31.俺と五人のイケメン達
俺は成り行きで5人の人間を家に招待する事にした。
俺の転移魔法で皆、目をパチクリさせながら
何とか状況を把握しようとしているようだが
全員、疲労困憊なのだろう。
始めは戸惑っていたが家へと促されると
すんなり我が家の玄関に入ってくれた。
でも家に入るとまた、口々に
「な、なんだこれ?」
「何でこんなに広いんだ」
「・・・嘘だろ?」
「これは一体?」
「外観と中身があってねぇや、
何なんすかこれ?」
感想は驚きの声ばかりだ。
そうだろそうだろ。どうだ。俺のインテリア。
広くて温かみのあるいい部屋だろ?
ガラスから眺める星空だって最高だぞ。
なんて無邪気にお部屋自慢したい気分だ。
「まだ、扉があるぞ。
この奥にも部屋があるのか?」
「す、すごいな。」
「何?一体この中はどうなっているんだ。」
「これ、ガラスだよ!ガラス!
しかもこんなにでっかくて透き通ってるの
見た事ないっす。」
「おい、お前達。興奮するのはわかるが
ここは恩人の家だ。少し落ち着け。」
一番身なりの良い美青年が皆を制した。
「一応左端からトイレ、風呂、寝室、
キッチン、倉庫となってます。
寝室といっても何もないんですが。
俺、布類が一切なくて布団とか
タオルとか無いんですよ。
ですから風呂に入ったら申し訳ないですが
自然乾燥か風魔法で乾燥してください。」
「そうか。たしかに布は貴重品だからねぇ。
それに君は変わった格好をしているね。」
「俺の服装、変わってますか?」
「あぁ、見たことがない格好だ。」
たしかにこの五人の服装はヨーロッパの中世とか
近世とかの服装だな。
何かの革でできた洋服にブーツ
顔以外の頭部も覆われ全身守られている感じだ。
エプロンみたいな前掛けのような物を
ウエストシェイプしている。
昔映画で見たシェイクスピアや
ジャンヌダルクとかに出てきそうな
古めかしいスタイルと三銃士みたいな近世の格好だ。
だが、硬い甲冑のスタイルの人はいない。
「それにしても風呂まであるとは珍しいね。
風呂に入ると水分が体に入ってきて病になると
聞くが。君は病に侵されてはいないようだね。」
「風呂が病?そうなんですか?
風呂に入らないとシラミが湧いたり
病気になりますよ。
鳥だって水浴びしないと虫がついて
空を飛べなくなりますから。」
「たしかに。クリーン魔法を使うから
シラミとかはわかないが、
身なりを気にしない者は確かに臭うな。」
「風呂は体も綺麗になるし
心の癒しの効果もあります。
もちろん体の疲れもとれますから
良いですよ。」
そういえば、この世界は
風呂が一般的じゃなかったんだったな。
クリーン魔法は確かにあるが、
できれば皆風呂に入って欲しい。
魔物と戦った獣臭が服に付いている。
「皆さんが風呂に入るときに
うちのスライムが洋服の汚れも
綺麗に落としますので
服を脱いだらスライムに渡してください。」
「スライム?!スライムが洗濯するのか?」
「えぇ、汚れを分解してくれて水も使わないし
服も傷めず乾燥もいらないので便利ですよ。
一緒に入ればアカスリもしてくれますよ。
古い角質を肌を傷めない程度にとってくれるんです。」
始めの時はくすぐったい感じだったけど
今は慣れた。ドクターフィッシュに
口の先でチュンチュン角質を食われてる時と
似たような感じで
風呂上がりはすべすべになる。
別に風呂じゃなくても全身包んでもらえれば
問題なく角質除去してもらえるが
風呂の時が楽なのでバスタイムに
ポヨにお願いする。
「ス、スライム・・・」
「それからトイレは水洗式ですので
使い終わったら流してください。
魔石を付けてあるので少しの魔力で大丈夫です。
あと洗浄機能もあるので
使いたい方はスイッチを押してみてください。」
「水洗式?魔石?」
「はい。魔石はグリ、さっきの従魔に
獲ってきてもらいました。」
「そ、そうですか。君は研究者か
発明家かな?この家の広さは
外観からでは想像もつかないし、
みな、君の手作りなんだろう?」
「研究者でも発明家でもないですよ。
ただ必要な物を作っただけですから。」
現代の日本ではこんなの研究とか
発明なんて言えないよな。
ある物を再現しただけなんだからさ。
「あと食事はキッチンでは狭いので
エントランスに、運びますから
そちらで食べましょう」
「何から何まですまないね。」
「いえ、では順番に皆さん風呂に入ってください。
あ、あとシャワーの使い方も説明します。」
「シャワー?」
「はい。とりあえず風呂へ行きましょうか」
こうして設備の説明をして
俺はキッチンで料理を用意する。
さて何を作るか。
とりあえず前菜はトマトスライスの上に
オニオンスライスを敷いてその上に
スチールヘッドの刺身をのせるか。
オリーブオイルと塩リスボンの果汁と
風味づけにラベンダーの粉末にしよう。
スープはウインナーに玉ねぎ、人参、キャベツ
サラダ豆、ジャガイモを煮込んだやつを。
これは時間がかかりそうだから、
神の錬金釜でパッと作るか。
寸胴鍋をイメージしたらでてくるかな?
