69.ロカイ入り特製軟膏
「これはエリザベス様!」
「うむ、メアリー息災であったか?」
「はい。エリザベス様もご機嫌麗しゅうございます。」
「そちがタクミと申す者か。」
「はい。そうですが・・・」
「タクミ君、彼女は私の妹エリザベス。
私はプライベートではベスと呼んでいるよ。」
「妹さん!初めまして。タクミです。」
「うむ、ところでメアリー、そちはしばらく見ぬ間に
化粧を変えたのか?
今まで以上にすこぶる肌が輝き美しくなっておる。
どこの商人の物をつこうておるのじゃ?」
なんかヘンリーさんの妹にしてはヘンリーさん以上に
貴族らしい威厳があって不思議なオーラをもつ女性だな。
ヘンリーさんと同じでとても美しいのだけどやけに化粧が厚い。
白粉をべったり塗っていて皮膚呼吸が難しそうだ。
「エリザベス様。これは」
「ベス、少し込み入った事情があってね。
メアリーすまないが君ももう少し付き合ってくれるかい?
他の者は下がって良いよ。」
「かしこまりました。旦那様。」
お付きの皆さんがエリザベスさんにお茶を出した後、
部屋から出て行きヘンリーさんの話が始まった。
「ベス、さっきも話した通り彼が今まで報告した
私の命の恩人だ。
そして、鉛についての発見者でもある。」
「うむ、妾は兄上の様子を見に会いにきたのだが
まさか、こんな事になろうとはのぉ。」
「そうなんだ。私の領地では今後、新たに鉛の
菅は使わないようにしていくつもりだが
まだ代替え品は見つかってなくてね。
アーロンの案で今までの菅をアハイシュケの
接着エキスでコーティングして使用する事になった。
そうすれば鉛に直接触れないので毒が漏れ出すこともないからね。
今後は木などをコーティングするという方法も
考えてはいるが、それはまだ先の話だな。」
「うむ、その案、他の領地にも通達しよう。
やるかやらぬかはその領主の器量次第だがな。
あとは、妾もつこうておるこの白粉じゃ。」
「そうなんだ。メアリーどうだい?
従来の白粉の代わりになりそうかい?」
「私の感想は従来の物以上の素晴らしい物だと思いますわ。
見栄えの評価は先程エリザベス様がして下さいましたし。
私としては大満足でございますわ。」
「そうかい、それはよかった。」
「ベス、メアリーが今使っている化粧品を
従来の白粉から変更してもらう為の新しい化粧品だよ。」
「ほう。それで妾の知らぬ美しい化粧品であったか。」
「そうだね。これを開発したのはね、ここにいるタクミ君なんだ。だが困ったことがあってね。
これを商品にしたいのだが売れないんだよ。」
「なんじゃと?なぜじゃ?兄上。」
「彼は庶民で親方株がないから店が持てない。
経営者としてやっていなければ卸業者にすぎない。
これの意味は君ならわかるだろ?」
「うむ、そういう事か。
タクミとやら、お主の化粧品、妾に見せてくれるか?」
「あっ、はい。すぐ出しますね。」
結局品評会の続きという感じで
また始めからヘンリーさんの妹さんのエリザベスさんに
全く同じ説明をする。
するとエリザベスさんは驚きながらも興味をもち
さらに化粧品だけではなく風呂に入ると美容だけでなく
病気にもかかりにくくなるということまで
話はおよび、ヘンリーさんからその辺りの事は聞いて
いたようでどうしてそうなるのかと詳しく聞かれそちらも説明する。
「どうしますか?お試しになりますか?
