黄金の城
────首長舎 金城の間
ドアが開いた音で、玉座の金城は背中をはねて驚いた。それが騎士だったのを確認すると王冠を整えて、咳ばらいをする。
「金城様、申し上げます」
「殺したか?」
「・・・上級騎士並びに、討伐隊の騎士全員と連絡が途絶えました」
「・・・・・・駐屯兵は!?」
「それが交代に行ったはずの兵も戻って来ません」
「し! 城の周りを固めろ!」
「承知いたしました!」
「1歩もだ。1歩たりとも入れさせるな!」
ライセたちは街の騎士をすでに全滅させていた。あとは目の前の首長舎の中にいる騎士たちと、金城のみ。彼らを殺せばこの街は滅ぶ。ライセはそう考えている。
目的達成がすぐ目の前に迫っているライセだが、アカリと供に城近くの森で足踏みしていた。
「本当に黄金の城なのか……」
「すごい綺麗だよね!」
子供の目にはそう映った城だが、ライセの目は鋭さを増していた。自分たちが貧しかったわけを、自分たちに渡るはずだった物を目にしたからだ。ライセの憎しみは城そのものに向いていた。
「あの城──燃やしても良いかな?」
それはライセに懐いていたアカリですら、一歩引いてしまう言葉と声。常にライセを肯定し、応援してきたアカリも彼に恐怖を感じたかもしれない。
「ら、ライセお兄ちゃんはお城が嫌──」
「好きだよ。好きだけど、憎いじゃないか」
「お兄ちゃん・・・」
「だってあれを見ると頑張って生きてきた僕たちが、馬鹿みたいだろう?あれは残しちゃいけない。あの金の城は貧しい僕たちを映す、苦しみの鏡なんだから」
アカリが大人なら少しはライセを落ち着かせられただろうか。さっきまで彼女が繋いでいたライセの手は、黒い炎が握りしめられていた。