表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/2

大海に落ちた一滴

 うぉぉおおおお!きっっっつ!!


…俺は今、産道を通っている。全身をきつく締め付けられ、数時間もの間動けないでいる。


 「うぐぐぐぐぐg…」母体が力み、苦しんでいる声が聞こえる。


 「▽〇◎!!×◇⊿!」助産師と思われる女性の声が聞こえる。

 母体を励ましているのだろう。俺のことも応援してくれ。かなりきつい。


 ──やっとの思いで外に出られた。日の光がまぶしい。


「□△…?×〇。」助産師の怪訝そうな声が聞こえる。


 あ、そうか。赤ん坊って生まれたときは大声で泣いてるもんだよな。

 泣かなくても息してれば良いとかどっかで聞いたような気もするが。

 あまりの痛みに涙こそ流れていたが、アラサーにもなると流石に簡単に声をあげて泣くことはない。


…しかしまあ、あまり信じられないが今は赤ん坊のようだし、一発盛大に泣いておくか。

 

 俺が渾身のオギャリを披露してやると助産師は安心したような口調で何かを言うと俺を母親の胸元へ移した。母親の腕が優しく俺を包む。


 目が慣れてきた。周りが見える。


 壁はなんか白い粘土みたいなもの(しっくい?っていうんだっけか)で塗り固められていてここはベッドの上。状況が状況だけに病院なのだろうが、どうにも現代的とは思えないな。


 言語もわからない国にいきなり産み落とされてしまった。その絶望感とやり直せるという一縷の望みが俺の中で渦巻いていた。




──五年後──


 あれから五年。俺はというと、実のところ特に不満はない人生を送れている。

最初こそ言語が理解できないという課題があったが、両親は当然といえばそうなのだが一つ一つ簡単な単語から意味が分かるように教えてくれたし、不思議と俺もすらすら理解できた。これが赤子ならではの吸収力というやつなのだろうな。


さて、現状を整理していくと、俺の住んでいる国の名前は「サラベイル公国」というらしく、この家は王都から少し離れた町、「シーカ」にあるらしい。今は新暦815年で王都建国からは119年らしい。

 

 完全に聞いたことのない国、言語、暦。さすがに学のない俺でもわかるが、ここは俺のいた世界ではないのだろう。つまり異世界だ!小説サイトで読み漁りまくったあの世界に俺は今転生したのだろう。

 そうなれば妙に西洋的な建築物も魔物が出るとかいう話も納得がいく。

 

 しかし、普通異世界転生ならなんかこう、すごい力を神様かなにかからもらえるんじゃないのか?



「レシュシテ!もう朝よ。顔を洗ったら食事にいらっしゃい。」


いつも通りの朝が来た。この世界での俺の名前はレシュシテという。なんとも言いにくい名前だがこの世界で名乗っていく名前だ。大切にしたい。


 俺を優しく起こしてくれたのは母親のレリア。父は冒険家のアルテュールで家名はロア。

 父の職業だけに収入はやや不安定だが冒険をしないときは専ら便利屋を営んでいてそれなりの生活ができている。


 食事はパンとミルク。パンは前の世界の食パンに色々と劣るようなレベルだがこれはこれで素朴な小麦の味がいけるし、ミルクは生暖かいがそれだけ新鮮というだけあって美味い。

 平凡だが温かく、俺も幼い体でできる限りの手伝いをしている。張りのある生活だ。


 「そろそろレシュも学校のことを考えても良い歳じゃないか?手伝いも良くしてくれるし何より駄々もこねないよくできた子だ。」父が頬張ったパンをミルクで流し込んでから言った。


 「うーん。そうね、レシュシテが行きたいと思うのなら行っていいんじゃないかしら。最近はお金に余裕もあるし、何よりいつ…まぁ、何があるかわからないからお勉強はしておくに越さないことだし。」食器を下げ、洗い桶に移しながら母は俺に視線を移す。


