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50.船旅の終わりと腰ミノ

「うむ、なかなか良いぞ

お主めきめきと腕を上げておるな」


「そうかい?そりゃ嬉しいなあ」


ゴーシゴーシゴーシゴーシ


只今、朝の恒例行事となっている

ヘンリーさんの癒しの動物ふれあいタイム中。

日に日にグリの気持ちいいポイントを押さえる

優雅な謎の貴族、美男子ヘンリーさん。

ヘンリーさんの船での1日は

はっきり言って多忙だ。


まず起きてから身支度を整えお祈りをして

その後、グリの水浴びを手伝い

流石に濡れるのでまたお着替えして

今度は前の晩遅くに送られてくる

領地からの重要書類に目を通し採決を下す。

その後朝食をとり今度は通常の書類に目を通して

また採決を下したり検討し直しなど事務仕事を

午前中いっぱい行う。

その後昼食をとり2時間ほど剣の稽古。

ジャックさんが相手をしている。

汗をかいた後はティータイム。

この時に船じゃなければ来客とかの対応とか

お茶会とかそんなものも追加されるが

今回は海の上なので来客はない。

という事でお茶をしながら書類の確認。

そしてまた、本腰を入れて残っている

普通の書類に目を通して

仕事をどんどん片付けていく。

これでもアーロンさんがかなり選別して

仕事量を減らしているそうなのだが、

はっきり言ってかなり膨大な量だ。

しかしこれだけの量の選別ってもっと大変なんじゃないのか?

アーロンさん、おそるべし。

書類の内容は領地経営、主に作物の収穫量とか

税金とか土地の賃貸料だったりだとかで

あとは領地で起きたトラブルなんかの報告書やら

結婚の承認まで領主が行うらしい。

そりゃ膨大にもなるわな。

そして一通り終えたところで夜のお祈りをして

夕飯をとり、その後はゆっくりとお酒なんか飲みながら

一日を終えるようだ。

城とかにいたら領地の視察やらダンスとかまで

入ってくるらしい。

貴族って左うちわで遊んで暮らしてるのかと

思ってたけど案外忙しくて大変なんだな。


アーロンさんとノアさんは基本ヘンリーさんの

身の回りのお世話から仕事の補佐だろ。

ジャックさんとジョージ君は基本護衛で

部屋の外で待機してるか剣の相手をしているか

あとは交代で船の上から外敵が来ないかの確認。

皆さん大忙しだ。


そしてこの生活パターンはもう直ぐ終わりを告げる。


プロロロローーーーー


「陸がみえたぞーーーー」


そう、実は本日船旅最終日。

当初の予定より多少時間がかかったが

無事、大陸の見える位置までやってきた。


グランド王国本土だ。

船員さんたちも慌ただしく持ち場について

仕事をこなしている。

あと1時間もすれば入港するらしい。

ちらほらと他の船が見える。

あれか?アーロンさんが最上階しか海面から

出ないって言ってた船は。

俺が思っていたより小さい船だけど

あれにそんなに荷物が載せられるとも思えない。

ぼーっと見ていると俺の考えはくつがえされた。


「なんだあれ!」


「タクミ殿、あちらに見えますのは

アスピドケロンです。」


「アスピドケロン?」


「はい。そうです。大きいでしょ?」


「はい。かなり。あれ、亀ですよね。」


「そうです。亀の魔物です。

大昔に発見された古くから

船乗りに恐れられている魔物でした。」


「船乗りが恐れる魔物ですか?」


「タクミはしらんか。

あやつは島と見まごうほどの巨大な亀の魔物だ。

その姿は荒石のようで、大きな海藻類が背中の周りに

生え、まるで小さな島のように見える。」


「その通りです。そして船乗りたちは、

船をアスピドケロンに留めて上陸し、

キャンプを張ります。

彼らは焚き火まで燃やし一休みしようとします。

そこに至るまでアスピドケロンは何もしませんが

しかし焚き火が燃やされて

船乗りたちが安心して島で休んでいるのを知ると

一気にその巨大な身体を海の中に沈めこみ、

船もろとも船乗りを海中に引きずり込んで

殺してしまう。

そんな恐ろしい魔物と言われていました。」


「それがなんで船に?」


「はい、実に簡単な事でした。

アスピドケロンはただ日向ぼっこを

していただけなのですよ。

そこに船乗りが上陸。

でもアスピドケロンからすれば

何の事もなくただ日向ぼっこが終わったので

海に潜った。ただそれだけの事でした。

亀の中にも恐ろしくどう猛な者もおりますが

アスピドケロンは特段どう猛な魔物でもなく

比較的大人しい温厚な魔物でした。

そこである時、従魔契約に挑戦した者が現れ

すんなり契約できたものですから

その後、海での行き交いの手段として

用いられるようになり今では近距離用の船として

大変活躍しております。

遠距離はファスティトカロンという魔物が

利用されています。」


「なるほど、それで見たほうが早いと。」


「はい。簡単に説明しますと、

休憩の時には海面に浮上しますが

大体は海中に潜って泳ぎますので

前方を確認して指示を出すテイマーさえ

外の景色が見えれば、

あとは荷物が載っているだけですので

窓は必要ないのですよ。

あそこの最上階にテイマーの私物が置いてあり

後の階は全て商人の積荷となっています。」


そうなんだ。

亀の甲羅の上の一部に四階建てくらいの

窓のない塔のようなビルみたいな物が

にょきっとくくりつけられている。

全体に載せないのは甲羅を日光浴する

必要があるため全部には載せないらしい。

しかし亀が船。

予想もしていなかったよ。

もう一つの魔物は一体なんだ?


「もう一つの魔物は入港しないんでしょうか?」


「そうですね。あちらは遠距離用のため

こちらの港にはいないかもしれませんね。

こちらは比較的近い島や大陸からしか

集まってこない港ですので。

経由して違うところに行く船もありますが

こちらの港はほぼ経由されないので

見られないかと思います。」


「そうですか。ありがとうございます。」


「噂をすればあそこに見えるのが

亀のテイマーですよ。」


「えぇぇぇぇーーーー!」


めっちゃ浦島太郎感半端ない衣装だぞ!

しかもアライグマ?!


「あのあの方はいったい?!」


「ああ、あの格好はヤポーニア出身の獣人だと

思われます。

ヤポーニアの獣人は服装が独特なんですよ。」


「腰ミノに長袖シャツにブーツって・・・」


「あの腰ミノは海に間違って落ちても

浮くようになってるとかですよ。」


「しかしあの獣人さんは非常に毛深いですね」


「獣人は獣の姿を残したものもいれば

ほぼ人にしか見えないですが一部分だけ

獣の部分を残しているものなど様々ですよ。」


「そうですか。」


異世界、奥深い。

しかしアライグマが二足歩行で腰ミノ。

パンチがありすぎる。

異世界にだいぶ慣れたと思ってたけど

まだまだ甘かったな。俺。


「さぁ、上陸の支度をしましょう」


「はいっ。」







読んで頂きありがとうございます。

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