錬金術師の家
「・・・土の上、じゃない」
ライセは木のベッドの上で目を覚ました。部屋の中は生活感が散らかっている。本棚、衣類、飲みかけのマグカップ。つい先日まで住民がいたようである。警戒したライセだが、とある本を手に取ってから深呼吸して落ち着いた。
そして来るのを知っていたように、入って来たアカリと挨拶を交わす。
「その本、読めるの?」
「いや、全然わかんない。でも、錬金術の本ってことはわかる」
「私ね、賢者の石を作りたい」
「・・・アカリならできるよ」
「そうだ。お兄ちゃんにご飯作ったよ!」
「え? アカリが?」
「料理と錬金術は同じだから、できるよ!」
アカリの笑みとその言葉に嫌な予感を抱きながら、部屋を出るとぐつぐつと煮える鍋があった。やっぱりかと、ため息をついたライセは焦げ臭い匂いにむせた。
「前よりは上手になったと思うけど、また爆発しちゃった」
「次は僕も手伝うよ。料理ならできるから」
「わーい! ありがとう!」
何かあっても復讐の才で治癒できるだろう。意気込んでスープを食べたがもはや、なんの味かは分からなかった。
「・・・幸い無味だ」
「お兄ちゃん、もう死なないでよ」
「──え?」
「斧で刺された時!」
「ああ、あれは・・・スキルが発動しなかった」
「復讐の才?」
「多分、僕の復讐心が足りなかったんだ」
「だから、剣が作れなかったの?」
「だと思う。復讐心を思い出したら、才が発動したからね」
「・・・お兄ちゃん勝てるかな」
「か、勝てるよ。僕はもう家族を失わない」
つい、嬉し涙が出たアカリをライセは抱き寄せた。アカリを見ると彼の脳内で、かつての家族が浮かび上がる。
「まずは、この街を滅ぼそう」
「ま、街を!?」
「街の騎士と首長を全員滅ぼす」
「てことは、金城首長の城に行くんだね」
「アカリは街に詳しいんだね。僕、上級騎士も首長の名前も知らなかったよ」
「・・・お父さんとお母さんが、たまに王国とかの話をしてくれたから」
この子の親が殺されたのは自分のせいだと、ライセは認めていた。だから彼女の涙を見て苦しかった。でも、自分の口からは言えない。
「行こう。金城の城に」
「うん!」