56.ポヨの進化
俺達はようやく船での目的地までたどり着いた。
これまで山を抜けるまでに昼はゴブリンや
トロールと交戦し夜はホーンテッド系の魔物や
レイス等と戦いながらも順調に船を進め
この地までやって来ることができた。
もちろんケルピー も接近したりしていたが
出現する前にグリがルンルンで出かけ食欲を
満たして帰ってきたので、何ら問題はなく
グリのストレス発散にもなり、この船旅は
怪我人を出すこともなく今までの旅で
もしかすると一番良い思いをしたのかもしれない。
だが、これからが本番。
陸移動だ。ここから7日ほどの移動。
谷間を通るのは少し危険なため遠回りをして
街中を通り宿を確保してできる限り野宿を
減らして旅をするとの事だ。
野宿となるとやはり危険がいつもの数十倍に
跳ね上がるから。
これは冒険者の旅ではなく単純に貴族の帰省。
交戦しなければしないほど望ましいのだ。
とはいえ、やはり山や谷、森は避けては通れぬ道
魔物と鉢合わせないように祈るしかない。
船を降りて早朝に街を出て本日の目的地の
この辺りでは大きな街に行くのだがこの道がね
山の中を通過するんだなぁ〜。
つまり森なんだよね。
グリはオークが出て欲しい等と
よだれを垂らしながら恐ろしい事を言ってるし
どうなる事やら・・・。
「さてこの辺りでランチにしましょう。」
そう言ってアーロンさんがいつも通り
アイテムボックスからテーブルやら椅子を
取り出しみんなで準備。
俺も定番となったサラダやスープついでに
デザートになる果物なんかも取り出して
アーロンさんの料理に追加する。
途中で料理は作れないので複製スキルで
コピーするのが最近の日課だ。
調理ができれば良いんだけどね。
船では皆で食事をしていたけど、ここは野外。
流石に交代制で見張りと食事をとる人を分け
警戒しながらのランチだ。
俺とグリが食べ終わりポヨに器を渡して
綺麗にしてもらう。
この光景も最近では当たり前になってきた。
ヘンリーさんも食べ終えてアーロンさんが
ポヨにお皿を渡す。
するとどうした事だろうか?
ポヨの体が光り出した!
「ポヨ!どうした?」
「タクミ、慌てるでない、鑑定をしてみろ。」
「そ、そうだな。」
『鑑定、ポヨ』
ーーーー 鑑定 ーーーー
【 名前 】ポヨ
【 種族 】進化中
ーーーーーーーーーーー
「なに?!進化中?!」
「どうした?」
「進化中って種族のところに出てるんだ。」
「という事はさらなる進化を遂げるのであろう。」
「なに、案ずる事はない。病などではないのだ。
うろたえる事はない。
だが進化の最中が一番無防備で危険だからな。」
そう言ってグリはポヨを包み込むように横たわり
知らん顔してそこで目を閉じた。
きっと外敵に襲われぬよう守っているんだろう。
「グリ、任せたよ。」
「ふんっ。我はここで休みたいだけだ。」
「そうだな。」
俺はこの状況をヘンリーさんとアーロンさんに
説明と謝罪をして少し時間をもらう。
さらにこの場所に大きな結界を張る。
これでどこから狙われても多少は持ち堪えるはずだ。
そして俺は見張りをジョージ君と代わり
皆の食事とポヨの進化が無事に済むのを待つ。
ーーーーーー1時間後
『タクミ、ポヨの進化が済んだぞ、
戻って来られるか?』
『本当か?!グリ、誰かそこに人族はいるか?』
『うむ、ジャックがおるな。』
『食事が済んでるなら交代してほしいと伝えてくれ』
『あいわかった。』
ポヨの進化が終わった!
どう変化したんだろう?!
五分ほどしてジャックさんが交代しにきてくれた。
「ありがとう、ジャックさん。」
「いいってことよ。すぐ行ってやんな。」
「はい!」
俺は森の中を走ってグリやポヨの元へ行く。
「ポヨ!大丈夫か?」
「大丈夫に決まっておろう。
早く鑑定をかけろ、阿呆め。」
「そ、そうだった。」
『鑑定、ポヨ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
鑑定結果
【 名 前 】 ポヨ
【 種 族 】 ヒュージエンザイムスライム
【 年 齢 】 6ヶ月
【 レベル 】 1
【 体 力 】 5000
【 魔 力 】 5323
【 スキル 】 消化酵素液 代謝酵素液 活性酸素液
【 追加スキル】
分裂、合体、巨大化。ポーション量増量
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「何だこれ?!分裂に巨大化?
