70.俺と特許状と店舗
長い1日が終わり目覚めた朝。
昨日は色々なことがあったなぁ。
「おはよ、水浴び行くか?」
「うむ、そうだな。ポヨ参るぞ。」
俺たちの朝はグリの水浴びから始まる。
俺たちと言うのはヘンリーさんも含めてだ。
「おはよーーー!!!
さー!今日も洗うぞ!!!!」
そう、相変わらずこの優雅な貴族さんは
飽きもせずグリの身体をゴシゴシ洗ってくれる。
本当にこの人、変わってるよなぁー。
ここに来てポヨが噴水まで綺麗に掃除するので
前以上に噴水が綺麗になり、今では噴水の掃除が
必要ないそうだ。
使用人さんがこっそり教えてくれて感謝された。
ポヨやグリも到着したての頃は怯えられたりした
けど少しずつ、受け入れてもらえそうで安心したよ。
「タクミ君、こっち流してぇー」
「はーい。」
この水浴びは最近ヘンリーさん主導で行われるようになった。
面白い貴族だよなぁー。
そうして水浴びが終わって身体を乾かしたらブラッシング。
一通り終えて噴水掃除と乾燥中に落ちた毛の掃除を
ポヨが終えると、次は俺たちの身体を服ごとポヨが
綺麗にしてくれて朝食を食べに食堂に行くのが
ここに来てからの朝の流れだ。
「さ、今日の朝食は何かなぁー?」
「あっ!ヘンリーさん。
厨房が空いてる時間にちょっと借りたいんですけど
いいでしょうか?
料理を作りたくて。」
「ああ、コック長を朝食の時に紹介するから
相談して好きに使ってくれよ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
そして俺たちは食堂で美味しい朝食を食べ終え
呼んでくれたコック長さんに使用許可をもらい
厨房を使わせてもらえることとなった。
他にも話をしていると突然カラーンカラーンカラーンと
大きな鐘の音が響いた。
「なんだ?今の音?」
「おっ。始まるな。
これはこのグランド王国で何か発表がある時に
鳴らされるマジックアイテムのベルの音さ。
この国にいる、身分証を持つもの全員に
鐘の音が聞こえるようになっているんだ。
身分証を持ってないと聞こえないんだけどね。」
「へぇーーー。そんなアイテムもあるのかぁ。」
「皆の者よく聞くが良い。
グランド王国の偉大なる王!
我らがエリザベス女王が朝議で特許状を発行されたっ!
次の者はこれより商人として全ての権利を持つ者とするっ。
もちろんこれには親方株ならびに商品の独占販売を
認めるものであるっ!
これは女王さま直々の特許状ゆえ
もしこの者に危害を加えたりさらに商売への
妨害行為などをする者には王家への反逆とみなし
ここに厳重に処罰する事を宣言する!
それでは発表する!
特許状を贈られし者は
リッチモンド商人ギルド所属 タクミ・イトウ!
かの者に特許状を発行するっ!」
「ええええええええええええ!!!!!!!!」
するとドッグタグが光り出した!
「不服申し立ては今回に限り無効とする!
これは王命である!以上!」
「な、な、な、」
「タクミ君、大丈夫だよ。
今、特許状が発行されてステータスが自動で
書き換えられて必要事項が追加されてるだけだから。」
「いや、その、あの。」
「ああ、昨晩あったエリザベスはね、
私の妹にしてグランド王国テーダー朝第5代目の
この国の偉大なる美しき女王さっ。」
「な、な、な、なにぃーーーーー????」
「あははは、驚くよねぇーーーーあはははははは」
「いや、笑い事じゃないっていうか、
えっ?ヘンリーさん、まさかの王子さまだったんですか?
あれ?でも、なんで?!お兄さんって事は、
えっ?王様?はぁーーーーー????」
「落ち着いて、目が飛び出すぎて落ちそうだよ!
