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92.異世界商会とマーガレットさん

化粧品販売を始めてようやく鉛白粉は全て回収し、これからが俺達異世界商会にとっては本番でリピーターを獲得しなければいけないのだが、そんな心配はどこ吹く風で相変わらずお店は盛況!ありがたいかぎりだ。

初めのプレオープンではこういう結果になった。

プレオープンで招待客は348名。

全員お越しになり初日は7179ペニー

2日目は7080ペニー

3日目は7102ペニー

4日目は7069ペニー

5日目は3290ペニー

6日目は3260ペニー

7日目は3144ペニー


合計36924ペニーだ。

4日目までは高級コースの貴族のお客様で5日目以降は商人の奥様や富裕層、男爵レベルの貴族の奥様。5日目以降も美容液は高くても全員購入。人気なのは美容液で効果を確認してたちまち人気商品となった。これからは露天販売でシンプル化粧水などは販売するので庶民の女性達の顧客獲得を狙う。それから噂を聞きつけた今まで鉛白粉は使用せず、自然派の貴族の奥様達もいらっしゃるようで、そういった方々の来店が今は集中しているようだ。お店の売り上げは好調で順風満帆なのだが、気がかりなのはマーガレットさんの将来だ。どうしたものか。この先お店を任せる人を新たに探す手配をかけるべきなんだろうが一度本人と話をする必要があるよな。そう思っているとマーガレットさんが今日の報告に城を訪れた。

「どうしたのですか?そんなにうなって。主人らしくないですね?悩み事ですか?」

俺は考えたがこういう事はわからないので率直に聞いてみることにした。

「実はマーガレットさんが多くの縁談の話があると聞きまして、お店を辞めないといけなくなるのではないかと悩んでいました。」

「あら?そんな事ですの?ウフフ。私辞めませんよ。」

「ですが、それではマーガレットさんの女性としての幸せが・・・」

「ウフフそれでしたら問題ありませんわ。父が持ってきた縁談は全てお断りしましたから」

「そ、それはまさか、お店のために?」

「いえ、私の人生のために選択を致しましたの。当時私の体が不自由な状態なのに私の力を必要とし信頼を置いてくれた主人に感謝の気持ちと恩義を感じているのです。中途半端な事はしたくないですし、それに今まで見向きもしなかった殿方が急に言い寄ってきても興味はわきませんわ。」

「たしかに、手のひらを返すような男性達はそれは薄情かもしれませんけど、治療に関してはそんな恩義なんて感じなくても大丈夫ですよ。俺としてはマーガレットさんが幸せになる方が大切な事だと思うんです。」

「主人は本当に人が良いんですからウフフ。もちろん将来的には婚姻もするつもりですが、今はお仕事が楽しくて仕方がないのです。女性の幸せというのは婚姻だけではないのです。それに最近、気になる殿方が・・・」

「え?あっ!そういう方がいらっしゃるんですか?」

「ウフフ。はい。」

「そうでしたか。それなら縁談をけるのもわかります。」

「はい。そうなのです。ただこの気持ちは私だけの想いですので婚姻にはいたらないでしょう。」

「そうなんですか?」

「はい、最近、親しくはして頂いてますが親密な間柄ではないですし、それに・・・」

「それに?」

「その方は由緒正しい貴族のお家の方でご本人は跡継ぎではないので庶民ですがきっと貴族のお嬢様でなければ婚姻は難しいでしょう。」

「身分違いってやつですか。」

「はい。もし、その方のお家が没落貴族であれば、こんな事を言うのもなんですが我が家は裕福なので婚姻もあり得ますが、そちらのご家族は没落する事はもちろんあり得ませんし誰もがそのお家と懇意にしたいでしょうから私の想いなど成就する事は無いと思います。」

