57.変わり者の貴族
「解体と買取を頼む」
「では身分証を拝見します。」
ジャックさんと俺たちはレンガ造りで出来た
ひときわ立派な建物の冒険者ギルドの受付にやってきた。
受付のお姉さんは猫の獣人さんで
お洒落なネイルを施したナイスバディな人だ。
受付のお姉さんってどこの世界でも容姿で
選ばれているのかと思うくらい綺麗な人が多いよな。
ジャックさんはお姉さんが出したクリスタロスに
ドッグタグをかざして認証をしている。
「はい、結構です。」
「本日の持ち込みは何でしょうか?」
「オーク三体だ。」
「かしこまりました。
大きいものになりますので3番受付にて
この札を渡して下さい。」
「わかった。」
札をもらって3番受付に行く。
するとゴツメのおじさんが出てきて
「兄さんたち、付いてきてくれ。」
そう言って解体する倉庫まで案内してくれた。
「んじゃ、出してくれるか?」
このおじさんが解体するらしい。
俺はかなり前にグリがとってきた小さめのオーク
を取り出し、今日の2体はポヨに出してもらう。
「おうおう、こりゃまた立派なオークを
倒してきたなぁ。
こんだけでかいのは久々に見たぞ。」
そりゃそうだ。10メートルくらいあったからな。
「それにしてもあんたのアイテムボックスは
随分とでかいなぁ。
しかもあのスライム。なんだあれ?
見たことねぇぞ。」
「は、はぁ。」
「どうだ、おっちゃん。
オークの状態は?」
「ああ。ちょっと待ってくれよ。
へぇ〜こりゃたまげた!
こんな綺麗に倒してるオークなんて
なかなか見ねえよ。
ほう、雷撃で一撃か。魔核をうまく止めたな。
こいつ倒したのはあんたか?
すごい魔力操作だな。
一歩間違えりゃ黒焦げの代物をこうも鮮やかに
焦げ一つ作らず倒すたぁ、並大抵の魔力操作能力じゃねぇぞ。しかも眼球も潰れてねえな。
おう、見れば見るほど神業だな。こりゃ。」
「そんなに凄いんですか?」
「そうだな。力加減一つで黒焦げや
目ん玉の体液が沸騰して潰れちまうが
これは綺麗に雷撃を流して俺らの心臓みたいな
働きをする魔核っつう物の動きを止めて
損傷を少なくしてる。
だが、弱すぎても攻撃としてきかねぇし
強すぎてもさっきから言ってるみたいに
黒焦げになっちまう。
ここまでの芸当はAランク冒険者でも
なかなか出来ねえぞ。」
「へぇ〜そうなんですね。」
「なんだなんだ?あんたが倒したんじゃねえのか?」
「えぇ、俺じゃなくて俺の従魔がうまい肉が
食いたいって言ってなるべく綺麗に倒したそうです。」
「ほっほぉー!そりゃまたすげえ従魔だな!
この立派な獅子か?」
「そうです。」
「獅子の旦那、待ってろよ!
俺が肉屋にも負けねえ包丁さばきで綺麗に
解体して鮮度を落とさねえようにうまい肉を
切り分けて、あんたの努力を潰さねえように
頑張るからな。」
グリはコクリと頷く。
「へぇ〜強い上に賢いのか?この獅子の旦那は!
兄さん、あんた凄いテイマーだな。
このオーク三体だが、今から急いでやるが
全部今日中は難しいから明日の朝に
取りに来てくれねえか?」
「あぁ、いーぜ。悪いな。遅くに来ちまってよ。」
「なに、かまやしねぇよ。
こんな綺麗なオーク滅多にお目にかかれねぇからな。
やりがいがあるさ。」
「では明日の朝、何時にこちらに伺えばいいですか?
明日の朝にはこちらも出立したくて
申し訳ないですが、できれば早めにお願いしたいです。」
「そうだな。んじゃ6時でどうだ?」
「それは助かります!
