表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/199

68.タクミ化粧品お披露目

「まあ!なんて可愛らしいボックスなのかしら?

さらにすごい数だわ!こっちは何かしら?

まぁ!何て綺麗なの?!あら?これは?

キャー どれもこれも素敵だわ!」


「はい。一通り作ってみました。

感想を後ほど聞かせてください。」


俺たちは食事を終えてサロンで食後のデザートを

頂き、化粧品が完成したことを告げると

見せて欲しいということでテーブルいっぱいに

先程作った物をだす。


「これは乾燥の気になる人でこっちは・・・」


俺は作った物を一つずつ瓶を手に取ったり

パレットを広げて指差しながら説明して使い方を案内する。

今後使うであろうメアリーさんはもちろんだが、

メアリーさんにメイクをする侍女さんはさらに

真剣に使い方を聞いている。


「蜜蝋は無いのね?

白粉とは違うものという事かしら?」


聞かれたのはやはりファンデーションの事だ。


「はい。従来のお化粧は蜜蝋を塗ってそのあと

白粉は粉をはたく物だそうですがこちらは

塗るタイプで固める為の蜜蝋は使いません。

そのかわりベースクリームを使ってお肌の潤い

を保ったり顔色を調整したりします。

差し障りなければ俺が侍女さんにメイクをして

みても良いですか?」


「そうして頂けると助かります。」


こちらの世界は男性でもメイクをするので

男がメイクの仕方を知っていても問題ないのだ。


俺がメイクのやり方を知っているのは

学生の頃、学祭の実行委員とかやってたから。

あとはばあちゃんの美容英才教育のおかげで

なぜか彼女とかはいないが女友達は自然と

できたので男に対してメイクがいるとき

俺がやらされていた。

お化け屋敷の出し物とかなぜか演劇部の手伝いとかな。

だからメイクができるんだよ。


「ではまず、メイクを始める前にお顔を洗ってください。」


「はい?顔ですか?」


この世界には洗顔とかの概念ってあんまりないんだよな。


「お化粧水であったり乳液やクリームを使うときにお肌の

汚れや余分な油分を洗顔でとってあげる事でお肌にとって、

良い物を吸収しやすくなります。

もしくは洗顔ができない状況でしたら

こちらの拭き取り化粧水を使って顔を拭きます。」


「そちらは?」


「洗顔しなくても顔の汚れを取ってくれる化粧水です。

水魔法で出した水が使えない方や旅先など水が貴重で

使えない時などに使って頂くと良いと思います。

簡易な化粧落としにも使えます。」


「便利なものですね。」


「ですが、これだけですとお肌に負担がかかって

しまいますのでこちらのセットの化粧水を次に塗って

頂きお肌を整えます。

そのあと乳液などを使うんですが今は貴族向け商品の案内をしたいので洗顔をお願いできますか?」


「かしこまりました。」


洗顔を終えた侍女さんに俺は説明をしながら指示を出す。


「まずは普通のグレードの化粧水などを使って説明していきます。

あの、お肌の悩みってありますか?

例えば乾燥するとか乾燥しないけどテカテカするとか。」


「私は寒い日などお肌が荒れて白い粉を拭くときがあります。」


「でしたらフルコースでやっていきましょう。」


「フルコース?」


「はい。俺の化粧品はお肌のタイプに分けて使うものが

違うしやり方も変わります。

皆さんいろんなお肌のタイプがいらっしゃるわけなので

全部にはお答えできませんが乾燥タイプかテカテカする

タイプかを分けてお肌のお手入れをして頂こうと思ったんです。」


「それは素晴らしいですわ!

今まで、そんなお肌に合う化粧品なんて考えたことも

なかったわ」


「例えばお肌に合う化粧品を使うと

お肌の悩みが解消されたりします。

粉を吹くほどの乾燥するタイプの方で

白粉を使えばさらにお肌の水分が奪われて

カピカピになってしまいます。

それではお肌に負担がかかるので

後に使い方を案内しますがベースのクリームや

リキッドファンデーションを使ってお肌の

潤いを逃さないようにお化粧をしていきます。」


「潤いですって?!

