21.俺とキラービーとホイップクリーム
「いただきます」
今日の朝食はラズベリージャムのパンとリスボンを入れたさっぱりとした炭酸水、レタスにトマト、ひよこ豆のサラダにオリーブオイルと塩、リスボンの果汁で作ったドレッシングをかけたサラダだ。
調味料にリスボンが加わってこれからまた味の幅が増えそうだ。
今日の予定はアイテムボックス中にあるものを整理しつつ新しい物を作っていこうと思う。
ただ量が膨大だから数日かけてのんびりやるつもりだ。
アイテムボックスに入れておけば腐らないからな。
とりあえず今やらなければならないのは、この日焼けの処置だ。
回復魔法や俺の風呂のおかげで痛みとかは有難いことに全くないけど何も手入れしないのもすごく気になる。
回復魔法が使えてもシミやシワが消えるわけでもないし、若返るわけでもない。
そんなに気にする年齢ではないかもしれないが、うちは婆ちゃんが…
「男でも身だしなみはマナーだよっ!清潔感ない奴は出世できないよっ!」
とか口うるさく言うタイプなので肌がガサガサしていたり髭が伸びていたり、だらしのない格好をしているとめちゃくちゃ叱られていた。俺、別に女子じゃないよ……。
そんな事をいったらもう大変。
「今の子達は男でもみんな小綺麗にしてるんだから!」
とかマシンガンのようにいろんな言葉が乱射される。
うちの婆ちゃん。女子力高すぎだろ……。
そんな家庭環境のせいか肌がガサガサだとある程度は気になってくる。
そこで今、手持ちであるもので少量何か作ろうと思う。
もちろん、サーチで検索してだけど。
俺は化学にも強くなければオトメンでもない。
どこにでもいる普通のサラリーマン。
サーチが使えなきゃ塩の作り方だってなんとなくしか分からなかった。
これも全て神様のおかげだよ。
いつか神様にちゃんとお礼したいな。
お供えとかしてリスボン達みたいに何かお礼ができたらいいのにな。
そんな事を思いながら朝食を済ませ後片付けをしてまず浄化槽に浄化魔法をかけに外に出た。
あぁ、魔石が欲しい。
魔石があれば自動で動かせるのになぁ。
そう思って歩いて行くと急に感知画面が出てきた。
──────── 警 告 ────────
結界の五メートル先にキラービーの巣があります。
すぐに除去をお勧めします。
巣には蜜と蜜蝋あり。
──────────────────────
ま、マジかよ。
それかなり危険だよな。
いや、待てよ?う────ん。
まぁ、物は試しだ。
俺はキラービーの巣の近くまでやってきた。
すると突然偵察のキラービーが、ものすごい勢いで結界に向かって突進してくる。
や、やばいかもしれないな。
しかも思ってた蜂よりかなりデカイぞ。
とにかく閃いた事を実行に移す。
『おい、そこのキラービーよく聞けよ。ここは俺ん家の敷地だ。人の庭に勝手に入ってきて挨拶もなく攻撃してくるとは失礼じゃないか?お前、大事な女王蜂を守るためにいるんだろ?それならちゃんと挨拶くらいしろよな。そんな行儀が悪いとお前の女王蜂様が恥をかくぞ。ちゃんとできないのは世の中、上の責任になっちまうんだからな。』
するとキラービーの攻撃が止まった。
お?聞いたかな?
