34.お礼とグランド王国
「私はねタクミ殿。
二度も命を繋いでもらった君達に
お礼がしたいんだ。
だが何をしたら一番喜んでもらえるのか
悩んでいるところなんだ。
ここではお金があっても意味をなさないし
金銀財宝を贈っても同じ事だと思う。
すると君にとって何が喜ばしいものなのか?
昨晩生活用品はどうだろう?
魔石は?など皆で相談していたんだが
先ほどの話を聞くと君は元々は
他国の人里で生活を営む人だ。
それならば元いた国へ戻れるよう手配し
生活を補償するというのはどうだろうか?」
おいおい、まずい事になったな。
元いた日本には帰れないしな。
となると・・・
「お心遣いはありがたいですが
今はグリやポヨも居ますし
元いた国へは戻る気はなくて
俺としてはグリやポヨと
そのうち世界を旅したいと思っていました。
ですが俺は金もなければ身分を証明するものも
何もないので人里には行けないなと思っていました。」
「それならばタクミ殿、
あなたの身分を我らが保証し
人里へ自由に出入りできるよう
お手伝いをするのはいかがでしょう?
もちろんグリ殿に対しても詮索不要という
扱いになるよう手配します。」
おっ、それは助かるぞ。
そしたら今まで手に入れられなかった
日用品や食料も手に入るし
それこそ仕事だってできる。
夢にまで見た米も食えるかもしれないし
布団で寝られるかもしれない。
だが、一応グリに相談しないとな。
さっきの話からするとグリを人の前に
出すのはどうなんだろうか?
「すごく有り難くて嬉しいですけど
一度グリと相談しても良いでしょうか?
先ほどの話からして俺一人では
決めかねますので。」
「もちろんかまわない。
私達は君がどのように判断しても
お礼は必ずするつもりだからね。」
「はい。では少し席を外します。」
俺はグリと共に寝室へ向かう。
「グリ、お前はどうしたい?」
「我は別に人里へ出向くのはかまわんぞ。
前にも旅をするとお主は言っておったしな。」
「だけど危険じゃないか?
お前の爪とか狙うやつだって出てきたり
するかもしれないだろ?」
「ふんっ。そんな者蹴散らすまでだ。
それに言ったであろう?
人族は卵を狙ったと。」
「ん?あぁ卵だな。」
「鈍い奴め。なぜ人が卵しか狙えなかったのか。
それは我等を捕獲する事も従える事も
できぬから卵を盗んだのだ。」
「あっ!そういうことか!
という事は・・・。」
「うむ、人などでは我に傷を作るどころか
近づく事すら本来無理なのだ。
巣に入り込んだものは
それこそ特殊な魔法を使った
かなりの手練れであったのだろう。」
「たしかに小国といっても
国が動いてる訳だからな。
国の中でもかなりのエリートが
任務に当たったんだろうな。」
「そうだな。
それに人族に卵を盗まれるようなグリフィンだ。
グリフィンの中でも強さは様々でな。
大抵のものは巣に結界を張り巡らす故
人族に入られるなどそうそう無いはずだ。
それが破られるという事は
そのグリフィンもあまり強い者とは
言えぬ者であったのであろう。」
「そ、そうなのか?」
「あぁ。だがな、そんな事は
あやつらに教えてやる必要はない。
それに我が長々と話してやったのも
今一度グリフィンを使役しようなどという
愚行を犯させないためだ。
我はこうして自由な暮らしをしておるが
一応、王なのでな。」
「そっか。そうだよな。
改めて俺と従魔契約してくれてありがとな。
まぁ、俺がお前の飯係になっただけのような
気もするけどな。ははは。」
「その通りだ。よくわかっておるな。」
「じゃあ、人里に行く話だが
進めてもいいか?