たしかに白粉を使うとお肌から水分をどんどん

奪われている感じがしていたわ!」


「そうですね。では続いて乾燥肌の侍女さんには

こちらのしっとりタイプの化粧水と乳液を使います。

さらに足りないと思えばクリームを追加するか

乳液ではなくクリームに変更して使えば良いと思います。

まず皆さんご自身の肌タイプに合わせた化粧水と

乳液、クリームの質感を手の甲に出して試してみてください。」


仕事を終えた位の高めな方の女性使用人さんを

メアリーさんが肌タイプに集めたので5人ほど女性がいる。

それぞれ普通肌や乾燥肌、オイリー肌、敏感肌と

ありがたい事に綺麗に分かれたが従来の製品は

だいたい皆同じ製品を使っていたようだ。


さて、侍女さんに化粧水、乳液、おまけに美容液をつける。


「こちらは美容液。お肌にとって良い成分の潤いを持続させてくれたり疲れた肌に元気を与え若々しくする成分やハリをもたらしてくれる物が詰まった液です。」


「そんな素晴らしいものがあるんですの??!!」


「一応、そのつもりで作っていますが一度つけただけでそうなるわけではないと思います。」


「そうでしょうか?気のせいかしら?

お肌にハリと潤い、それからもっちりした感じが

しますけど」


「それは化粧水や乳液、クリームも使ってるからですね。

いや、待てよ。ちょっと鑑定させて頂いても

よろしいでしょうか?」


「かまいませんよ。私も気になりますわ。」


「はい。では失礼。」


鑑定をかけると驚くべき事にたしかにハリとか潤いが

出ているようだ。

理由はもちろん化粧水とかの成分のおかげでもあるけど、

コカトリスのトサカのヒアルロン酸と

サルビーフッヘンの皮のコラーゲンだ!

こいつが俺の知ってるヒアルロン酸やコラーゲンよりも

すごい効果を発揮していた。

なんと魔物成分により水分保持量や弾力性の向上

さらに神の錬金釜で作った事でかなり細かい分子量の

ヒアルロン酸やコラーゲンができたようで

浸透効果が恐ろしく通常の物より上回り

効果てきめんのようだ。

そういう場合、副作用などがあったりするが

人体には無害と出ていて問題はなさそうだ。

それにポヨのポーションでシミが消えている。

魔物スゲェー!


「わかりました。もちろん化粧水などの効果もありますが、この美容液です。

あのシワやシミのある方いらっしゃいます?」


「あの私、お恥ずかしいのですが目尻のシワと

頬のシミが気になっておりまして。」


「ちょっと失礼します。」


俺はその女性のシワに美容液を塗った。

すると


「なんという事でしょう!!!

シワもシミも今までになかったかのように

消えてしまいましたわぁーーーー!!!

素晴らしいですわ!!!!」


「ありがとうございます。

副作用なども鑑定ででないとなっていますが

もし、不快感とか肌荒れとか出たらまた

教えてください。」


「かしこまりました。」


シワのなくなった使用人さんがソワソワしている。

きっと鏡を見たいのだろう。


「あの、よければ鏡で確認して頂いて感想を聞かせてください。」


「は、はいっ!」


嬉々として鏡のあるエントランスまで

出かけていった。



「さて、美容液まで終わりましたので

次はベースです。」


俺は次々と製品の説明と使い方を実践して

女性陣に見せる。

まるで実演販売のようだ。


ベースに関して驚いたのは日焼け止めが

この世界にはない事。

だが、この国の貴族の流行りは美白だ。

とにかく白く見せるため、血を抜いて貧血状態に

して顔を白く見せたり鉛入りの白粉を塗りたくったり

あとは黒い仮面だ。

これがまた、非常にホラーな見た目をしていて怖い。

目や鼻に穴が空いていて口の部分で加えて

日焼けを防ぐという仮面。

顔側にはフェルトが貼られているがひどく暑そうだ。

しかも仮面をしている間、話もできない。

黒い仮面の無言の貴婦人。

かなり怖いよ。


「日焼け肌も健康的で、美しいと思いますが。」


「そうですわね。ですが、日焼けをしていると

使用人も雇えない農作業を行う困窮貴族と

思われてしまうのです。

そうなれば領地の評判も落ちてしまうのですわ。

日頃のお手入れに領主の妻が手を抜いている

ばかりに一生懸命働いてくださる旦那様や尽くしてくれる使用人、汗水流して働いて作物を育て

納税してくださっている領地の民の顔に泥を塗る

わけにはいきませんのよ。」


「そんな事まで言われるんですか?

たかが、日焼け一つで!

貴族の皆さんって本当に大変ですね。

たしか領主は太っている方が良いとか?」


「そうなんですの。

でも私の好みはヘンリー様のようなすらっと美しい男性が理想の殿方ですので今のままで十分ですわ。ウフフフフ」


はいはい。ご馳走様です。


「日焼け止めですけど仮面もよろしいかと

思いますが仮面同様もしくはそれ以上の効果を発揮するクリームがこの日焼け止めでこちらの

パープルはくすみなどをカバーして色を白く見せます。こっちのコントロールカラーは・・・」


俺はこうして侍女さんのお顔をメイクして仕上げまでやった。


「なんて素晴らしいの?お肌がとても自然で

美しいわ!白粉のように、塗りました!

