91.杖とフードプロセッサーとハンバーグ
「おはようグリ殿!やっと洗えるよお!」
「うむ、しっかり洗え。あと、アーロン。お前はタクミと話をしろ」
「はい?何かございましたか?」
「アーロンさん、ちょっといいですか?」
俺はアーロンさんを連れて部屋に転移して昨日作った光魔法の杖であるマジックアイテムを見せた。
「こ、これは?!なんですか?」
「はい、俺の試作品の杖なんですけど、ちょっと試してもらいたくて説明は試した後でいいですかね?」
「わかりました。」
俺は転移してこの前の汚れていた川の少し上流のまた汚れている所にやってきた。
「試すのに汚い所に来なければならないのが辛い所ですね。」
「そうですね。じゃあ普通に魔力を注いで、ここを浄化してもらえますか?」
「え、ええ、わかりました。」
「ピュリフィケイション!」
ピューン
「あれ?これはいったい?」
「浄化魔法は使えてますね。何か違和感がありますか?」
「そうですね、私の魔力が使った分減っていますね。」
「そうですね。川も浄化されてますし成功です。じゃあ一旦俺の部屋に転移しますね。」
転移して部屋に戻るとアーロンさんから質問された。
「これは?今までの杖とは物が違いますがいったい?」
「これ、マジックアイテムなんですよ。アーロンさん、光魔法使えないですよね?ちなみに俺はこの杖に魔力を込めていないです。」
「はい?という事は私が光魔法を使った?いや、それはありえない。属性がないのだから・・・という事は魔力を変化させた?」
「御察しの通り、魔力を注ぐと光魔法に変換して浄化魔法を放つマジック杖です。どうやら古の魔法では使われていたようですが、時の流れと共に風化して忘れられてしまったようです。今までの杖は魔法を込めるだけで、これは付与魔法で作った杖です。」
「なんという事だ!素晴らしい!」
「そこで相談なんですがどちらの杖が欲しいです?」
「今後の浄化槽用の物ですね。そうですね。こちらは永久に使える物でしょうからこちらの方がありがたいですが、これを製品にして価値をつけるとなるととんでもないことになります。どうした物やら。」
「あの、これを販売して困る人ってどのくらいいてどんな人ですか?」
「そうですねぇ。販売されて困るのは贅沢を貪る教会関係者と、それを取り扱う教会で数はかなりのものになりますが、我が国は離脱したので関係ないですね。それに教会と申しましても他にも宗派はありますしあの贅沢三昧している宗派が光魔法の杖の販売ができなくなっても杖自体の販売は行っておりますからそんな痛手にはならないでしょう。」
「それなら安い価格で流通させちゃいます?」
「タクミ殿、それはいけませんね。そういうものが安い価格で販売されれば、他の火魔法などの製品も値段を下げろと言われかねません。」
「そっかぁ。ちなみに俺が作るのは光魔法だけです。理由は兵器利用されたくないので作る気はありません。」
「はい、それはなんとなく、感じ取れましたから、大丈夫ですよ。」
「よかったぁ。ちょっとドキドキしてたんですよ。」
「タクミ殿、私は領地経営で儲ける事は好きですが民を苦しめて儲けるようなやり方は致しませんよ。」
「はい。安心しました。」
「それをふまえてお話をさせて頂くとしても、やはり安価で売ってしまえば他の商売にも影響が出ますからもし販売されるのであれば高価にして頂き通常の物を教会よりも低価格で販売してもらう方がいいかもしれません。」
「そっかぁ。一応50本ずつ作ったんですよ」
「そんなに大量に?!タクミ殿の魔力量はいったいどれだけあるのか。えっと・・・マジックアイテムの杖の値段でしたね。価格をつけるとすると一本1000ペニーから2000ペニーという所でしょうか?」
「そんなに?!」
「そうですね。ですが、レイスも退治できますし、浄化槽代わりにもなります。そのくらいが妥当な価格ですよ。」
「ちなみにあの今までの杖はいくらするんですか?」
「あれですか?154ペニーです。」
「思いの外高くないですね。」
「そう思いますよね。実際に使うと一晩で一本のペースですかね。1発の効果が弱いので一体につき5発は撃たなければ浄化できませんから100発分と言っても実質、20体までしか一本で倒せません。大型のものになると10発撃たないといけない時もありますねぇ。」
「それは少ないですね。俺てっきり1発で複数倒せる物だと思ってました。」
「ですから、高いのですよ。
ちなみに光魔法の追加で付与してもらう場合39ペニーほどで追加付与してくれます。」
「おお!杖って空でも115ペニーもするんですか?!」
「そうなりますね。ちなみに製作から販売まで全て教会が担当しております。」
「そっかぁ。でも今ってその教会から離脱してるんですよね?杖が入ってこないんじゃないですか?」
「いえ、商人が手に入れてきますし流通はありますよ。」
「そっかぁ。あっ、他の属性の補充はいくらで請け負ってるんですか?」
「他の属性は多くても10ペニーですね。」
「そっか!よし決めました。マジックアイテムの杖は2000ペニーで販売してこっちの補充タイプを150ペニーで販売、さらに補充を10ペニーで請け負うというのはどうでしょう?」