さてどうでてくるかな。
『おい、人族。確かにお前の言うことも一理あるが、我らはここが気に入った。もうすでに巣はできている。今さら出て行く事なんて我らはしない。嫌ならお前が出て行け。』
『それじゃ、お前らは勝手に俺の所に家を作って嫌ならでてけと言うわけか?』
『そうだ。』
『それなら仕方ないな。壊すしかない。だが、お前達だって居場所は必要だろう。俺を襲わないと言う約束を取り付けてくれたらここに住んでもいいぞ。お前達も巣ができたばかりでできればゆっくりしたいだろうし新しく作り直すのは嫌だろう?女王蜂に話してきてくれよ。お前の判断で勝手なことして怒られても知らないぞ。』
『お前ごときに壊れる巣ではない』
『そうかもしれないな。でもやってみなきゃ、わからない。そうなるとお前の仲間だって疲れてるはずだし怪我をする奴も出るぞ。いいから女王蜂に聞いてこい。それまでここで待ってるから。あと、俺からこれをやるよ。俺はちゃんと挨拶のできる人族だからな。』
俺はアイテムボックスから器に入った砂糖のたっぷり入ったホイップクリームを取り出しシャボンボールを作って上に置き、それをキラービーのいる所までフワフワと運んだ。
『これを持っていって聞いてこい。』
『な、なんだこれは?こ、こんなもの。』
『お前ちょっと舐めてみろよ。うまいぞ。』
『ど、毒かもしれん。』
『さっき言ったろ?俺は挨拶のできる大人だって』
『チッ』
舌打ちをする蜂なんて初めてみたぞ。
食べるかな?
『う、うまい!なんだこれは』
『だぁーーーーろおぉぉぉ?だからそれを持って行けよ。』
『うーーーん、よし、しばし待っていろ』
『おう。早めにな』
俺はその場に座り込む。
するとその姿を確認してブ────ンと羽音をたてながら木々の間に入っていった。
────待つこと20分。
ブ────────ンブ────────ン
ブ────────ンブ────────ン
なんかものすごい音がしてないか?
これ、襲撃かな。結界もう少し強くしておこう。
どんどん大きな羽音がこちらに響いてくる。
すると、先程消えていった木々の間から50匹はいるだろうか?キラービーの大群が押し寄せてきた。
あちゃーこれは戦争する気か?
そう思っているとキラービーの大群がピタッと止まり綺麗に左右に分かれ整列した。
「な、なんだ?」
するとキラービーが通ってきた木々の奥から1匹の他より5倍ほど大きなフワフワでモコモコの毛皮風な毛をつけた蜂がこちらにゆっくり近づいてくる。
じーーーーっと見ていると…
『おい、人よ。お主が我が同胞にこれを持たせたのか?』
『ああ、そうだけど?』
『そうか、では苦しゅうない、妾にもっとよこすのじゃ。』
『は?お前何いってるんだ。そうかお前達は人の縄張りでも勝手に入って勝手に家作ってそれで挨拶もしないそう言う礼儀もないやつなんだな。何が苦しゅうないだ。よしわかった、もういい。頭にきたぞ。今すぐ壊す。決定だ。』
『お前ごときに何ができる?妾達は人なぞ餌にもならぬ弱き者じゃ。そんな者から命乞いの貢物をもらうのは当たり前のことじゃ。やれるものならやってみよ。』
なるほど。そうか。そういう扱いなんだな。
俺、爺ちゃんが趣味で養蜂やってたから蜂は魔物でも殺したくなかったんだよな。
でも、こいつらは勝手が違うな。
とりあえず、威嚇射撃して引っ越すか、態度を改めるかしてくれると嬉しいんだが…。
俺は遠くに見える木を指差した。
『おい、あそこ見てろよ。』
あの辺りには魔物もいないし、問題ないはずだ。
『ウィンドカッター』
風魔法のカッターがビュンッ!と音を立てて一本の木の上の方をバサッと切った。
それだけでは終わらない。
『スクリュー』
その木を風魔法の竜巻で操りこちらの頭上に運んでくる。