「すみません、なんか悲しい話をさせてしまって。」

「いえ、良いのです。私の片想いなのです。

ですからお恥ずかしい話ですが恋もしておりますし他の殿方の事は興味がわかないのですわ。」

「メアリーさんには気になる人はいないと言ったのは?」

「それはメアリー様は私の事を姉妹のように思って下さってますから無茶をされそうで黙っておりました。」

「お二人は本当に仲が良いのですね。」

「私には身に余る光栄ですわ。」

「そっかぁ。あの、前話した件ですけどお考えはまとまりましたか?」

「はい、お受けするつもりだったんですが縁談を全てお断りしてからにしようと思って少しお待ち頂いたにすぎませんので、有り難くお引き受け致します。」

「そうですか。お店の方は一安心ですけど、マーガレットさんは本当にそれで良いのですか?」

「と言いますと?」

「いや、さらに仕事が忙しくなるので益々プライベートな時間が減ってしまうのでは無いかと。」

「主人、私は今まで退屈な恐ろしく長い時間を嫌という程過ごしてきて、今はとても楽しくあっという間に時が流れておりますの。私から楽しい時間を奪わないでくださいまし。」

「そ、それなら良いんですけど無理はしないで下さいね。」

「はい、他の皆と働く時間は何も変わりませんし、全く問題ないですわ。もし、仕事量が手に負えなくなったら経理を増やしますわ。」

「そうだ!人事もお任せしますね。今後もし、人が必要になった時はマーガレットさんの判断で雇用して頂いて構いませんから。俺、少しこの土地を離れてヘンリーさんの違う領地について行くことになったので、その間、報告を聞けなくなるんですよ。」

「かしこまりました。では報告はどう致しましょうか?」

「そうですねぇ、俺、ダンジョンにも行く予定なので連絡が取り辛くなると思うんですよ。」

「どうしましょう。」

「少し時間を下さい。アーロンさんに相談してみます。」

「はい、出立はいつ頃でしょうか?」

「28日後ですね。」

「かしこまりました、あと、在庫の補充ですが」

「あー、それならまた、大量に作っておきましたのでこれを持って行ってください。」

「まあ!助かりますわ。」

「とりあえず二ヶ月分くらいは入っているので

よほど持つと思います。」

「それだけあれば充分ですわ。ところで主人、ヘンリー様が行かれると言う事はメアリー様もご同行されるのですか?」

「どうなんでしょう?実は俺、道中は別なので詳しくは聞いていないんです。」

「そうですかぁ。寂しくなりますわ。」

「そうですね。でもその分、気になる方との時間が増えるのでは?」

「いえ、その方も少しの間、お仕事でこの地を離れるので会えないのですわ。」

「そっかぁ、貴族なんですよね。それだと色々飛び回って忙しいかぁ。時期が重なって寂しいですね。」

「いえ!その分主人が戻られた際に沢山利益を上げて驚かせてみせますわ。ウフフ。」

「頼もしい発言ですね!さすがマーガレットさん!」

そうしてしばらく雑談と今後の商会についての話をしてマーガレットさんが帰る頃になり俺はエントランスまで見送るとちょうどジャックさんが中に入ってきた。

「おっマーガレット今帰りか?」

「ジャック様、ごきげんよう。はい、今から帰る所ですわ。」

「んじゃ、もう暗くなってるから送ってやるぜ。」

「まあ、そんな、申し訳ないですわ。」

「いつもと変わらねえさ。」

「いえ、でも・・・」

「ん?いつも?」

「ああ、だいぶ前からなんだけどよぉ〜、俺が馬で家まで送ってるんだ。」

「ええ?!マーガレットさん?!馬車は?」

「いえ、お店からすぐ近くですからもったいないので体型維持のためにも歩いてこちらまで来ておりますよ。」

「でも、帰りは?陽が沈む日だってあるじゃないですか、夜道の女性の一人歩きは危険ですよ!」

「ウフフ、大丈夫ですわ。私、護身術程度ですが、一応身につけておりますので。」

「し、しかし・・・」

「そうなんだよな、こうやって全然聞かないから、俺が抱えて馬に乗せてそれから無理やり送るようにしてるんだ。」

「ジャックさん、ありがとうございます。俺、全然そんな事知りませんでした。」

「ああ、俺が好きでしてる事だから気にするな。じゃあマーガレット、主人もそう言ってるわけだし俺が送るよ。」

「でも、ジャック様はお忙しい身ですし・・・」

「俺が忙しいのは稽古つけてる時とヘンリー様の護衛中くらいで城にいるときは暇なんだ。それに城にいる時に俺が忙しくなるってのは、戦時くらいなんだから気にするな。じゃ、行くぞ。」

「は、はい。では、よろしくお願いします。」

ん?んんん?マーガレットさんの頬が赤くなってる?

