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52.ロンカストラのお風呂

「もうそろそろロンカストラの入り口です。

急ぎましょう。」


「おう!」


俺たちはあれから休憩も入れながら道を進み

ロンカストラの城塞都市近くまでやってきた。

川向うにはロンカストラの強固にそびえ立つ

石の壁が見える。

この道を進んで川にかかる橋を渡り

城塞都市の門をくぐる。

だいぶ日が傾き、夕陽が俺たちの頬を指す。

早く進まなければ日が落ちてしまう。

焦る気持ちを抑えながら列を崩さないよう

しっかりとついていく。

まぁ、俺はグリに乗ってるだけなんだけどな。

するとようやく橋が見えてきた!

よかった!間に合った!

いくら結界があるとはいえ、

レイスにはなるたけお目にかかりたく無い。

俺たちは速やかに検問で身分証の確認をして

橋を渡った。

どうやら俺たちが最後だったらしく

跳ね橋が上げられて門が閉じられる。

危なかったな。

街の中に入るとさすが商人の街だ。

大きな通りに活気の良い声と人。

もうすぐ日が暮れるためか家路を急ぐ人に

早くもエールを飲みすぎて

千鳥足の人と賑やかな街だ。

通り沿いにはびっちりと建物がならんでいて

3、4階建ての黒い木枠に白い漆喰の壁でできた家

や煉瓦造りの家と様々。

なぜか一階部分よりも二階から上が

道にせり出すように建物が建っていて

不思議なバランスをしている。

なんでも増築をして少しでも広くなるように

しているらしい。この方が税金も安いんだって。

異世界でも税金対策してるのね。


「さて、先に宿に向かいましょう。」


門を抜けてすぐの所に宿屋があった。

なんという立地!

門を入ったらすぐ右手に従魔と泊まれる宿屋

ロンインという馬小屋や従魔小屋が併設された

立派なレンガ作りの宿屋がある。

この街でも一番上等な宿だそうだ。

さっそくアーロンさんを先頭に馬を

この宿の人に預けて狭い入り口を通ると

中はすごく広い食堂のようになっていた。

天井は吹き抜けになっていて木の骨組みが

むき出しになっている。

奥にはカウンターがあり宿泊客以外にも

木の小さな樽のようなマグカップ片手に

大きな声でワイワイとエールを飲みながら語らう商人や

冒険者風の男達。

他にも流れの演奏家?であろうか?

楽器を弾いている人達の音楽に合わせて

踊っている客と様々だがとにかく大にぎわいだ。


俺たちが中に入ってすぐ店主がやってきて


「お待ち致しておりました。

ヘンリー様御一行様。

どうぞこちらへお進みください。」


そう言って部屋に案内してくれた。

かなりの上客なんだろう。

船を降りてすぐにアーロンさんが

コモンレイブンを使って宿に予約を取ったようだ。

どんなえらい貴族であっても事前の予約は

必要らしく、ちゃんと取っておかないと

好みの部屋はもちろん、宿にも泊まれないとか。

さてここで、問題が一つ。

従魔についてだ。

そう、グリである。


「お客様、大変申し訳ございませんが

お連れの従魔は従魔小屋にてお願い致します。」


残念なことに部屋にはグリは泊まれない

ということで従魔小屋で一泊するのだが

やはりゴネた。


「なんで我だけ部屋ではないのだ。

チッ。我も部屋が良いぞ。」


「そうだよな。わかるよ。

だけどな、そういう訳にいかないみたいなんだ。

悪いな。そうだ!布団を敷いてやるよ。

それでどうだ?」


「うむ、あとマタタムブもつけろ。

そうしたら今晩は勘弁してやろう。」


「あぁ、わかったよ。

だけど、今後もこういう事があると思うから

よろしく頼むよ。」


「チッ、仕方がないのぉ。」


「悪いな。」


マタタムブのおかげでなんとかなったけど

今後も野宿以外はこうなるだろう。

小さい従魔に関しては問題ないんだが

やはりあれだけデカイと部屋は無理だ。

ちなみにポヨは部屋でも問題ないみたいだ。

ようは、毛と爪が部屋を傷めたり汚したり

損失を与えかねないためという理由だ。

そりゃそうだよな。


グリの事は解決したのでグリと一緒に俺は

従魔小屋に別の人に案内してもらい布団を敷いて

グリと別れて部屋に向かうと、そこは豪華で

上等な三人部屋だった。

部屋割りはヘンリーさん、アーロンさん、

ノアさんの三名で一部屋。

ジャックさん、ジョージ君、俺で一部屋だ。

合計二部屋を取っているらしい。

身の回りの世話や護衛も含めてヘンリーさん

一人で寝る事はあまりないらしい。

この二部屋で240ペニー。

かなり高級らしい。

その理由はなんと部屋に風呂が付いているから!

