89.キッチンストーブ完成
「おお!来たか、キッチンストーブできとるぞい!」
「さすがですねぇ!」
「こっちじゃ、こっち!」
今はボビーさんのところにキッチンストーブを見に来た所だ。
「うわぁーーーーーー!水石のコーティングがオシャレですね!」
色とりどりの石が使ってあってタイルのようになっていてとても可愛らしい仕上がりで女性に人気が出そうだな。
しかもこれも小さくグリの獅子の姿のシルエットが描かれていて可愛い。
「一応、試しに使ってみたがいい具合にできたぞ。左の一番上は直火調理用で真ん中は中火、一番右端はお茶用のお湯を温めるポット用。左端の真ん中の段は薪を入れて燃やすところ。そしてその横にはオーブンで中は二段になっておる。そして薪の下のところは灰が出るから灰取り用の引き出しじゃ。さらにその右横は保温室じゃな。お主の言ったとおりに設計したぞい。もちろん外側は全て水石でコーティングじゃわい。そうすると触れてもやけどせんでな。煙突もちゃんとつけたぞ。」
「はい、完璧です!ありがとうございます!」
「うむ、この程度ならワシでなくても他の職人でも作れるはずじゃ。」
「じゃあ、特注品とかは他の職人さんにお願いするとしてチェックはボビーさん、お願いしますね。」
「うむ、任しとけ。」
「もしよかったらチェックもできるくらいの職人さんを育ててもらえませんか?」
「どういう事じゃ?」
「はい、こちらは俺の付与魔法がいらないのでコピーせずに職人さんに仕事を回して作ってもらえればその分みなさんも潤うかと思ったんですがきっとボビーさん、数が増えると嫌になっちゃうかと思うので最終工程までできる職人さんがいたらいいのかなって思ったんですよ。」
「そんな事まで考えてくれとるのか?そうじゃのお。これなら職人の仕事も潤うのお。だが、お主の儲けが減るぞ。」
「いいんですよ。グリが鉱山発見したおかげで1日に必要最低限のペニーは一生分もらったのであとはこの国の人がより良い生活ができるようにするだけなのと恩返しでここの領主さんの税収を増やす事が目的ですから。」
「つくづく人が良いのぉ。お主の場合、騙されても気がつかんタイプじゃな。気をつけろよ。」
「あははは。そうかもしれませんね。それにしてもやっぱりこれは重いですね。」
「そうじゃのお。持ち運ぶには無理じゃな。」
「家の据え置き用ですね。」
「そうなるな。」
「うーん、頑張って売ってもらわないとなぁ。そうそう、あと、お風呂も作りたいんですよ。しかも保温性のあるもので作りたいんですけど水石では駄目だろうし俺、前に一回作ってるんですけど土魔法で作ったやつで何の飾り気もないんですよね。あと、これ魔石が付いているんですけど水が出せるんですよ。壁とかにでも引っ掛けて水を浴びる物なんですが、こういう物を作るのって鍛冶屋さんの仕事になるんですか?」
「そうじゃのお。鍛冶屋にも色々おって大体は火魔法と、風魔法の使い手でスキルを磨いて物作りをするんじゃが土魔法を使って物作りするのは窯業じゃな。陶芸職人が専門じゃわい。あっちは鉱石は使わずに土を使ってなんでも作るが基本は壺や高価な皿だったりするな。水石で作るのも本業はそっちの職人じゃ。ワシは教わってスキルを磨いただけにすぎんからな。」
「そっかぁ。じゃあ、お風呂とかはそっちにお願いした方が良いですかね?」
「そうじゃのお。ワシも作れん事はないが向こうにも仕事を回してやってくれるか?」
「あの、良い職人さんでお知り合いとかいらっしゃいますか?」
「うむ、おるにはおるが、ここの領地にはおらんのじゃ。」
「というと?」
「ワシの娘でのぉ。夫婦で陶芸職人として生計を立てとるんじゃ。旦那が良い亭主でな。陶芸を続けながら一緒に子育てもして生活しとるわい。」
「へぇーーー。素敵なご家族ですね。どちらの領地にいらっしゃるんですか?」
「スタッフォード地域のバーズレムという小さな町に住んでおってな。近くの都市に製品を卸しとるぞ。ちょっと待っとれ、確かこの辺に・・・あったあった。これじゃ古い地図で少し見にくいがの。ほれ、この小さな町じゃ。」
「この街からはかなり離れてますねえ。そうか、いや待てよ。ザマゼットへ行く通り道ではあるか。」
「ん?どうかしたか?」
「ちなみにこの国の窯業って他には無いんですか?」
「うむ、窯業は全てここに集約されておるのぉ。」
「てことは、窯業製品は全部ここだけって事になりますか?」
「そうじゃなぁ。」
「商品の運搬ってどうしてるんですか?」
「土魔法系の職人の製品は大抵、ガーゴイルが運ぶのぉ。」
「おお!ガーゴイル!確かにそういう使い方もできるよな!思いつかなかった!」
「下手な魔物をテイムして飛んでいくより安全じゃな。しかも飲まず食わずでひたすら飛ぶし寝ることも必要ないからのぉ。」
