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51.野菜は大事です。

俺達とイケメン集団の不思議な一行は

お世話になった船長さん達と別れ

恒例の身分証確認を豪華な門からすり抜けて

いつも通りグリの件で引っかかりながらも

普通の門に並んでいる人より早く済ませた。

そして通過した門の先には事前にアーロンさんが

手配していたグラニ種の馬がお出迎え。

みんなはそれぞれの馬にまたがり

遅れを取り戻すべく観光など一切せず

早々に港町をでた。

ちなみにあのピシッとした男性召使いさんは

今回は同行せずにヘンリーさんに頼まれた

重要な仕事があるため違う場所へ向かうらしい。

彼とも別れて俺達が一番はじめに向かう目的地は

ロンカストラという商業で栄えている街だ。

そのおかげか港があるからなのかわからないが

街のように舗装された石畳の広い道が続いている。

きっと積荷を馬車などで運ぶからなんだろう。

この辺りは草原で見晴らしが良いため

陸の魔物はすぐに発見できるそうだ。

問題なのは空の魔物。

以前に遭遇したロックバードのような魔物に

注意が必要らしい。

上から飛んできて荷馬車ごと運んでいくとか。

この世界は壁の外は魔物で危険だし

壁の中は不衛生で病気で危険。

病気に効くかどうかはわからないけど

しっかり結界を張っておかないとな。


「皆さん、次の休憩地点で食事をとりましょう。

よろしいですか?」


「おう!」


馬の順番は二列で歩いていて

先頭がジョージ君、ジャックさん

そして真ん中がヘンリーさんと俺達

そして後ろがノアさんとアーロンさん

という感じだ。

ちなみにジョージ君が槍使いで風魔法属性

ジャックさんは剣士で体術もいける土魔法属性

ヘンリーさんも剣と火魔法属性と風魔法属性

ノアさんは弓使いで光魔法

アーロンさんは魔導師で

なんと火、水、土、風の四属性だそうだ。

特殊魔法の氷も使えて剣も扱えるらしい。

鑑定スキルは持ってないがそのかわり

アイテムボックスを持っていて魔力量も

ヘンリーさん程ではないが

結構な量の魔力を持っているとか。

やっぱりこの人超エリートのようだ。

四属性以上の魔導師はこの国には

百人程いるらしいが

その多くがアーロンさんの一族の方々らしい。

もちろん幼少の頃より英才教育で魔法から剣術、

体術、帝王学などのお勉強に至るまで

みーーーーーーーっちり叩き込まれたんだって。

皆さんきっと似たようなもんなんだろうな。

アーロンさんは特に厳しいお家のようだけど。

話し方からにじみ出てるよね。

非常に固い感じと時折見せる黒い笑み。

あの人には絶対に逆らってはいけない気がする。

孫の代まで潰されそうだ。

そんなくだらない事を考えながら歩いていると

急に感知が反応した。



ーーーー 警告 ーーーー


ゴブリン 5体 接近中


ゴブリンメイジ 1体

ゴブリン 4体


ーーーーーーーーーー



「皆さん、ゴブリンメイジとゴブリン4体が

こちらに向かってきています。」


「ほう、こちらは風上だからな。

匂いを嗅ぎつけて襲いにきたのかもしれんな。

小者どもめ。ふんっ」


「どうしますか?相手にしますか?」


「いや、時間が惜しいから引き離そう。」


「グリ殿、

スピードを上げても構かまわないかい?」


「問題ない。

あいつらの返り血も浴びたくないしな。」


「そうっすね。あいつらマジで臭くて

交戦すると臭いが3日くらいとれないんっすよ。」


「では参りましょう。」


「おう!」


俺達は交戦せずその場を駆け抜けゴブリンを

引き離した。

それにしてもこのグラニ種、速いなぁ!

しかもすごいタフ!

