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98.黒羊は貴重種

あれからなんの音沙汰もなくというか連絡の方法がないから仕方がないのだが3日が経った。もしかして忘れられてる?!


「ンメェ〜」


『ここの草は美味いか?』


『ンメェ〜。特にこの草、ンメェ〜。』


「マーニンビートの葉かぁ。魔物はみんな好きなんだなぁ。」


「おい、タクミ、首が何やら光っておるぞ。」


「ん?あっ!本当だ!よし、魔石外して来るわ。戻る準備してくれ。」


『メェ、仲間の所に行けるかもしれないから、アイテムボックスの中に入っててくれ』


「ンメェ〜」


俺はアイテムボックスを開いてメェに入ってもらい、さらに家の魔石を取り外して冒険者ギルドに戻る支度をして準備を整えた。




ーーーーー20分後




「よし!これでいいぞ。グリ、ポヨ行けるか?」


「うむ、良いぞ。」


「んじゃ、ギルドの近くに飛ぶぞ」


「ああ。」


ぐにゃ〜ん


「よし、相変わらずここは人気がないな、ありがたいなぁ。」


さてと受付に行ってっと。


「こんにちは、カミルさんに呼ばれてきました。面会をお願いします。」


「タクミさんですね。どうぞお部屋へ上がって下さい。」


「ありがとうございます。」


俺たちは二階にあるカミルさんの部屋の前に行きノックした。


トントントン


ノックをしたら中から強面のおじさんがドアを開けた。


「今は取り込み中だ。」


「え?呼ばれて来たんですがタクミと言います。」


「何?あんたがタクミ?」


「はい、そうです。」


「中に入れ。」


俺は部屋に進むとカミルさんの目の前にでっぷり太ったアコーディオンのような襟巻きが特徴的で色使いもとても派手な古典的な服装をした人が踏ん反り返って椅子に座っていた。しかもめっちゃ機嫌が悪そう。


「なんだこの男は?」


「あなたが欲している浄化した羊の捕獲者であり保護者ですよ。」


「何?こんなナヨナヨした奴があのパッドフットを浄化したというのか?まあ、そんな事はどうでも良い、おいお前早く羊を渡せ。報酬ならくれてやる、私は忙しいのだ。いくら欲しいんだ?言ってみろ。」


「カミルさん?こちらは?」


「ああ、教会への寄付者だそうで、その見返りに羊を欲しいようだよ。」


「という事は依頼主ですか?」


「いや、依頼主は教会の方らしいんだよぉ〜。彼は寄付者なんだってぇ〜。そうなんですよね?」


「そうだ、何度言えばわかるのだ。」


「そうなんですか。寄付者?でしたら別に羊じゃなくてもいいんじゃないですか?神のご加護がきっとありますよ。それに見返りを期待するのはそれは寄付ではなくて依頼ではないんですか?何か違うんですか?」


「そ、それは・・・お前には関係のない事だ。

つべこべ言わずに羊を渡せ」


「はぁ。カミルさんの指示に従います。俺は依頼を受けた、ただの冒険者にすぎませんので、俺の判断ではないですから、ギルドマスターと話をしてくれますかね?まとまってないなら俺、帰りますけど」


「ごめんねぇ、タクミ君。この方が捕獲者を出せっていうからさぁ。で、寄付者さん、こちらとしてもちょっと困った事になってるんですよ。教会の方にもお伝えしましたけど羊は教会にも引き渡しが出来かねます。例え依頼主であってもです。」


「だから、なぜだと言うんだ!」


「それはあなたが一番お分かりですよね?」


「何の事だ?ワシは知らん!とにかく浄化したパッドフットをワシは貰い受けると約束したのだ!今回はたまたま羊だっただけだがとにかくパッドフットだった物が欲しいだけで別に羊が欲しいと言うわけではないと、何度言ったらわかるのだ!」