真上にくると一気に女王蜂の横に落下させグサーーーーッと地面に突き刺した。
俺はニコッと笑って
『この立派な木を使ってお前の巣を今から串刺しにしてやるよ』
すると流石の女王蜂もこの光景に
『ヒィーーーー。』
情けない声をだした。
『おい、謝るなら今のうちだぞ。ちゃんと挨拶して俺を脅さなきゃあとは好きにしていいって言ってるんだ。』
『す、好きにして良いのか?も、もちろんお前の事は襲わんす、すまなかった。』
『やっとわかってくれた?あとさ、これはお願いなんだけど、別に無理にとは言わない。蜂蜜と蜜蝋をほんのちょっとでいいから分けてよ。だめかな?そのかわりに、もし分けてくれるならさっき渡したホイップクリーム、もういっぱいやるからさ。どうだ?』
『何?もういっぱいじゃと?よしよかろう。こちらも蜂蜜と蜜蝋を分けてやろう。』
『本当か?やった。ちなみにホイップクリームは全員行き渡るか?』
『うむ、少しずつだが行き渡る。』
『そうか。じゃあもういっぱいつけるよ。これで少しずつじゃないだろ?」』
『よ、よいのか?』
『あぁ、お前達にとっても蜂蜜と蜜蝋なんて貴重なものだろ?これぐらい当然だ』
『う、うむ。おい、蜂蜜と蜜蝋を持って参れ。』
『よ、よろしいのですか?我らなら、こんな人族くらい造作もない事ですぞ。』
『よい、巣作りで皆疲れておる。それに先の戦もあったであろう。また力を使うのはたとえ微力であっても得策ではないわ。』
『はっ。かしこまりました。すぐに用意してまいります。』
『うむ・・・。人族よ、その、かたじけないのぉ。実は我らは元は違う所で生活をしておったが、少し前にゴブリン共が森に火を放ち運悪く我らの巣のある木が燃えての。そこは良い蜜が沢山採れたのじゃがな。』
『おい、それって魔法使うやつか?』
『そんなのもおったなぁ。やつらも巣を作っておっての。流石の我らもゴブリンキングの率いる集落を一つ潰すにはかなりの力を使ったのじゃ』
『やつらは排除したがあたりは燃えかすだらけで、あまり蜜がとれぬ。それで巣も無くなったゆえ、こちらに参った。』
『そうだったのか。お前らも大変だったな。』
いくら魔物とはいえ蜂は植物の受粉に欠かせない存在だろう。キラービーなんて強い魔物で殺人バチだがそもそも働き蜂の行動は女王蜂の性格でかなり左右されるからな。
女王蜂が獰猛なら働き蜂もそれに準じて凶暴化したりするが
どうやらこいつは穏健派のようだ。
話し合いができればなんとかなるだろう。
そんな話をしていると働き蜂のキラービーが蜂蜜と蜜蝋を持ってやってきた。
『嬢王様、大変お待たせ致しました。』
『うむ、おい人族よ。約束の物だ。受け取るがよい。』
『うぉー綺麗な蜂蜜と蜜蝋だなぁー。ありがとう!ありがたく受け取るよ。』
俺はシャボンボールをフワフワとだして
『この上に乗せてくれ。』
さすがに結界を解くほど信用はできないからな。
女王蜂は大丈夫だろうが若いナイト風な蜂は歯をギリギリしながら恨めしそうにこちらを見ている。
『よし、その上に蜜を乗せよ。』
部下に女王蜂が指示を出し、蜂蜜と蜜蝋が置かれて俺の元にやってくる。
その蜜の色は黄色の強い黄金色をしていてかなり透き通り普通の蜜より濃厚そうだ。
さらに蜜に光が当たると蜜の周りが輝いている。
そして甘い香り。
俺の知ってる蜂蜜はこんなに香りは強くない。
しかも嫌な匂いではなくむしろいい香りだ。
手に取ると少し指にとって舐めてみる。
『う、うま────い!なんだこの舌がとろけそうな甘みは?』
しかもすごく濃厚なのにしつこくない。
鼻に抜ける香りも蜂蜜の濃い香りだが香りが強すぎるわけでもないぞ。
『こんな上等な蜂蜜、初めてだ。お前らの一生懸命集めた蜂蜜はものすごく美味いよ。本当にありがとう。大事に食べるよ。無理言って悪かったな。』
