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54.貴族はやはり豪華です

ロンカストラを出て2日半、

夜も移動するため馬よりも少しばかり早く順調に

川を進み新たな街までやってきた。

この街は川から街に入る事が出来るように

なっていて階段が付いている。

もちろんガッチリとした三重の堅固な門と

たくましい衛兵さんがしっかり守っているため

魔物などの侵入はまずないようだ。

そうだよね。運河としても使われてるわけだから

入れなかったら使えないもんね。


俺たちは船を降りて階段を登り、恒例の身元確認

を終えて街へと入る。

ここに立ち寄ったのは明日の朝に出発する船に

乗り換えるためだそうだ。

とにかく陸で寝られるのはやっぱり嬉しい。

川から上がってすぐの所には水夫たちが

寝泊りする安宿から少し高めの宿があるそうだ。

そんなに大きな街ではないが途中休憩の水夫達が

多くて俺たちが泊まる宿の酒場は賑わっていた。

今回泊まる宿は人間は一人5ペニーで馬や従魔は

一頭3ペニー。前の宿と比べると随分安い。

むしろこの金額が妥当な額なのかもしれない。

もちろん風呂はついてないし、素泊まりで

そんな上等な部屋でもないので比べるのは難しい所だ。

さてグリにはまた従魔小屋で寝てもらうため

俺はせっせとグリの寝る布団を敷いて

マタタムブを渡し部屋に戻る。

今回はみんな同じ部屋だ。

これだけ人数がいると一人くらい、いびきの

酷い人がいそうなもんだが、イケメンは

いびきなんてものは、かかないらしい。

あぁ、全部完璧だよ、この人達。

そんな事を思いながらベッドに入る。

あぁ、揺れない寝床。

これがこんなにも幸せだったなんて。

俺はその幸せを噛み締めながら意識を手放した。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




翌朝、これまた恒例のグリとヘンリーさんの

癒しの水浴びタイム。

もちろん、俺とポヨ護衛のジョージ君も一緒だ。

ヘンリーさんは満面の笑みでグリの背中を流し

グリはグリで気持ちよさそうに目を細めている。

幸せな奴だよな。こいつ。

そうして水浴びを終えると体を乾かしてグリは

ここで食事だ。

アーロンさんが気を利かせて大量の肉を持ってきてくれた。


「おい、お主が持つその肉、まさか?」


「さすがグリ殿。匂いでわかりますかな?」


「うむ、これはご馳走だ。ムフフフフ。」


「アーロンさん、そのお肉はいったい?」


「これですか?ケルピーですよ。」


「ケルピー?」


むしゃむしゃむしゃむしゃむしゃ


「馬だ、馬。」


むしゃむしゃむしゃむしゃむしゃ


「あぁ!呪う奴か!」


「ほふだ!(そうだ!)」


むしゃむしゃむしゃむしゃむしゃ


「おい、食って呪われないのか?」


ゴクリ!


