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阿古屋貝の夢

作者: 瀬川なつこ

不可視の世界には、なにかある。

真っ黒な大黒様が、呵々と笑っておられる。

聖と邪と俗と…すべてが、まじりあっておる、へその緒がむず痒い頃の記憶

月が美しい宵の夜。

月の欠片の欲しい少年が、げこげこと蛙の鳴く水田のあぜ道を、夜の散歩。

影法師と遊んだり、鬼と舞ったり、電信柱の警官に挨拶したり、蛍とたわむれたり、

夜の住人になると、面白い事がいっぱいあります。

久遠の夏休み。


真夏の夢。

美しい阿古屋貝、桜貝、貝殻が、部屋に降ってきます。

螺鈿の煙管の煙をくゆらせる頃、マネキンが営業の終わったお店の中で踊っています。

美しい狐の青年が、鬼娘を求めて沼で泳いでいます。

蛍石が庭一杯にぎっしり撒かれています。

貝砂利水魚が水槽の中にあって、泡沫の泡を吐いています。


髑髏を燃やす夢を見たのだ。

己は、たしかに人を殺しました。

刺すときの感触、魚のはらわたを切り裂くような感覚を覚えています。

生臭い血の匂い。

丁度、子の刻を過ぎた頃でしょうか?

時計は逆さに廻り、入口の処の真っ黒な大黒様がけたけた嗤っていて、

たしかに世界の裏側に入り込んだ暗黒比丘尼です。


呪いの藁人形が、生暖かい風に吹かれている。

此処は雑司ヶ谷の鬼子母神。

夏の夜の風はなんとも形容しがたい生温いものである。

のっぺらぼうの女の子が母親と境内のぶらんこをしている。

火の玉がひょうひょう舞っている。

星々は落ちて、池の中で月ごと輝いている。

鬼子母神の柳が、夏の風に揺れている。

怪しげな物語。

忌まわし気な物語。

それが、ここにある。

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