面白いねあはははそんな顔もできるのあははは!」
「いやいや、説明してくださいよ。」
「あははは、ごめんごめん。
まあ、簡単に言うと、私の母は後ろ盾のない人でね。
でも父、2代目国王はとても私の母を愛してくれて
いたが父は2代目の王とは言え王位は盤石ではなく
他の親戚筋に王位を奪われかねない立場にあってね。
そこで後ろ盾のある、かつ強い男の後継者を望んだ。
それで私は王子ではなく庶子として扱われた。
だが、王は最後まで私の待遇を悩まれたようでね。
庶子としては有り得ない高待遇の地位と名誉と
領地を下さったと言うわけさ。」
「でも、エリザベスさんは女性では?」
「ああ、父亡き後三代目のエドワードが継いだんだけど
病弱ですぐに他界して、私の腹違いの姉にあたる
メアリー姉様が4代目を継いだが、かなり悪政を行ってね。
そして、呪われたのか病で亡くなり、最後に残ったエリザベスが5代目になったのさ。
私とベスは他の2人とは違いとても仲が良かったんだ。
まあ、ベスもまさか自分に王位が回ってくるとは
思っていなかったんだよ。
彼女も一度は庶子に落とされたが身分を回復したりで色々あったのさ。」
「ヘンリーさんは?」
「私が身分を回復というか、王太子の話もあったようだが、
産まれてすぐ庶子に落とされた者が身分を回復するのは
並大抵のことではないためそうはならなかった。
まあ、幻の皇子とかいう人もいるけどねぇ〜
でも私は興味なかったんだよねぇ〜
私が王様っていうのはどうもピンとこないし、
いつも毒に怯えて暮らすのってつまらないじゃないか。
気楽な今の生活が一番だよぉ〜」
「いやいやいや!
えっ!、俺そんなすごい人に!ってか
あの、昨日の帰りの秘密ってあれ、
国のトップシークレットじゃないですか!!!
マジかヨォ!!!!」
「そうだねぇ。まぁ、そうなるかな。
ま、特に今となーんも変わらないし
これからも仲良くしてよね。タクミ君。」
「ヘンリーさん。あなたって人は。」
「おい、タクミ、あの人族が王だとしても
我も王だぞ。何も変わりはあるまい。」
「いや、グリ、それとこれとは」
「何がそれとこれだ!我は崇高なるグリフィンの王だぞ!」
「ああーああーもうわかったよ。」
「とにかく、これで商人ギルドも手が出せないほどの権利を手に入れたわけだから、堂々と商売ができるよ。」
「そ、そうですね。しかしあの声ってどこから
聞こえていたんですか?」
「あれかい?念話だよ。念話。
全国民に一斉に念話できるそういう音魔法の遣い手がいてね。
この国で大事なことや今日みたいな発令の時の
ために仕えている者がいるんだよぉ〜。」
「凄いですねぇ。全国民ですか!
物凄い数ですね。しかも音魔法って特殊ですね。」
「そうそう。音魔法使いは数も少ないし
仕事に困る事はないんだよ。」
「へぇーーー。」
いろんな職業と魔法使いがいるんだな。
「さて、じゃあ販売拠点になる店舗探しや
従業員を決めないとね。
商人ギルドに行こうか。
きっとキャサリンの事だから準備して待ってるよ」
「え?そうなんですか?」
「彼女はやり手だからね。」
「はぁ。そういえば全ての権利ってなんですか?」
「それは庶民には色々と制限がございますので
例えば、服装は華美なものは許されておりません。」
「アーロンさんっ。おはようございます。」
「はい。今の発令を聞きましてお邪魔致しました。
おめでとうございます。」
「あ、ありがとうございます。」
「先ほどのお話の続きですが例えば誰かに
縛られている農民や奴隷であっても
自由に行動できるように、
さらにタクミ殿の財産はご本人が所有できるように、
配慮してくださったのかと思われます。」
「そうだね。ベスは君の事をよく知らないから
配慮してくれたんだろう。
例えばだけど君が成功してから、
あやつはうちの奴隷だったから財産よこせぇー!
とかいう輩もたまにでてくるんだよねぇー」
「うおっ!なんですか。そんなん泥棒より
タチが悪いじゃないですか?!」
「まあ、世の中悪い奴も沢山いるからねぇ。」
「こえぇ。」
そうして俺とヘンリーさん、なぜかアーロンさんまで
一緒に商人ギルドへ向かった。
商人ギルドに到着して受付に行くとすぐに
二階のキャサリンさんの部屋に行くように案内された。
どうやら来ることを見透かされていたらしい。
ヘンリーさんの言う通りだ。
コンコンコン
「はい、どうぞ。」
「失礼します。」
中に入ると待ってましたとばかりに資料を渡される。
「あ、あのこれって?」
「まず1枚目が運営を行える選りすぐりの優秀な
Dランクの人材です。
横には賃金の希望が書かれています。
あと商人ギルドの評価です。
そして2枚目は貸店舗のリストです。
中には売り物件もありますがとても高いので
始めは資金のことを考えますと賃貸がよろしいかと。
三枚目はEランクの優秀な人材です。
販売スタッフは必要かと思いますので。
一応用意させました。
賃金は横に書いてあります。
雑用については募集して面接などでも良いのかもしれません。」
「ひぇーーー。まさかここまで用意して
いらっしゃるとはビックリですよ。」
「特許状が出たと言う事は王家のお墨付きを頂いたわけです。
こちらが動かないわけありませんわ。
すぐにこの領地以外からも注文が入りますわよ。
タクミ様。」
「なるほど。どうしようかな。
まずは店舗だよな。
うーんと、大体どこも家賃は月に60ペニーか。
そうだな。これなら問題ないな。
おススメの場所とかありますか?