そんな早くにいいんですか?」
「あぁ、冒険者もみんな朝が早えからな。
よくある事だから気にすんな。」
「すみません。ありがとうございます。
それではよろしくお願いします。」
「おうよ!任しときな。」
そうして俺たちは今晩泊まる宿へと向かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「えぇーーーーーー!マジですか?!」
「あはは、そうさ。今日の宿はここだ。」
「お城じゃないですか?!」
「あぁ、ここはヘンリー様の領地のお隣さんの
領地だからな。
親交のある貴族はいくらでもいるからな。
病気のことはもちろん知らないが
ふらっと立ち寄っても泊めてくれるのさ。
部屋はいくらでもあるしな。」
「へぇーーー!凄いですね。
横のつながりは大切ですね。」
「そうだな。」
「いくぞ。」
「はいっ。」
俺たちは城門に入りヘンリーさんの連れだと告げ
衛兵さんがクリスタロスを出し身元確認をして
通行を許可され城内へと進む。
すると、これまた素敵な庭園が広がり中央には
噴水もあって遠くの方に大きなお屋敷が見える。
こちらはマーニン島の時のような城塞という感じ
ではなく、大きな窓もありステンドグラスも
使われていて住み心地のよさそうな雰囲気だ。
素敵な庭園を抜けて階段を上がると
ビシッとした男性が扉をあけて待っていた。
「ようこそおいで下さいました。
ジャック様、タクミ様。
中で皆様お待ちでございます。
従魔もどうぞお連れ下さい。」
「出迎え、ご苦労さん。ありがとよ。」
「ありがとうございます。失礼します。」
「さぁ、こちらへどうぞ。
サロンにご案内いたします。」
エントランスに入るとそれはまた美しい
装飾品と豪華な階段があり内装も壁紙が使われ
マーニン島とは比べ物にならないほど豪華だ。
どうやらこちらのお城は比較的新しいお城で
規模も小さめな個人の邸宅なんだとか。
とはいえ、俺からしたら恐ろしく豪華。
部屋数が多いのも、ここに仕える使用人さんの
住居としても使われているため大勢雇っていれば
それだけ部屋数も多くなり建物も大きくなるようだ。
もちろん、雇い主のように豪華な部屋ではなく
仕えている人にも位があって高い地位の
使用人さんは個室だが若くて新しい人は大部屋
ファミリーで住んでいる使用人さんは家族部屋と
部屋の形態や種類、広さもそれぞれ違うらしい。
使用人さんが重厚な扉を開けると笑い声が漏れてきた。
「ジャック様、タクミ様をお連れいたしました。」
「ありがとう、お疲れ、二人共。」
「お待たせして申し訳ないです。」
「万事うまくいったかい?」
「明日の早朝に受け渡しとなりました。」
「そうか。ではタクミ殿はジャックとギルドに
行くといいよ。
私とアーロンとポヨちゃんでグリ殿の水浴びを
お手伝いしておくから。」
「えっ!いいんですか?」
「もちろんさ!むしろやらせてくれない方が
私には辛いよ。」
「は、はぁ。」
「うむ、タクミ、そうしろ。
我はヘンリーに背中を流させるから」
「ほう、これはまた、珍しい従魔ですのぉ。
リッチモンド公。」
「これは失礼。オーギル伯爵。
タクミ君、こちらこの城の主人でオーギル伯爵。
領地はご子息に早々に譲られて隠居生活を楽しまれているんだ。」
「オーギル伯爵、こちらは私たちの命の恩人で
タクミ殿だよ。彼にロックバードから
助けてもらったのさ。」
「ほう、それは頼もしいですな。
それにその凛々しくも美しい従魔。
なるほど、これは素晴らしいテイマーですな。」
「よければその獅子、なぜさせてもらえぬか?」
「おい、じじい、偉そうに」
「おい、グリ!なんて事を!」
「やはり口を聞くとはこれまた賢い従魔の獅子じゃ」
「うむ、素晴らしい。テイマー殿、ぜひ
ワシにも早朝の水浴び参加させてはくれまいか?」
「は?」
「タクミ君、実はねオーギル伯爵も
動物好きなのさ。
それで私たちは意気投合してねぇ。
グリ殿がもしよければブラッシングさせて
あげてはくれないかな?だめかな?」
「また、変な奴が増えたわい。」
「グリ!一宿一飯の恩って知らないか?
一晩泊めさせてもらうんだ。
しかも、馬小屋じゃなくて室内だぞ!
