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95.パッドフットは黒羊?!

さてと、何の依頼を受けようか。俺は今、グリとポヨを連れて冒険者ギルドの依頼書ボードの目の前に久々に立っている。何か稼げる依頼はないかなぁ〜。やっぱり高ランクの依頼はどれも報酬が高いがここから結構離れているので却下だ。近場でパッとできる仕事があると良いんだけどなぁ。するとギルドの職員が新たに張り紙をしに来た。みな、新しい仕事は気になるようでその依頼書を、覗き込むがまるで見なかったかのようにその場から立ち去る。

いったい、どんな依頼なんだ?と不思議に思って、俺も覗き込むと内容はリッチモンドに来る途中の道でパッドフットが現れたので退治してほしいとのことだ。パッドフットってなんだ?


「なぁグリ、パッドフットってどんな魔物だ?」


「ああ、あれか。その依頼は報酬は高いのか?」


「え?ん?1000ペニー?!なんだこの報酬?!めちゃくちゃ良いぞ!そんなに強い魔物なのかよ?しかもAランクの任務だぞ?!」


「あんた、パッドフットって知らないのかい?」


俺が騒がしくしているのでボードの前にいた冒険者が話しかけてきた。


「あっすみません。うるさくして。パッドフットっていう魔物ってそんなに強いんですか?」


「こいつは動物に憑依した呪いの塊で光魔法所持者じゃないと倒せないのさ。簡単に言うとアンデッドだなんだが、アンデッドでもないんだよ。」


「ん?アンデッドでアンデッドじゃない?」


「まあ、生きてるやつに憑依したアンデッドで、こいつの厄介なのは光魔法で倒しても、もし魔物に憑依してたらそのあとに魔物が襲ってくるから、タチが悪いんだ。大抵、光魔法の攻撃できるような優れたやつは、通常の魔物に対しての他の属性の攻撃魔法は使えない事が多いから危ないんだ。」


「でも、パーティーを組んでれば問題ないんじゃ?」


「そこがこいつの厄介な所のもう一つのポイントで光魔法所持者じゃないと呪われて一年以内に死ぬんだわ。」


「ええええ!!!じゃ、光魔法所持者だけで行かないといけないって事ですか?」


「そうなんだ。大抵は光魔法をもつ教会が動くことがほとんどなのに今回はどうしたんだろうな?冒険者ギルドに依頼が来るなんてなかなかないぞ。とにかく、1000ペニーなんて報酬じゃたぶん、俺の予想では安いと思うぞ。やめた方が身のためだ。」


「グリ、お前って光魔法も確かいけたよな?」


「うむ、我は問題ないがポヨはマズイぞ。」


「魔物でも呪われるのか?」


「あれは、ちと厄介でな。魔物や動物に憑依するやつなのだ。唯一憑依されないのが人型の者で、代わりに呪われるのだ。できれば我も耐性はあるが関わりたくはないな。」


「そうか、これは見送りだな。」


「おっ!タクミじゃないか!ちょうど良いとこに来たなぁ〜」


「カミルさん、こんにちは。」


ギルドマスター のカミルさんが俺の肩に腕を回して


「ちょ〜っと部屋まで来てくれるか?」


「え?あっはい。」


「よしよし。」


これ、完全捕獲されたよな。なんか嫌な予感がする。


「まあ、そこにでもかけてくれ。グリ殿たちも楽にしてくれな。」


「あの、用件は何でしょう?」


「お前も見ただろ?Aランクのパッドフットの依頼。」


「ええ、今回は見送りますけど。」


「え?やってくれないの?」


「はい、グリやポヨが憑依されたらそれこそ大変な被害が出ますから。」


「タクミならイケるよな?」


「え?まあ、そんなに遠くないですしいけない事もないですけど、これ他の冒険者から聞きましたけど通常教会の方が行かれるのに今回行かずに、冒険者ギルドに依頼が来るなんて不思議だし、それから考えると報酬が見合ってない内容の依頼じゃないかと言われまして、正直乗り気がしないので俺としてもあまり行きたくないですね。」


「あちゃー聞いちゃったかぁ。ぶっちゃけかなり報酬は内容と思うと安いんだよな。でも、お前さん、ペニーに困ってねえし良いだろ?」


「いや、事情が変わりまして今は純粋にペニーを稼ぎに来ました。」


「あんなにもらったのにもう使ったのかよ?!」


「まだ使ってませんけど使う予定です。」


「何にそんな使う事があるんだよ?」


「年間の賃貸料が一万ペニーの所を借りるのと、さらなる従業員の雇用で1発で4万ペニーほどは、飛んでいくと思います。一応、それでもまだ8万ペニー以上ありますけど、王都に店を出しなさいとか、お達しが来るかもしれないのでそう考えると稼いでおかないとまずいと思いまして。

王都は賃料が4倍とか聞きますからね。」


「マジかよ!すごいペニーだな。お前もすっかり商売人だな。

たしかにお前の身に万が一何か起こればエリザベス様に何言われるかわからんしなぁ〜。」


「俺の事はいいとして、何で教会の方が今回討伐に行かないんですか?」


「いや、行けないというより行って失敗したんだ。」


「え?行って失敗?」


「ああ、かなり呪いが強いらしく浄化しきれずに

抵抗したパッドフットに何人か殺されてとりあえず退却したんだ。で、教会のエクソシスト部隊も流石に今回はまずいと思ってうちに声をかけてきたんだ。合同で討伐をしないかってな。」