という感じではなく本人の肌自身がとても美しく

見えるようにお化粧されているわ。

それに顔色にも艶があるし、それにこのキラキラしたお粉!

なんて可愛らしいの!

しかも従来の白粉とは違って蜜蝋を始めに

塗らないから、これなら暖炉の側で温まっても

メイクが崩れないわ!!!素晴らしい!!!」


どうやら従来のメイクは蜜蝋をベースにして白粉を

はたいて固めていたようで暖かい所に行くと

蜜蝋が溶けてメイクが崩れるというかドロドロに

なるらしい。

いったい皮膚呼吸とかどうなってんだ。


「5人別々の肌質ですし年齢も異なるので

お悩みもかなり違うと思いますから

お悩みに合わせて皆さんメイクしましょうか?

それともやはり男の俺が触れるのはまずいですかね?」


「そうねぇ。私以外の者は私の命令という形にすれば問題ないはずよ。

皆もきっとメイクして欲しくてうずうずしているようですし。」


周りを見渡すとみな、モジモジしている。


「でも私は・・・」


そこにヘンリーさんがサロンに入ってきて


「メアリー遠慮せずやってもらいなさい。」


「だ、旦那様?!」


「いや、実は少し前から扉の前に居たんだが、

入って良いものかためらわれてね。」


「これは失礼しました。」


「良いんだ。どうだろう?やってもらっては?」


「もう、メイクを1人してもらってる時点で

タクミ君はメイクスキルの持ち主という事で

メイクしてもらったとすれば何の問題も

ないんじゃないかな?ね?」


「旦那様。ありがとうございます。」


「うむ、仕上がったら是非見せておくれ。

じゃあ私は自室にいるね。」


「タクミ君、よろしくぅ〜。」


ヘンリーさんって本当に理想の王子様にぴったりだよな。


という事で、悩み別に合わせてメイクを施し

色味とかも確認するために口紅やら色物は

皆さん異なるものを使わせてもらった。

驚いたことにメアリーさんは若いのに思いのほか

シミが多い。

どうやら鉛白粉の、鉛毒のせいでシミができているようだ。


「素晴らしいですわ!

こんなに皆それぞれ肌の悩みがあったのに

それを解消しながらお化粧ができるなんて画期的ですわ!

明日の朝から使いたいのですけど

用意して頂けますかしら?

もしくはまた明日もそちらの道具を貸して頂いて

この者たちにメイクの練習をさせたいのですが

難しいかしら?」


「いえ、改良などが必要なければこちらの道具と

同じ物を一式お渡しいたします。

使って効果を試してください。

それから値段などはどうしましょうか?

あと商人ギルドの方が是非出来上がった商品を

売って欲しいと言っておりまして。

顔料とか商人ギルドで購入した時に

通常の白粉の件の代替え品として今までご購入

頂いた方に交換品として渡したいと言われました。」


「それはどうかしらね。

交換品として無償提供したら

良さは広まるけれど、商人ギルドに物を渡す形に

なりますわねぇ。

うーーーん。技術を盗まれないかしら?」


「奥様、それでしたら商人ギルドには物は

渡さずに当家を通して交換という形にすれば

宜しいのではないのでしょうか?」


「というと?」


「はい、貴族でない者が店舗を持つ事は

親方株がなければできませんが貴族は違います。

奥様のお名前でお店を開きそこにタクミ様の

化粧品を卸してもらい運営する。

今までの、白粉をお持ちの方はこのお店に

持ってきてもらい交換するという事にすれば

いかがでしょうか?」


「それはダメよ。

あくまでも私達はタクミ様のお手伝い。

経営者の名前はタクミ様でなくては旦那様や

アーロンが一生懸命良い案をお考えになっている

のに無駄になってしまうわ。」


「出すぎた事を申しました。

申し訳ございません。」


「いえ、良いのよ。

何か案があったらどんどん言ってちょうだい。

問題は交換する場所よね。

品物を渡さず当家を通すのは良い案だと思うけど

何かないかしらねぇ。」


「「「「「うーーーーん」」」」」


そうして良い案は浮かばずとりあえず

タクミメイクの品評会は御開きとなった。

クレンジングの使い方を伝えて基礎化粧品の

おさらいをして自室に戻ろうとした時、

サロンの扉が開いた。

ヘンリーさんがゴージャスな出で立ちの

それは美しい女性をサロンに案内してきたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