まさか気になる人ってジャックさんの事か?!たしかにイケメンでワイルドで肉体美で兄貴肌で面倒見が良いし、しかも今までにそんな接点があって・・・あっ!ジャックさん、確かめっちゃ良いとこの貴族!これはもしや・・・。

「ジャックさん、申し訳ないですけど城からの帰りをお任せしても良いですか?」

「ああ、いつもやってる事だし、構わねえよ。逆に俺が送らないとちゃんと帰ったか心配になるからなぁ。」

この人、サラッと言ってるけどマーガレットさんの頬がさらに赤くなってるよ。しかも本人この様子じゃ気づいてないし天然のモテ男だな。どれだけの女性が気がついてもらえずに憂いの涙で頬を濡らしてきたんだろうか。

「んじゃ、マーガレット行こうか。」

「はい、ジャック様。」

「気をつけて」

本当は俺が転移で店に送っても良いんだけど、そんなマーガレットさんの楽しみの時間を奪っちゃいけないよね。そっかそっかぁ。ジャックさんだったのかぁ。2人を見送り振り返るとなんと、そこに目をキラキラさせたメアリーさんがこっそりこちらを覗いていた。

「見ましたわよ〜。」

「メ、メアリーさん?な、何を?」

「マーガレットがさらに可愛くなったのはジャックでしたのね?!」

「はい???」

「あの子のあの白雪のような可愛い頬を薔薇色に染めさせたジャックの行動!まさに恋する乙女ですわ!」

「は、はぁ。」

「ジャックはどう思ってるのかしら??あーーーーん気になりますわぁ〜。」

「あの、盛り上がってる所すみません。ジャックさんって貴族ですよね?しかも良いとこの。」

「そうですわよ。辺境伯の三男ですわ。」

「辺境伯ってめっちゃ、高貴なお生まれですよね?」

「ええ、そうですわね。」

「あの、身分差とか・・・」

「あーら、あのお家ならば大丈夫ではないかしら?」

「と言いますと?」

「あちらの辺境伯は元々は次男で跡継ぎではなかったのですが長男が不慮の事故で亡くなられご子息がいらっしゃらなかった為に家督を継がれたと聞いておりますわ。しかもその時にはすでに婚姻されていて、しかも庶民の女性と結ばれていたのです。」

「庶民?」

「ええ、跡を継がないしどこかに婿に入るのも気に入らないから自領を守る為に命を捧げると。当時は戦争の火種がくすぶっておりましたし、それに貴族よりも庶民として生活する方が気楽で、いつ戦火が上がるかもわからぬ状態の土地を見放して、違う土地で婿に入るのは考えられなかったそうですわ。」

「へぇーーー。なんかジャックさんはお父さん似なんですね。」

「そうですわね、ジャックが一番似ているようですよ。

さらにいつ死ぬかだってわからないのだから、好きな相手を嫁にしたいと庶民の女性と婚姻されたとか。しかもその時は跡を継ぐとも誰も思っておりませんでしたから性格的にも貴族に向かないし、さらにそのお相手の女性も爵こそ持ってはいませんがかなりの大きな商会のお嬢様で下手な貴族よりも裕福な家庭のお生まれなので、それならば良いのではという事で婚姻を認めたとか。」