『うむ、こやつらの働きはなかなかの物であろう?では、我らはこれにて失礼する。』
『あぁ。そうだ。一応森が燃えるような事が起きたらこいつらが動き出して消火活動するから、覚えておいてくれ。もし動いた時に攻撃とかされると消火に時間かかるから、お前らにとっても都合が悪いだろ?』
そういうとガーゴイルを指した。
『ほう、わかった。覚えておく。では。』
キラービーの女王蜂はくるりと体を反転し元来た木々の間に消えていきその後ナイト風なキラービーも反転し女王蜂の後に続いた。
俺はその姿を見送ると、浄化槽へ向かい、浄化魔法をかけて家へと戻った。
いや〜話のわかるやつでラッキーだったな。
しかも蜂蜜と蜜蝋まで手に入った。
ちょっと図々しかったかもしれないけどお互い殺し合いするよりよっぽど良いだろうと開き直る。
家の結界の外に出るたびにキラービーと鉢合わせて狙われるなんて最悪だからな。
これがスズメバチみたいに蜜集めないやつなら是が非でも風魔法で蜂の巣ごと吹き飛ばすけどな。
何はともあれ無事に終わってよかったよ。
さてと蜂蜜と蜜蝋をさっそく神の錬金釜に入れて非加熱で分離させて余分なものも取り除く。
普通非加熱で処理するなんてめちゃくちゃ大変だしそんな非加熱のものなんてきっとめちゃくちゃ高級だろう。
俺はじいちゃんが養蜂していたおかげでそういうものも少しは口にしていたが市場では多くない代物だ。
でもこの神の錬金釜があれば簡単にできるはずだ。
それではスイッチオン!
……チーン。
どれどれ?
おっ!
パッキン付きのガラス瓶に丁寧に蜂蜜をとるためのハニーディッパーまで付いてるよ。
神の錬金釜恐るべし。
木の材料なんて入れてないぞ。凄いな。
蜜蝋も余分なゴミとか取り除かれている。
しかも細かいものも全く見当たらない。
やっぱり凄いな。この釜…。
よし、これを複製だ。
さすがに何度もあいつらから、もぎ取るわけにはいかないからな。
量が少ないので20個ほど複製する。
よし。
じゃあ神の錬金釜を出した事だし色々作っていくか。
まず始めに今すぐ欲しいので顔に塗る日焼け後に効くクリームを作ろう。
まず、エミエミの実を取り出し神の錬金釜に入れる。
そこに果肉と仁を分けて果肉は瓶詰め。
仁はバターになるよう加工のイメージをして容器まで思い浮かべる。
準備が整ったのでスイッチを入れる。
……チーン。
どれどれ、うん。
良さそうだな。
鑑定をかけお目当てのものが完成したことを確認。
エミエミバター。
シアバターだ。
シアバターは古くから傷や火傷の治療目的や筋肉痛、リュウマチ、白髪、脱毛予防とかによく使われているらしくこれが生えてる地域では紫外線や乾燥から守るために、生まれてすぐの赤ちゃんの全身に塗るみたいだ。
保湿を乳児にしておくと、もし将来アトピーとかになっても症状が軽く済むとも聞く。軽い止血や消毒にもなるとか。
よくオーガニックのボディクリームとかでシアバターは見かけるんだよな。
調べたらボディローション、リップクリーム、ハンドクリーム、シャンプー、石鹸など様々な化粧品に配合されてるようだ。
発見した時は美味そうな実がなってるなって鑑定かけたらシアバターだった。
今のおれの肌は風魔法の乾燥と日焼けの乾燥のダブルパンチを受けている。
これとアロエを使って肌の保湿をしよう。
そうそう、あとパイナップルのエキスとコーヒーエキスも入れよう。
パイナップルエキスには、セラミドっていう成分が入っていてそれは肌のバリア機能?とかをキープしてくれるものらしい。紫外線でそのバリア機能が壊れたり乱れたりするとシワとかできたりゴワゴワした肌になるみたいだ。
あとあまり俺には関係ないが美白もしてくれるとか。
