60.空の旅
昨晩は特にレイスも出ることも無く無事に朝を迎え
グリの水浴びを終えてみんなで朝食だ。
朝食は鳥もも肉のサンドイッチやトマトとレタスの
サラダサンド、ベリーやバナナを使ったホイップクリームの
フルーツサンドとオレンジジュースを用意した。
みんな美味しそうに食べてくれている。
グリやポヨにはマーニンビートのサンドイッチだ。
「やはりこのマーニンビートはうまい。
久々に食べたがどんな野菜よりもこれが一番だ。」
「タクミ殿、それは?」
「ああ、これですか?
魔物の好物らしいです。
マーニン島の異変種で旨いみたいなんですよ。
しかも俺が独自に育てたやつで違うやつですけど
グリの古傷も治ったんですよ。」
「な!なんですと?!」
「えっ?俺なんか変なこと言いました?」
「タクミ、お前つくづくすげえな。」
「失礼しました。
元々、通常のポーションで古傷は治りません。
タクミ殿のポーションくらいでしょう。
さらにポーションというのは魔物には
効かないものなのです。
理由は人族や獣人がポーションを作ったもので
体の構造も違うからではないかと
言われておりますが何故効かないのか
原因はわかっておりません。
ですから傷ついた魔物は自然に治るまで待つか
もしくは死を待つだけとなります。
無論テイムした従魔もそれは変わりません。
テイマーとしては従魔をなんとか
治してやりたいと回復魔法を使って治療する者も
おりますが、やはりかなりの魔力を必要とし
治りもあまり良くないのです。
理由としてはこちらは従魔の大きさに
関係してきます。
体が大きければ大きいほど治す魔力も大量に
必要になるため術者の魔力が殆ど奪われ
完治する前に魔力切れを起こします。
力の強い術者であっても大抵は同じ結果です。
さらに上位の光魔法の術者は数も少なく
その多くは人族や獣人の治療を優先するため
どうしても従魔は後回しになりますし、よほど
ペニーを積まない限り診てもらえないというのが現状です。
そんな状況下ゆえに従魔を治すという行為は
ほぼ不可能と言われております。
それが、もし、ポーションで治るならば
どれだけ多くの従魔が救われるか。
そう考えただけでつい、声が大きくなってしまいました。」
「ええええ!!!!
そうなんですか?!
魔物ってポーション効かないんですか?!
確かにその改良したビートを鑑定した時に
人に対しての効果はなしとか出てたのに
グリの傷が治ったんで変だなと思ってましたけど
まさか通常の物が効かないなんて夢にも思ってませんでした。」
「そうでしたか。
そんなポーションがあれば多くの辛い思いをした
テイマーが救われると思います。」
「確かにそうですね。
実際、どのくらいの効果があるのか
わからないんですよ。
グリが治ったのはポーションではなく
ポーションになる材料の野菜を食べたんで
俺が作るポーションだと、一本で大量に
ポーションができるんですけど、
それが何本分でそうなったかとか
実験してないんでわかってないです。」
「そうですか。タクミ殿。
これは恐らく大発見ですよ。」
「えぇーーー!」
「すごいねぇ〜タクミ君。
これは領地に急いで帰らなきゃね。
はっはっはっは。」
「はぁ。」
「そうだな。
早く着けばオークの肉も食えるしな。ムムムム
アーロン、あとどのくらいかかるのだ。」
「そうですね。まもなく領地に入りますが
そこから我らの住居まで順調に行っても
あと5日はかかります。」
「我ならば3時間ほどで着くのにムムムム」
「まあまあ、そういうなよ。」
「うむ、仕方がない。
馬さえおらねばお前たちを乗せてやっても良いぞ。」
「マジか?!だけど馬どうすんだよ。」
「そんなもの、タクミとジャックが転移して
馬を返してこればよかろう。」
「あっ!なるほど。」
「どうしますか?皆さん。
グリの気が変わらないうちにそうします?」
「良いのかい?!
私は嬉しくて翼が生えそうだよ!」
あ、ヘンリーさんがやばいくらい喜んでる。
こういうの鶴の一声ってやつだよな。
「かしこまりました。
その案でいきましょう。」
「では、私とグリ殿で次の目的地を
相談しておりますのでジャックとタクミ殿は
馬の返却をお願いできますかな?」
「了解!いーか?タクミ??」
「わかりました。すみません。
グリのわがままにお付き合い頂いて。」
「何を言っているんだタクミ君!