「フーッそんな呪いなど

我にとってはなんの意味もなさぬな。

馬なんぞ、どう足掻あがこうがただの餌にすぎん。」


「そうか、それならいいんだけどな。

それにしても口の周り、ベタベタじゃないか。

ポヨ、綺麗にしてやってくれよ。

この光景、他の人が見たら自分の従魔食われたと

誤解しかねないからな。」


「たしかに。水浴びの前に持ってくるべきでしたかな?」


「いえいえ、そんな事ないです。

グリの食べ方が豪快すぎるんですよ。」


「ふんっ」


「しかしケルピーの肉なんてどこから

手に入れたんですか?」


「他の船が交戦して最後のあがきで

船に食らいついてきたそうで

剥がれなかったため仕方なく

ここまで引っ張ってきたとか。

肉の処理に困っていたので譲っていただいたんです。」


「あれ?魔物の肉って美味いんじゃ?」


「あまり魔物であっても馬の肉は

食べませんねぇ。

特にケルピーは呪いがかかりそうで

武具にも防具にもされないんですよ。

とても水に強い良い皮なんですがね。」


「あぁ、そうですね。

呪いの革製品とか使い物になりませんよね。」


「まぁ、需要はありそうですが、

皮をなめしたりする職人まで呪われそうなので

製品を作る事自体が難しいかもしれません。」


「ブフォッ。呪い最強ですね。」


「えぇ、まあうちにはノアがいますから

大抵の呪いはノアがなんとかしてくれますがね。」


「さすが、ノアさん。

レイスもあっという間に浄化して

格好よかったなぁーー。」


「ノアは光魔法所持者の中でも

かなり優秀な人だからねぇ〜。

私のところをもし辞めても引く手数多てあまただよ。」


「辞める気は無いですけどねぇ〜。」


ノアさんまでやってきた。


「グリ殿、一応念のため浄化しといたけど

問題ないか?」


「うむ、なんともないぞ。」


「ノアが浄化魔法をかけて船から

ケルピーを剥がしたんですよ。

直接触れるのを皆嫌がりましてね。」


「なるほど、こういう事ってあるんですか?」


「いえ、珍しいですよ。

だいたい、死んだら川の中に

消えていくんですけどねぇ。」


「往生際の悪い奴だったんですね。」


「そうだな。だから船も浄化して水夫の浄化も

頼まれて小銭稼ぎができたさ。」


「そうだったんですか。

朝からお疲れ様です。」


「さて、私達も朝食にしようか。」


「はい、グリ、待っててな。」


「うむ」


俺たちは食堂に進むと

ジャックさんが席を取って待っていてくれた。


「おーいこっちだ!」


もうすでにテーブルには食事が並べられていた。

川が近いこともあってか普段目にしない

魚料理が多い。

ハーブの下味がついた焼き魚や煮魚に野菜の

ポタージュとずっしりと厚みのあるカットされた

パンにチーズ、飲み物は他のテーブルは

エールだが、俺たちはアーロンさんが今出した

美味しい水魔法の水だ。

井戸水や川の水ははっきり言って不衛生なので

基本は水魔法の水か比較的見た目が綺麗な

井戸水を汲んだものを水売りから買うかもしくは

エールの方が衛生的に安全で安価なエールを

飲むか。子供は果物の果汁を絞ったジュースが

多いらしいが大人はほとんど朝から晩までエールを飲むそうだ。

そういうエールは俺の知ってるビールとは違い

アルコール度数はかなり低めなだし

みなさんお酒が強いのだろう。

朝からぐでんぐでんの酔っ払いは見ない。

貴族や富裕層は水魔法の使える使用人を

雇い入れるそうで安全で美味い水を飲むのが

当たり前だが巷の庶民は水一つ手に入れるのも

一苦労なようだ。

特に貧困層は川の水を自分で汲んで飲むらしい。

あれだけ臭くて汚い水を飲んだら、それは

病気になるよな。

前にヘンリーさんが浄化槽を使いたいっていう

理由が嫌という程理解できたよ。


「じっと水を見てどうしたんだい?」


「いやぁ〜。川が近くてもあの水じゃ

飲むことはできないよなって思ってたんです。」


「そうだね。でもねここはまだ綺麗な方だよ。

王都の運河なんか酷いものさ。」


「あらららら。」


「肉屋とかが内臓とかぶちまけてるからな。

一応禁止はされてるけどよぉ〜。」


「ヒェーーーー内臓ですか?!」


「そうだな。ケルピー だって内臓は食わねえからな。」


「まぁ、毒があるものもありますし色々ですね。

ダンジョン産のキラーグースの肝臓は高級食材として

食べられていますしダンジョン産の羊の内臓も食べる

地域はありますね。」


「おう、帝国じゃよく食べられてるよな。」


「あっ!ハギスっすよね。」


「そうそう、俺は食った事ないけど

エールに合うらしいぞ。」


「へぇーそうなんですね。

俺の住んでいた所では内臓は食べられてたので

ただ魔物じゃないんでなんともですけど

確かに合いそうですね。」


「さて、船もそろそろ準備できる頃です。

馬は先に宿の者に頼んで乗せてもらっているので

グリ殿を呼びに行って船に参りましょうか。」


「おう!」


船へと進むと、なんとアーロンさん。

またしても豪華船をチャーターしたようだ。

前の船に不満げだったからな。

今回の船はなんでも速度が良く出る最新式の

魔法仕掛の船らしい。


「この船は帆船ですが通常の物とは異なり

帆の所に魔法陣が描かれているのが

お分かりでしょうか?

あの魔法陣は風を集めて進むことのできるように

魔法陣が描かれており柱には魔石が埋め込まれて

おり、それを動力源として魔法を発動させ

風を安定供給して前進する事が可能です!」


つまり風がいつでもどこでも風魔法使いなしで

進んでくれる最新式の船らしいが

風魔法使いよりも船自体がめちゃくちゃ

高価なため運賃というか、レンタル代が

目が飛び出る金額らしい。さすが、貴族だな。

俺的には無駄遣い?とか思ったりもするが

貴族はそうして移動の時にお金を使い

通る街に貢献して庶民を潤す役目も

担っているらしい。

だからお金使いたくない人でも社交界の

季節になると使わざるを得ないとか。

貴族って案外大変。

しかもヘンリーさんが早く帰れば帰るほど

仕事が円滑に進み領地の経済も潤うとか。

俺には難しいことはわからないが

タイムイズマネーってやつだ。

もちろん船内の内装や設備もすごい。

なんと風呂が付いている!

俺はかなりびっくりしたがなんでもこの船は

元々異国の船でそれを改造して最新式の設備を

追加した物らしい。

風呂といってもバスタブがあり、

水魔法で水を出し火魔法で温めて入るものらしく

日本のスイッチポンで入れる風呂とは少し違うし

シャワーもなく風呂の支度を整える使用人が

必要らしいが、もちろんそういう人から

身の回りのお世話係にコックさんまで

ちゃんとチャータープランに含まれている。

それから応接間と寝室もあってなんとも

贅沢な造りで昨晩まで過ごした船とは大違いだ。

一体いくらするんだろうか。

考えるだけで目眩がしそうなのでやめておく。

アーロンさん的には豪華な船にした理由は

もちろん快適な時間をヘンリーさんに過ごして

欲しいという願いからだが、やはりそれだけでは

もちろんなくて、これから本格的に森の中の川を

進んでいく為、対魔物を考えての備えだそうだ。

ケルピー に関しては心配しなくても

勝手にグリがハントしそうなんだけどな。


「では!皆さん出航しましょう!」


読んで頂きありがとうございます。

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