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64.命がけの美容

「ただいま。」


「おかえりなさいませ。旦那様。皆さま。」


「ただいま戻りました。」


「旦那様、エリザベス様から連絡がございまして今晩いらっしゃるとの事です。」


「そうか。わかった。1人で来るのかい?」


「はい。夜遅くにお出ましになるとの事でした。」


「そうか。わかった。ありがとう。」


「ベスがやってくるか・・・。」


「ところでメアリー。君顔色が良くないねえ。大丈夫かい?」


「はい、いつもの頭痛ですわ。ポーションを飲んでおきます。」


「そうか。レディーキラーか。」


「レディーキラー?」


「はい。貴族の女性だけがなぜかかかる奇病ですわ。」


「原因不明なんだよ。だからこれも庶民の呪いとか言われてるんだ。」


「なるほど。」


「だが、単純に私の病と同じように鑑定スキルや知識が足りずに病の原因がわかっていないだけかもしれない。」


「それでしたら、もしよろしければ俺、鑑定しましょうか?」


「それは素晴らしい。メアリーどうだい?君も彼に鑑定してもらってはどうだ?」


「旦那様を治してくださった方ですのでそれはありがたいですわ。ぜひお願いいたします。では、サロンへ参りましょう。」


「はいっ。」




ーーーーーーサロンにて


「では、失礼しますね。」


『鑑定』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【 名前 】メアリーフィッツロイ

【 体調 】鉛中毒


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


え?鉛中毒?鉛なんて何に使ってるんだ?


「あの、少し伺いますが、この屋敷では鉛を使った食器や何か口にする物や肌に触れる物ってありますか?」


「鉛かい?

そうだね。我が家は井戸水も併用しているが

口にする物は基本的に水魔法の物を使っているし

口にする事はそうないんじゃないかな?」


「そうですか。ちなみに我が家はと

おっしゃいましたが、普通は鉛が使われるんですか?」


「ああ、井戸水を組み上げて通している菅は全て鉛だね。」


「あの、鉛というものは人族の体に害をなします。

メアリーさんの原因はわかりませんけどその鉛菅から通した水を飲めば、メアリーさんと同じように病になります。」


「なんだって!これは大変な事だぞ。

アーロン!領地内でどの程度、鉛菅から

飲料水として使用されているのかすぐに調べ

さらに代わりになる物を探し出し変更するには

どのくらい予算が必要なのか見積もりをだせ。

可能であれば、利用者の高い所から君の独断で

すぐに変更作業に取り掛かってくれ。」


「かしこまりました。」


アーロンさんが足早にこの場を去る。

大変なことになったな。

だけどメアリーさんはいったいどこから鉛なんて

摂取してるんだ?


「あの、メアリーさんは水魔法のお水を口にされているんですよね?

何か他に心当たりのあるものはありませんか?」


「そうですわねぇ。うーーーん。

貴方達、何かわからない?」


後ろに控えるお付きの女性に声をかけるメアリーさん。


「奥様、よろしいでしょうか?」


「ええ。何かわかる?リリー?」


リリーと呼ばれた女性は年の頃は30〜35歳位の

女性でメアリーさんの侍女を務めてお着替えから

お化粧、その日に着るドレスを選んだりと

身の回りのお世話をする女性だ。


「はい。白粉おしろいではないでしょうか?

高価な物にはお肌を白く見せる為に鉛が

使用されております。」


「それだ!」


「なんという事だ!それでレディーや一部の

男性貴族がこの病にかかるのか。」


「男性貴族?」


「ああ、伝統的なスタイルを好む貴族は

男性も白粉を顔にはたくのさ。

私は元々、肌が白いので使わないが

年配の貴族には多く高価な白粉を使う者が多い。」


「口から摂取しなくても肌から鉛毒になります。

今すぐ使用をやめて頂いて毒を排出する

ポーションを飲んで頂くと自然と治ると思います。

ですがまた、鉛を摂取してしまえば

同じ事になりますのでその、白粉は捨てて下さい。」


「まぁ、なんという事でしょう。

毒を自ら塗っていたなんて。

ポーションを飲んでもすぐにまた症状が現れる

はずですわね。」


「きっと今まで飲んでおいでのポーションで

お身体を治してはまた鉛を塗って病になり

という事を繰り返されていたのでしょう。」


「たしかに、そうかもしれないな。」


「ですが、残念ですわぁ。

こちらの白粉を塗るととてもお肌が美しく白く

見えるのです。これを使えないとなると・・・。」


「メアリー、君のお肌はとても白く白粉が

なくとも、とても美しいよ。

それに命があっての美貌ではないのかい?

私は君の美しさをこの先も長く側で見守って

いきたいと思うのだがどうかな?」


「旦那様・・・。ウフフ」


あらあら。薔薇が咲き乱れてるわ。


「とりあえず、この領地内では高価な白粉を

禁止にして商人ギルドにも情報を流して

鉛入り白粉の販売を中止させよう。」


「君。通達を即時出してくれ。」


「かしこまりました。」


ピシッとした男性の使用人さんが部屋を出る。


「旦那様、鉛入りの白粉を禁止にしたとしても

きっと使用者は使い続けると思いますわ。」


「あぁ、そうだね。どうしたものか。」


「あの〜。」


「なんだい?タクミ君」


「鉛菅と同じように代替品があれば

自然に利用者も減るんじゃないですか?

