48.俺とレモラとウォーターボール
「あぁぁぁぁぁぁぁ〜 暇だ。」
快適な船旅だが全部用意してくれるし
何もする事がない。
グリなんて空の散歩を楽しんでるし、
かと言って俺もついて行くのは
なんだか団体行動乱すようでついて行きたくても
ついていけない。
うん、典型的な日本人なんだよな。俺。
他の皆さんはそれぞれ受け持つ仕事をしていて
忙しそうにしている。
ジャックさんは甲板で素振りが日課だ。
ジョージ君も槍の訓練を欠かさずしてるし
アーロンさんノアさんはヘンリーさんの補佐。
俺、料理くらいしかできないからな。
束の間の休息と思ってのんびりしていたけど
さすがに5日目ともなるとダレてきた。
そうだ。そういえばあれから鳥の魔物の事
調べるのすっかり忘れてたな。
暇だし調べてみるか。
『サーチ、レイブンパロット、コモンレイブン』
【 名前 】レイブンパロット
【 生態 】
寿命50年
卵 3〜5で産まれる
体長33センチ 300g〜500g
同時期に産まれたひなは離れていても意思疎通が
可能で指定した一羽の兄弟と会話ができる。
もちろん兄弟なら全羽でも可能。
またレイブンパロットは声真似も得意。
この特徴を利用してレイブンパロット越しに
会話のやり取りができる。
また声もそっくりなので
相手と直に話しているような
錯覚に陥るが全てレイブンパロットの通訳によるものである。
【 利用方法 】
複数の領地を持つ貴族に使われる。
代官と連絡を取るために各領地の屋敷で
飼育されている。
また近しい親族とのやり取りや
ギルドの本部と支部などにも
利用されるが最大5箇所しか設置できないため
限りなく重要地点にて飼育されることが多い。
1日1時間は最低でも日光浴が必要なため
長生きさせるためにも体長管理は専属スタッフが
付いていることがほとんどだ。
レイブンパロットは温厚で人によくなつき
人語を理解して話しができる。
きちんとコミュニケーションも取れるため
話し相手にもなる優秀な鳥。
おとなしい反面ちょっぴり寂しがり屋。
頭を撫でられるのが好き。
見た目は体の大半は淡灰色の縁取りのある
灰色の羽毛に包まれている。足は白色
顔の鼻から目にかけては白色。
嘴は黒色で尾羽は鮮やかな赤色
主食は種子や果実(オイリーパームの実など)
帰巣本能も強いので一人で散歩に出かけても
きちんと飼い主の元に戻る。
飼われているものはいつ連絡が
入るかわからない為屋敷の庭や屋上といった
敷地内で過ごす。
【 名前 】コモンレイブン
【 生態 】
全長60センチで羽の色は全身黒色。
翼長は1メートル
光沢のある黒い羽を持ち、
利口で賢くタカやハヤブサにも負けない
飛行の名人。時速200キロ
飼育下の寿命25〜60年
この異世界の神様
オーデン様のペットとしても有名。
朝方出かけ夜になるとオーデン様の肩に
2羽が止まり見てきたものや聞いたものを色々と
話してくれる鳥と伝わっている。
このコモンレイブンも声真似が得意で
長距離飛行も得意な為、伝言鳥として
利用されている。
また手紙も届けてくれる。
嗅覚はそんなにないが
視覚と記憶力がよく一度見た相手の顔は
忘れない。
そのため一度会った相手なら
確実に届けてくれる。
警戒心が強いため魔物にやられてしまう
可能性がとても低く任務を遂行してくれる
頼もしい鳥。
コモンレイブンは家に忍び込んだネズミや
カエル、蛇や昆虫など害虫と言われるものから
とにかくなんでも食べる雑食なので餌代は特に
かからない為子供の初めてのテイムに適していて
貧しい家であっても皆一人一匹は飼っている。
飼育をするレイブンマスターという職がある。
テイマーの中の一つだが需要も多く成り手が多い。
テイマーとは調教師で魔物だけでなく
普通の鳥や馬などもテイマーの分類。
魔物のテイマーは上級職で固有スキルがあったり
魔力量が高い者に多く、種族ではエルフが比較的
動物や魔物とうまく折り合いをつける。
人族では魔力量は多いが魔法属性にあまり
恵まれていない者がテイマーになる事が多い。
テイマーは需要も多いので人気職の一つ
魔法属性にも恵まれている者は魔導師として
冒険者や貴族に仕えたりする事が多い。
へぇ〜。声マネってのはこう言うことか。
三つ子なら三者通話、四つ子なら四者通話五つ子なら
五者通話ができるって事かよ。
すげえな。この鳥の魔物。
声マネってひとえに言うけど耳も頭もめっちゃ
良いんじゃないか?