ポヨ、さっそく・・・うーん、そうだな。
分裂をしてみてくれ!」
ポヨ〜ン
ポヨの体がブルブル震えだし、その後
ポヨーン、ポヨーン、ポヨーン、ポヨーン・・・
なんと、16匹に分裂!
1匹ごとの威力は元のポヨと変わらず攻撃もでき、
もちろんポーションも精製できる事がわかった。
つまりポヨが16匹に増殖したのだ!
「ポヨ、じゃあ次は合体してみてくれるか?」
ポヨーン!
すると1匹の所に他のスライムが集合しどんどん
重なっていくが、溶け込んでいるのだろうか?
大きさはなにも変わらない。
最後の1匹が合体した所で今度は巨大化を指示。
すると、どんどん大きくなり始めて
獅子のグリよりも大きくなったではないか!
俺はもう目は見開き口はあんぐり!
グリはヒュージスライムを知っているのだろう
特に驚く様子もなく見守っている。
ポヨがいつものように軽快に飛び跳ねた。
ドッスーーーーーーーン!!!
「うわぁ!!!
ポヨ!わかった!ありがとう!
今、その大きさで跳ねるとマズイ!」
「うむ、そうだな。
ポヨ、お主形などは変えられるか?」
グリの問いにポヨが反応した。
平べったくなったり縦長のスリムな形になったり
そして最終的に元の小さなサイズに戻った。
「うむ、なかなかだ。」
「大きさや形まで変えられるのか?すごいな!」
今は何ができるようになったのか
よくわからないが、とりあえずこれ以上
時間を取る事は出来ないので道すがら
確認していこうと思う。
皆さんにお詫びしながら遅れを取り戻すべく
速やかに移動を始めた俺たち。
すると感知にコボルトが反応!
「皆さん、コボルトが前方にいます!」
先頭を走るジョージ君とジャックさんが
手を挙げてわかったと合図する。
どうやらこのまま突っ切るようだ。
すると案の定、3匹の木の盾を持った
緑色の人のような二足歩行の犬が仁王立ちして
道を塞いでいる!
するとジャックさんが魔法を唱えた!
「サンドブラスト!」
地面から砂が舞い上がり直線上にいたコボルトに
口と目を攻撃して視界を奪う。
さらにジョージ君が風魔法で3匹を跳ね除け
道を切り開いた!
「エアーシュート!」
どうやら魔力を抑えるため簡単な魔法で
コボルトを退かせたようだ。
しかしこの二人強いなぁ。
俺たちが通過するときにはコボルトが尻尾を
丸めてうずくまっている姿が見えた。
だが、これで済むかと思っていたが第二陣がやってきた。
「この先にまたコボルトがいます!」
「コボルトは複数で襲ってくるからね。
この辺りがどうやら縄張りのようだね。」
次に現れたのは5匹のコボルト。
両手に石を持っている!
投げてきたら厄介だ!
ジャックさんが土魔法で障壁を作る。
「アースウォール!」
突如、土壁が現れ投石してきたコボルト達から
道を開きさっさと通過。
あまりの手際の良さに驚くばかり。
この人達、かなり色んな経験を積んできていたんだな。
しばらくして犬の遠吠えが遠くからしてきた。
前方でさらに待ち構えていたコボルト達が
どうした事だろうか急に俺達とは反対方向に
まるで新たな脅威から逃げるかのように走り去っていった。
「どうしたんでしょうか?
なんだか様子がおかしかったように思いますけど」
「新たな敵が来たのかもしれないね。
自分たちより強いものからは
魔物の習性か逃げたりするからね。」
「ふむ、そうかもな。」
「グリ、わかるのか?」
「あぁ、これから先はどうやら陽の当たらない
ジメジメしたエリアのようだ。
出るなら間も無くかもしれぬぞ。」
すると俺の感知が反応した!
ーーーー 警告 ーーーー
オーク接近中
ーーーーーーーーーーー
「あちゃーグリ、オーク接近中らしいぞ。」
「これは交戦せざるを得ないか」
「おい、タクミしっかりつかまっておれ」
「おい、お前、何する気だ?!
うわっ!!!」
グリがズンズン速度を上げてジョージ君や
ジャックさんを追い越しその先には
豚の顔に長い牙を持ち肌は緑色で硬そうな鱗の
あるムッキムキのオーク1体と肌の色がピンク色の
オークがもう1体、よだれを垂らしながら
道を覆うように立っていた!
なんだあのでかさ?!
まるで巨人じゃないか!
「グリ!どうするんだ?」
「まぁ、しがみついておれ。」
グリがそのまま加速し
オークの間を駆け抜けた瞬間、それは起こった!
