日はゆっくり休むんだ、またね」
哲夫はそう言って電話を切った。
小夜子は受話器を置くと声を上げて泣いた。哲夫の優しさは嬉しかったのだが、かおりを誘拐された現実を知りながら、何も出来ない今の自分がたまらなく悲しかった。
しばらく思い切り泣いてから涙を拭いた小夜子は、自分の白いバンディットに乗り、亡き母・美咲との思い出の場所に向かった。
一方哲夫は、取材の為に東光大学病院の入り口にいた。もちろんニュースで報道された、薬の疑惑の真相を探るためである。と、その時、
「哲夫、大変だ!」
と俊一と竜治が駆け込んできた。
「二人ともどうしたんだ」
「何者かに病院の薬局と薬剤室がめちゃくちゃにされたらしい。俺も念のために中に入って写真をとったが、ひどい状態だった」
「ちくしょう、これじゃ薬の疑惑の解明がぜんぜん進まないぜ。ところで哲夫、さっき病院の受付に変なファックスが届いていたらしい。ちょっとこれを見てくれないか」
俊一がそう言って一枚の紙を見せた。
「警視庁関係者、新聞・テレビ・ラジオ・雑誌社等のマスコミ関係者に告ぐ。
東光大学病院で起きている事件の報道や捜査をこれ以上続けると、新たな犠牲者が出ることになるであろう」
ファックスの内容はこれだけだった。哲夫は、
「奴ら、ついに宣戦布告してきたか。ふざけやがって!」
と怒鳴った。それを聞いた俊一は、
「宣戦布告だって?」
と聞き返した。
「今は奴らの実態がよくわからないけど、実は一郎とその弟の家族が奴らに襲われたんですよ。幸い一郎とその弟は助かったんですが、彼のお嬢さんが、奴らに誘拐されてしまったんだ」
「何だって!一郎の弟と言ったら、警視庁の黒田警部のことか」
「警部にはお嬢さんが二人いるのだけど、高校二年生のかおりちゃんが奴らに誘拐されていて、お姉さんの小夜子ちゃんが重傷を追って、今日まで入院していたんだ」
「ふざけた野郎だぜ。何の目的でこんな真似を」
「こんな脅しに負けてたまるか!絶対奴らの企みは阻止してやろうぜ」
「真実を伝えるのが、俺たちの使命だからな」
「ああ、俺たちと一郎と誠だけでも真相を暴いてやろうぜ」
竜治と俊一、そして哲夫は、意を決するように取材に入っていった。三人のその目にはジャーナリストとして、この事件の真相を突き止めたい真剣な思いがあふれていた。