俺なら五人もいたら誰の会話だったか
ごっちゃごちゃになってわからなくなるぞ。
このコモンレイブンって言うのも
飛ぶの速すぎだろ?なんだこの速さ。
絶対空でぶつかりたくない相手だな。
大事故だよ。
もちろん向こうが避けてくれるんだろうけど
でも怖いよな。
こいつも声マネしてくれるのかよ。
それにしてもオーデン様、鳥に馬にと、
ペットいっぱい飼ってるんだな。
ん?なんか船の揺れが急に激しくなったな。
ガタガタガタガタ
ガターーーーーーン!
「ん?なんだ?!今の衝撃?
あれ?なんか船止まってないか?」
ガラスの窓から映る景色は変わらず海の中だが
揺れが全くない。
休憩はさっきしてたし止まるには早すぎる。
それに揺れが激しくなったと思ったら最後の衝撃
俺は気になって個室から出ると
何かあったのだろう、船の中が騒がしく皆慌ただしい。
「あの、すみません。何かあったんですか?」
「なんかあったもクソも・・・おっお客人。
いえ、あのこりゃ失礼しやした。」
あらー、何かあったんだな。
あの慌てぶりに、しどろもどろな口調。
鈍感な俺でもさすがに分かるよ。
そうだな、こういう時はサロンに行ってみるか。
慌ただしい船内を歩いてサロンまで行くと
そこには船長と思わしき筋骨隆々な白髪の
お爺さんとイケメン集団が渋い顔をして
話をしていた。
「皆さん、どうかされましたか?
なんだか船がとまったようですが。」
「これはタクミ君ちょっとまずい事になってね。」
「まずい事?ですか?」
「すまんのぉ。
ワシはどうやらもうろくしてしまったらしい。
寄る年波には勝てんと言う事か。くっ。」
「船長、そんな事はないと思うよ。
あなたの結界は中々破れる代物では
ないはずだからね。
もしかすると群れかもしれないよ。」
俺はジョージ君に小声でどうかしたの?と
コソコソ聞いてみた。
するとジョージ君も小声で
「実は船長の結界が破られてレモラっていう
頭の上に吸盤がついてる魚に動きを止められた
みたいなんすよ。」
「魔物?」
「そうっす。何がしたいのかわかんねーんすけど
船の竜骨って言う所にぺたーーっ!て
張り付いてそのまま動けないようにする
意味不明な奴なんすよ。」
「あれ?でも結界があるんじゃ?」
「そーなんすよ。
すごい結界があったんすけどこんな状況で。
俺らも訳がわかんねーんすよ。」
「じいちゃん船長さん、寄る年波には〜とか言ってたけど」
「いやいやいやいや、それはないっすよ。
あの船長、見た目はゴツイじいちゃんですけど
元はめっちゃやり手の海軍の偉い人だったんす。
でも突然、ワシ引退するって言い出して
それを今の王が何にもしないんじゃ
ボケるだけだからお抱えの船長になれって
そんな話でこの船の船長してるっす。
ぶっちゃけ実力はトップクラスで
まだバリバリ軍人できる人なんすよ。
あまりにも惜しい人だから
王が何とか言いくるめて留めてるんす。」
「そんなすごい人なんだ。
何でやめるって言い出したのかも
ちょっと気になるけど、とりあえず
そんなすごい人の結界が破られたって事は
ヤバい奴がくっついてるんじゃないの?」
「そうなんすよ。
それで今みんなで話してるのは
たぶん1匹だけじゃなくて
群れで襲ってきてるんじゃないかって
話してたんす。
その吸盤ついてる魚の魔物は1匹でも
大型の遠洋船を昔は留めたりして
凄い迷惑したって話なんすよ。
もしこの船に沢山くっついてたら
さすがのヒッポカムポスでも動けないだろうって」
「取る方法とかあるの?」
「はいっす。
基本的にあいつらのテリトリーは
冷たい海水の所にしかいないんす。
そこで竜骨周りの水温を温めて離れるまで
待つ事が一番船を傷つけずに
取り外す方法なんだそうっす。
下手に攻撃して竜骨がやられると
船が沈んじゃうみたいなんすよ。
すみません、俺、船の事詳しくなくて」
「いや、十分だよ。ありがとう。」
つまりあったかいお湯で包めば離れる訳だろ?
