呼吸の行方。
天井から空調の音。
うるさいでもなく、心地いいほどでもない。
今は眠る前。
暗くなった部屋を駆け回る。
私の呼吸とどちらが早い?
お茶をこぼしたことを思い出すと、静まる玄関のあたりで溜め息になり、言葉を交わせたことを思い出すと、肌触りのいい絨毯のうえで吐息になる。
部屋が暗くなっても、薄い混濁で想いを馳せる。
力を抜いて。
もうすぐ薄墨のベールが思考を包む。
力を抜いて、埋もれていって。
好きでもない化けの皮を脱いでいって。
空調の音が聴こえるけど、もう届かない。
体の圧迫は微熱に変わり、重力を溶かしていく。
放し飼いの犬のような、追いつけない息をして。
力を抜いて。
力が抜けて。
思い残しの楔が抜ける。
あとはゆっくり沈むだけ。