さすが軍馬になるだけの素質のある馬だな。

いやまてよ。素質でいうならオーデン様の愛馬の

遺伝子なわけだから速くてタフなのも当然かもしれない。


しばらく走ってゴブリンを引き離せたようなので

スピードを落としゆっくり歩きながら

俺達は休憩を取ることにした。

お馬さんを休ませないとね。

昼食はアーロンさんがアイテムボックスから

色々と取り出しみんなで準備する。

折りたたみテーブルから折りたたみ椅子。

テーブルクロスに食器まで出てきた!

テーブルセッティングまで完璧にこなす。

この人凄すぎるだろ?!

そして城のコックさんが作ったであろう

肉料理を詰めたバスケットとパンを詰めた

バスケットを取り出しさらにツボには

熱々のスープや果物が入れられていた。

いやもう、あなた完璧すぎる。

さらにそれらの食事を手際よくよそって

皆に回していく。


「皆さん行き渡りましたか?」


「あぁ、ありがとう。それでは頂こうか。」


「はいっ。」


「いただきまーす」


まぁ今は昼間だから焚き火とかいらないけどさ

てっきり地べたに腰掛けて干し肉かじってとか

イメージしてたけど、これお洒落なピクニック

又はお茶会じゃねえか?

貴族はどこに行っても貴族なんだな。優雅だわ。

俺、ストック料理作ったけど出番なさそうだな。

俺やグリ、ポヨの分まで飲み物まで

きっちり用意してくれてるんだもの。


「どうかされましたか?タクミ殿」


「いえ、豪華な食事に驚いてました。」


「あぁ、確かにそう言われりゃ普通からすると

かなり豪華だよな。」


「そうっすね。

アーロンさんがアイテムボックス持ちじゃなかったら

今頃干し肉かじってるっす。」


「まぁ、ヘンリー様に不味いものは

食べていただきたく無いから

その時は俺が荷物を抱えるさ。」


「たしかにノアの言う通りだな。

水魔法使えんのもアーロンだけだしなぁ。

俺なんて土属性だからよ頑張っても泥水だぜ。」


「そうだね。アーロンのおかげだよ。

あぁ。私も水魔法が使えたらグリ殿に

水をかけてあげられるのになぁ」


「ヘンリーさんっそこ?!」


この人ちょいちょいズレてるよな。天然か?

つぅか動物愛に溢れすぎだろ。


「いや〜。だって嬉しいじゃないか。

本当に私は動物や魔物に好かれないんだよぉ〜

馬は乗れるけどね。

可愛がろうとするとそっぽを向かれてしまう。

なぜだろうねぇ。」


「まぁグリでよければいつでも触れ合ってください。」


「タクミ、我はあれが飲みたいぞ。

ローズヒップとオレンジのやつだ。」


「あぁ、あれか?いーぞ。ちょっと待ってな。」


俺はアイテムボックスから飲み物を取り出す。


「そういえば俺、あの黄色いカリッフワッ!の

赤いソースをつけるやつ、また食いたいっす!

タクミさん、あれ作れませんかね?」


「あぁ、それだったら旅の支度で

たくさん作ったから持ってるよ。

ジョージ君食べる?」


「ほ、ほんとっすかー!食べたいっす!

いいんすか?」


「うん、だってアーロンさんが美味しい料理を

俺らの分まで用意してくれてるから

全然平気だよ!」


「なに?!そうなのか!じゃあタクミ

俺もそれ食いたい!」


「じゃあ俺から一品出すということで

みんなで食べましょう」


「わーーーい!」


「ジョージ!よくやった!」


「グリはジュースな、はい、ポテトどうぞー。」


俺はフライドポテトをテーブルに置いた。


「そういえば貴族の皆さんは日頃野菜は

あまり食べないんですね。」


「そうですね。

貴族は肉とパンがほとんどですね。」


「何か決まりでもあるんですか?」


「そういうわけではないですが

肉を食べ太っている貴族ほど領民から

好かれたりしますね。」


「え?それまたなんで?」


「領主が太っていればその分よく食べれている。

領地の作物の収穫量が沢山あるという目安になり

他の地の者に、あの土地は良い土地だから

飢えることがない。生活が楽になる等

そんな印象を与える効果があるようです。」


「なるほど〜。だけど太り過ぎは健康を害すので

本来あまり体には良くないようですよ。

特に良い物を食べすぎてバランスが悪いと

風が吹くだけで足が痛くなる病にかかったりとか

他の病気の原因になったりするみたいです。」


「そうなんですか?