「あのぉ〜ちょっとよろしいですか?」
「なんだい?タクミ君。」
「はい、そのレモラって魔物を海水で包んで
そこだけ温度を上げたらプカーって離れてくれるもの
なんでしょうか?
もしそれで離れるなら俺に考えがあります。」
「お若いの。あんたの言うた通り
包めたらそりゃ簡単に今より早く離れると思うが
あいつは中々しぶといぞ。」
「たぶんいけると思います。」
「よし、じゃあタクミ君に頼もう。
私たちは何かする事はあるかい?」
「ではこの船の大体の輪郭だけでもいいので
大きさとか形のわかる絵とかないですか?」
「それでしたらこれをどうぞご覧ください。」
アーロンさんが船の形状を描いた羊皮紙を
見せてくれた。
細かい事が書いてあるものはこういうのは
国家機密ばりに機密文書のはずだから
ざっくりした外観だけのものだ。
「ありがとうございます。これで大丈夫です。」
「相変わらず君はすごいな。
どうやるのか楽しみだよ。」
「ワシはこうなっちまった責任があるからな。
しっかりと見させてもらうがかまわんかな?
えーっとなんというたかな?」
「はい。俺、タクミと言います。」
「そうかタクミさんかい。
すまんが頼むぞ。こりゃ大事な船だから
あまり無茶はせんでくれよ。
お主は竜骨というのを知っておるかい?」
「何となく大事な部分というくらいは」
「竜骨というのはの、船の命じゃ。
その竜骨にヒビでも入ってしまったら
その船はもう使い物にならん。
船というものは竜骨の上に全て組まれておる。
これが折れてしまえば船は崩れてしまうじゃろう。
ワシの落ち度でこうなってしまったのに
お主にお願いするのは忍びないが
どうかこの船を守ってやってほしい。
付き合いは短いがの、こいつはいい船なんじゃよ。」
「わかりました。」
じいちゃん。へこんでるな。
とりあえず知りたい事が一つある。
『サーチ、レモラ』
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【 レモラ 】
岩礁などに群れる通常は70センチほどの
とても小さな青白い魚の魔物で頭部に
軟骨で出来た吸盤がある。
まれに110センチくらいになることも。
重さは2.3キログラム程。
頭についた吸盤で船や魔物にくっつき
進行を妨げるという。
太古の昔はたった1匹のレモラが
400人の漕ぎ手のいる54メートルもある大型船を
びくとも動かなくしたとある。
【 生態 】
吸盤には背骨と垂直方向に
18から28枚の隔壁がある。
この隔壁はふだんは後ろ向きに倒れていて
動いている大きな魔魚の体や船の竜骨に
吸盤が接触すると垂直にびしっと立ちあがって
吸盤は面に吸いつく。
吸いついたレモラを後ろに引くと吸盤は
さらに強く吸いつくが反対にレモラを前に押すと
隔壁がもとの位置に倒れて吸盤は面からはずれる。
このしくみにより、レモラは自分がくっついた
大きな魔魚や船などが速く泳いでも
ふりはらわれずにすみ、
しっかりと足止めをする事ができる。
また離れたいときは前方に少し泳ぐだけで
簡単に離れることができる。
【 利用 】
食用可能。脂がたっぷりの為、刺身では炙り。
フライにするとさらに美味しい。
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よかった!ワールドサーチにあった。
やっぱり温めるっておかしいと思ったんだよ。
温めても死ぬだけで吸盤は外れないんじゃないかと
思ったんだ。
しかもレモラ自身が離れたい時に
離れられないじゃないかと思ったんだ。
ちゃんと取る方法あるんだな。よかったぁ!