かなり高待遇じゃないか。
一回くらいブラッシングしてもらえよ?な?」
「むむむ、仕方がないのお。」
「テイマー殿、恩にきる!いや〜嬉しいのお。
そうじゃ、テイマー殿!せっかくだから
従魔用の良いブラシがあっての。
もし獅子殿が気に入れば贈り物として
プレゼントしようではないか!」
「え?!いや、めっちゃ高価ですよねきっと。
申し訳ないので結構です。」
「そう言わずにもらってくれ!
感謝の印じゃ!」
「は、はあ。」
なんか、また変な貴族に会っちゃったな。
ヘンリーさん、自慢したかったのか?
「旦那様、晩餐の支度が整いましたので
ご移動をお願いいたします。」
「そうか、では皆さん参ろうかの。」
通された部屋ではこれまた素敵なインテリアに
長〜い机の上には素敵な燭台のような灯台が
穏やかな灯で食卓を照らし部屋の中央には
灯台で作られたシャンデリアがかけられている
これも、ガラスがふんだんに使われているが
部屋のインテリアは華美なものではなく
落ち着いているがどれもとても高価そうで
素晴らしく上品な部屋だ。
「さあ、お客人。座ってくれ。
あと、獅子殿はこちらじゃ。テイマー殿と
ワシの間のこの隙間に毛足の長い絨毯をしいたでの。
ホッホッホ。」
「おお、ふかふかだな。悪くない。」
「こいつはダンジョン産の毛足の長い羊の毛じゃ。」
うほっ!グリは格別な待遇だな。
なんだこのお貴族さん。こんな絨毯、汚したら
大変なのに、太っ腹もいいとこじゃないか。
「では、皆席に着いたところで乾杯しようではないか。
気の合う友の顔が見れさらに素晴らしい経験を
与えてくれた新しき友に感謝して乾杯!」
「乾杯!」
新しき友って俺のことか?
俺、ただのテイマーで庶民なのに変わってるな
このじいちゃん。
すると続々と料理が運ばれてきた。
肉、肉、肉。お肉の大行進だ。
俺は使用人さんが取り分けてくれたお肉に舌鼓を
うちながら、皆の話を聞いて時間を過ごす。
「ワシは昔、このリッチモンド公のお父上の
身辺警護をする任についておってな。
その際に歳だから隠居すると言ったら
リッチモンド公の剣の指導にあたるようにと
任ぜられて稽古をつけた縁なのじゃ。
ワシ同様テイマーの素質はないが
そのかわり素晴らしい剣の素質があってな。
この才能に随分当時は驚いたものじゃ。
カッカッカッ。
また腕をあげたようですな?
リッチモンド公。」
「いえ、伯爵には遠く及びませんよ。」
「カッカッカッ。
リッチモンド公は昔から涼しい顔をして
同世代の若き者たちを手合わせでは他愛もなく
倒してしまう。
倒された者はやられた事に気がつかずに
試合が終わるんじゃからそりゃ皆悔しがったもんじゃ。」
ヘンリーさんの剣の腕は見たことないけど
強い人なんだな。
「あの頃はリッチモンド公はよく馬にそっぽを
向かれて他の事については、いつも涼しい顔を
しておったのに、こと、馬やら魔物については
懐いてもらえず、顔を曇らせておったもんじゃ。
そういう所がワシからすると可愛くてのぉ。
それからワシも色々従魔について興味を持ったが
ワシも同じく懐いてもらえず、リッチモンド公の
気持ちがなんとなく理解できての。
あれから、そりゃ〜色々と懐いてくれそうな
魔物を探し回ったが1匹も色よい返事をくれた者は
おらんかった。
そこからワシはテイマーという者を尊敬し
敬意を表するようになった。
みな、得意不得意はあるがテイマーとは
非常に素質が必要であり努力でどうにかなる
物ではないという事が嫌という程、
理解させられたわい。」
「そんな、大袈裟な事ではないですよ。
うちの獅子のグリは俺の作る飯を気に入った
だけですから。」
「そうか。それは素晴らしい料理を作れるのじゃな。」
「いやいや、庶民のたわいもない料理ですよ。」
「カッカッカッ」
こうして穏やかな会話に花を咲かせ夜はふけていった。
読んで頂きありがとうございます。




