金髪の双子
双子が鞘から抜いたのは杖であった。持ち手は剣そのもだが、その先がライセから見れば木の棒だったので意表を突かれる。そしてライセはそれが何をする道具なのか知らなかった。
彼はいつものように剣を生成したがターゲットが定まっていない。双子のどちらを狙おうか、迷っていた──のではなく、間合いを取りつつ下がっていた。
無言のままのライセに対し、双子は交互に口を開いて距離を詰める。
「上級騎士殺しとか」
「首長殺しとか」
「とかなんとか言われてさ、」
「調子乗ってるだろうけど、」
「1対2で戦ったことあるの?」
ライセがこの戦いで自信を持てていなかったのはそれだった。才ありの敵を同時に複数相手にするのは、これが初めてである。
「ライセおにいちゃんの強さを見せてよ!」
「ほら!!」
双子が杖を振るうと2人の間合いに強風が発生した。風はライセに突進し、そのまま突き抜ける。とっさに剣で身を防いだが、次の瞬間剣は砕けていた。
「なるほど、これが魔術か」と、空になった手を見つめてライセがつぶやく。
「風の才か?」
「さあね」
双子の声に笑いがなかったことでライセはそれを確信した。そして、風の才が自分にとって恐怖でないことも。