俺としては今回、化粧品関係のものしか
売らない予定です。
まずは化粧品展開してペニーを貯めて
そのあと土地を購入してお店を建築したいと思ってます。」
「なるほど。ではこちらはいかがでしょうか?
中心街よりは離れますがお売りするのは貴族の方々
でしょうから、店側がお宅に訪問して
商品を販売する形となりますのでそうなりますと、
お店は中心街になくても良いかと思います。」
「なるほど。ただ俺は庶民向けにも化粧品を販売する
予定なのでお店にも人を集めたいですね。」
「そうですか。庶民にも。
でしたら中心街の少し値段は上がりますがこちらの物件
でしたら人の集まりも良いかと思いますよ。
もしくは人を雇って庶民用には露店販売という手もあります。
その方が市場で売りますので売れるかもしれません。」
そうか。庶民には露店販売の方がウケがいいかもしれないな。
「露店販売いいですね!
では店舗は初めの中心街から少し離れたこちらの物件の
広い物件。これに・・・ヘンリーさん。」
「なんだい?」
「貴族って買い物行かないんですか?」
「そうだねぇ。出入り業者が届けてくれるからねえ。」
「うーん。なるほど。
じゃあ貴族の方は店に来ないのかぁ。」
「服屋とかはたまに行くかな。
既製品を見に行ったりするよ。」
「そうですか。ちなみにお店は中心街ですか?」
「そうだねぇ。」
「うーーーん。例えばこの位置だと貴族の方は
来てくれませんかねぇ。」
「そうだねぇ。よほどいい品があれば行くけど
中心街の方が行くかな。
何軒かまとめて見られるからねぇ。」
「そうですか。ならば中心街にしましょう。」
「何か考えでも?」
「はい、毎回貴族の家に行くのって
馬車代だったり経費がかさむと思うんですよ。
でも、あの反応を見る限り、俺の化粧品は
良いもの、売れる物と判断して強気にでて
お客様にご来店頂くスタイルにしようかと思います。」
「お客様ご自身で買いに来させると?」
「はい。そのかわり、上等な椅子に内装にも
もちろんお金をかけて仕上げ、心地の良い
お姫様になったような気分を味わって頂き
商品の説明やお肌に合ったものを選びご購入
頂くという考えです。
基本、新規のお客様や新しい製品を購入されるお客様は
時間も予約制にしての販売としてご案内させて頂きます。
お客様のメリットは待ち時間もなくすぐに接客してもらえる事。
こちらのメリットはコンスタントに接客、説明
ご案内ができる事です。
さらに既存のお客様は別にカウンターを設けて
そちらで詰め替え製品の販売を行います。
詰め替え製品を購入の方は容器を持ってきて頂き
従業員がその容器を預かり洗浄して新しい物を
詰め替え、補充してペニーを頂き商品を渡すという流れが良いのかなぁと思ってます。」
「という事は新しい製品はすぐには買えないとなりますね。」
「その通りです。」
「それではお客様は他店に流れませんか?」
「それなら仕方がありません。
俺の商品はお客様の肌に合わせた商品ですし
10人が10人、同じものを売って綺麗に仕上がるものではないですし使い方を理解していただければ10人が10人。
納得して美しく輝ける商品だと思っていますので
それで問題ないかと思います。」
「そうですか。その商品を見せていただく事はできますか?」
「はい、宜しければメイクをさせて頂きたいのですが宜しいですか?」
「わ、私にですか?」
「もし、タクミ君が抵抗あるなら
うちの侍女を呼ぶけど今一番、美しく仕上げられる技術を持つのは彼だけだよ。どうする?」
「そ、そうですか。
かしこまりました。よろしくお願いします。」
俺は昨日のように、肌質を確認して
説明をしながら洗顔からフルメイクまで全て済ませた。
「こ、これは!こんなに塗ってるのに蜜蝋のベタつきもなければ厚塗り感もないし仕上がりも自然でサラッとしてるわ!」
「はい。キャサリンさんはオイリー肌なので
油分の多いものはさけてパウダー系を多く使って
