秘密の小屋で
「ねえあなた、とっとと王都を滅ぼしに行かない?」
少女は白い手のひらをライセに晒す。ライセは刀を構えたまま動かない。
「ふふ、まるでゴンゾーの構えね」
「さっきの侍の名前?」
「そうよ。おチビちゃん」ジェーミャはアカリをそう呼んだ。そのやり取りを見てライセは刃を納めた。それを見た雪の精はライセに近づく。まるで誘惑するように。
「ゴンゾーとの戦いを見て思ったの。復讐者、いいえ、ライセには勝てないって」
「悪いが俺は才アリを全員殺す」
「・・・お兄ちゃん」
「だが、話しが出来るなら話しても良い」
ジェーミャは頭を下げると、雪の上に座り込んだ。ライセとアカリも顔を合わせた後、腰を下ろしてジェーミャと対話することにした。
「王宮には殿下・・・つまり紅ちゃんがいる」
「簡単に仲間を売るんだな」
「最もやっかいなのはサクラちゃ・・・王国最強騎士のサクラ」
「王国最強?」
「この2人こそライセの復讐相手」
「情報提供には感謝している。でも俺は才アリを全滅させる」
「私にも恨みが?」
「ない。だが!才アリは弟を奪った王国の一部だ。それだけで復讐の対象になる」
「・・・じゃあ、とっておきの交渉材料よ」
ジェーミャが人差し指を立てると吹雪が止んだ。次にその指で円を描くと、彼らの周囲を雪が渦巻く。すかさず両手に黒炎を宿したライセだが、その火力は徐々に弱まる。ライセが警戒した雪の渦は小さな小屋になったのだ。
「すごい。ジェーミャちゃんは雪を操るんだ」
「雪の才か?」
「それはまだ秘密」
「でも、とっておきの交渉材料が小屋とはな」
するとジェーミャは小声で「王都へワープさせてあげる」と、2人だけに告げた。