それから70センチでとても小さな?って
魔物はいったいどのサイズが普通なんだよ。
でかいだろ!
しかもさ、こいつ食えるじゃん。
これはやる気がさらにでるぞ。
しかも美味だって!
最近肉ばっかりでさ、飽きてきてたんだよね。
俺一人食事いりませんとか失礼すぎて言えないし。
これはやっぱりあれでしょ。
魚といえば氷締め。
フッフッフッフッ。
とにかくまずは引き剥がして離れたら即締める!
タコも確か死んでも吸盤くっつくみたいだし
離れないと困るからまずは剥がすところからだな。
じいちゃんの話だと温めるって話だけど
サーチで調べた方法の前に押し出すやり方で
ひっぺがしてから、それで氷締めでいこう!
その方が鮮度もいいだろうし。
フッフッフッフッフ。
「では甲板に行きます。」
「よし、いこうかのぉ。」
俺たちサロンにいた全員で甲板に出て
海面が見える位置に立った。
バサッバサッバサッバサッ
「どうした?なぜ船が動いておらぬ?
何やら結界も中途半端なようだが
どうかしたか?」
「おっ!グリ!おかえり〜」
ちょうどワシの姿のグリが散歩から帰ってきた。
「お前ってそんな事までわかるのかよ?
とりあえず今から調べる所なんだよ。」
「ほう。そうか。」
「ではやりますね。」
「あぁ、タクミさんや頼んだよ。」
「はいっ。」
まずは
『マップ、サーチ、レモラ』
おっ!出た出た!
さっき見せてもらった船の外観をマップとして
その近くにいるレモラを表示した。
するとなんと20匹ほどくっついてる。
その中の1匹はやたらと赤点がでかい。
このデカ丸がボスで他の奴を引き連れて群れで
襲ってきたのかな?
そりゃ凄腕じいちゃんでも無理でしょ。
小魚って言うけどやっぱりでかいわ。
「皆さん、やっぱりレモラがくっついてます。
20匹ほど。」
「な!なに?!20匹じゃと?!
それは確かなのか?!」
「は、はい。たぶん。
1匹やたらでかい奴がいますね。」
「そんな事までわかるのかい?すごいね君は。
という事は巣の上でも通ってきてしまったかもしれないね。」
「そうなりますと駆除が必要となりますね。」
「ほう、レモラか。
あいつは食えるが脂が多くてしつこいからなぁ。」
「おっ!グリ食ったことあるのか?」
「まあな。」
「なんかなぁ、
炙ると生で食っても美味いらしいぞ。
あとフライにしたらかなり美味いらしい。」
「おお!それはいいな!