「でもそのあと、跡継ぎになるわけですよね?」

「ええ、でも、その女性は実はとても優秀かつ、とても美しい方でいらして先程も申した通り、庶民といっても裕福な家庭のお嬢様でしたから、礼儀作法や行儀作法は全て習得された下級貴族よりも素晴らしい育ちの女性で才女でしたので家の者からは文句はでず、それどころか領民に愛されるご婦人だと聞き及んでおります。ですから、あのお家ならば問題無いと思いますわ。」

「家の者からは文句が出ずということは・・・」

「御察しの通り一部の貴族からはやはり影で蔑む者もいたのは事実ですわ。ですが、そう言う声を押しのけるほど魅力的な女性でもちろん苦労もあるかとは思いますが、つまらぬ妬みを気にしていたらきりが無いと仰っていらっしゃいましたわ。」

「メアリーさんはご存知なんですか?」

「ええ、私の父と辺境伯は関わりが深いので奥様にも私は大変可愛がって頂きました。あちらは女の子がいないので特によくして頂きましたわ。」

「そうなんですか。ちなみに性格はどんな女性なんですか?」

「そうですね。ジャックのお父様を心の底からお慕いしていらして普段はとても美しい優雅なご婦人ですが戦時になれば辺境伯の背中を任せる程、信頼関係が厚く剣術にもたけた女性です。」

「それ、めっちゃ強く無いですか?」

「そうなんですのよ。奥様の騎士姿はそれはお美しいのですわ!」

「騎士姿?!」

「ええ、実は一度隣国が攻めて来たことがあったそうで、その際に奥様も辺境伯と共に戦い、その後に女性でありながら騎士の爵を王より賜ったのです。」

「へぇーーー。かっこいいですねぇ!」

「はい、そのお話を題材にしたお芝居もあるくらいですわ!それが素敵で!」

「そ、そうなんですか。」

「ええ、ですから美しく強き女性で今では奥様の事を悪く言う方はいらっしゃらないと思いますわ。」

「じゃあ、やっぱり貴族からは人気なんじゃ?」

「もちろん、人気はありますがジャックはヘンリー様から離れる気は無いようですし、貴族の女性は堅苦しいと言って多くの縁談も門前払いだそうですわ。しかもそのお気持ちを誰よりも理解されてるご両親ですし、お父様がそう言う方ですから無理に貴族と婚姻しなくても良いし上のお2人が貴族の女性と婚姻されてご子息もいらっしゃるので特に縛りはジャックにおいては無いのですよ。あとは本人の気持ち次第ですわ。ウフフフフ。」

「メアリーさん、勝手に動いちゃダメですよ。」

「どうしてですの?」

「こう言うことは本人同士で成り行きに任せるのが一番ですよ。第三者が絡むと良いことないですから。それにもし、話がダメになった時に話が大きくなりすぎてはマーガレットさんの居場所がなくなります。ぜひメアリーさんにはマーガレットさんの心の拠り所でいてもらいたいです。たぶん俺に気になる人がいると話したのは、俺は鈍感なので気がつかないと思ったのと仕事の件があるからであって本来は話すつもりはなかったと思いますよ。」

「うーーーん、それもそうですが、あーーーんじれったいわ!」

「メアリーさん、ここは見守りましょう。」

「はーーーーい。」

不満気だけどわかってくれたようなので、良しとしよう。

「ところで、ジャックさん達は許嫁とかいないんですか?」

「昔は居たようよ。でもあんな物は結構、簡単に反故になるからたぶん今は皆いないと思いますわ。だってあんなにヘンリー様にくっついて仕事をしてたんですもの。身を固めるタイミングなんてきっとなかったはずですわ。ご病気もありましたし皆、自分の事を考える余裕がなかったのよ。そう思えばこれからは皆もきっと縁談が山のように増えるわね。クスッ」

なるほど。イケメン達が女っ気がないのはそう言う理由か。そりゃそうだよな。あんなキラキラしたイケメン達が女性に言い寄られない筈がないもんな。でもそうなると、マーガレットさんも大変だな。競争率はかなり高いぞ。とにかく上手くいくといいね。


読んで頂きありがとうございます。

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