「たしかに、それでしたら他を値下げしろとも言われませんし39ペニーと比べたら、正規な価格のようにも感じますしお得感もあります。」
「別にこちらとしては売れなくても痛くも痒くも無いですからそうしましょうか?人の命を左右するアイテムですしどうでしょうか?」
「はい、ぜひお願いします。では早速50本通常の物を卸して下さい。ペニーもお支払いします。」
「いや、それはいいですって。データを・・・それに予算だって無いんですからねっ?」
「価格が決まりましたし良いでは無いですか。それなら2本マジック杖だけでも売ってください。これがあれば旅の時にノアだけに負担をかけずにすみます。」
「わかりました。では納品しますね。」
こうして通常の杖50本とマジックアイテムの杖2本でペニーはこの二本分だけ頂いた。と言っても4000ペニーという額。しかもこれはアーロンさんのポケットマネー。とんでもない買い物をさせてしまったな。
俺たちはグリの元に戻るとすっかり水浴びは終わり只今、乾燥中。
「話はまとまったか。」
「ああ、ありがとな。グリ」
グリの乾燥とブラッシングを終えて朝食をとると俺たちは浄化槽の設置予定地に向かった。城壁から少し離れた跳ね橋を渡った外の土地で川のすぐそば。ここに汲み取り人が運んできたものを貯めて浄化し、水分は川に流して固形物は焼却するという仕組みの物を作る。
「では、早速始めますね。」
『クリエイト!』
ゴゴゴゴゴゴ
ゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴン
ピカーーーーーーーーーーーッ
1日一回まわせば処理できる俺特製のかなり大きな浄化槽が目の前にそびえ立った。よしよし、これであとは魔石をはめて試運転だな。すでに汲み取り人がかなりの人数で集まってきている。というのも昨日の分を持ってきてもらったのだ。魔石はアーロンさんが用意した物を俺がはめて、盗難などないように簡単には外れないように埋め込む。全て終わると眩い緑色の光が辺り一面を照らし汲み取り人達の歓声が上がった。
「おお!こんなでけえのを易々と作るあいつは何者なんだ?」
「さあなぁ。しかし俺たちには関係ねえさ。」
「そうだな、ここに持ってくんのは面倒くせえが、あの臭い川に毎日行かなくて済むようになるなら、
何でもいいさ。」
「何言ってんだ、結局臭いもん運んでるんだ。何も変わりゃしねえさ!それにお前自身が臭えしな。」
「違いねぇ、川よりおめえの方がくせえんじゃねえか?」
「へっ!バカ言うんじゃねえ!俺は10日にいっぺんは風呂に入る綺麗好きだぞ。」
「何が風呂だ、どうせそこいらの汚ねえ川で水浴びだろうにケッケッケ」
「違いねぇな。シッシッシッシッ」
10日に一回が綺麗好きのレベルかよ、恐ろしい話だな。
「それでは皆さん、順にこちらより処理をお願いします。」
「「「「「「「「へーーい」」」」」」」」
「タクミ殿、お疲れ様です。かなり大きな浄化槽を造られましたしお疲れでしょう。MPポーションもご用意してますが飲まれますか?」
「MPポーション?」
「魔力回復のポーションですよ。」
「あっ、大丈夫ですよ。平気ですから。」
「本当にあなたの魔力は底なしですね。」
「いやぁ、自分でもよくわかりませんけど、魔力操作が関係してるみたいで以前は魔力の使い過ぎか体のだるさとかもありましたけど最近は、めっきりそういう事は無くなりました。」
「魔力操作スキルですか。たしかにスキルが高ければかなり魔力が抑えられると聞きます。私はなかなかスキルが上がらないものですから鍛錬あるのみですね。」
「俺の場合生活の中に取り入れていたので多少スキルが上がっているかもしれませんね。」
「では、私はこちらの様子を見て他の仕事に参りますがタクミ殿はどうされますか?」
「俺も頼んでいたものとかあるので、それを取りに行ってきます。」
「わかりました。ではまた。」
こうして俺達は冒険者ギルドに転移した。そう、預けたポイズンスネークを取りに行く。まだ行ってないんだよな。
「こんにちは〜解体お願いしたポイズンスネークを取りに来ました。」
「おう、待ってたぞ。まず、ポイズンスネークの肉だ。買い取りは皮と毒袋と魔石があったから魔石の分で510ペニーで解体料が10ペニーで合計500ペニーでいいか?」
「はい、結構です。」
俺はクリスタロスにドッグタグをかざし、いつものように手続きを済ませて冒険者ギルドを出る。次に行くところがあるからだ。俺たちはボビーさんの工房へ転移した。
「こんにちは〜。注文の品できてますか?」
「お〜。よく来たな。できとるぞ。」
そう言ってボビーさんは作った品を俺に広げて見せてくれた。どれもこれも切れ味が良さそうに光り輝いている。
「これが包丁でこっちがお前さんに言われた通りに作った皮むき器とフードナンチャラでこっちがスライサーだな。んでこれはミキサーとか言うもんじゃ。」
「そうですそうです!これこれ!」
「じゃがフードナンチャラとミキサーは、同じ物じゃないのか?」
「いえ、刃が下に付いてるのと真ん中あたりで回転するのとでは切れ方が変わってくるんですよ。それに使い方も変えたいので助かります。あとはこれに俺が付与魔法をかけて完成です。」
「うむ、どこに付与するんじゃ?」
「はい、ここの蓋にかけます、見てて下さい。」
ポンッ!ポンッ!