「そうですよね。ですから次回に現れたパッドフットにして下さい。今回の羊は渡せないのですよ。」


「しつこい!ワシは今回のものが良いと言っておるだろ?」


「それは困りましたねぇ、なぜそんなに今回の羊にこだわるんです?」


「羊ではなく、パッドフットだった物が欲しいだけだ。」


「そうですか。ではご存知かご存知でないかはわかりかねますが、今回の黒羊はこのグランド王国で保護されているもので、現在5頭しかいない貴重な羊でして国が保護をしているくらいです。その羊は現在国の指導のもと保護魔物に指定されており、国と共同で大商会が現在飼育しながら繁殖の研究を行っています。見たところあなたも商人の方ですしご存知ではないのですか?あの黒羊の価値を。もし、他の国に密売したりすればかなり儲かるとは思いますがそれが、公になれば処罰は間違いない。国内であっても国指定の商会以外に売ればこれまた処罰されるでしょう。そのようなリスクがある分、高値で売れるはずではありますが、まあ国指定の商会に売ってもかなり高額で販売できるでしょうね。あの羊はメスですし。」


「わ、ワシは個人的に欲しいだけで転売などする気はないぞ。」


「そうですか。たしかに個人がペットとして飼うのは国内であれば罪にはなりませんでしたものね。」


「そうだ、だから文句はないだろう?」


「いやぁ〜これは失礼しました。そうですかぁ〜、ペットとしてでしたか。ですが貴方に羊を渡す事は出来ませんねぇ。教会の依頼は受けましたけど黒羊だった場合、教会もそれを引き取る事は出来ないのですよ。もちろんペットであっても。」


「なに?!そんなはずはない!どう言う事だ?!」


「黒羊は非常に貴重で国のプロジェクトになっているのはお話ししましたが、昨日、今回の事態を受けて国からお達しがありまして、すみやかに黒羊を国に引き渡すように指示が参りました。どうもこの地域の商人ギルドにも通知が来たそうで、今後、パッドフットが黒羊であった場合は国へ引き渡す事が法律で決まったそうです。さらにペットであってもペニーの授受がなくとも違うもので・・・そうですねぇ。例えば物々交換であったりだとかペニーの代替え品での販売や転売が起こり得るため、ペットとしても昨日から禁止となりました。ですから受け渡しが教会にできなくなったのです。あなた様がもし、依頼主であったなら教会へ寄付されたペニーは、お返しする形になりますが依頼主ではなく善意の寄付なんですものね。それだとお返しする必要はもちろんないですし、もし、羊が手に入らずペニーを返せなんて教会に詰め寄ったら、羊を捕らえるためにペニーを払い依頼したとなりますよね?そうすると、それは結局依頼報酬が羊代と言う事になってしまいますが、そうなると前回の法律であっても罪になってしまうので罪にならないよう抜け道で、パッドフットだった物が欲しいとおっしゃっているのではないですか?」


「な、なにを馬鹿げた事を!」


「そう言う事で今回のパッドフットはお引き渡しできなくなりました。次回の物にご期待下さい。」


「くっ!もうよい!ワシは帰る!」


「はい、ご足労頂きましたのにご期待に添えず申し訳ないです。」


「フンッ!」


ガチャッ!


バターーーーン!!!


「カミルさん、一体どうなってるんですか?あの人からペニーを搾り取る腹積もりだったんじゃないんですか?」


「おお、俺もそのつもりだったんだがなぁ〜、待ったがかかったんだわ。」


「どこからですか?」


「もちろんお国だ。事の起こりはお前が捕獲して、ここに連れてきた後からの話だ。」


「3日前ですね。」


「ああ、あの後、俺はいつもその日に依頼完遂した物の報告を王都にある本部にあげるんだが、今回はレイブンパロットを使って直接本部に連絡して黒羊の捕獲の成功とそこに商人らしき人物が関与している事を伝えたんだ。」


「本部は何と?」


「少し調べるから待てと言われて本部が独自に調査したんだろうな。2日目の日暮れごろに連絡が入ってあの商人の素性がわかってな。」


「あの人、どんな人なんですか?随分、古典的なスタイルの服装してましたけど、まるで貴族みたいでしたが。」


「ああ、凄い派手に飾り立てた服装だったよな。あの尖った靴先のカールがとても馬には乗れなさそうな靴だったわ。」


「そうですよね。俺は襟巻きが気になりました。」


「だよな。あの商人は生まれは隣国の貧乏貴族の出身で貴族と縁戚関係を結びたい裕福な商人が娘と婚姻させて婿養子に入ったらしい。だが、奴は商才があったようでさらに貧乏貴族と言っても貴族の位があるし学校も貴族の所に行っているからコネはあるわけだ。それで商売をさらに拡大して今の地位を手にしたらしく大きな声では言えないような商売も手に染めると言う手法らしい。で、そんな奴だから商売敵でもある隣国に羊を転売される可能性を考慮して黒羊の抜け道を考え、ペットという方法に気がついて、すぐに法の見直しをしたそうだ。」