「なるほど、という事は教会が依頼主ですか?」


「そうなんだ。昔の教会と違ってそんなにペニーを荒稼ぎしてるわけじゃねえからな。だから報酬も少ないってわけなんだ。」


「なるほど。しかしグリ達がいないんじゃ俺なんて役に立ちますかねぇ。」


「光魔法所持者のAランクの冒険者がかなり少ないんだ。

できれば協力してほしい。」


「うーーーーん。他に何か隠してませんか?」


「やっぱりわかるか?」


「いえ、カマをかけただけです。」


「あちゃー、俺って正直だからなぁ。実は取り憑かれた魔物がこの国で5頭しかいない、まあ貴重な真っ黒の羊でよ。ダンジョンにも現れないらしくて、そいつの羊毛がかなり高値で売れるとかでできればテイムしたいから殺さずに捕まえろとのお達しなんだ。」


「えっ?それで教会の人は亡くなったんですか?」


「いや、それは完全に技量ミスだな。一応浄化は教会のエクソシスト部隊が担当するから要はその羊を浄化した後に速やかに捕まえてほしいとのことだ。」


「そんなに貴重な羊なんですか?」


「まあな。6頭始めはいたそうだが一頭放牧中に、ゴブリンにやられたらしくてな。そのゴブリンは即刻退治したらしいんだがなぁ。やられた羊がメスだったらしくて繁殖させたいようなんだが残ってるメスは後一頭だけだそうだ。だから何としても捕獲してほしいって話で実はこの依頼、羊毛の取り扱いをやってる商人が裏で動いてる所までは突き止めたんだ。」


「なるほど、しかも話を聞くときっと1人じゃないでしょうね。」


「そうなんだ。そんな貴重な羊だ。大商会が動いていてもおかしくない。それなのに1000ペニーっつうのは俺も引っかかっててな。だからあえてAランク依頼にしたんだ。先方としては光魔法所持者は呪われないし捕まえてくれるだけでいいからそんなに難しい仕事じゃないってランクを下げて人数よこせと言ってきていたんだが話が胡散臭から事情を話せるやつにしぼろうと思って高ランク依頼にしたという訳だ。これで隠し事はなしだ。どうだ?理解できたか?」


「はい、それで?カミルさんとしては、ここからが本題なんでしょ?」


「お前、少しアーロンに似てきてないか?」


「え?そうですか?」


「ああ、まあいい。そこでお前、その羊捕まえて、ギルドに連れてこれないか?引き渡しはギルドのカミルが行うと聞いているとかなんとか言って戻ってこい。そしたら本当の依頼者が出てくるだろうから正式な適正価格を出させて俺としては死んじまった奴の家族に少しでもペニーを出してやりたいんだ。それに冒険者ギルドが舐められるのはどうもイラつくしさらに言えば教会もきっと価格を叩かれたんだろうな。あの1000ペニーはきっと報酬のほとんどなんだろう。あっちなんて死人まで出てるんだぜ?どんな依頼人か知らないがそいつを引っ張り出して少しお灸を据えてやろうと思ってなぁ。」


「なるほど、そういう事ですか。わかりました、この依頼お受けします。」


「そう言ってくれると思ってたぜ。どうする?お前一人で行けそうか?難しいなら、あと一人二人なら光魔法所持者を知ってるが呼ぶか?」


「いえ、俺一人で問題ないでしょう。捕獲は得意ですし相手が動物の魔物ならなんとかなるかもしれません。」


「ほお、キンググリフィンを連れてるお前が言うと頼もしいなぁ。よっしゃ!じゃあ任せるぜ。ちなみにお前よお、その性格で商人なんて仕事できるのかよ?」


「え?それはどういう?」


「真面目で素直で性格がいいからよぉ〜。

な〜んか悪いやつに騙されそうで心配だぞ。」


「あぁ、何となく商人に向かない性格っていうのは多くの方に言われますから自覚してますので、ちゃんと性格が良くて頭の回転の早い敏腕代理店主を雇ってほぼ全て任せて運営してもらってます。」


「そうか、そいつは信用おけるやつか?」


「そうですね。俺としては信じてますし、もしこれで裏切られても後悔のない素晴らしい人にお願いしてます。」


「おいおい、そんなんで大丈夫かよ?」


「まあ、商人がダメになったら冒険者一本でやってきますから、その時は仕事まわして下さい。」


「おっ!それはそれでいいな!なんてな。お前だけじゃなくアーロンやヘンリー達も認めてる者なら問題ないだろう。」


「それ、酷くないです?俺ってそんなに騙されやすそうなのかなぁ〜。」


「自覚ないところを見るとその代理店主は大変だなぁ。」


「たしかに、かなり大変だと思いますよ。感謝しかないです。」


「よかったな。いい奴と巡り会えて。」


「はいっ。じゃ、この件引き受けますけどどうしたらいいんです?」


「教会に行ってくれるか?場所はここだ。」


カミルさんは部屋の壁に貼ってあるこのリッチモンドの地図を指差して教会の位置を教えてくれた。


「一応こちらから連絡を入れておくから夕方前には教会を訪ねてくれ。」


「 わかりました。」

読んで頂きありがとうございます。感想や誤字報告も非常にありがたいです。ありがとうございます。

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