復讐の炎
「おやすみアカリ」
焚き火を消したライセは彼女の赤髪を撫でる。立ち上がると暗闇を差す金の光の方へ、向かっていく。
月明かりは森から出ていく復讐者に気がついていた。だが、城の見張りはどうだろう。昼間から気を張って警戒していた彼らは、首を起こすので精一杯。鎧兜の下ならバレまいと、寝ている者もいた。
ライセにとって彼らを殺すのはもはや時間の無駄。だから彼は各個撃破をしない。昼間言ったことを実行するのみ。
「復讐の才。ほんと、復讐のためなら俺に必要な力をくれるんだな」
ライセは両手を金の城に向ける。放たれたのは黒炎の柱が2本。それは大蛇のように地を這って、城の周囲を取り込んでいく。
熱さでそれに気が付いた騎士たちはもう手遅れ。溶ける鎧は鉄の液体となって、それを身に着ける騎士たちに張り付く。溶岩の服を着ているのと同じである。
騎士たちは悲鳴さえ上げられず、鎧と共に液体になり、黒炎に吸収される。
騎士たちを食べ尽くした炎は次に城を飲みこんでいく。しかしそれは金の城。普通に考えれば溶けるはずもないが、ライセは笑っていた。
自分が両手を向け続ける限り燃える炎に。自分が憎めば憎むほど溶けていく全てに。彼は笑っていたのだ。
黒炎の中で金の城はチョコレートのように容易く、ドロドロと溶け始めた。
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