ズドーーーーーーーン!
グリは急回転してオーク2体に向き直った。
「な、何が起こったんだ?」
オークは微動だにせず通過した時のままの姿だ。
「なぁに、雷撃をお見舞いしただけだ。」
「雷撃?!雷落としたのかよ?!」
「あぁ、軽いやつだ。脳天に雷撃を食らわすと
体に雷撃が通って絶命するのだ。
こうすると肉を無駄にせずに食えるからな。
ムフフフフ。おいタクミ、次の街でオークを
捌けるやつはおるだろうか?ムフフフフ
あぁ、今から楽しみだ。にっくにっくにっく!」
さすがグルメグリフィンと言うべきか。
食べる事を想定しての狩。
お見事としか言いようがない。
「タクミ、さっさとオークをしまえ。」
「わかったよ。」
俺はこのどでかいオークをどうやって
しまおうかと腕を組んで考えていると
ポヨが飛び跳ねている。
「ポヨ、手伝ってくれるのか?」
ぽよーん
ポヨが返事をしたかと思うとオークの下に
潜り込み、巨大化してオークを運び始めた。
「お前、そんな事できるようになったのかよ!」
「タクミ、ほれアイテムボックスを出せ。」
「あ、あぁ、そうだな。」
俺がアイテムボックスを開くとポヨが
その中程まで進み、オークが全部入りきると
体を縮小させてスルッと抜け出し次のオークの
下にまた向かっていく。
その様子を眺めているとヘンリーさん達が
追いついてきた。
「こ、これは!オークとピンクオークじゃないか?!」
「本当っす!タクミさん一人で倒したんすか?」
「俺なわけないじゃないか。グリだよグリ。」
「こ、こんなに綺麗にどうやって倒したのですか?」
「雷撃で1発だ。アーロンこやつの鱗は人族が
欲しがるやつであろう?」
「グリ殿、よくご存知で。
オークの場合、鱗は非常に硬く並みの剣では
太刀打ちできないためスケイルアーマーなどに
よく使われます。そしてお肉も高級食材です。
さらにお肉以外の素材ですと睾丸と魔石ですね。
オークの睾丸は精力剤の材料に使われますが
こちらのピンクのオークはオークジェネラルですので
魔石持ちの可能性が高くさらにお肉も
通常のものとは違い超高級なお肉となります。」
「アーロンさん目利きまでできるんですか?!」
「はい、もちろんです。
領地経営において目利きが出来なければ
悪い商人に騙されてしまうこともありますので
幼少の頃より貴族は皆、勉強をいたします。」
「まぁ、たしかに勉強はするけど
物にできるかどうかは別の話だからな。
タクミ、皆がアーロンみたいに凄いわけじゃねーよ。」
「そうだね。アーロンは優秀だから。」
会話をしている間にポヨが先程のオークのように
アイテムボックスの中に残りのオークもしまってくれた。
「それにしてもポヨッちも凄いっすねぇ
あんなにでかくなるなんて!
スライムって奥が深いっす!」
「俺もびっくりだよ。」
「そうですね。あのような優れたスライムは
私も未だかつて見たことはありません。」
「グリ殿といい、ポヨちゃんといい、タクミ殿は
鼻が高いねぇ。」
「そ、そうですね。」
「次の街であれらを冒険者ギルドへ
持ち込みましょうか。
お肉を解体してもらいましょう。」
「い、いいんですか?
時間を取られてしまいますが。」
「タクミ君。グリ殿のあんなよだれを垂らして
ニコニコした姿を見たら是非食べさせて
あげたいじゃないか!」
「え?」
振り返るとグリが今までにない最高のニヤケ顔で
よだれを垂らしてアイテムボックスを眺めていた。
「あちゃー。どうもすみません。」
「いや、あの嬉しそうな顔見たらなぁ。」
「えぇ、そうですね。
売りに出す時ですがまだタクミ殿は
登録していないのでジャックにお願いしますが
よろしいですか?」
「もちろんです!
これ以上、時間を取られるのは申し訳ないですし
ジャックさんの方がスムーズにいくと思います。」
「おう、任せろ。」
「では急ぎましょうか。」
「はいっ!」
そうして俺たちはその後もゴブリンや
ゴブリンナイトなどにも遭遇しながら
順調に退治して休憩も取りつつ夕方には山を
抜けて目的としていた街になんとか滑り込んだ。
「では私どもは先に宿へ行っておりますので
ジャックはタクミ殿と冒険者ギルドへお願いします。」
「おう、任せろ。タクミ行くぞ。」
「はいっ!」
読んで頂きありがとうございます。




