32.俺とイケメン軍団とポーション
「これは生の魚じゃないのか?
く、食えるのか?」
「なんすかこれ?カリカリしてるのに
中はふっくらしてこの赤いのはなんすか?
うん!これつけるとさらにうまいっす」
「旨いな。この肉。外はカリッと
中はジューシーで肉汁が出てくる
あっ!アチっ。」
「この魚はサルビーフッヘンか。
しかしこんな調理法初めて食べます。
美味ですね。」
「この肉は鳥の肉かな?食べたことの無い
種類のお肉だね。ハーブが効いていて
美味しいな。こんな料理王都でもなかなか
食べられないよ。素晴らしい。
君は生の魚も食べるのかい?
私たちは生の魚は身体に悪いと
言われているんだが、とても美味しそうだ。」
「これは滅菌の魔法をかけて
身体に悪いものを無くしているので
食べられますが、何も処理していないと
身体に悪いですね。」
「そうなのか。初めて知ったよ。
どれ、みな食べたそうだが
どうやら怖がっているみたいだ。
私は君を信用しているから
頂くとするよ。どれ。」
パクリ
「・・・う、うまい!
口の中でとろけるようなこの脂と
優しい食感。いや、これは噛まなくても
舌にすーっと溶け込み溢れる唾液が
まるでこれをもっとくれと欲しているようだ。」
「ヘンリー様、そんなに美味ですか?」
「あぁ、これを食べないのはこの先
必ず後悔するほどの食べ物だ。
君たちが食べないならありがたい。
私一人で頂くよ。」
にこりと屈託のない笑顔で部下の皆さんに微笑む
ヘンリーさん。
「そんなにうまいっすか?
俺もいただきます!いいすか?」
ジョージ君が慌てて食べようとしている。
「もちろんですよ。みなさんも是非
召し上がってください。
なんなら、ポーションも用意しておきますので」
「そんな、めっそうもない。
出して頂いた料理にケチをつけるようで
申し訳ない。あまりにも我々の知る
料理とは違ったもので、失礼した。」
アーロンさんの言うことはもっともだよな。
「いえ、俺も皆さんがどんな物を
召し上がってるのかわからなくて
馴染みのものがなくて申し訳ないです。」
「いや、馴染みの物なんかより
何十倍もうまいぜ、あんたの料理。」
ジャックさんは気に入ってくれたようだ。
「確かにジャックの言う通りだ。
このスープもかなり美味いぞ。」
ノア君も問題なさそうだ。
ーーーーー1時間後
どうやらみんな腹痛もなく
食事を終えたようだ。
最後にデザートでも出してあげるか。
「これ、デザートです」
デザートはパイナップルのシロップ付けや
ラズベリー、グレープフルーツの蜂蜜漬けと
普通のココナッツアイスともう一つは
チョコレートソースがけのアイス。
そしてデコレーションでホイップクリームを
添えたプレートと夜なので
ダンディーライオンコーヒーを出した。
すると五人の男達は目を丸くした。
こんな甘いものどうやって?とか
この冷たいのはいったい?とか
甘いし柔らかい!まるで雲のみたいっす!と
涙目になったり、コーヒーを渋い顔をしながら
旨い!って飲んでたり無言で黙々と食べていたり
これだけ人が居れば反応も様々だ。
「みなさん、お口に合いましたか?」
「旨すぎて病みつきになりそうだ」
「疑ってすまなかった。とてもうまかったよ。」
「詳しいレシピを是非教えていただきたい程
とても美味でした。ご馳走様です。」
「美味かったっす〜!あざーーーーっす!」
「本当に素晴らしい晩餐をありがとう
君には命を助けて頂いて、さらにこんな
歓待までしてもらって感謝してもしきれないほど
温かで幸せな時を過ごさせてもらったよ。
日中の死闘がまるで嘘のようだ。
本当にありがとう」
「いえ、俺の元いた国の文化というか
なんというか、相手にした事は必ず
良いことも悪いことも返ってくるから
相手を思いやり大事にしなさいという
文化なんですよ。
もちろんそうじゃない人もいますけど
うちは婆ちゃんが昔からそういう事に
厳しい人だったので、俺の出来る限りの事を
しただけなんですよ。
残念ながら寝床は何もないので雑魚寝して
もらう事になりますし料理くらいしか
お出しできないのが心苦しいくらいですよ」
「君という人をどうして疑ってしまったのか。
俺は恥ずかしいよ。すまない。」
ノアさんが俺の手を握って
めっちゃ謝ってきた。
「大丈夫ですよ。気にしないでください。
もう、すぎた事ですし、それにグリから