「確かに。でもその間中、魔力を使いますよね。」
「そうじゃな。大抵は魔石が埋め込んであるぞ。」
「へぇーーー。便利だなぁ。」
「まぁ、かと言って一箇所飛んだら帰ってくるからなぁ。色々な場所へ立ち寄ることはできんようでのぉ、じゃから高価な製品の時によく使うみたいだな。色々、振り分けたい時は運び人に頼むんだ。高速便なんてのもあるぞ。」
「へぇーーー。それも魔物使ってるんですか?」
「人族やら獣人が魔物に乗って運ぶんだ。高速便は大抵空を飛ぶ魔物だな。みんなテイマーがほとんどだ。」
「へぇー!どんな魔物ですか?」
「そうさなぁ、色々いるがワシのとこによく来るやつはヒッポグリフやアルゲンタビスとか空飛ぶ車のやつもいるぞ。」
「空飛ぶ車?それ魔物なんですか?!」
「朧車とかいうやつか。」
「おお、お主よく知っとるなぁ。」
「グリ知ってるのか?そのオボログルマってやつ。」
「ああ、海の向こうの魔物だが人族とうまく共存しておる魔物だ。」
「へぇーーー。こっちにもそういう魔物はいないのか?」
「こっちで、車の魔物を見たことはない。飛んでる時にすれ違ったのだ。こっちの馬車の箱型の車があるだろ?あそこに顔がついておってな。なんでもその土地は変わっておってな。長く大事に使われた物が魔物になるらしいぞ。」
「へぇーーー。やっぱり土地によって魔力とかが違うのかな?面白いな。それも」
「凶暴な奴であったらとんでもないがな。人族を襲うものもおるらしいから一概に面白いとは言えんぞ。」
「うげっ!それはこわいな。」
「国が違えば違う魔物がおるからなぁ。」
「そっかぁ。そういえば今度ザマゼットまで行ってこようと思ってるんですよ。きっと場所が違ったら違う魔物もいるんですよね。」
「おお、遠くまで行くのぉ。あそこは確かダンジョンがあったな。ダンジョンに行くならあまり無理はするなよ。奥まで行きすぎて死んだら話にならんからな。」
「そうですね。その途中でボビーさんの娘さんのところに寄っても良いですか?」
「おお!ちょうど良いのぉ。しかしあそこに行くには遠回りにならんか?」
「え?そうなんですか?でも真っ直ぐ行けばちょうど通る事になりますけど。」
「空でも飛んでいかん限り真っ直ぐは無理じゃ。迂回していかねば道がないぞ。」
「あっ、飛んでいくんです。ちなみにグリが。」
「なに?!獅子が飛ぶなんて聞いた事ないぞ!」
「あっ、変化してるんですよ。グリの本当の姿は、グリフィンと言って空飛ぶ巨大な魔物なんです。今は小さく変身してもらってます。他にも鳥にもなれますよ。」
「な、なんと!お主すごいのぉ。どうせなら本来の姿のシルエットの方が良かったか?」
「いや、この獅子の姿も気に入っておる。お主の作品のシルエットは中々良い出来だ。」
「そうか。気に入ってくれてるなら良いな。」
「それじゃあ娘の所に手紙を送っておくから、ぜひ寄ってやってくれ。」
「すみません、助かります。」
「なあに、こっちも嬉しいわい。」
「じゃあ今日はこの辺で帰りますね。だいぶ長居してしまってすみません。」
「いや、お主達なら大歓迎じゃ。うちに来る客は武器を作れ作れとうるさくてなぁ。しかも既存製品の切れ味のさらに良い奴を作れとかぬかしやがる。そんなつまらんもん、誰が作るかってんだ。それに比べてあんたのは新しい物だし生活に密着しとる。それが楽しくてなぁ。まあいつでも遊びに来い。なんか閃いたら助言もできるかもしれんでな。」
「そう言ってもらえると助かります。それにここはなんだか落ち着くんですよ。」
「そうか。いつでも来い。」
「わかりました。じゃあとりあえずキッチンストーブと三口コンロのお代を払いますね。」
「おう、そういや、お前さん包丁とか、あとなんだったかなほれ、」
「あっ!忘れてた!フードプロセッサーとミキサーと皮むき器とスライサーに包丁!ぜひ作ってください。」
「そうそう。ミスリルで作らんとな。」
「んじゃそれ、お願いします。」
「絵を描いてくれ。ほれ、これな。」
「はい、あっ!あとさっきのキッチンストーブとオーブン付き三口コンロ、二つの制作費いくらになりますか?」
「うむ、ありゃ材料はもらっとるから手間賃で16ペニーでどうじゃ?」
「はい、じゃあ16ペニーで。今後、売れたら1ペニーずつ入るようにしますね」
「ああ、じゃ、とりあえずそれ書き終わったら精算してそうだな、2日か3日ありゃできるだろ。それくらいしたら取りに来いや。」
「わかりました。よろしくお願いします。」
こうして結局のんびり喋りながら絵を描いて楽しい時間を過ごしマーガレットさんを待たせる事になった。
ごめんね。マーガレットさん。
読んで頂きありがとうございます。