では野菜も食べないとなりませんね。

途中の街で野菜スープなどを購入して

ヘンリー様の体調管理をしっかりと

行わなければ!」


「よければ俺の作った

野菜スープ食べてください。」


「よろしいのですか?これはありがたい」


アーロンさん、マジでヘンリーさん命だな。

鼻息めっちゃ荒い。


「バランスかぁ。

たしかにマジックボックスとか

マジックバックを持ってない船乗りは

そういやよく死ぬなぁ。

なんか、関係あるのか?」


「ジャックさん、そうなんですか?

どうでしょう?あまり詳しくないですけど

野菜だったり柑橘系の果物とか食べたりしないと

最初のうちは小さな血豆が現れてそのうち

大きな潰瘍へと広がって歯茎は黒くなり

膿が出てきてさらに過去の骨を折った部分とかが

再び折れて古傷が開いたり幻覚とか見えて

心をむしばむ話を聞いたことがあります。

あとは、ものすごく悪臭を放ったり

夢をはっきり見たりとか。」


「そいつは悲惨だなぁ。

俺もどんな死に方するかは知らねぇが

クリーン使っても悪臭がするんじゃ

たまんねぇな。」


「ポーションとか使っても

亡くなったりするんですか?」


「食事が関係するのかはわかりかねますが

船乗りの病は有名ですね。

ポーションを使ってなんとか生き延びる方も

いるそうですが、やはりポーションも予算などで

数に限りがありますから乗組員の下の方の者達は

亡くなることが多いですね。

どうしても命の優先順位が出てきますから。

全員無事に航海できることが最良ですが

現実はそんなに甘くないですからね。

それにポーションも効果の高いものになれば

もちろん高級ですし、何より魔物に襲われた時に

取っておく必要があるため、怪我であったり

体力や魔力の回復に効くポーションを多く積み、

病のポーションは数がへらされてむやみやたらに

使えないのが現状のようですよ。」


「ポーションも色々な種類があるんでしたっけ?」


「あぁ。色々あるぜ。

傷用ポーションや病用兼体力回復ポーションに

魔力回復用だろ?それから攻撃用の物から

変わり種のラッキリーポーションまで色々だな。

効果も四段階あってよ。

よく効くやつから子供騙し程度の物まであるぜ。

あと傷用ポーションは大抵高価だからほとんど、

軟膏タイプを携帯してるなぁ。」


「でもノアさんみたいな光魔法を使える人なら

ポーションなんていらないんじゃないですか?」


「いや回復魔法があっても一人で沢山の人数を

回復させてたら魔力がすぐに底をつくから

結局魔力回復のポーションが必要になるのさ。」


「なるほど。」


「それに重症な奴がいたら他の手当てができないからな。」


「たしかに、かかりっきりになりますね。」


「それにレイスとかのアンデットが現れると

光魔法しか効かないから船旅は特にっすけど

回復だけに使うわけにもいかないと思うっす。」


「そうだな。たしかに海には死んじまった奴らが

アンデットになって夜に出てくることが多いからな。」


「ヒェーーーーそうなんですか?!