このグランド王国の人ははっきり言って

風呂には入らないけど他の国の人でお風呂に入る

文化もあるらしく利用者はちゃんといるとか。

ヘンリーさんも俺の家で過ごした後からお風呂が

気に入り、健康のためもあって入れる環境だと

お風呂に入るようになったらしい。

俺にとってはかなり嬉しい変化だ。

風呂に入れる!グリ、ごめんな。

ちなみにこの風呂は地面から柱を使って

床を持ち上げ壁の中にも空間を残しておき、

炉からの熱気と煙を床下や壁に送り込み

天井付近の送管で排気する。

こうやって室内の空気を汚さずに暖めるらしい。

壁の中に中空の四角いタイルを使ってそれを

熱気の送管にして同時に壁から部屋を暖めているそうだ。

よく暖めたい部屋を炉に近い位置にし、

火にくべる木を足すことで暖房効果を強くする

ことができるとか。

この風呂を維持するためだけに

火魔法の属性のある人が雇われているとか。

人件費がかかってるのね。

食事はあの一階の騒がしい食堂で食べるらしい。

それにしてもいろんな人がいる。

部屋もいろいろあって高級な部屋から安価な

九人部屋のもちろん、相部屋の物まであるため

客層も様々。

貴族のような豪華な服装の商人から

獣人の俺のような服装の冒険者風の人、

宿泊客ではないこの街の労働者風の人と

派手な服装の踊り子さんに楽器を奏でる一座

本当に人が多すぎて目が回りそうだ。

俺たちは空いているテーブルに座り

運ばれてくる食事を食べる。

豆やビートの葉、人参、玉ねぎと干し肉で

煮込まれたスープに固めのずっしりしたパンと

エールがテーブルにドンッ!と置かれて

従業員はニコリともせず次のテーブルで追加の

注文をとり、いそいそと奥の調理場であろうか?

その部屋へと入り、料理やエールを両手に持ち

くるくるとテーブルと奥を往復して仕事をこなす


「では頂きましょうか。」


「そうだね。

今日無事に辿り着けたことに感謝して乾杯。」


「乾杯」


俺たちはエールで乾杯して食事をとる。

ビールとは違って冷やさずに常温で飲む、

ホップを使わずにハーブで作られているビールで

甘い香りがするのが特徴。

アルコール度数も低めなので

みんなガバガバ飲んでいる。

俺は酒はそこまで得意じゃないから

一杯飲んだら後は水を飲んでいる。


「よぉ、あんた達どっから来たんだ?」


隣の席の小太りな男が話しかけてきた。

俺が話そうとしたらジャックさんが


「あぁ、港町からだ。あんたは?」


「俺かい?俺はこの街に少し滞在してる

ガストンだ。ここの酒場が気に入ってな。」


「そうかい、よろしくな。ガストン。」


「見たところ、ここの宿泊客のようだが

どこまで行くんだい?」


「ここで買い物して明後日くらいには

港町に戻ろうかと思ってるぜ。」


「ほう、そうかい。この街にゃいい女もいるぜ

楽しんでいきなよ。ヒッヒッヒ」


いやらしい笑い方しながら席を立つ小太りな男。

それにしてもジャックさんさらっと嘘ついたな。

なんでだろう?


食事をさっと済ませてヘンリーさん達の

部屋に行くとさっきの小太りの男について

ジャックさんが話し始めた。


「ありゃ、盗賊の一味だな。

獲物を探して酒場に出入りしては予定を聞き出し

待ち伏せして襲うつもりだろな。」


「それで、嘘をついたんですか?!」


「そうさ。むやみやたらに予定なんか

喋るとろくなことないからな。」


「そうなんですね。危なかった。

普通に話すところでした。」


「向こうも話しそうな奴の目星をつけるのが

得意だからな。俺らもこんなに早くこう言う輩に

目をつけられるとは思ってなかったんで

言ってなかった。すまなかったな。

これからはあんな風に適当にはぐらかすか

無視してくれよ。そしたら俺が話すからよ」


「わかりました。勉強になりました。」


やっぱり平和な日本育ち。

こんなに危険がすぐ近くにあるなんて

思いもしなかった。

危険はすぐ隣にあると覚えとかないとな。


「さて、順番に湯浴みして寝ましょうか。

彼の事も気になりますし

明日は早めに出ましょう。」


「おう!」


俺たちも部屋に戻って順番に風呂に入る。

俺の番が来て風呂に入ると、これは

風呂というよりサウナだな。

真ん中に水風呂があって部屋はかなり暑い。

俺が思っていた風呂とはちょっと違うが、

これはこれで気持ちがいいので有りだ。

風呂を出ると明日のルートを確認して

早々と布団に入る。

明日はもしかすると魔物ではなく盗賊と

やりあうかもしれないと言われ、ビビリの俺は

ビクビクしながらも明日の事は深く考えまいと

ベッドに潜る。

明日も無事に目的地にたどり着けるといいのだけど。







読んで頂きありがとうございます。

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