もちろん鉛毒の周知は行った方が良いと

思いますが、その、女性は美容に対して

並々ならぬ情熱を燃やしてますので

もしかすると毒と知りながら命がけで

美を磨くのではないかなぁって思います。」


「そうですわね。タクミ様はよく女性という

生き物をご存知ですわね。ウフフフフ。」


「いや、うちの婆ちゃんが美容に猛烈な情熱を

燃やす人だったので知ってるだけですよ。

特に歳を重ねると、さらに情熱が増すようですから。」


「オホホホホ。たしかに、大きな声では

言えませんがご年配のレディーほど白粉の厚みが

増しますわね。」


「そういえばタクミ君、

さっきギルドで化粧品も考えてるとか

言ってなかったかい?」


「ええ、材料もほとんど揃ってますが

まだ構想だけで実際は作ってないですが

ゆくゆく商品にするつもりですよ。」


メアリーさんと後ろに控えるお付きの女性の

目がキラーーンと光った。


「タクミ様?どのような物をお考えですの?」


「そうですねぇ。

まずはお肌自体を綺麗にするための基礎の

お化粧品の化粧水やクリームとそれとは別に

お肌を綺麗に見せるためのいわゆる白粉や

乾燥する唇などに塗って色をよく見せる

リップなどでしょうか。

あっ、あと日焼け止めとかハンドクリームになんかも作ろうかと思ってます。」


「それは素晴らしいですわ!

タクミ様、試作品はまだありませんの?」


「はい、まだ作ってないので・・・。」


メアリーさんの圧がどんどん上がってきた。


「タクミ様。よろしければ試作品。

ぜひ私に試させて頂けませんかしら?」


「え?ありがたいですけど貴族の奥様に実験みたいな真似は・・・」


「いえ!タクミ様が体に悪いものなど使われる

はずがありませんから問題ないですわ!

それに使用するのは貴族の女性が大多数ですのよ!

でしたら率直な意見も商品にされるなら

必要ではありませんこと?」


あっ、あかんヤツだわこれ。目がマジだ。

うんって言わないと言葉のマシンガン乱れ打ちが

始まるな。


「ヘンリーさん。」


「タクミ君、女性の美については夫でもかなわないよ。」


「わ、わかりました。ではそのうちに・・・。」


「旦那様、鉛入りの白粉はすぐに禁止されますよね?」


「そうだね。」


「でしたら代替え品もすぐに必要になるのではないのでしょうか?」


「たしかに、早ければ早いほど良いとは思うが」


「でしたら、タクミ様はすぐ製作に取り掛かるべきですわ!」


お淑やかなメアリーさんが豹変したわ。

美容おそるべし。


「そうだね。だが、問題があってね。

販売ができないのさ。」


「それはどういう事ですの?」


「あぁ、庶民が商会を設立するには親方株なる

物が必要でね。

それがなければ個人での行商や卸売しかできないのだよ。」


「それでしたら行商すれば良いではありませんか?」


「というと?」


「他の商品はわかりかねますがお化粧品は

洋服同様、基本出入りの業者から購入しますの。

それもお宅に訪問しての販売で行商となんら

変わりませんわ。

タクミ様が私と一緒に貴族のお友達の元に

訪問して販売するか、私が始めに購入して

評判を広めいくつか小分けにしてお譲りすれば

良いのです。

そうすれば皆様が気に入れば私を仲介して

自然に注文が入るでしょう。」


「それはいいね。メアリー!」


「そんな、ご迷惑ではないですか?

商人のような真似事までさせてしまうなんて。」


「いえ、美容の話題はレディーの間では

いつも話されている事ですのよ。

私のお肌や見た目に変化があれば向こうから

何を使っているのか根掘り葉掘り・・・。

オホホホホ。口が過ぎましたわ。

とにかく、何の問題も無いかと思いますわ。

せめてこの領地内だけでもレディーキラーを

撲滅いたしましょう。」


「わかりました。

重症化すれば命に関わる事ですし早い方が良いですね。

では俺はさっそく化粧品作りに取り掛かりたいの

ですが1つお願いがあって、お庭の薔薇を一輪で

結構ですので分けてもらえませんか?」


「あぁ、それなら問題ないよ。

部屋に持って行かせよう。」


「ありがとうございます。

ではさっそく取り掛かりますね。」


「ああ、よろしく頼むよタクミ君。

私だけでなく妻まで救ってもらってさらに領民まで。

私はお礼をするつもりが、またしても

君に助けてもらう事になってしまって申し訳ない。」


「とんでもない。さっきの商人ギルドの件

あんなに親身になってくれる貴族さんなんて

普通いませんよ。

アーロンさんの切り返しとか凄かったですし。

それに、見て見ぬ振りはできませんから」


「そう言ってもらえると救われるよ。

ありがとう。

これは益々、君の商会設立に助力しなければね。」


「はぁ、十分だと思いますが。」


「本当に君はいつも謙虚だなぁ。」


「では、また結果報告を待ってるね。」


「はいっ!」


読んで頂きありがとうございます。

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