寝返り
「王都へのワープ!?」
「しー! ライセってば声がデカい! なんのための小屋だと思ってんの!?」
「そのための小屋だったんだ」
3人は一旦呼吸を整えて、顔を合わせる。
「ワープって本当か?」
「ええ。北都と西都は王都へワープできる」
「・・・信じられない。そんな才があるのか」
「才じゃない。印よ」
「印? それって」ライセはアカリに視線を向けた。アカリは考え込んだ後、ハッと思い出してライセを見る。
「ワープの印は確かにパパとママから聞いたことがあるよ。でも、噂だと思ってた」
「もちろんそんな物広まったら大変だからね。殿下はすぐにそれを王国の私物にした」
「でも北都首長のジェーミャなら使える」
「そう。だから私を殺さなければ──」
「分かった。案内してくれ」
「良いわ。よろしくライセ」
ジェーミャは再び白い手を向ける。しかしやはりライセは握らなかった。
「勘違いするな。お前は仲間じゃない。というかお前はなぜ王国を売る?」
「あ~。それはね────紅ちゃんのことが嫌いだから」
「・・・そんなことでか?」
「だってサクラちゃん取られちゃったんだもん」
急にジェーミャが年相応の子供に見えた。いや、アカリよりも幼いかもしれない。でも、だからこそ信用できる部分もあるか。
ライセたちはジェーミャに案内されて北都の門をくぐった。吹雪は止まり、空は晴れていた。