仕上げました。
もし、乾燥肌の人にこのメイクをしてしまうと
パキパキのお肌になりますがオイリー肌の方には
パウダーを使う事でちょうど良い油分量を考えてメイク
しています。」
「なるほど、これはたしかに説明が必要ですね。」
「はい。ですから従業員もできれば女性を
雇用したいのですが、多くは男性の方でしたので
どうしたものかと。
やはり女性の肌に触れるわけですから
女性の方に今、俺がやったようにお手入れの
サービスをして頂きたいのです。
それから今は、やりませんでしたけど
お肌に良いマッサージとかもできれば取り入れて
さらに心のリフレッシュもできるように
今後、していきたいんですよ。」
「ほう、女性ですかタクミ殿。
たしかに女性は仕事をしたくても職業が限られますし、
それに賃金も男性より抑えられるという利点がありますね。」
「へぇ〜女性の方が賃金安いんですか?」
「まあ、そうだね。でも職業にもよるよ。
女性のドレスを作る人はやはり女性だし
糸を紡いで織るのは女性だから。
その他はやはり賃金は安いかな。
使用人も女性は低コストだね。」
「なるほど。女性で優秀な方いらっしゃいませんか?
特にDランクの方。
経理などを担当するEランクの方は男性でも良いですが。」
「そうですね。居るには居るんですが、この方。
とても頭脳明細、商才もあり、元々は裕福な商人の家庭で育っているため品もよく貴族の方の扱い方もよく心得ていてとても素晴らしい方なんですが・・・。」
「どうかされました?」
「この方は積荷が倒れてきて下敷きになり
腕と足が挟まれてしまい、ポーションを使ったのですが回復しきらず、少し不自由なお身体なのです。
脚は引きずる程度ですが腕は肘から下が動きませんね。
ですからメイクを施したりマッサージなどを行うサービスには不向きかと。」
「そうですか。その人より優秀な女性っていらっしゃるんですか?」
「女性ではこの方がトップクラスですね。
というよりも男性の中においてもトップクラスと言えるでしょう。」
「男性の賃金を見ると日当6〜8ペニーですね。
その方は?」
「そうですね。彼女でしたら2〜4ペニーです。
立場的な事を考えますと4ペニーですが、
その、腕や、脚の件がありますので2、3ペニー
でも問題ないと思います。」
「随分と女性は賃金が安くなるんですね。」
「そうですねぇ。」
「その女性に会えませんか?
できればお会いしてお願いできるか見極めたいのですが
どうでしょうか?」
「かしこまりました。では、少々お待ちください。」
チリンチリン
キャサリンさんがマジックアイテムのベルを鳴らすと
ギルド職員さんがドアをノックして入ってきた。
このベルって本当、すごいアイテムだな。
「この方に連絡を取って求人の件で来て欲しいと
伝えてくれますか?」
「わかりましたぁ。お待ち下さ〜い。」
随分明るい元気な女の子だったな。
商人ギルドの職員さんっていうより食堂の元気な看板娘って感じの女性だった。
コンコンコン
「はい、どうぞ。」
「ギルマス〜すぐ行きます〜って言ってましたぁ。」
「ありがとう。また、お願いね。」
「はぁ〜い。」
「商人っぽくない子だね。」
「失礼。彼女は音魔法使いの連絡係でして。」
「あぁ、なるほど。」
「連絡係?」
「ええ、ギルドの登録商人などにお知らせをしたり
呼び出したりする際に彼女のような連絡係を使うのです。
鳥の魔物も使いますがこのリッチモンド領内くらいでしたら音魔法の方が早いんですよ。」
「へぇ〜領地の外では使えないんですか?」
「彼女はそうですね。広範囲にしかも大勢に伝えられる
今日の発令などを行う音魔法使いは相当な遣い手であり
賃金もとんでもない金額でうちのようなギルドでは雇えません。」
「な、なるほど。
でも、相手の声も聞こえるなら大勢に伝える人は大変ですね。
みんなの声が聞こえるんですよね?」
「タクミ殿、おそらくその心配は無いようですよ。