試しにやってみよう。
次にメインは鳥もも肉のステーキだな。
調味料はローズマリーや塩など
採ってきたハーブを混ぜ合わせた
ハーブミックスで焼こう。
あとはサルビーフッヘンの塩釜焼き。
この前試してみたんだ。
ハーブを内臓をとった腹のなかに詰めて
たっぷりの塩を塗ってかまどで焼く。
かまどを少し改造してオーブンを作ったので
小麦があればピザも焼けるぞ。
あとパスタも忘れちゃいけないな。
パスタはトマト缶で作ったトマトソースで
いいな。
そうだ。フライドポテトと唐揚げも用意しよう。
パーティーメニューに欠かせない一品だよな。
フライドポテトにはケチャップを添えて。
あとはフレッシュトマトをざく切りにしてっと
バターで炒めて溶き卵でとじる。
これは俺の好物であとはハーブと塩で味を整える。
これがなかなかイケるんだ。
グリ用にもマーニンビートの葉を
加えた物を用意する。
これはグリだけの特別メニューだ。
よぉーし。こんなもんでいいかな。
さて、運ぶか。アイテムボックスに
適当にしまって移動する。
エントランスにはすっかり小綺麗になった
面々が揃って暖炉の前でくつろいでいる。
口々にジェットバスやシャワートイレの事を
驚きを交えながら話をしていた。
俺は一旦外に出てグリ達を呼びに行くがてら
足りない椅子とカトラリーを土魔法で作り
ポヨに作ったカトラリーを洗浄してもらう。
ふと思ったのだが中世?とかってたしか
手掴みで食べてたらしいけどこの世界は
どうなんだろう?手掴みだと手が汚れるから
フィンガーボールも用意しないといけないな。
とりあえず追加でフィンガーボールを追加で作る。
今後はボールとして活用しよう。
ご機嫌斜めなグリにすかさず
風呂上がりのアーモンドミルクを差し出す。
風呂上がりの牛乳って美味いよな。
腰に手を当ててなぜだか飲みたくなる。
「うむ、うまいな。」
よし。機嫌取り成功だ。
「じゃあ中に入って飯にしよう。」
俺は玄関を開けてグリやポヨを迎え入れる。
すると中に居た面々は急に身構える。
「また、魔物か?!」
「ふんっ。おろかな人族だ。
我のこの美しい毛並みをすでに忘れておるわ」
「皆さん、この獅子はグリですよ。
ワシと獅子になれるんですよ。」
「な、なんだと?そんな魔物
聞いたことも見たこともないぞ。」
「我をその他大勢の下等な魔物と
一緒にするでない。」
「グリ殿すまないね。私たちは貴方のように
上位の魔物をあまり見る機会がないのだよ。
どうか無礼を許してやってほしい。」
一番身なりの良い美青年が非礼を詫びる。
この人本当にかっこいいよな。
ブロンドの長髪にブルーアイ。
透き通るような真っ白な肌に
高身長。さらにこの品のある対応。
きっと育ちの良い人だと思うが偉そうな
傲慢な感じは一切なくて柔らかい雰囲気を
醸し出している。
俺とは違いさぞかしモテるだろうな。
他の面子もタイプは違うがなかなかの
イケメン揃いだ。
ワイルド系の茶色い髪で
胸板の厚い引き締まった筋肉のジャックに
中性的で小柄な金髪の髪と緑の瞳を持つノア。
神経質そうで生真面目そうなキリッとした面立ちの
黒髪で長髪のアーロン。
少年っぽさがまだ抜けきれていない茶色というより
赤毛で短髪のジョージ。
なんだこのイケメン集団。
俺、悲しくなってきたな。
俺なんてこの人達に比べたら平たい顔の
のっぺりアジア人の典型だぞ。
モテた事なんてばーちゃんの茶飲み仲間くらいだ。
いかん。切なくなってきた。
やめよう。こんな事を思ったらキリがない。
よし、飯にしよう。
俺はまず、足りない椅子を運び込み
次にアイテムボックスを開きテーブルに
さっき作った料理を並べ始めた。
「今度はアイテムボックスか!
君は一体何者なんだ?」
ん?アイテムボックスって
みんな持ってないのか?
それで部屋の事も驚いていたのか。
「あの、皆さんがいる、この部屋も
半分アイテムボックスですよ。」
「な、なんだって?だからこの広さなのか?
しかしこの容量は相当な魔力量が必要なはずだ。」
アーロンさんが周りを見渡しながら
少し青ざめてそんな事を口にした。
魔力量か。確かに俺は神様のおかげで
使いたい放題だからな。
しかしこういうマジックアイテムとか
売ってないのかな?
冒険する時とかあると便利だと思うんだけどな。
「これは付与魔法で作ったマジックアイテムなん
ですよ。他の部屋の扉は全てマジックアイテムと
なっていて、他の人も入れるように魔石を使って
誰でも出入りができるようにしてるんです。」
「なるほど。貴方は付与魔法も使えるのですね。」
「とにかくみなさん、食べませんか?
お口に合うといいですが。
召し上がってください。」
そこでさっき作ったフォークやスプーンの
カトラリーを出す。フィンガーボールもだ。
さて、どういう反応だろうか?
「あ、ありがとう。頂くよ」
受け取った!この人達、スプーンやフォークを
使うんだな。よかったぁーーーーー。
さてと、俺も食べるとするか。
「いただきます。」
皆口々に神に感謝〜的な文言を言って
食事に手を伸ばす。
だが、俺はやらかした。
この異世界の食事を知らない。
という事で案の定・・・。
「「「「「なんだこの料理は?!」」」」」
「ふんっ。うるさいやつらめ」
読んで頂きありがとうございます