突然降りてきたら俺だって疑いますよ。
それに貴方はジャックさんや仲間を守る事を
第一に考えての行動ですし何も悪い事はしてませんよ。
むしろ誇るべき姿です。」
「そう言ってもらえるとありがたい。」
「では僕は後片付けをしてきますので
みなさんごゆっくり。」
「すまないね、何か手伝う事はあるかい?」
「いえ、洗い物は全てスライムのポヨが
してくれますし、食器類を片付けるだけ
ですのでお気持ちだけで結構ですよ。」
「そうか。うむ、わかったよ。
ありがとう。感謝する。
人生とは不思議なものだな
終わり間近でもこんなに素晴らしい
出逢いがあるとはな」
「ん?終わり間近?」
「いや、何でもないよ。
気にしないでくれ。
今日の死闘で少し感傷的に
なってしまったようだ。」
「「「「・・・」」」」
「そうですか。それなら良いですが
どうぞ、ごゆっくり。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
片付けを終えてキッチンで
グリとあの美青年の事を話していた。
「なぁグリ〜。」
「なんだ。」
「あの美青年、始めは肌が透き通った
綺麗な男の人って思ったけどさぁ。」
「美青年とはどれだ?我には人の
良し悪しなぞわからん。」
「あの、グリ殿っていう礼儀正しい人だよ。」
「おぉ、あの人族か。」
「あやつがどうかしたのか?」
「なんか顔に赤みがないというか、
最後の言葉もなんか引っかかるっていうか。」
「ふんっ。そんなもの
ほかっておけばよかろう。」
「いや、なーんか引っかかってな。」
「お前はまったく、我は人族など
良し悪しなどは分からんが、
あやつ長くはないぞ。」
「長くないってどういう事だよ?」
「もうじき、死ぬという事だ。」
「えーーーーーーっ!!!
それどういう意味だよ?
何で死ぬんだよ?」
「それは我も知らん。だがな
あやつは不味そうだ。
うまそうな匂いのする奴は
身体が元気で脂がのっておる。
だがあやつはもう枯れ草のようなものだな。
それに何やら病でも持っておるのかもな。
嫌な匂いがする。」
「そんな事までわかるのか?」
「あぁ、我は鼻もよくさらに長生きだ。
色んな物も食ってきてるから
美味い物も不味い物も大抵匂いでわかるのだ」
「食いしん坊自慢、ありがとうよ。
・・・そうか、
それであんな事を言っていたんだな。」
「まぁ、あまり深入りはするなよ。
魔法があったとしても治せぬ物も時には
あるのだ。命とは時と共に消え逝く定め。
魔法も万能ではないんだよ。」
心なしかグリがいつもより優しく
さとすように話してくれた。
長い年月で出会いと別れを人より多く
経験してきたのだろうか。
「そうだな。ありがとうグリ。
一応気になるから軽く話しは聞いてみるよ。
それに何でそんな人がこんな危険な森に
やってきたのかも気になるしね。」
「ふんっ。好きにするが良い。」
「グリ・・・いつもありがとうな。」
「ふんっ。気持ち悪い、我は先に寝るぞ。」
「あぁ。おやすみ、ポヨもグリと先に寝ててくれ。」
ポヨはグリの背に乗り寝室へ向かった。
俺はというとエントランスへ再び向かう。
ガチャッ
「皆さん、お茶のおかわりいかがですか?」
「あぁ、悪いね。ありがとう。
いただけるかな?」
「お茶でしたら自分がやるっす。
タクミさんはゆっくりしてください。
お世話になりっぱなしでは
申し訳ないっす。」
「別に構いませんが
それならお願いします。」
「はいっす。」
「あのヘンリーさん、どうしてあなた方は
こんな人里離れた辺鄙な場所へ
いらしたんですか?
ここは盗賊すら根城にしないような
魔物しかいない森なのに。」
「そうだな。これだけお世話になってるんだ。
理由くらい話さないと失礼だよね。
だがこの話は他言無用に願いたい。
あまり良いことではないのでね。」
真剣な表情をさせながらヘンリーは
自分が病持ちだという事を話し始めた。
「私の病はどんな高価なポーションを使っても
治らなくてね。唯一寿命を延ばすのが
空気の綺麗な場所での療養という
死を待つだけの何の解決策もない不治の病なんだよ。
しかも体の弱い人間にうつる可能性もあるんだ。
だから君の家にお世話になるのも躊躇われてね。」
「そうだったんですか?
でも何故そんな状態のあなたがこんな森に?」
「この近くにスネッフェルという山があるだろう?