「そんなにあの黒羊は重要なんですか?」


「まあ、俺たちが考える以上にペニーを産むって事なんだろうな。法をそんな早急に見直しさせるくらいなんだからな。」


「なるほど、でもあの商人からペニーを出してもらえないなら初めの目的だった、亡くなった家族へのお悔やみのペニーは出せなくなってしまいますね。」


「それがよお、そうでもないんだわ。」


「どういう事ですか?」


「法で改正されたのはペットの禁止だけでなく、見つけた者や捕獲した者に褒賞でペニーが出ることになってそうする事で他への流出やさらに黒羊を多く国側へ渡してもらうための策らしい。」


「という事はお悔やみもそれを出すという事ですか?」


「ああ、そうなるな。教会からの依頼報酬は合計1800ペニーで6:4でギルドと冒険者に依頼して、お前の取り分は1000ペニーの話だったんだがな、あの羊にかけられた褒賞はなんと10000ペニーだぞ。」


「い、一万ペニー?!」


「ああ、隣国に売ったらその数十倍以上の価値みたいだな。」


「あの人が目の色変えていたのにも合点がいきましたよ。でもそんな数十倍も価値があるんですか?」


「国としては一万ペニーで勘弁して欲しいそうだ。あいつ一頭で一万ペニーを回収するのに五年、だが、ポイントはあいつはメスだからな。繁殖に成功したら1発で一万ペニーなんてすぐに稼ぎ出す事になるし、魔物黒羊の寿命は平均的には100年は生きるし、繁殖も20年から30年は可能だ。つまり少なくとも20匹から30匹、調子が良けりゃ、その倍は繁殖で増やす事ができるんだ。あいつ一頭で単純に考えても一生のうちに20万ペニーは稼ぐんだ。それが20〜30匹になってみろ、とんでもない額になるだろ?」


「おお、わかりやすいです。そんなにあの羊は凄いのかぁ。」


「そういう事だ。それで一万ペニーだが、教会とこっちで半分でさらに今回はお前の手柄だから7:3の割合にしたいと思ってるがお前はそれでいいか?」


「かまいませんよ。むしろギルドの取り分が少ないですけどいいんですか?」


「ああ、羊の預かり代だと思ってくれ。それに前より700ペニーも増えたから全く問題ない。」


「わかりました、それであの羊はどうしたら?」


「それがなぁ〜羊の繁殖をやってる所がカムリ公国のメリオネスって言う地域にあるスノードン山があってなぁ。その谷間で牧畜してるんだけどよぉ〜。実は連れてきてくれねぇかって言われてるんだ。もちろんこれは別の依頼になるんで報酬も別で出るんだけどな。タクミ、悪いけど行ってくれねぇか?他の奴に頼んでも良いんだが、あのおっさんが、腹いせに途中で邪魔してくる可能性もあるしよぉ〜。なんとか頼めないか?」


「地図で言うと場所ってどこですか?」


「おっ、そうだな。ちょっと待てよ」


カミルさんが部屋に貼ってある地図を指差しながら教えてくれた。


「まず現在地はここな。

んで、お前に頼みたいのはここの左下にあるカミル公国、エルフの王が治めるグランド王国では公爵の土地の、この、端っこにあるこの公国で一番高い山の谷間の、ここ辺りで牧畜してるんだ。」


「結構、距離がありますねぇ。」


「そうなんだよ。グラニで行っても最低70日は必要だ。海からの方が早いがチャーター船を使うしかないし経費を考えると陸から行くのが手だな。ただし、それは普通の話だ。お前の連れならもっと早く行けるだろ?ダメか?」


「そうですねぇ、俺ヘンリーさんの出張に付き合ってザマゼットの領地まで行くんですけど、その前にスタッフォードのバーズレムという所にも仕事で立ち寄るんですよ。なので、そこに行く前によるという形でよければ

