当たりとハズレ
「お兄ちゃん・・・」
「アカリ、もしものときはいいね?」
「逃げないよ! お兄ちゃんは絶対勝つから!」
「ありがとう」
アカリを離したときライセの口から「今回はどうだろう」と、弱気な声がもれた。おそらく2人を相手にしなくてはいけない。そしてその2人はどちらも才ありのやつらだろうと、ライセは察していた。
その直感は正しい。しかし、彼もまさか自分より子供の少年に復讐の剣を向けるとは思ってもいなかった。それも双子の少年に。
「やっと出てきたね」
「なんだっけ? ライセおにいちゃん?」
「・・・どうして俺の名前を」
目の前の金髪の双子たちは顔を見合わせると、足元の大袋から丸を取り出した。その丸は彼らの頭より少し小さい。ライセはその丸に見覚えがあった。つい先ほど、一緒に遊ぶ約束をしたその子供の顔であった。
見開いたライセの瞳が彼らへ殺意を放つ。
「この国で腐ってるのは大人だけかと思ってた。でも違うんだな。お前ら才ありは子供であっても、才ありなんだ」
「何言ってんの?」
「そりゃそうでしょ?僕らは当たりなんだから」
「当たりってのは、才ありのことか」
「そう! そんでこいつらがみんなハズレ!」
少年が大袋をひっくり返す。中から出てきたのは見覚えのある丸ばかり。最悪の予想が的中したライセ。だが、覚悟ができていたから驚かない。ライセは最初の頭を見た時に、2人を殺すと決めていた。
「・・・まさか全員やったのか?」
「どうだっけ?」
「うーん。覚えてないよ」
笑いながら話す2人。ライセの両拳が硬く握りしめられる。黒い光が煙のように漏れ出ていた。
「お前らは当たりじゃない。お前らこそが外れだよ」
「それって、ライセおにいちゃんの才が僕より強いってこと?」
「わからない。でも──お前らが死なないと治らないハズレなのはわかった」
『アタリとハズレ』というタイトルでかつて似たような世界観の短編を(お試し版として)書いていました。この王国を象徴する言葉です。