こんな光栄な事は後にも先にもきっとないだろう!
あぁ!なんて今日は素晴らしい日なんだ!
太陽がいつも以上に美しく輝いているぅ〜」
ジャックさんがボソッと
「ダメだありゃ。おい、タクミ行こうぜ。」
「は、はい。」
「んじゃ、俺ら行ってくるわ!」
俺たちはグラニ種5頭を連れて転移し返却に行く。
「すまんなぁ。タクミ。
ヘンリー様は昔からほんっとに、モフモフした
魔物が好きなんだが、なぜか、嫌われるんだ。
だから、よほど嬉しいと思うんだ。」
「いえ、たぶんグリも毎朝一生懸命水浴びを
楽しそうにしてくれるヘンリーさんに
心を開いたんじゃないでしょうか?」
「そうだとありがたいな。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ヒェーーーーーーーーーーーー」
「な、なんて速いんだ〜ぁああああ!!!」
フワリッ。バサバサバサ。
「スーーーーーーハァーーーーーーー。」
「お前、相変わらず、この急降下、
何とかならないのかよ。」
「ふん。タクミがせいぜい慣れるんだな。」
「皆さん、大丈夫ですか?」
あっ。ダメだ。
アーロンさんはうつむいて顔面蒼白。
ヘンリーさんは心ここに在らず。
ジャックさんは、さすがだな。
この人大丈夫そうだ。
ノアさんはあちゃー魂抜けてるわ。
ジョージ君はこりゃ大物だわ。
「グリさん、すごいっす!
めっちゃはえーし安定感もあるし
それに楽しかったっすぅ〜!!!」
「そうか、ジョージ。
お前なかなか肝が据わっておるな。
タクミに爪の垢でも煎じて飲ましてやれ。」
おいおい。楽しいってすげえな。
見てみろ。後ろのイケメンを。
酷い有様になってる方々がいらっしゃるぞ。
「さあ皆さん。お水をどうぞ。」
「あ、ありがとう、ございます。タクミどのぉ。」
「さて、今はどこまで来たのやら。
早すぎて所在地がわかりません。
グリ殿、今どの辺りでしょうか?」
アーロンさんはグリに近づき地図を開く。
どうやら喋りにくいようです
グリはワシの姿になり話を始めた。
「な、なんと!」
「どうしました?」
「いえ、空を飛んできたので
どうやらグリ殿は直線で進んで来られたため
このまま順調に行きますと昼前には城に着くやもしれません!」
「な!なにぃ〜!グリそんな飛ばしたのか?」
「さてなぁ。だが、陸を行くとやはり遠回りであろう?
山やら谷やら川やらを迂回したりとな。
空ではそんな面倒はないので速いのだ。はっはっはっは」
「これは早馬なんかじゃ間に合わないね。
きっとみんなびっくりするよ!
楽しみだなぁ〜。」
「おいヘンリー城に着いたら水浴びさせろ」
「もちろんだよ!グリ殿!
うちの噴水で思う存分浴びるといいよ!」
「うむ、それは楽しみだ。」
うわぁ〜ヘンリーさんもピンピンしてるわ。
この人やっぱり最強だな。
「グリ、ローズヒップオレンジジュース飲むか?」
「うむ」
「ノアさん大丈夫ですか?」
「ん、んん、ぁあ。ぼちぼちだな。」
この人絶叫系ダメなタイプだな。
こういう時は水が一番だ。
「どうぞ。」
「す、すまない。」
もし、今後空の戦闘とかあるようなら
きっとこの人は陸軍か海軍なんだろうな。
「さぁ、そろそろ行くぞ。
お主らは休憩なら空の上でするがよい。」
「お前、確かに安定して飛んでくれてるけど」
「タクミ、心配無用だ。
グリ殿、行きましょう。」
ノアさん。
そういうのやせ我慢って言うんですよ。
「よしっ!参るぞ!」
「ヒ、ヒェーーーーーーーーーーー!」
ーーーーー1時間後
『どうだ、奴らは少しは慣れたか。』
『そうだなぁジョージ君はめっちゃ楽しそうにしてるけど
ノアさんは相変わらず固まってるな。
高いところが苦手なのかもしれないな。』
『ふんっ。可哀想なやつだ。
こんな広い世界が苦手とはな。』
『まあ、慣れたら最高に気持ちが良いけどな。
あの急浮上と急降下さえなきゃな。』
『贅沢なやつだ。』