お受けしますよ。」


「その出張はいつ頃だ?」


「あと、20日とちょっとですかねぇ。」


「ザマゼットか。あいつらの事だから川を下ったりもしてグラニだけではない移動をするだろうから通常より早く着くだろう。半分で見積もって40〜50日はかかる旅になるだろうからなぁ。それであいつらより早く行くというのは難しいかぁ。」


「いえ、どうでしょうか。ただ届けるだけならグリなら4日もあればカムリ公国のスノードン山まで行けるので、それから2日で仕事先のバーズレムまで行って仕事して、ザマゼットまでだと3日もあれば余裕なので大丈夫ですよ。」


「おい!そんなにこのキンググリフィンは早く飛べるのか?!」


「ええ、こっちが結界張ってないとかなり厳しいですよ。確実に飛ばされます。」


「そりゃそうだ!お前、本当に凄いんだな。俺の爺さんが速かったって感動してたのも無理ないな。きっと気を使ってゆっくり飛んでくれていたんだろうが、それでも速かったんだな。なあ、いつかお前の背中にちょっとで良いから、乗せてくれないか?」


「フンッ気が向いたらな。」


「おっ?!本当か?!爺さんの話が羨ましくてなぁ。」


「エルフは基本、人族とは違った魔物との付き合い方をするからな。お前のジジイと一緒なら乗せてやっても良いぞ」


「いや、グリ流石にお前それは無理だろ?」


「タクミ、うちの爺さん、まだピンピンしてんだよなこれがよぉ。俺の村じゃ最高齢の爺さんなんだわ。」


「ええええええ????!!!ご、ご長命なんですね。」


「ああ、だからクソ魔力も多くてよ。嫌になるぜ。」


「そうですか。」


「まあ、いつか爺さんがこっちに遊びにきたらだな。楽しみにしてるぜ!」


「うむ、これも何かの縁だからな。」


「んじゃ、とりあえず依頼頼んでも良いか?依頼内容は黒羊の護送、任務ランクはCランクで報酬は2800ペニーだ。」


「おお、報酬額が多いですね。わかりました。よろしくお願いします。」


「ああ、本来70日はかかる護送だからな。普通なら四人から五人でパーティー組んでやるんだ。命もかけるわけだし一人頭で計算すると日当8ペニーから10ペニーってとこだ。」


「なるほど。Cランクって報酬がグッと上がるんですね。」


「そうだな。そのかわり危険度も跳ね上がるから、こんなもんだ。」


「確かに護送中に何に遭遇するかわかりませんからね。

俺も気をつけないとな。」


「そうしてくれ。国家プロジェクトってやつだから頑張ってくれよ。」


「はい。あっ、完遂報告ってどうすれば良いんですか?」


「ああ、ザマゼットの冒険者ギルドで報告してくれたら問題なく報酬を受け取れるから報告はそっちにしてくれ。お前なら転移で戻って来れるんだろうからどっちでもかまわんぞ。」


「じゃ戻ってくるような事態が起こらなければ、ザマゼットで報告入れますね。」


「おう、よろしく頼むわ。」


「はい。とりあえず出発は20日後以降という事で到着は7日以内に到着しなければ何かあったと思って下さい。」


「わかった。先方に伝えておく。」


「じゃあ、それまでの黒羊の面倒だがそっちで見続けてくれるなら1日辺り4ペニー出すそうだ。3日前から遡ってその分も上乗せしとくな。」


「わかりました。ありがとうございます。」


「じゃあ頼んだぜ。とりあえず捕獲報酬の精算しちまうか。」


「はい。」


俺はいつものように出されたクリスタロスにドッグタグをかざして報酬がアップした3500ペニーをもらった。


「んじゃ、引き続きよろしく頼むわ。」


「はい、じゃあ失礼しますね。」


「おう、頼むぞぉ!」


俺達はその場で転移して城へと戻った。中へ入るとピシッとした男性が出迎えてくれて、アーロンさんが書斎で話があるので寄るようにと、伝言をもらった。俺はその足で書斎を訪ねるとアーロンさんが出迎えてくれた。



読んで頂きありがとうございます

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