よしタクミ、早く獲れ。
今日の晩飯はレモラに決定だ。」
「な、なんと!レモラを食うじゃと?」
「あのタクミ殿、つまりそれは
全て駆除して頂けるということでしょうか?」
「はい。1匹残らず捕獲して食べようかと・・・。
ダメでしょうか?」
「い、いえ。よろしくお願いします。」
「わかりました。」
「では行きますねぇ〜。」
『ウォーターボール』
俺はいつものように、今回は海水だけど
ウォーターボールを20個作って
静かに海に沈めてターゲットであるレモラの
背後からゆっくり近づいていき
レモラを包み込んだ。
ありがたい事にレモラは他の魚同様
捕獲されている事に気がついていない。
よ〜し。一個ずつ包んで行くぞ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
なんとか残り1匹まで何事もなく包めた。
残るはボスクラスの大きな1匹。
今までの奴より慎重に行く。
大事な船を傷つけずに済ますには
決して気づかれてはいけない。
気づかれたら最後、きっと全部の魚が一斉に
暴れ出して竜骨はやられてしまうだろう。
ここはとにかく、しんちょーーーーに。
俺はマップを頼りにゆっくりと
ボス格のレモラを包み込む。
「よ、よしっ!うまくいったぞ!」
「次は・・・。」
皆は静かに俺の行動をじっと見つめている。
ここからが問題だ。
ウォーターボールの中に水流を発生させて
レモラを前に押し出して張り付いている
船の命、竜骨からひっぺがす作業だ。
これは20匹全部を一気に行いたい。
1匹が異変を感じて連携をとられたら困るからだ。
「よし、いくぞ。」
俺はウォーターボールの中のイメージに水流を
追加して変化させ、さらに船から剥がれた
レモラのウォーターボールを
少しだけ移動させるイメージに変更。
これでうまくレモラが前に進んで
船から離れてくれればいいのだが。
よし、まずは5匹・・・8匹・・・13匹・・・
時間としては2.3分の事だが
俺にとってはめちゃくちゃ長い時間に感じる。
残るはボスクラスだけだ!
丁寧に・・・慎重に・・・
よし!離れたぞ!
『アイスウォーターボール!』
一気に20匹全てのウォーターボールを
氷締めするために変化!
マップの赤い表示がどんどん消えていく!
あと少し!あとほんのちょっと!
「やったーーーーーー!」
「やりました!終わりましたよ!
全て捕獲完了できました!
竜骨も問題ないはずです。
よければ検査お願いします。」
「な!なんじゃと??こんな数分でか?」
「さすがタクミ殿だね。」
「船長、船の確認をお願いいたします。」
「おい、見ろ。続々と海面から
ウォーターボールが上がってきたぞ。」
「本当だな。タクミは凄いな。」
「すっごいっす!ヒェーあんなにいたんすか?」
乗組員達の続々と海面から飛び出した
ウォーターボールを見てあまりの数の多さに
驚いている。
どうやら20匹なんて数がくっつく事なんて
ほとんどないようだ。
さて俺はアイテムボックスから
土魔法で作った箱を取り出す。
「ポヨー 箱の中に入って海水を取り込んでくれ」
ポヨがすぐさま箱に入って準備完了。
「じゃぁ行くぞ〜。」
海面から上がってきたウォーターボールを
1つずつ箱に入れては海水を吸収してもらい
箱の中にはレモラや海老のようなちっちゃいやつ
それから小魚なんかもいるな。
こいつらはカリカリに素揚げして
お菓子みたいにしちゃうか。
ポヨが綺麗にしてくれたレモラや海老とかを
俺はさらに取り出してもう一つの箱に移し
どんどん次のウォーターボールを
ポヨの箱に入れて黙々と作業をこなす。
その間、他の人たちは点検作業で大忙し。
「俺、レモラの姿はじめて見るっす!」
ジョージ君が俺の作業風景を見守りながら
楽しげに話している。
「あの、タクミ殿。
1匹譲ってもらえませんか?