発令などの場合、発するだけで受信はしないようですから。
その辺りは切り替えができるようです。
あと、会話となると大勢とはできないようですね。」
「そうなんですね。凄い技能を持った人がいますね。」
「タクミ様も十分凄い方だと思いますわ。
ところで予約の取り方は一度店舗に足を運ぶ必要がありますわね。」
「そうなんです。貴族の方でしたら使用人さんに
来ていただく形となりますね。
構想としては説明の為の基礎化粧品カウンターと
ベースメイクカウンター、説明なしで購入する
詰め替えカウンターとポイントメイクカウンター
そして基礎化粧品とベースメイクの両方の商品を
取り扱うカウンターと将来的にはマッサージを
行うマッサージカウンターを考えています。
これはほとんど新規のお客様がいなくなったらの
展開ですので当分先の話ですね。
カウンターには全て椅子を用意し詰め替えの際も
座ってお待ち頂き商品の受け渡しは会計カウンターで
支払い終了後に会計カウンターの者がお渡しをします。
支払いは全て経理担当の方にお任せすれば
お店のドッグタグも少なくてすみますからね。
店舗で取り扱う商品はそれぞれお客様のお肌の
情報を小さな羊皮紙で作ったカードに書いて
お渡しして次回購入する際にはそちらを出して頂き
すみやかに製品をお勧めや詰め替えがお出し
できるようにしようと考えてます。
始めのうちはベースメイクや基礎化粧品のカウンターがかなり混雑すると思いますが一ヶ月もすればこちらの
カウンターは暇になり詰め替えやポイントメイクを扱う
カウンターが混み合うと予想されますので、
そちらの従業員も詰め替えができるようにしていこうと
思います。
ちなみに露店ではシンプルシリーズのみの販売。
メイク用品は販売せずにいこうかと思ってます。
たぶんそんなにメイクする女性は少ないと思いますから。」
「そうですか。ポイントメイクというのは
アイシャドウやチークに口紅などですね。」
「はい、そうです。
こちらは完全、お客様の好みですから。
ガラス張りのケースの中に展示しておいて
好きな色をお申し付け頂いて販売する予定です。」
「そうなるとメイクを落とす製品も必要ですね。」
「そうか。それも説明が必要になるのか。」
「もしくは店内にやり方を書いた羊皮紙を
貼っておけば良いのではないですか?」
「なるほど、それでクレンジングのやり方は
それを見て頂けば問題なさそうですね。
実際、基礎化粧品の時にご案内しますしたぶん始めの
段階で大多数の方が説明は受けているでしょうから。」
「そうですね。
鉛白粉の交換の件ですがどのようにお考えでしょうか?」
「ああ、そっか。それが大本命でしたね。
先程言ったカウンターとは別に交換カウンターを設けましょう。
そして既存の白粉をお持ち頂いた方は説明して俺の商品と交換する。
内容はベースのクリームとファンデーションと
必要な方はフェイスパウダーですかね。
交換する物なのでベースのクリームは無色の物とします。」
「はい、ではこちらで予約を先に取らせていただいても
よろしいでしょうか?
お客様にはこちらからご案内を出させて頂き都合の良い
お日にちを伺ってタクミ様の元にご連絡致します。」
「タクミ殿、それでしたら先行販売という形で
7日間ほど、交換のお客様の期間を取り、
それ以外では交換の受け付けはお断りしたらいかがですかな?」
「そ、それは・・・」
「もし、どこかから既存の白粉を手に入れて交換に
何度も来られても困りますしタクミ殿が営業を
始めてから優先的に予約を入れろとギルドに
言われましても難しいですし、早期解決が目標ならば
いつでも来られる状態より期間を決めた方が良いのでは
ないですかな?キャサリン殿。」
「たしかにそうですが、貴族の方はこの領地に
いらっしゃらない場合もございますので。」
「そういう方は仕方がないですね。
戻ってこられた時に判断して貰えばいいのでは
ないでしょうか?
