47.ヘンリーさんはいつでも優雅
「おい!もっと腰を入れてしっかり擦れ」
「こうかい?」
ゴシゴシゴシゴシ
「うむ、良い力加減だ。」
ゴシゴシゴシゴシ
「では流すよぉ〜」
「うむ」
ジャバジャバジャバジャバ
「タクミ殿、最後にこちらに水をお願いできるかい?」
「はーい。」
ジャバジャバジャバジャバ
「うむ、良い気持ちだ。」
「ポヨ〜汚水処理頼むわ〜」
ポヨ〜ン
どこかに潜っていたポヨが突然飛び跳ね
水をグングン吸水していく。
「いやぁーポヨちゃんも凄いねぇ。
この水を全部取り込んじゃうのかい?」
「そうですよぉ〜。
うちのスライムはできる子なんです。」
「そうかぁ〜。それにしてもタクミ殿が
羨ましい!毎日こんなに触れ合いができるなんて
グリ殿どうだい?今日は僕と一緒に寝ないかい?」
「ふんっ。キモいぞお前。」
「そんなぁ〜」
この二人なんだか気づけばすっかり仲良しだな。
よかったよかった。
ヘンリーさんの前言ってた興味本位ってやつは
きっとこの動物好きな性格から来てるんだろうな。
「グリ、さっぱりしたか?」
「うむ、ヘンリーよ明日も背中を流す事を
許してやるぞ。」
「ほ、本当かい?!
やった!頑張ったかいがあったよ!」
ヘンリーさん、そんなに嬉しいのか
それにしても俺が洗ってる姿って
せかせか、ドタバタ必死に力込めてる感じだけど
ヘンリーさんがやると優雅だな。
一体どこにそんな力があるんだよ。
そのほっそいヒョロッとした体型で。
実はガリマッチョとかそういう系か?
どこまでいってもかっこいい人は変わらないな。
あまりにも格好いいから羨ましくもないよ。
美しい絵からそのまま抜け出したようなそんな人だ。
「ヘンリー様、お召し替えの後は
朝食でよろしいですか?」
「あぁ、そうしてくれ。」
「かしこまりました。」
「さてと今日から私は書類仕事を片付けないと。
今までの物が山のようにたまっているからね。
良い息抜きになるよ。
ありがとうタクミ殿。
お昼などは一緒に取らないかもしれないが
必ず水浴びは私がさせてもらうからねっ。」
「は、はいっ。」
ヘンリーさん目がらんらんと輝いてるよ。
それにしても移動中も書類仕事か。
この人本当に多忙だな。
また病にならないか心配だよ。
「ヘンリー様、あまり無理は禁物ですよ。」
「ジャックさん。おはようございます。」
「タクミ、おはよう。
なんか楽しそうな事してたな。」
「水浴びは日課なんですよ」
「グリ殿わりーな。
大きな噴水で元の姿で水浴びさせてやれなくてよ
目的地に着いたらでっかい噴水があるからよ
思う存分水浴びしてくれや。
途中にも川があるから。
まあ、下流はオススメできねーがな。」
「下流はダメなんですか?」
「タクミ、当たり前だ。
下流なんぞ汚くて入れんわ。」
「ん?」
「生活用水が集中して流れるので
その、汚物が・・・」
「な、なるほど。」
そうでした。
浄化槽とかないんだよね。
そりゃ病気になるわ。
俺たちはグリか体を乾かすのを待って
サロンに向かった。
今日も朝食は肉やら果物やら牛乳からチーズと
やはり城と同じような豪華なメニュー。
パンもふかふかだ。
「そういえばタクミ殿、
君は風呂はどうしているんだい?」
「風呂?
俺は時間経過のあるマジックボックスの中で
ウォーターボールに浸かって入ってますよ。
処理はポヨにしてもらって水一滴残しませんよ。」
「そうか。いや〜君の家で入った風呂が
あまりにも気持ちよくてね。
風呂に入れば気持ちもサッパリするし
あの泡が良いよね。
しかも病気になると思ってたけど
その逆で入った方が健康を保てるというし」
「そうですね。
汚水とかもちゃんと浄化してから川に流さないと
下流の人が病気になっちゃいますけど。」
「そうだったね。
君の家は浄化槽とやらをつけているんだったね。
それをつければ川は綺麗なままなのかい?」
「そうですね。ゴミはもちろん出ますが
燃やしたりして処理をして綺麗な水にしてから
流す事で病気とかになりにくくなりますよ。」
「そうか、一人病になると村や町一つが
すぐ同じ病になるのは、そういう事が原因に
なっているんだね。」
「はい。これまでのお話を聞いていると
俺はそう思います。」
「そうだね、タクミ君なら街などの大きな規模を
どうやって綺麗にする?」
「俺ならですか?うーん。個人なら
やっぱり川に水を流す前に浄化槽を設けて
水を綺麗にしてから川に流してゴミは
焼却したり・・・うーーーーん
そうですね。ポヨに食べてもらいますが
街一つですか・・・。うーん。」
「やはり大規模な物は難しいかな?」
「どうでしょうか?