今回の船旅は出てきませんでしたけど

よく出るんですか?」


「あぁ、マーニン島経由はあまりないがな。

遠洋ルートの方はうじゃうじゃ出るらしいぞ。」


「ヒェーーーー」


「たしかに、あやつらはウザいのぉ。

毒使いがおったり上位種なんかいたら

ひたすら復活させてくるからな。」


「グリも戦ったことあるのか?」


「あぁ、暇つぶしに昔ダンジョンに入ってな。

だがあやつらがおって面倒になって出てきたのだ。」


「グリ殿、ダンジョンなどに行かれるのですか?

ダンジョンでアンデット系の階は特に面倒ですね。」


「そうだな。とにかく弱いくせにしつこいのだ。」


「弱いのか?」


「タクミ君、グリ殿の感覚では弱いかも

しれないが我らにとっては嫌な相手だよ。

突然仲間がアンデット化して襲ってきたら

やはり戸惑うだろ?」


「えぇーーー!

そんな簡単に復活させられるんですか?」


「あぁ、呪術を使うものもいりゃあよぉ、

体液を吐いてそっから毒を感染させて

傀儡くぐつにしてくるやつもいるんだ。

結界がねぇと軍一つまとめてアンデット化される

事もあるぜ。」


「うわぁ。最悪だなそれ。」


「ですから野宿の時の夜は交代で結界を張ったり

見張りに立ちます。」


「なるほど。でも光魔法を使えない人は

対策が何もなくないですか?」


「いえ、聖なる刻印のある武器であれば

持ちこたえる程度にはなんとかなります。

完全に倒すことは無理ですが自分がアンデット化

する事は避けられます。

光魔法所持者はこの武器に魔力を注いで

アンデットに対して攻撃を行うと

爆発的な殺傷能力を発揮して浄化しますので

どちらかというと光魔法所持者は昼は回復などの

援護にまわり夜は攻撃部隊に変わる感じです。」


「ヒェーーーー。知らなかった。

俺、森で一度も遭遇しなかったけどなんでだろう

あそこで一度くらい襲われても

おかしくなかったと思うけどなんでだ?」


「人里離れた所で人が出入りしなきゃ

あんまりでないからな。

ほら船の時、見なかっただろ?

いつも出るわけじゃないんだよ。」


「そうなんですね。」


「それに通常は夜しか現れないからな。

ダンジョンとか、洞窟は別だけど

太陽の光がある所はとりあえず大丈夫だ。

現れたとしても朝陽まで持ちこたえれば

なんとかなるからよぉ。」


「陽の光が弱点なんですか?」


「さぁなぁ。だけど時間切れみたいな感じで

すぅーーーーって消えるんだぜ。」


「へぇ〜。そうなんですね。あー良かった。」


「今から向かうロンカストラはその昔

王位争いで戦場の舞台になった地です。

その為レイスが多いのですよ。

ですから是が非でも城壁の中に入りたいのです。

たどり着けなければノアの負担が大きいので。」


「なるほど!わかりました。

所で結界は効かないんでしょうか?」


「もちろん効果はありますがレイスに限っては

光魔法所持者の結界でないと効果があまりなく

簡単に破られてしまいます。」


「あっ!だったら問題ないかと思います。

俺、光魔法使えますから。」


「そうなんですか!それは頼もしい。」


「だったら今後の野宿も安心して寝られるな。」


「はい、任せてください。」


「助かる。俺一人より二人の方が魔力量も

抑えられるし安心だ。魔力切れで回復が

使えない時の辛さといったらもう・・・

ありがたいよ。」


あぁ、ジャックさんの時のことか。

辛かったんだな。ノアさん。


「さて皆さん、そろそろ参りましょうか。

頼もしい方々がいるとはいえ

レイスに囲まれて野宿は控えたいですから」


「そりゃ言えてる。結界周りでずっと

コツコツコツコツ叩かれてうるさいからな。」


「そうっすね。あと、あーあー言って

うるさいっす。」


「じゃあ、そろそろ片付けますね。」


「お手伝いしますねぇ〜」


そうして俺たち一行はロンカストラへ向けて

また石畳の道を進み始めた。









読んで頂きありがとうございます。

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