よければ俺がメイクしますけど。」
「タクミ君。
ちょっとそれはまずいかもしれないから・・・」
「兄上、良いのじゃ。これは極秘という事で
タクミよ。化粧を妾にも施してくれ。」
「そうですか。ではまず、今しているメイクを
落としましょう。
ご自身でされる方が良いかと思います。
手を出してください。」
俺はオイルクレンジングを選んで彼女の手に出す。
この人の厚化粧じゃオイルしか落ちないでしょ。
やり方を説明して今度は洗顔をしてもらう。
すると、綺麗に見えていた白い肌はなんと
あばたが顔中に広がる素肌だった!
なるほど、それであの厚化粧か。かわいそうに。
「あの、失礼ですがこのお顔のあとですけど」
「これは痘痕じゃ。病にかかってできたものじゃ。」
「あの、たぶん治せる軟膏があるといったら
使いますか?」
「なに?!そんなまさか!!」
「一応、鑑定では治ると出ている軟膏を俺は
作ったんですけど、試した事ないので
本当に治るかわからないのでたぶんと言いました。」
「ほう、妾を実験に使うのか。
お主、良い根性をしておるの。」
「はい?」
「ベス、彼は知らないんだよ。」
「まあ、よい。
うむ、その軟膏だしてみろ。つこうてやろう。」
「はぁ、別に・・・」
「タクミ君、すまないな。
悪いが出してやってもらえるかい?
料金はもちろん支払うよ。」
「はぁ。」
ま、貴族なんてこんなもんか。
ヘンリーさんが腰が低くて優しいだけだな。
俺はアイテムボックスからロカイ入り特製軟膏を
取り出して彼女に自分で塗るように即す。
半信半疑な彼女も塗った瞬間、その態度を改めた。
あばたに塗った軟膏の所が光り出した!
「なんじゃ、どうなっておる?」
すると光は消えてあばたも共に無くなっていた。
「き、消えた!消えたぞよ!妾のあの憎っくき
あばたがこんなに綺麗に!なんという事だ!
う、う、う、う・・・。」
突然、彼女は泣き出してしまった。
子供のように泣きじゃくるエリザベスさん。
そんなに辛かったのか。
「す、すまぬのぉ。い、今まで治る治ると
言われて ヒック 紛い物をつかまされ ヒック
何度落胆したか、わ、わからぬのじゃ。
本当に効くとは、思いもしなかったのじゃ。
タ、タクミよ。ありがとう。ヒック
何とお礼をしたら良いのか。
何が欲しい?申してみよ。
妾のできる事であればお主の力になるぞ。」
手をがしっ!と掴まれて目から大粒の涙を流しながら
物凄い勢いでお礼をされる。
そっか、それであんまり態度が良くなかったんだな。
確かに女性としては治るって言われて治らないなんて
騙されてるようだし期待が大きい分、辛いよな。
「いえ、治って良かったですね。
元々お綺麗でしたけどさらにお美しいですよ。」
「う、うむ、ありがとう、ありがとう・・・。」
「ベス、良かったね。
私達は彼に助けられてばかりさ。
実はねタクミ君。彼女もレディーキラーに
かかっているんだよ。」
「そうでしょうね。
エリザベスさん。俺がメイクしますので率直な感想と
商品として成り立つかメアリーさん同様意見をください。」
「うむ、よろしく頼む。」
俺はまた肌質を聞いたりして相談しながら
化粧水から乳液などを選んで基礎化粧品を済ませて
メイクを施していく。
メアリーさんに、最高級シリーズの物を使ってくれと
助言をされたりしながらメイクを完了した。
鏡をメアリーさんが持ってくると、
「これが妾の肌?何と自然な事か!
今まであばたを隠すため漆喰のように塗り固めていた肌が透明感が出て何と美しい事か!