そこに不治の病にも効く特別な薬草があると聞いてね。
その薬草を求めて、のこのこ来てしまい
部下を危ない目に遭わせてしまったというわけさ。
何とも無能な主人で部下には申し訳ないよ」
「ヘンリー様、そんな事はございません。
我らはヘンリー様の為なら惜しむ命など
持っておりません。」
「いや、命は大切だよ。
自分のために使っても
僕のようなものに使うべきではない。
それにもし使うなら愛する人の為に
その命を使うのだよ。」
「ヘンリー様ぁ。」
あらあら部下の皆さん
涙ぐんでらっしゃる。
この人本当に言う事までかっこいいな。
しかも見た目がかっこいいから
絵になるわ。
俺が言ったらたぶん吹いて流されるな。
「あの、その病ですが、どんな症状が出るんですか?」
「そうだねぇ。最近は咳が止まらず
血を吐く時もあるねぇ。」
「ん?それってだんだん体が弱ってきたとかですか?」
「そうだね。元々、我が家系はあまり
体が強くないらしくてね。
腹違いの妹や弟がいるが何人も病で
命を落としているんだよ。
私は長生きな方かな。」
「あの、失礼ですがお歳は?」
「私は23歳だよ。」
と、年下?マジかよ。
全然そんな風に見えないし
オーラが半端ないよ。
見た目が老けてるとか幼いとかじゃなくて
しっかりしてるというか
頼もしいというか
とにかく俺とは天と地の差があるぞ!
「どうかしたかい?」
「いえ、俺24歳なんです。
とてもヘンリーさんが
年下には思えなくて。」
「はっはっは。そうかい。」
「タクミ殿、それはヘンリー様が
重責を担うお立場だからこそかもしれません。」
「そうなんですか?」
「はい、幼い頃より多くの者に
指示を出しまとめ上げさらに
弱き者達を守りながら日夜努力を惜しまぬ
そんな月日を重ねていらっしゃるので
同じ年頃の者より風格などがあるのかもしれませぬ。」
「たしかに。でも23歳で長生きって
それも随分短命ですね。
エルフなんて300歳とかまで生きるのに。」
「そうだね。なぜか我が家系は一人だけ
長生きだがあとは皆、病弱で短命なんだよ。
本来なら魔力量も多いので長生きのはずなんだが、
ポーションでは治らない病や何度も再発する
病にかかるんだ。」
「そうなんですか。」
「あの、もしよければ鑑定でその病
見せて頂けませんか?
薬草のことは僕はわかりませんが
その病を見てわかるものなら
何かお役に立てるかもしれません。」
「君は医者かい?」
「いえ、違いますが
僕のスキルで情報を探すことのできる
スキルがあるんです。
ですからもし、同じような病にかかった人や
治った人がいればお力になれるかと思いまして」
「わかったよ。病のところだけ
君に見せよう。」
『鑑定』
【 名前 】ヘンリー・フィッツロイ
【 年齢 】23
【 体調 】結核 余命半年
うわぁーーーーーー!
結核じゃんこの人!!!
これはまずいぞ。
余命宣告まででてるよ!
しかも他の人にうつったら大変だ。
予防のためにも全員にポーション飲ませないと。
「ヘンリーさん。よく聞いてください。
この病はうつる病です。
子供や老人など体に病が負けてしまうような人や
元気のない人にうつってすぐに症状が出ます。
元気な人であっても潜伏期間というものがあるので
体が弱った時に病が牙を剥くことがあります。
ですからあなたの側で支えていた人など
対策が必要です。」
「そ、そうなのか?!
なぜ君はそんな事を知っているんだね?」
「以前にゴブリンから病をうつされたら
困ると思って調べて薬を作ったからです。」
「な、なに?それは本当かい?
君はその薬を作ったのかい?」
「はい、ただ鑑定はしましたが
俺は結核になってないので
実際試したわけではないんです。
でもポーションを作って持っています。
ただし効くかどうかはわかりません。」
「な、何という事だ!タクミ殿
どうか我らにその薬を売ってくださらぬか?
金なら糸目をつけない。
どうかヘンリー様の命を救ってほしい。」
「いや、これは売れません。」
「そ、そんな・・・」
「効き目があるかどうかもわからないものを
軽はずみにお売りすることはできかねます。
それに副作用があるかもしれないし、
正直心配です。
さらに言えばヘンリーさんで実験するような
そんな事もしたくないですし。
うーーーん。困りました。」
「そうか。君は私を心配してくれたんだね。
では、こうしないかい?
その薬をもし飲ませてくれたら
私は感想を述べるし治れば
お礼もするというのは?