こんな綺麗な状態のレモラは初めて見ます。
いつもは茹で上がっている状態なので
生態を調査しているところに
一つ回したいのですがよろしいでしょうか?」
「かまいませんよぉ〜。
あっ!後でキッチンお借りしてもいいでしょうか?」
「ありがとうございます。
キッチンの件承りました。
後ほど船長に確認をとります。」
「ありがとうございます!」
俺はアーロンさんに今取り出したレモラを渡す。
そして最後のボスクラスを綺麗にしてもらい
これをしまったらおしまいだ。
最後にポヨに俺自身を綺麗にしてもらう。
魚臭いからな。
綺麗になったところで俺は個室に戻る。
魚の下処理をしたいからだ。
「すみません。
部屋に戻っても大丈夫でしょうか?」
「はい。許可が取れましたらお伝えに伺います。」
「ありがとうございます。では。」
グリとポヨと三人で部屋に戻り
時間経過のあるアイテムボックスを開いて
俺はその中に入り包丁やまな板など必要な道具を
取り出して準備をする。
そして道具の次はゴミ処理を整える。
「ポヨ〜お前も中に入ってきてくれ。」
ポヨが跳ねながらアイテムボックス内に
入ってきた。
「ポヨ、お前このツボの中で悪いが待機して
俺が入れた物を吸収していってくれよ。」
わかったと言わんばかりにポヨがはねる。
よし、これで大丈夫だな。
それではさっそくレモラをさばいていこう。
まずは吸盤のある頭の下の方から包丁を入れて
頭を落としてお腹を開くと白い脂がびっしり!
これは脂がのっていそうだ!
よぉし。3枚におろしていくぞ!
3枚におろすと綺麗な白身がお目見え!
でもタイとかみたいに透き通ってないなぁ。
これはグリが言ってたみたいに
生で食べたらくどそうだ。
皮の方を軽く炙ってみよう。
数匹は刺身用に。残りはフライだな。
どんどん下処理を施してフライ用は
パン粉を付けるところまでして
キッチンで揚げるだけの状態まで作る。
小麦粉をアーロンさんから頂いたから
ちゃんとした衣が作れるぞ。
あとの小エビやら小魚は素揚げして
カリッカリのおやつにするのでこのまま。
一通り下処理が終わったので火魔法を使って
手のひらで刺身用を炙ろうと思う。
網がないのでバナナの葉っぱを編んだものを
受け皿にして脂をポヨのツボに落としていく。
「ポヨ、一旦お前出てくれるか?
熱いといけないからな。」
ポヨ〜ン。
実際熱を感じるのかはわからないけど
もしも、もしもだけど火傷とかしないようにね。
スライム最強説を唱えてる俺としては
大丈夫だとは思うけど一応念のためだ。
よし、では炙っていくぞ。
ツボの上にバナナの葉をセットして
レモラを置く。
ジリジリジリジリ
おっ!さっそく脂が滴ってきた。
すっごい脂だな。
ポタポタポタポタ落ちてるよ。
これはしつこいだろうな。
普通に焼き魚とかの方がうまいかな?
どれどれ?ちょっと味見だ。
う・・・・うまい!
これならいけるぞ!
ボタボタボタボタ
ん?なんの音だ?
まだ次のやつ炙ってないぞ。
後ろを振り返るとグリがよだれを
これでもかと言うほど垂らしていた。
匂いにつられたらしい。
まぁ、鳥も猫も魚は好きなはずだからな。
「グリ、味見するか?」
「うむ、待っておったぞ。早く食わせろ!」
「はいはい。どうぞ。」
俺は手のひらに、
ひとかけらのせてグリにあげる。
「うむ!しつこくないな。
これなら美味く食えるぞ!」
「そうか!よかった!よーし
他のも炙っちゃおうか。」
19匹中9匹を炙った刺身に
10匹をフライ用にした。
「フライはキッチンを借りて油で揚げたら
食おうな。」
「うーーーむ、
船のやつらは何をモタモタしておる。
早くキッチンとやらを使わせろ。」
「仕方ないよ。
みんな点検作業で忙しいんだから。」
「チッ」
まさかここまで食いしん坊をむき出しにするとは
始めの時には思ってなかったよな。
そうこうしていると船がようやく動き始めた。
無事検査も終わって航海を再開したようだ。
読んで頂きありがとうございます。