あの人達、俺には悪い人とは思えないし
あとヘンリーさんの周りの人にも
薬を配らないといけなくなるかも
しれないからな。」
「うむ、仮に何かあっても空へ飛び立てば
済む事だ。それにお主には結界もある。
人の力では我等をどうにかする事など
できぬであろう。」
「よし、そうと決まれば話してくるよ。
一応グリも付いてきてくれ。」
「うむ、仕方ないやつだ。」
「ありがとうな。」
俺はグリと共に皆の元へ戻り話を進めた。
そしてまずはヘンリーさん達が手配のため
先に人里へ向かうとの事なのだが、
どうやらこの人達はこの島の住人では
ないらしい。
俺はてっきり島民だと思っていたが
元の住まいは地図でいうところ
マーニン島の右下にある
大きな大陸のグランド王国という
王が統治する国にあるそうだ。
この国は異世界最大の敷地面積を
有しているとも言っていた。
ちなみにマーニン島の右上はアルバ帝国で
この両国はたびたび陸つなぎのため
戦になるらしい。
国境に面している土地は今も多くの兵士が
守りを固めているとか。
いつの時代も異世界であっても
領土の奪い合いはテッパンみたいだな。
マーニン島の真下あたりに位置する
グランド王国と陸つなぎの一部に
カムリ公国という国がある。
こちらはエルフの王が治める国だそうだ。
一応グランド王国の属国でエルフの王は
グランド王国では公爵の地位らしい。
あとマーニン島のすぐ左の一部を
グランド王国が治めていて
陸つなぎで商人の国エアル共和国があり
さらに下は砂漠の国ルクブラー連邦国や
色々な温度や風土、文化風習の違う小国が
ひしめき合っているそうだ。
身分証明となる身分証はそれぞれの国が
発行しているそうだ。
どこの国でも税を納めていれば
発行してもらえるとか。
一般的には子が産まれると
親が出生届をだして登録する。
雇用されている人達は
給金をもらう時に身分証が必ず必要になる為
手に職を持っている職人や商売人
誰かに仕えたりしてギルドに登録し
収入を得ている人など職種は違えど
子供が産まれれば当然周知されるので
届け出を出さないわけにいかない。
だが土地を持たず誰にも仕えていなかったり
ギルドに登録していない特に貧しい農民や
一部の遊牧民はお金のやりとりではなく物々交換や
食べ物などを支給される形で日々の糧を得ているため、
あまり出生届を出さないそうだ。
あとは途中から税を納めていない為
取り消されたもの達も居る。
例えば親に捨てられたストリートチルドレンや
借金で夜逃げした人。
魔物に連れ去られその間、税を納めていない者等
理由は様々だ。
そういう人たちは事情を確認され犯罪歴等も
きちんと調べられる。
その上で身元保証人が居れば改めて
身分証が発行される。
もちろん身分証を取得する時の
手数料やらなんやらかかる費用は少し
高くなるらしいが税を今後取れるようになるので
その辺りは寛容らしい。
一般的には雇用先の主人やその村や町の代表者、
各ギルドマスターが身元保証人になるそうだが
俺はこの身元保証人が
ヘンリーさんになるという事だ。
そうだよね。魔物に攫われる人なんて
頻繁に居そうだよね。
冒険者だったり町から町への移動をする
商人とかね。
ちなみにギルドというのは
労働者が集まった団体であり
経済の要でもある。
ギルドは大きくは商人や職人の集まった
商人ギルドに冒険者やテイマーが集まった
冒険者ギルドがあるとか。
ギルドに所属するには必ず身分証が
必要になるため、その時点で取得する人が
最も多いようだ。
ギルドで仕事の斡旋や雇用先の紹介
商品の卸や買取、人材育成などその他にも
役目は多岐にわたる。
俺も仕事をしたいのならどれかに
登録すると良いと言われた。
さらに俺の料理や風呂などの設備は
商品になるそうなので商人ギルドに
登録するか、ヘンリーさんの信用のおける
商人を紹介してくれるという。
その辺りはおいおい考えるとして
まずは身分証明だ。
段取りはこうだ。
マーニン島で身分証明書を発行して
その後ヘンリーさんの住むグランド王国に
向かうことになる。
始めは身分証明書を発行してもらえるだけで
十分だと伝えたが、国許できちんとしたお礼を
したいと突っぱねられ、さらに奥さんと
妹さんをぜひ紹介したいとのことだった。
お礼についてはお付きのアーロンさんが
礼をしないなんてそんな不名誉な事はできないと
断固として譲らずきちんとお礼をさせて下さいと
懇願された。さらには病の事もある。
結核はそんなに数は多くないが
ヘンリーさん以外にも病を患っている人は
いるとの事。結核は不治の病であり
薬ができたとあれば国としても
入手したいと考える
だからこそ、ぜひ国許に来て欲しいと言われた。
国との相談になると思うが
まず間違いなく結核薬ポーションの
売買契約になるだろうと。
これはとても重要な事であり
俺にとっても利益になるはずだから
ぜひご同行くださいと念を押されてしまった。
そういう流れで俺たちはグランド王国の
ヘンリーさん達の住まいへ向かう事となった。
読んで頂きありがとうございます