各家庭に簡易浄化槽を設置するか、又は
一箇所に集めて大きな浄化槽で大量の汚水を
綺麗にろ過して排出するのかで
規模はかなり変わると思いますが
できなくはないと思います。あと、
単純に家庭からでる肉の内臓や野菜クズなども
川に捨ててるようですが、それをまず無くして
固形物は焼却処分するだけでもかなり水は綺麗に
なりますし、火魔法の属性の人を雇うのが
経理的に大変なら俺ならテイマーの素質は
あっても大きな魔物はテイムできない、
収入の少なめな人を雇ってスライムのテイムを
お願いしてゴミ処理を頼みますかね。」
「なるほど、その手があったか。
いや、君の生活を目の当たりにして清潔が健康に繋り、
さらに沢山のメリットに気がついてね。
私の領地でなんとか実践したいと思ってるんだ。
タクミ君、協力を頼めるかい?」
「おぉ!それはいい事ですね!
はい!喜んでお手伝いしますよ!」
「ありがとう。
ではタクミ殿。手始めによければその浄化槽の
仕組み、私に使わせてほしい。
実験的に私の一つの領地で試してみたいんだ。
それで病気にかかる者が減れば
働き手も増えるし移住してくる者も現れて
私としては領主としてかなりのメリットがある。
効果が得られれば隣の領主に薦めてせめて
近くだけでも綺麗な水の街にしたいと思う。
どうだろうか?
もちろんその仕組みを利用するという事での
使用料を君に支払うようにする。どうだろう?」
「使用料なんていいですよ!いらないですよ。
使える物は使ってください」
別に俺の発案じゃないしな。この仕組み。
「タクミ殿の悪い癖ですな。」
「アーロンもそう思うかい?あははは」
「俺もそう思う。」
「そうだな。」
「そうっすよ。」
ん?何がだ?
「タクミ殿、私を悪徳領主にしないでくれないかい?」
「はい?」
「使用料も払わずにタクミ殿の仕組みを
許可を得ているとはいえ使用するのは
それは他の者から見れば不当に搾取しているように
うつります。」
「そうだな。貴族として立派とはいえねぇな。」
「いや、でもこれは俺が考えた訳ではないので」
「そうなのか?でも他の国でも聞いた事がないが。」
「そうっすね。自分も知らないっす。」
「それはそのぉ〜。」
「タクミ殿、一応調べましたが、
この仕組みの届け出を出している所は
一件もありませんでしたので
国元に戻りタクミ殿がギルド登録したのち
この仕組みを国に登録しては頂けませんか?
そうする事であなたが発案者となりますので
こちらも予算など組みやすくなります。」
「えっえぇぇぇーーー!」
「まぁ、お金はあって困るもんじゃないから
受け取ってくれよ。
それに君の言い値でと言いたいところだけど
激安価格を提示されても困るから
きちんとした適正価格をちゃんとお支払いするからね。」
「て、適正価格???」
「はい。今までに前例がありませんので
少しお時間を頂くことになりますが
きちんとした価格をお支払いいたします。
そうしませんと、
もし他の者が使用したいとなった場合
タクミ殿に入る使用料が少なくなってしまいます。」
「そうだよな。
そうならない為にもきちんとした金額で
やらないとダメだよな。
それに金額はいつでも変更できるが
安いものから値上げすると反発がでる。
逆に後で値下げしてやる事もできるし
タクミ、あんまり気負いすんな。」
「タクミ、貰えるもんはもらっとけ。
ぐちぐちとちっさい奴だな。お前は。」
「あぁ、俺はちっさい奴だよ。
グリと違ってなぁー。」
「そういう事で決まりだね。
あとアーロンから聞いたけど
トイレと風呂も商品化するんだよね。
ぜひうちに入れてくれよ!
妻もきっと喜ぶから」
「わ、わかりました。ありがとうございます。
いつになるかわかりませんが・・・。」
「着いたら忙しくなりますね。タクミ殿」
「あっみなさん、タクミ殿じゃなくて
タクミで良いですよ。」
「わかったよ。じゃ私はタクミ君とでも呼ぼうかね。」
「は、はい。」
「おいタクミ、我は体が鈍るから少し
空を散歩してきても良いか?」
「あぁ、戻って来れるならいーぞ。」
「うむ、もし何かあれば念話で知らせろ」
「わかった。」
「へぇ〜遠く離れてても念話で話せるんすか?
便利っすねぇ〜。やっぱり鳥の魔物は
そういうの得意なんっすね。」
「ジョージ君そうなの?」
「鳥の魔物は凄いっすよ!
遠く離れた相手と通じ合ってて
しかも声マネして会話してくれるんっす。」
「何それ?どういう事?」
「レイブンパロットって言う魔物や
コモンレイブンって言う魔物が
遠く離れた相手と話をしたり
言付けを頼めるっす。」
「へぇ〜なんか凄い魔物だね。」
どんな魔物かジョージ君の説明じゃ
さっぱりわからん・・・後で調べてみよ。
俺は暇だし、ポヨもグリについて行くみたいだしな。
読んで頂きありがとうございます。




