復讐のはじまり
水の鏡に足を踏み入れると、温かい空気を感じた。腰、胸、顔。全てが鏡の中を通り抜けた後、目の前には真っ赤な広間が存在していた。これが王宮。ずっと目指していた復讐の終着点──そこには無数の騎士が並んでいた。槍と剣と盾。それらで俺達を包囲している。そしてジェーミャはアカリの喉に刃を当てて、拘束していた。
「あなたってほんと間抜けねライセ」
「ど、どういうことだジェーミャ」
「あなたを捕らえる。いや、始末するための作戦よ」
「・・・裏切ったのか!」
「裏切るも何も、王国の敵は私の敵よ!」
「力を使えばアカリを殺すのか」
「ええ。大人しくしていなさい」
「俺がアカリを見捨てないと思っているのか?」
「この劣勢で駆け引き?もういいわ。やっちゃいなさいお前たち」
ジェーミャの合図で兵士たちは前進する。ライセという1点を目指して金属音を奏でて進む。
全方位から刃で攻められたらさすがの復讐者もお手上げ。ましてや人質もいる。簡単に仕留めて捕縛できる。ジェーミャはそう考えていた。
──しかし、騎士たちがジェーミャの背後に来た時、揺れていた鎧の音が止んだ。次の瞬間、ぶすり。ぶすりと、ジェーミャの頭部を槍が貫いていく。アカリがその場から逃げ出すと、騎士たちはジェーミャの体にも槍を差し込んだ。そしてトドメに剣で滅多刺しにした。彼女は何もできず、何も知らないまま息絶えた。
「な、なんだ。どうなっている!? どうして騎士たちがジェーミャを?」
その問いに答えるように甲冑たちの中から、1人の騎士が現れた。両手には血に濡れたばかりの2本の剣。ライセはその姿に旅の始まりを思い出していた。
「・・・やっとだ。やっと見つけた。お前が俺たちの仇だ!」