王国の変人
西都は王国の中で最も人権がある街とアカリはライセに話したが、アカリ自信もそれは半信半疑である。
彼らは知らないが都を任された騎士シュヴァインは、王国の才あり達から変わり者と呼ばれている。それはシュヴァインが才なしを才ありと同等に扱っているからだ。
そんな西都とはいえシュヴァインの目が届かぬ街、たとえばライセの生まれ故郷は他の王国と同じ状況であった。
「シュヴァイン様、失礼します」
城内の中にある鍛錬場へ騎士が数名入って来た。そこにいたのは白髪が混ざった男。しかしその体は筋肉で守られており、自身よりも大きい剣を振るう。体を見れば老いは感じない。
「双子が見つかりました」
騎士は彼の足元に2つの袋を置いた。シュヴァインはそれを見るなりすべてを理解して天に祈った。
「いくら才ありとはいえ、子供相手でも容赦なしか」
「すでに復讐者はこの西都に潜んでいるとの噂が・・・」
「どうせ狙いは私だろう」
「全兵士がシュヴァイン様の盾になります!!」
「ふ、頼もしい」
シュヴァインが手で合図すると、彼らは鎧の音を鳴らしながら鍛錬場から出て行った。
「復讐者・・・とはいえ人間だろう。一体何が君をそんな怪物にしてしまったのか、ぜひ聞いてみたいな」
大剣を置いたシュヴァインは城壁の前に立つ。その次の瞬間、目の前の城壁が吹っ飛んだ。城壁が石になり、粉になり、煙になった。
その煙の向こうには、黒いローブをまとった少年が立っていた。
見つかる覚悟はしていたのだろう。ライセは煙の中から歩いて彼に近づく。
「おじさん、どうやって壁壊したんだ?」
「殴っただけだ」
「痛いだろ?その手」
「君ほど汚れてはいないからね。ぐっすり眠れるよ」
黒炎を構えるライセに対して、シュヴァインは背を向けた。
「まあ、座りなさい。私は君と話がしたい」
「・・・な、なんだと?」
彼の背中を見て、ライセの黒炎がしぼんでいく。
1人くらいシュヴァインのような人がいてほしいなという願望