さらにいうと、これは実験ではなく
私の、たっての願いによる治療だ。
もし万が一、私に何かあっても
君に責任は問わない。
それに私としては側で支えてくれた者が
この病にかかってしまった時の
対応策である薬がどうしてもほしい。
だから君の薬が検証だけならば
ぜひ私にやらせてほしい。
どうだろうか?」
「そうですか。そこまでおっしゃるなら。
ですが俺の目の前で飲んでもらえますか?
そのまま放り出すなんて事
俺にはできません。」
「全く、君という人は
グリ殿がお人好しというのも
少しわかる気がするよ。
本当に優しい人だな。」
「では、これをどうぞ。」
俺は以前作った結核対応のポーションを出す。
そして目の前でまずそれを一本飲んで見せた。
「一応、俺もうつっているといけないので
飲んでおきます。」
「はっはっは。私は君の事を
信頼しているというのに。
まぁいいさ。では頂くよ。」
ゴクリ
ピカーーーーーッ
飲んだ瞬間にヘンリーに緑色の閃光が走る。
グリの怪我が治った時と同じような光だ。
「「「「「おぉーーーーー。」」」」」
「ヘンリーさん、いかがでしょうか?」
「タクミ殿悪いが鑑定をかけてはくれないかな?
私たちは鑑定持ちがいなくてね。」
「わかりました。」
『鑑定』
【 名前 】ヘンリー・フィッツロイ
【 年齢 】23
【 体調 】良好
「ヘンリーさん!やりましたよ!
治ってます。鑑定で体調、良好とでましたよ。
副作用も無さそうです。」
「ほ、本当かい?・・・
あぁ、タクミ殿、ありがとう、ありがとう・・・
あぁ、神よ、この素晴らしい出逢いに感謝いたします。皆も身命を賭して私についてきてくれて
ありがとう。心より感謝する・・・うぅ・・。」
「ヘンリー様、おめでとうございます。
もったいなきお言葉
ありがたき幸せでございます。」
「アーロン、ありがとう、ありがとう。」
「ヘンリー様、本当にようございました。」
「ヘンリー様、やりましたね。
おめでとうございます。」
「ジャック、酷い目に遭わせて
すまなかった。ジャックが身体を呈して
私達を守ってくれたからこそ
今こうしてタクミ殿とご縁に結ばれ
薬をもらう事ができた。本当にありがとう」
「へへっ。俺は勤めを全うしただけですよ。」
「ヘンリー様、おめでとうございます。」
「うむ、ノア。君が回復魔法でジャックの命を
つなぎ続けてくれた。
そのおかげで私は大切な仲間を失わずに済んだ。
仮に私の命が助かってもジャックが
命を落としていたら私はこうして
喜ぶことは出来ず一生自問自答した事だろう。
ありがとう。」
「ヘンリー様・・・グスッ」
「へ、ヘンリー様〜よかったーーーーあああ。」
「ジョージ、まだ若い君をこんな危険な旅に
付き合わせてすまなかったな。
君はまだ若いが君の父上以上に才能があり
私の知る中で一番の槍の使い手だ。
そのおかげで今、命が私の胸で躍動している。
どうかこれからもよろしく頼むよ。」
「うわぁーーーーん。」
「こら、騎士がそんなに泣くなよ。
はっはっは。」
「タクミ殿、本当にありがとう。
礼はしっかりとさせていただく。
あなたがいらないと言っても
こればかりは受け取ってもらいますよ。
なんせ貴方は私の命を二度も救った
人なのですからね。
希望が何かあれば教えて下さい。」
「は、はぁ。とりあえず
他の皆さんも予防のためにも
ポーションを、飲んでおいてください。
グリ達には明日飲ませます。
もう寝てしまったので。」
そう言って他の四人へポーションを渡す。
ゴクリ
みんな身体は光らないので
感染はしていないようだ。
「念のためですがヘンリーさんの
そばに仕えている方や近しい人が
いらっしゃるならその方に鑑定をかけるか
ポーションを飲ませるかした方が
いいかと思います。」
「そうだね。早急に通達を出し
皆鑑定してもらおう。」
「私の命だけでなく
他の者達の事まですまないね」
「いえ、見過ごせなかっただけですし、
成り行きですよ。
それにヘンリーさんが悪い人なら
ここまでしなかったかもしれません。
ヘンリーさんの人徳ですよ。」
「はっはっは。君は本当に優しく得難い人だな。」
「今日は夜も遅いですし
そろそろ休みましょう。
皆さんおやすみなさい。」
俺は照れ臭くて逃げるように
エントランスを後にした。
読んで頂きありがとうございます。