信じられぬ!この化粧品!すぐに販売せよ!」
「ベス、彼は庶民でね。
ちなみに最近マーニン島の森から出てきたばかり
というのは知っているだろ?」
「そうであったな。それがどうした兄上」
「親方株さ。」
「ああ、あれな。そんな物必要ないわ。
兄上、妾からの感謝の証として良いものが浮んだぞよ。」
「私もね、実は君にそれをお願いしたかったのさ。」
「兄上、お願いされるまでもない。
ヴェラムはあるか?特別上等な物が良い。」
「ああ。君ならそう言ってくれるだろうと思ってね。
実はもう用意してあるのさ。」
「さすが、兄上。妾の唯一、頭の上がらぬ
最高にして最上のかけがえのない優秀な兄だ。」
「それは嬉しいね。ありがとう。
さっ、これだよ。」
エリザベスさんは上等なヴェラムという仔牛の革で
できた羊皮紙に羽ペンを走らせ何やら書き記している。
「うむ、できたぞ。兄上、確認を。」
「ああ、これで全て上手くいくよ。
ありがとうベス。」
「さてと、明日の朝議でこれを読み上げ発令するので準備をしておくように。」
「わかったよ。その場に行かなくても良いよね。」
「ああ、到着まで待てぬしな。」
「あのぉ、いったいそれは?」
「明日になればわかる。楽しみにしておけ。」
「はぁ。」
「それにしてもこのメイクを流すのはもったいないな。」
「落とさないとお肌が荒れますよ。」
「そうだな。やり方はタクミの指導で覚えたから
譲ってくれぬか?」
「化粧品ですか?いいですよ。
ただ金額とか決めていないので、これは
感想を頂いたお礼でフルセット差し上げますね。
商売始めたら、ご贔屓にお願いします。なんてね。」
「ふふふ、もちろんだとも。明日には国中に広がるぞ。」
「国中に?そんな大げさな。はっはっはっはっは。」
「うむ、では、妾はこれで失礼する。
深夜にすまなかったな。」
「今から帰るんですか?そんなに近いんですか?
大丈夫ですか?」
「ああ、問題ない。」
「それではお気をつけて」
「ああ、兄上、参ろう。」
ヘンリーさんが送っていくのかな?
「あのもしよろしければ護衛でついて行きましょうか?」
「そうか、そうだ。兄上どうだ?この者は?」
「素晴らしい人だよ。」
「そうか。ではタクミ、共に付き合ってくれ。」
「メアリー、今日は素晴らしい時を過ごせた。
慌ただしくてすまないな。またゆっくりと。」
「はい、エリザベス様。それでは御機嫌よう。」
「ああ。御機嫌よう。」
俺は2人についてなぜかヘンリーさんの書斎に来ると
エリザベスさんが暖炉の前に立った。
「それではタクミ、よく見ておれ。
では、今日は世話になった。御機嫌よう。」
別れの言葉を告げると暖炉に魔力を注ぎ、消えた!
「えっ?!あれ?!うそ!どこ行った?」
「はっはっはっはっは。」
「ヘンリーさん?」
「あははは。
この城は実は特殊な仕掛けがあってね。
この秘密を知る者は数少ないんだ。
それだけベスは君を信用したという事かな。」
「いったいこれは?」
「この城はお祖父様の物だったと言ったよね?」
「はい。そうでしたね。」
「お祖父様は王都にも、ある城を新しく建てられたが、そこに繋がる暖炉なのさ。」
「えええええ???!!!」
「ただし、使えるのはお祖父様の血を引く者のみ。
その他の者は使えないんだ。
魔力の波動が関係しているらしいが
よくわかってないんだよ。
お祖父様は偉大な方でね。
数多くの功績をもつ、素晴らしい方だよ。
魔力量も凄くてね。
そのおかげで僕やベスは魔力量が常人より
はるかに多いんだよ。」
「そうなんですね。いいんですか?
そんな大事なこと教えて。」
「ああ、構わないよ。だが、秘密にしてくれよっ。」
いいのかよ、そんなに軽くて。
「それから私からも礼を言うよ。
ベスの痘痕を治してくれて本当にありがとう。」
「いえ、たまたまですよ。」
「君は本当にいつも優しいな。」
「さっ、明日から忙しくなる。」
「はい、それではおやすみなさい。」
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