冷たい事を言うようですが、商売には転売が付き物。
見たところ、使う方の肌と合わない物を使えば
トラブルが起きる可能性は否めません。
そうなればこちらが販売していないのにもかかわらず
トラブルだけ持ち込まれたり評判を落とされたりしかねませんから。」
「そ、そうですか。
ですが独占販売の発令がありましたので転売は表立って
できないと思いますが。」
「他の国に行ったら表立って売れますよね?」
「そ、それは。」
「あなた、わかっていないようですね。
ハッキリ言わせていただければ、この鉛白粉を
広めたのは紛れもなく、商人とさらにそれを商品として
認可した商人ギルドです。
その責任を全く取らずに有耶無耶にしようなどと
虫が良すぎではありませんか?
交換の対応はそちらの責任でやるべきであり
タクミ殿に押し付けているように見えますよ。」
「それは商品をお預かりできないからで」
「預けるほどの信用に値しないからです。
預けるのに反対したのはうちの奥様です。
成分を調べて擬似品を作る可能性があるのではないかと。」
「そ、それは、その。」
「そんな方々にお渡しするわけには参りませんな。
たしか以前うちの奥様が作った刺繍のデザインを
預けて一ヶ月ほどであり得ないほどそっくりな
物が安価で販売されましたよね。
製作は一ヶ月はかかるはずの物。
さて、そのデザインはどこから流れたもの
でしょうかねぇ。」
「たまたま、同時期では?」
「ほう、そうですか。
ではタクミ殿の商品に似たものが一ヶ月後位に
出回るのでしょうかねぇ?
たまたま。」
「・・・」
「商人ギルドはそういった点であまり信用できないのですよ。」
「まあまあ、アーロン。鉛の毒性は我々も
認知していなかったわけだし仕方がないさ。
キャサリンだって毒と知っていれば認可なんか
しないはずだしね。
でも、そうだな。アーロンの言うことも一理あるな。」
「どう言うことですか?」
「うーん。よし、タクミ君。キャサリン。
こんな案はどうかな?
人材の紹介、仲介は商人ギルドは無償で行う事。
きっと仲介料取るつもりでいたんだろ?」
「そ、それは・・・」
「先行で交換してもらえるんだから
その辺り努力しないとね。キャサリン。
それから営業の終わり頃に商人ギルドの者が回収品を
取りに来てその場で交換した分の商品代金を支払う事。
もちろんこれは卸価格ではなく販売小売価格の値段だよ。
もちろん、値引きなどは一切しない。
そして必ずその鉛白粉は処分する事。
どうだい?約束してもらえるかい?間違っても鉛白粉を
転売なんてしないと信じてるよ。」
「かしこまりました。お約束致します。」
「それから、タクミ君。
店舗が出来上がるまでに口コミでうちのメアリーに先に
頼んでみないかい?」
「というと、どういう事ですか?」
「メアリーがお友達をお茶会に招待すればすぐ君の
化粧品の事は広まるさ。
そこで欲しい方にはお譲りするのさ。」
「そうすれば店舗が出来上がるまでにはかなりの方に
噂が広まりますね。」
「そうですなタクミ殿。
先に広げておけばギルドが各お客様に交換できると
案内した時に簡単に集客ができるようになるでしょうね。」
「ですがその方々の交換はどう致しますか?」
「その時は交換せずに効果のわかる程度に
ほんの少しだけお譲りすればそれがある分は
鉛白粉を使わないだろう。
そして切れる頃合いで招待状を送ってくれれば
飛びついてくるんじゃないかい?」
「なるほど。
かしこまりました。では先行交換の一番のお客様を
メアリー様のお友達から始めましょう。
そうすればさらに噂は広まりますし交換も7日もあれば
何とかなると思います。
この領地内で鉛白粉をお買い求め頂いている方は
物自体がとても高価な物ですから貴族の方や商人の
奥様方で何百人という数ではありません。
もし、この期間で何かお手伝いが必要であれば臨時に
人も派遣できるように致しましょう。」
「悪いねぇキャサリン。」
「いえ、リッチモンド公やアーロン様にはかないませんから。
特にアーロン様には私など叶うはずがありません。」
なになに?アーロンさん何者?
