99.旅支度
「おかえりなさいませ、タクミ殿。」
「すみません、突然留守にしまして。」
「大丈夫ですよ。ギルドから聞いてますから。今回もお手柄でしたね、お疲れ様です。さ、中へどうぞ。」
「失礼します。」
「どうぞ、おかけ下さい。お呼びしたのは出張の行程についてですが、別行動とはいえお知らせするべきと思いましてお呼びしたのと、マジックミラーが届きましたので、こちらをお渡しします。」
「早かったですねぇ〜!」
「ええ、急がせましたからフフフフ」
こ、こわいよ。ブラックな表情がちょいちょい出てくるよな。
「では、行程を説明致します。こちらの地図をご覧下さい。まず、リッチモンドから流れる川を使ってヨークまで参りまして1日滞在してヨークからさらに南下し今度はノッティンガムという私共の領地でまた途中滞在、こちらは7日間滞在してその後また船で川を流れてトレント川の終着地点のスタッフォードという地域の端まで船で移動しまして、陸にてスタッフォード内を馬車で3時間ほど移動し、新たに船を変えて今度はザマゼットへ向かうための乗り場からチャーターした船で南下し、川から一度海に出て遠回りになりますがザマゼットにつながる川に入り、そのままザマゼットへと向かいます。日数としましてはヨークまでで最短3日で到着し、1日滞在してノッティンガムへ出発して5日の船移動をし7日滞在した後そこからトレント川を使ってスタッフォードのブルウッドまで4日かけて行きそこで船を降り馬車移動してグロスターに繋がる川から船を乗り継ぎ海に出てブリストルを経由して16日間かけてバースへ参ります。こちらは通常の船に乗り換えますので早さが一気に落ちてしまうのが残念です。ざっくりとですが36日から40日程で到着予定です。その後は当分先の話になりますがこちらで滞在して時期を見て王都へと向かいます。こちらも川移動のみでザマゼットから王都へはだいたい7日程で到着の予定です。この時はご同行頂いた方がよろしいかと思います。何かご質問はございますか?」
「俺達は何時頃到着しているべきですか?ギルドの依頼を追加で受けることになったので、寄り道する予定が増えたんです。」
「そうですね。ダンジョンに入られるのであれば、早めに越したことはありませんが我らが到着後にダンジョンに入られるのであれば40日後位でダンジョンに先に潜られるのであればそうですね・・・10日ほどは早く到着されるのが良いかと思われます。」
「わかりました。では20日後のヘンリーさん達と同じ日に俺たちも別ルートですが出発します。」
「かしこまりました。では40日後にギルドホールの向かいにありますバースの役所をお訪ねください。そちらにて到着をお待ち頂くかもしくは私共が仕事をしておりますので受付に来ていただければわかるようにしておきます。」
「はい。もしその日に俺が来なかったらダンジョンにいるか何かあったかと思って下さい。」
「そうですね。ダンジョンの入り口では誰が入っているか受付を行いますのでそこに確認に参ります。」
「はい。よろしくお願いします。」
「もし仮に私共がどこかで足止めにあうような事があれば申し訳ないですが屋敷の者に連絡を入れますのでマーガレットさんに伝言しても構いませんか?」
「そうですね。マーガレットさんにも伝えておきます。」
「ではよろしくお願い致します。我々が到着してからは滞在場所は同じ宿屋をおさえるつもりですがよろしいですか?」
「はあ、ご迷惑では?」
「何をおっしゃいますか!そんな訳があるはずないでしょう。そんな水くさいことを言わないでください。タクミ殿は気を使い過ぎです。もっと図々しくして下さい。」
「図々しく・・・ですか。ははは。十分、図々しくしてますよ。」
「本当に貴方という人は困ったものです。こちらの恩返しが一向に減らないではないですか。」
「そんな事はないですよぉ〜。」
「まぁ、いいでしょう。ザマゼットでまた何かお返し致しますからね。それでは私の用事は以上です。これから忙しくなりますね。タクミ殿。」
「そうですね。さっそくマーガレットさんに色々と相談もしないといけませんね。お店の建設もあるのでそちらも同時進行してって考えると、俺はちょこちょこ転移でこちらに戻ってきたりもすると思いますが、基本はザマゼットでの滞在になると思います。」
「そうそう、お店の建築はタクミ殿がなさるんですか?」
「はい、そのつもりです。内装は任せるつもりですが経費削減で建材など選んで俺が作ろうかと思いますが建物が大きいので、職人さんにお願いするときっとお城を建てるようなペニーの額になってしまいますから俺が建てるつもりです。」
「それは楽しみですね。また、ドーム型にするのですか?」
「いえ、今回は一部4階建ての煉瓦造りの建物を考えています。煉瓦なら俺の土魔法をアレンジして作れるので、それを組み合わせて強度の強いマーニン島で入れていたようなガラスをはめ込んで光を沢山取り入れたお店と住居を作ろうと思ってます。」
「通常ですととても高価な材料ばかりで職人に頼めば恐ろしい額になりますがタクミ殿が作るならば材料費や人件費はそれほどかからないのでしょうね。これは今から完成が楽しみです。」
「その為にもこの旅は俺にとって重要になります。商品の材料になる物や職人さんに発注してトイレやお風呂も作ろうと思ってますから。」
「おや?あのお風呂やトイレは最高なのにタクミ殿が作られないのですか?」
「俺の自作商品と窯業の職人さんにもいくつか作ってもらおうと思っています。いろんな製品がある方が良いと思いますし、あとは水洗にしたいので今の木製の座椅子型便座ではない物、あの、マーニン島にあったトイレのような物を作って浄化槽で処理できるようにし、一般普及させるために俺が寿命でいなくなっても誰でも作れるように他の職人さんにも仕事を回そうと思いまして。」