「学校ってどんなことが勉強できる場所なの?」


「お?興味があるか?そうだなぁ。父さんは学校へは通わなかったからわからんが、母さんは魔法学校へ通っていたんだ。」魔法か、流石異世界という感じだ。

「俺も良く怪我したときには治療してもらったものだワッハッハ!」


「んもう、お父さんったら。今はもう魔力も練れませんから無茶しては駄目ですよ?」

二人はいちゃいちゃと話し合っている。俺の質問はどこへやら。

両親とは言え、いちゃついているのを見ると恥ずかしいものがある。


「まぁ、」と父が本題を思い出し、話を戻す。


「他にもいくつか学校はあるぞ。なりたい自分があるのなら通ってみてもいいかもな。」


俺は学園生活もやり直したいと思っていた。学校へ通い、今度こそ充実した学園生活を楽しんでやる!


問題はどの学校へ行くかだ。父に学校に通いたいが、まずはどんな学校があるのか知りたいと伝えると、後日には王都のいくつかの学校へ連れて行ってくれた。地質学などが学べる学校、天文学を専門として数学的なことを学ぶ学校。歌や演奏、文学が学べる学校に金属加工や芸術が学べる学校。このあたりはまあ普通の学校といった感じだったが、ここからは異世界っぽさが出てきた。


 「で、ここが昨日話してた魔法学校だな。なんでも部外者は入れんとかで外からしか見れんが。」

 王都から離れた場所、小高い丘の上にあったその学校は、今までとは比較にならない大きさでパッと見ただけで今までと予算のかけ方が違う学校であることがわかった。


「んまあ、ここは受験つって難しいテストに合格しないと入学もできんと母さんが言ってたな。」

受験か。いい思い出がないな…


次に訪れたのは丘を下った先にある学校だった。やたらめったら広い土地だが施設はボロボロだ。


「ここは立派な戦士になるための歴史ある学校で戦術や武器の扱い方なんかを学べるぞ!父さんも昔はここに通いたかったんだが如何せん俺の家は貧乏だったんでな。」耳を澄ますと中からは激しい金属音や雄々しい声が聞こえてくる。音だけでも相当ハードな学校だとわかる。


 中には…入らなくていいか。


「これでだいたい全部回ったっけか。さて、レシュが通いたい学校はあったか?」


 俺としては自衛隊学校のようなハード学校に通うガッツはないし、何よりも魔法を体得してみたい。

「お父さん。僕、魔法を学びたいな。」


「そうか!じゃあ明日からは”受験勉強”ってやつを母さんとしような!」


 翌日からさっそく母の下で勉強を始めた。



 勉強したのは語学や数学、歴史や地学などいわゆる一般教養だった。

 どうやら母曰く、魔法を使うには魔力を練る必要があるのだが、それができるのはある程度成熟してかららしく、13歳未満の子供が受験をする際は魔法を使うに相応しい知力があるかを見るらしい。


 しかし常識が違うとはいえ五歳児が高度な学問を勉強しているというのは中々にシュールだ。

 学問の内容は中々に難しく、俺は何度も躓いたがそれでも母は一切それを責めず、俺のペースでゆっくりと色んなことを学ばせてくれた。父は息抜きに色々な場所に連れて行ってくれた。


 四年もの時間が流れた。俺が9歳を迎えて少しした春先の頃、ついに学べるだけを学び取った俺は受験の申し込みを済ませ、昼になると汗ばむような季節になったころ、会場へと向かった。


 「お子様の受験はこちらです!」 「一列に並んで!」


 用意された会場は筆記試験だけするとは到底思えない場所だった。


 なにせ思いっきり屋外だ。学校のグラウンドほどのだだっ広い平地に案内された。


 「それでは只今より、サラベイル国立魔法科学校の児童の部、第一試験を行います!」

 かしこまった服装の男が声を張り上げ、ざわめいていた子供たちの視線を集める。


 まさか、某試験みたいに試験官についていく試験とか言わないよな…


 「第一試験は…!」


 「友達作りです!」


 ………は?

気まぐれな執筆でお恥ずかしい限りですが、ゆっくりと書いていきますのでよろしく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