「タクミ君、不思議そうな顔してるねぇ。
アーロンはね、侯爵家の3男でね。
しかも特別優秀で通常貴族や商人の子供が通う学校を飛び級
して早く卒業しもう一度商人のコースを学び直して首席で卒業した逸材だよ。」
「ええええええっ!!!!また、偉い人だ。」
「いえ、三男ですから庶民です。
それに、兄様の補佐をするようにと言われて育ちましたので
貴族の勉強も必要ですが経営や商いの知識が欲しかったのです。
まぁ、兄様たちは健康でしかも優秀ですから補佐の必要が
なくなりまして、ヘンリー様の所で永久就職致しました。」
え、永久就職・・・。
何だか少し意味が違うような。
「まあ、アーロンいないと私はなーんにもできないからね。」
「そんな、めっそうもない!」
コンコンコン
「はい。」
「マーガレット様をお連れしました。」
「お通ししてください。」
「失礼致します。」
足を引きずりながらも笑顔の素敵な小柄な女性が部屋に通された。
「お待ちしてましたわ。マーガレットさん。
こちらへおかけください。」
「はい。」
「こちらの方は新たに店舗を出そうと
お考えなのですが経営を任せられる人物を探していましてね。
そこで貴女に興味を持たれましてお呼びしたのです。」
「そうですか。店舗の概要を伺っても?」
キャサリンさんは俺が説明した内容をうまく
まとめてわかりやすく話していた。
さすがギルマス!
「その内容ですと、私は手と脚が不自由なため残念ながら
販売などのお役に立つのは難しいかと思いますがその分、
経理や店舗運営の方向性を示したりする事は
できるかと思います。
何より今までにない形態のお店で商売です。
しかも女性の雇用をしてくださるなら
とてもやりがいがあります。
ぜひ、雇っていただきたいですわ。」
やる気はありそうだな。
しかもハンディーキャップを感じさせない明るい雰囲気。
俺はヘンリーさんとアーロンさんを見ると
2人は頷き、合格。っと言ってるように見えた。
「そうですか。
改めまして私が経営者のタクミです。
マーガレットさん、これからよろしくお願いします。」
「よろしいのですか?私はこの通り手や脚が・・・。」
「その分、経理や経営を頑張って下さると期待していますが
できれば接客もお願いしたいと思っていますが、
やってほしいと言ったらやって下さいますか?」
「もちろん、やる気はありますが、なにぶん不自由なもので、
少々手間取るかもしれませんができる限り努力致します。」
「素晴らしい。そのやる気!有難いです。
俺、経営とかさっぱりなんですよ。
正直、丸投げするつもりでいますので大変ですよ。」
「それでしたら、なおさら頑張らないといけませんねっ!
とても楽しみです。」
「では、雇用内容としては日当4ペニーでいかがですか?」
「そ、そんなに頂けるんですか?」
「もし、売り上げがあまりにも悪ければ下がるかもしれません。
逆に売り上げが良ければ金一封として還元しますので頑張って下さい。」
「えええええ!!!!が、頑張ります!」
「では仕事内容やお休みなど詳細はまた決めさせて頂き
ますのでタクミ殿、これから城に来て頂くのはいかがですか?」
「はい!マーガレットさん、お願いします。」
「かしこまりました。よろしくお願いします。」
「さて、それでは店舗について一度確認した方がよろしいですか?」
「そうですね。一度見てみたいです。」
「では店舗を見に行き、気に入ればそちらで仮契約致します。
そしてすぐにデザイナーを呼びましょう。」
マーガレットさんが契約前にもかかわらず
意見を出してくれた。
よしよし、いい感じだ。
「そうだ。
あとの経理などを担当するEランクの方や
その他の従業員の方ですけど、マーガレットさんに
お任せしても良いですか?
たぶん、俺が決めるよりマーガレットさんと相性の良い方を
選んだ方がやりやすいんじゃないですかね?」
「はい。では明日に私はこちらで求人の方や
デザイナーと打ち合わせなどさせて頂きます。
場所は借りられますね?マスター?」
「はい。問題ないです。」
「では、明日また伺います。」
「それでは早速、店舗候補地に参りましょう。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「思っていたよりは広いですね。
そうだなぁ。ここならいけるかもしれない。
あとはデザイナーさんに案を出してもらって
内装とか決めるのがいいよな。
マーガレットさんはどうですか?」
「そうですね。化粧品だけでしたらなんとか
なるかと思います。
のちに店舗拡大は別の場所で行われるのですよね?」
「はい、そのつもりです。」
「でしたらあまり大きくやらずにこれくらいで
資金を貯める方がよろしいでしょう。」
「では、ここを仮契約して、デザイナーさんを呼びましょう。」
「かしこまりました。
では、そのように進めます。
手付金の三ヶ月分ですが、こちらのお金は
ギルドが持ちます。
早く、販売していただかないと困りますので。」
「ありがとうございます。」
「こちらはギルド所有の建物ですから
そういう事もできるんですよね?マスター。」
「マーガレットさん、そうなんですか?」
「ええ、土地はもちろん領主様の土地ですけど
上物の建物。これギルドの建物なんですよ。
そういう事も商人は大体把握しているんです。」
「その通りですわ。良い立地のところを
押さえるのも大切な事ですからね。」
「じゃあ色々、案を詰めて明日、
ギルドにて建物の本契約を行ってあとは
マーガレットさんにお任せします。」
「「かしこまりました。」」
「ではキャサリン殿、私どもはこちらで失礼いたします。
城に戻りマーガレットさんとの契約打ち合わせに移ります。」
「はい。ではまた明日。」
俺たちは足早に城に戻りマーガレットさんと共に
サロンに行く。
「さて、契約する前にマーガレットさんに
こちらのポーションを飲んで頂きたいです。
それから契約内容を詰めてから契約、
その後お店の話をしたいのですが、いいですか?」
「はぁ、ポーションですか?