「素晴らしいお考えですね。
まあ、タクミ殿やエリザベス様が現役であれば特許状の独占販売の許可がありますから、他の物は取り扱いができませんので商売としては問題ないかと思いますが一応念のために専売契約を結んでおくべきかと思います。」
「わかりました。あとはテントの為の布ですよね。ダンジョンで良いものを手に入れてテント職人さんに作ってもらい、そのあと俺の付与魔法をかけて内装作りをお願いしないといけませんから、内装は誰にお願いしたら良いんだろ?なんか商品化する物やら建物やらやる事が山積みでまいっちゃいますね。」
「テントの内装につきましてはタクミ殿のキッチンストーブや簡易キッチンやベッド、お風呂、トイレなどを付けたものはいかがですか?ベッド以外は全てタクミ殿のところの商品でまかなえますよね?」
「そうですね。問題は配置とかなんですけど俺のセンスでやってしまうのはいかがなものかと。」
「それではセット売りはせずにバラ売りで良いのではないですか?組み合わせは購入者にしてもらえば良いのですし、それにかなり高額になりますから。展示の時にはタクミ殿やマーガレットさんが配置すれば良いと思われますよ。どの道、高額商品は染色したり紋章を入れたりされるのですよね?」
「はい、そのつもりです。」
「でしたらその際にセット売りも可能ですよ。多少お勉強しますよってお勧めすれば良いのではないですか?それだけ高価な品を買う方ですからきっと配置などや内装はご自分達でなさりたい方でしょうから。」
「そうですか。じゃあとにかくテントを作る事を頭に入れておきますよ。」
「お店ができたらさっそく私、購入に参りますから!お風呂とトイレとテント!ああ、楽しみです!」
「あと、料理屋も作る予定です。それからポーションの販売もしようと思ってます。」
「なんと?!これは大行列になる事間違いなしですね!
ますます、エリザベス様が"王都にも店を出しなさい!"
と言いかねませんねぇ。」
「どうでしょうか?そんな大した店ではないですがご期待に添えるように頑張って仕事します。」
「あ、あと話は変わりますが明日の朝はまた"水浴びを手伝わせてくれ!"とヘンリー様より伝言を預かっております。」
「そういえばヘンリーさんは?」
「はい、ただいま奥様と共に旅用のお洋服の採寸を行なっております。」
「ああ、貴族は大変ですねぇ。」
「今まで貴族として生きていますからこれが普通なのですよ。タクミ殿も王都に行かれるのですからザマゼットで採寸とお洋服の新調をしますからそのおつもりでいて下さいね。
ダンス着も必要ですねぇ。ムフフフフフ」
「・・・は、はい。」
「グリ殿にも蝶ネクタイをご用意いたしますから。」
「な、なに?!我もか?!」
「はい、もちろんです。グリ殿も今や我らの家族ですから当然宴が催されましたら一緒にご参加頂きますよ。美味しい料理だってあるんですから。」
「りょ、料理・・・ジュルッ」
「おい、つられるなよ!」
「アーロン、我のネクタイとやらだけでなくポヨのも頼むぞ。」
「はい、もちろんです。これでタクミ殿は逃げられませんよ。フフフフフフフフフ。」
やっぱりこの人怖いわ。それを見越してグリやポヨを巻き込んだな。黒い!黒すぎるぞ!アーロンさん。グリが食いしん坊なのを利用するなんて。ああ、ダンスって・・・まいったなぁ。
「そういえば、俺たちの日程ですけど、こちらを出発したら4日ほどかけてカムリ公国のスノードン山まで行って任務をしてから2日で仕事先のバーズレムまで行って仕事してきます。その後ザマゼットまでだと3日くらいの予定で到着できると思いますので、うまく調整して40日後までにはザマゼットの役所に伺うようにしますね。ではとりあえず、俺達はこれで失礼します。」
「かしこまりました。よろしくお願いします。それではお疲れ様です。」
部屋を出た俺たちはマーガレットさんに会うために店の裏口に転移した。
コンコンコン
ガチャ
「これは主人!いかがされましたか?」
「忙しい所、すみません。新たな店舗の構想と今後の日程についてお話ししたいのですが、お時間ありますか?」
「はい、まもなくお昼時になりますので、お客様が多少減りますので、問題ないです。」
「では少し城にお付き合い下さい。」
「はい、では支度してまいりますわ。」
その後、俺達は城のサロンに転移して話を始めた。
「それは、凄いですね!まるでお城を建てるようです。」
「建物は俺が建てますけど建材などってどんなものを使ってますか?」
「そうですねぇ。色々ありますが主人独自のものを使ってもよろしいのかと思いますわ。外観は正直堅固な物ができれば良いかと思います。内装は主人のこの絵を元にデザイナーと打ち合わせし希望に沿ったものの図面をご用意してあとは職人の手配などはこちらで行い作業を進めます。あと、従業員の募集と雇用ですね。図面が出来上がりましたら羽ペンでご連絡致しますので確認をお願いします。」
「わかりました。では建物はこれで寸法はこちらの細かく書いた数字で作りますので後4階につながる階段は後に壊しますから簡易な物でお願いします。あと、ポーションだったり他の飲食店のお店の価格であったりとか調べて下さい。値段の設定をしたいので参考にする物が欲しいです。」
「はい、かしこまりました。ではすぐに手配にかかりますわ。」
「じゃあ商人ギルドまで送りますね。」
「はい、よろしくお願いします。」
こうしてマーガレットさんを巻き込んでさらに忙しい日々に追われる事になった。
読んで頂きありがとうございます。
誤字報告、大変ありがたいです。