ピカーーーーーーーーーーーッ
「おお!光ったの!」
「はい、では早速斬れ味を試してみましょう。」
俺はアイテムボックスから牛乳と苺とバナナと蜂蜜を取り出してミキサーに入れて魔力を注ぐ。すると風魔法が発動してミキサーの中身が回転を始めた。そろそろいい頃だろう。俺は蓋をあけると甘い香りのするミックスジュースが出来上がっていた。
「ほほう!こりゃ凄いな!しかも良い香りじゃ」
「どうぞ、飲んでみて下さい。」
「うむ、それじゃ遠慮なく。」
俺はグリにも注いでポヨに後片付けを頼む。
「うん!美味いのお!こりゃあ孫にも飲ませてやりたいのお!こんなに簡単にすり潰せるのか。思っておったより滑らかじゃわい。さすがミスリルじゃな。」
「そうですね。たしかにすごく滑らかでビックリです。」
でもこれだと見にくいな。やっぱりガラスで作って中が透けて見える方がわかりやすいな。
「こっちのフードナンチャラはどうかのぉ。」
「こっちは細かくする為の物であまりジュースなどのような物には向かないんです。これはこっちにしましょう。」
俺はワイバーンとオークの肉を6:4の割合で入れてフードプロセッサーに魔力を通す。数秒して蓋を開けてみるとミンチができていた。
「肉がぐちゃぐちゃになっとるな。これをどうするんじゃ?」
「はい、これを棒でこうやって練って粘りが出てきたらこの中に卵、パン粉、牛乳、塩、胡椒、炒めた玉ねぎを入れて混ぜ合わせて、よっ!それ。そして形を整えてよーし、こんなもんかな。そしたらフライパンで焼きます。」
「ほう、初めて見る料理じゃ。」
「半分くらいまで火が通ったらひっくり返して、このお肉の表面がテカテカして汗みたいに汁が出てきてふっくらと膨らんだら完成です。」
「ふむふむ、何やら音がしてきたな。おっ!これは良い香りじゃ!」
「そろそろひっくり返してもいいでしょう。」
「うむ、美味そうじゃなぁ」
「ええ、俺も久しぶりに食べるんで、嬉しいです。」
俺は焼いてる間にサラダや米やフライドポテト。ボビーさん用にパンを用意して焼き上がるのを待つと、いい頃合いの汗のかき具合だったので火を消して皿に盛り付けて完成!
「ボビーさん、ランチにしましょう!」
「おお、こりゃ嬉しいランチじゃわい。うっほっほっほ。旨そうな香りじゃ。ではありがたく頂くとしようかの。」
「はい、召し上がって下さい。さ、グリもな。」
「うむ、ようやく食えるのか。腹ペコだ。」
「ポヨも少しやろうな。」
「では!いただきまーす!」
パク
「うんめぇーーーーーーーーーーー!!!!」
「なんじゃこりゃーーーーーー旨いぞお!!!」
「おい!お代わりだ!もっとよこせ!!!ポヨも欲しがっておるぞ!」
「わかったわかった!ボビーさんもまだありますからねぇ〜」
こうしてあっという間にハンバーグを食べ終えて大満足した俺たち。
「ところでこの肉は何の肉じゃ?」
「これはワイバーンとピンクオークジェネラルですよ。」
「な、なにぃ???」
「こりゃ手間賃とれんなぁ。」
「何を言ってるんですか。お支払いしますから」
「しかしのぉ。」
「ボビー、貰っておけ。飯はお前の仕事の役得だ。気にするでない。」
「ほら、うちの稼ぎ頭がこう言ってるんですから」
「うむ、じゃあ18ペニーじゃ。ありがとうよ。」
「はい。」
俺はペニーを支払ってその後ボビーさんの普段の仕事である、武器の修理の鍛治仕事を見学して、まったりと1日を過ごし夕食も半分凍らせたワイバーンのお肉をスライサーでスライスして焼肉にして賑やかにご飯を食べて工房を後にした。このミスリルというのは本当に切れ味がいいから指を落とさないように注意しないとな。
読んで頂きありがとうございます。