なんのポーションでしょう?」
「まあ、いいからいいから。
悪いものじゃないですよ。
それに、これを飲んでもらわないと契約できません。」
「かしこまりました。」
ちょっと強引だけどポーションを飲んでもらう。
マーガレットさんは少し顔が引きつっている。
ゴクリ
パーーーーーーーーーッ
「な、なに?手と脚が光ってるわ!
どうなっているの?!」
「大丈夫ですよ。そのうち光は治りますから」
「あっ、本当だわ。輝きが落ち着いて・・・
ん?!う、う、う、動く!て、てが!
手が動くわ?!どういう事なの?!」
「これは俺の作ったポーションなんです。
古傷も治るポーションですが確証がないもので
一か八か飲んでもらいました。
これで安心してバリバリ仕事を頼めます。
お身体が不自由でも何の問題も無いのですが
きっと治った方が意欲的に仕事をしてくださると
思いまして、勝手ながら飲んで頂きました。」
「あ、ありがとうございます!
これで思う存分仕事ができてお役にたてますわ!」
「ですが、今ならきっと他の所からも引く手数多で起用したいという所が出てくるかもしれませんけどうちでいいですか?」
「え?なにを言っているんですか?
私をより良く使うために治されたのでは?」
「まあ、思う存分、力を発揮してもらえるように
ポーションを飲んでもらったけど、もし、他に
やりたい仕事や親方株を目指すつもりなら
それはそれで仕方がないかなって思ったんですよ。」
「タクミ様。お人好しって言われませんか?」
「マーガレットさん。
その通り彼はお人好しなんだよ。
そんな彼が騙されないように助けてあげてくれないかい?」
「えええ!!!ヘンリーさん、マーガレットさんまで?!」
「そうですね。これは私がきっちり経営して
タクミ様、いえ我が主人の財産をしっかり管理して
増やさなければなりませんね。
オホホホホホホ」
「いやいや、良いんですか?本当に」
「こんな風に治していただいて経営まで
させてもらえるんです!
私はとても幸運ですよ!
親方株を目指すには時間も体力も運も必要です。
また、どんな災難に遭うかわかりませんから
私はこちらでお世話になります!
そのかわり、辞めませんからウフフフフフ。
親方株を取得するより主人についていた方が
楽しい経験もできそうですわ。」
「じゃあ、これからよろしく!
女性だから結婚とか、出産とかもするよね。
その時までにお店を大きく儲けを増やして
託児ルームみたいな物も作らないといけなくなるなぁ。」
「えええええ!!!!そんな事まで!」
「そりゃそうだろ?だって女性にお母さんに
なるな!なんて、酷なこと言えないじゃないですか。
子供を育てるために仕事を辞めなきゃいけないって
それも収入が減って大変になるし、
託児ルームで見てれば仕事もできるし、
収入もあるし、子供も安心して産んで育てられますよね?」
「タクミ君、凄い事考えるね。
貴族の家でナニーを雇うくらいなのに
従業員の子供とはなるほどなぁ。」
しまった!一般的じゃなかったか。
まずいかな。
「それはとても良い案ですね。
女性が働きやすい環境です。
きっと、そういう案があると言えば
良い人材が集まるでしょう。」
とりあえずセーフかな。
「じゃあ頑張って稼がないとなぁ。」
「はい。」
「では契約を詰めていきましょう。」
読んで頂きありがとう。