『しかしお前が乗せくれるとは思ってなかったよ
ありがとな。』
『ふんっ。チマチマ行くのに飽きただけだ。
それに我は早くオークが食いたい。ムフフフフ』
『それにしても、なんであんなにヘンリーさんは
魔物に嫌われるんだ?グリは平気なのに。』
『それはな。
あやつの底知れぬ魔力量のせいだ。』
『そうなのか?』
『うむ、あやつ自身気がついておらぬようだが
魔力量が半分以上、あやつは眠っておるな。
それが解放されればその辺の魔物では太刀打ち
できぬであろうな。』
『そんなにかよ!』
『ああ、だからな我のようなクラスでなければ
相手はせぬだろうな。
そっぽを向くと言っておるが、怖がられておるのだ。』
『それで馬は乗れるけど懐いてもらえないんだな。』
『そう言うことだ。
むしろあやつならドラゴンや我のような
神に仕える眷属であれば従魔の契約を結べるやもしれんな。』
『ドラゴンかよ!神の眷属って事は
ヒッポカムポスとかになるのか?』
『そうだな。
他にも、まあおるが出会えるかも問題だからな。
難しいであろう。』
『そうか、じゃあグリが仲良くしてやってくれな。』
『あぁ、奴の従魔になる気は無いがな。』
『たしかにお前がいなくなったら俺は寂しいからな。』
『ふんっ。気色の悪い』
そう言いながら嬉しいくせに。
『ん?下に何やらおるな。』
『下?あぁ、だいぶ下の方のやつか?鳥か?』
『いや、あれはワイバーンであろうな。』
『あれもまたうまいぞ。狩るか?』
『いや、いーよ。止めろよ。』
『そうか?旨いぞぉ〜。ダメか?』
『ダメだよ、俺ら落ちたらどうすんだよ!』
『チッ』
『チッじゃねーし。』
『タクミは結界を張っておるから落ちんのでは無いか?』
『そんな事ねえだろ。落ちるだろーよ。』
『落ちぬようにするから、それでもダメか?』
『あーもうわかったよ。ちょっと待ってろ」
「みなさーん!諸事情でちょっと揺れます!
しっかりつかまっていてくださーーーーい!」
「????????」
みな一斉に顔を見合わせる。
その直後
「ヒェーーーーーーーーーー!!!!」
グリが一気に急降下して雷魔法を放ち
無防備なワイバーンは一発でグリに仕留められ
ワイバーンも落ち始めている。
そしてグリはさらに加速してワイバーンをかぎ爪でキャッチ!
『おい、こいつをしまうために山に一旦降りるぞ』
『わかった。』
みな、状況が飲み込めずパニック寸前だ。
いつもとは違いゆっくりと高度を下げて
山の頂上付近にやってきた。
グリは周りを見渡し横取りしてきそうな魔物が
いないことを確認すると地面にドサッ!と
ワイバーンを置いて着地した。
「ど、どうしたと言うのですか?!」
「すみません。グリがどうしても旨いから獲りたいって聞かなくて。」
「これは!ワイバーンじゃないですか!!!」
「また、とんでもない代物を獲ったな。
これはたしかに高級肉だからな。
グリ殿が狩りたい気持ちもわかるぜ。」
「そうなんですか?」
「ああ。
美味しいし取れる素材も凄く良いものだよ。」
「俺たちワイバーンの上を飛んでたんすね。
ワイバーンも自分より上空から攻撃されるなんて
思ってなかったっすよ。きっと。」
「それで一撃・・・凄まじいな、グリ殿は。」
「とにかくタクミ殿、他の魔物が来ないうちに
ワイバーンを収納しましょう。」
俺はポヨにお願いしてワイバーンを
アイテムボックスに収納して皆でまたグリに
乗せてもらいその場を離れた。
今回はグリも急浮上せず、ゆっくりと
飛び立ってくれた。
後ろを振り返るとその山を縄張りにしていた
ゴブリンが様子を見に現れた。
「どうやらあの山はゴブリンの巣がありそうですね。」
「そうだね、討伐依頼出さないといけないかもね。」
「グリ殿のおかげで情報収集ができたな。」
「・・・」
「はいっす。ノアさん大丈夫っすか?」
「う、うぅ〜。」
「ダメっすね。」
読んで頂きありがとうございます。