他にも肌に良さそうなことが沢山書いてあったのでこれも入れよう。
あとコーヒーエキス。
抗酸化作用、抗菌作用、ヒアルロン酸の切断を抑制する、紫外線による皮膚損傷から皮膚を守るなどの効果があるらしい。 収斂効果があって保湿効果が高いので、引き締まったキメの細かい肌に整える目的で化粧品とかに使われてるらしい。
まとめると保湿して毛穴引き締めて日焼けしてもシワとかできにくくするってことだよな。
あとグレックナットオイル。
スイートアーモンドのオイルだな。
これは炎症を抑える効果と、美白効果があるので、日焼け後や炎症などによって熱を持ってしまった肌に向くらしい。
しかも浸透力があって保湿もできて美白効果もあり、さらに炎症を抑え治す効果にかゆみを緩和する効果とかあるらしい。
きわめつけは敏感肌でも使えるとかなんか凄いよな。
これこそ万能オイルだよ。
アーモンドでオイルが取れるならとピーナットからもオイルを抽出してみた。
これはビタミンEが豊富で火傷の軟膏に使えるらしい。
あとはアンチエイジング効果もあるらしいが今回の俺のクリームには入れなくてもいいかもしれないな。
だが、食用として大活躍するのがこのピーナッツオイルだとわかった。油は加熱で栄養が壊れたりとか色々あるらしいが
ピーナッツオイルはなんと200度まで大丈夫だとか。
揚げ物オイルに最適らしいのでこれは揚げ物に使うことにする。
コーヒーとパイナップルとアーモンドそれにピーナット。
やるじゃん。
うまいだけじゃなくて他にもこんな効果があるなんて。
とりあえず コーヒー豆とパイナップルからエキスを抽出して…。
よし、材料の抽出とか終わったから、あとは混ぜるだけなんだけど容器のことを考えると神の錬金釜を使った方がいいんだよな。
【材料】
ロカイジェル
シアバター
ココナッツオイル
グレックナットオイル
オリーブオイル
ラベンダーオイル
パインエキス
コーヒーエキス
こんなところかな。
これをちょこっとづつ入れてイメージをしてからスイッチオン!
……チーン
どうかな?
うん。一週間分程度のクリームができてる。
容器もパッキンのついたガラス瓶だ。
使い心地も問題なさそうだ。
アイテムボックスに入れるから腐ることはないし、コーヒーエキスを入れてるから酸化防止にもなると思うので沢山作っても良かったが配合とかも最終的に自分好みに調整したくて少量にした。
さて次の物にとりかかるか。
次はオイリーパームのパームオイルとパーム核油。
これの抽出だ。
本来なら恐ろしく大変な作業も神の錬金釜なら五秒で瓶詰めまで終わる。
そのおかげですぐに違う作業ができるのでありがたい。
パームオイルは洗剤とか石鹸だったり色んなものに使われてるらしいが俺が作りたいのは植物性のグリセリンだ。
作っておいて困るものではないので用意しておく。
加水分解のイメージするだけだしな。
よぉーし。次だ。
この前作った石鹸の材料である苛性ソーダ。
それの溶液から作った重曹を作る。
さらに重曹を熱分解して炭酸ナトリウムにする。
重曹は使い道がもちろんあるがそれよりも俺は炭酸ナトリウムがずっと欲しかった。
その理由、それはガラスが作りたかったからだ。
家にね、窓ガラスが欲しい。
アイテムボックスの部屋も快適だけどたまには日向ぼっこもできる、そんな部屋が欲しくなってきた。
エントランス部分に分厚くて大きな窓ガラスをはめこみたいと考えてる。
そこに暖炉もつけて椅子とコーヒーテーブル。
あとはロカイとリスボンを置く。
窓からは日差しがいっぱい降り注いできっと植物だって気持ちがいいはずだ。
それにわざわざ外に出てから敵になる存在を確認しなくて済むしな。
建物の耐久性はもちろん落ちるけど分厚くして熱処理して強化ガラスしようにする。
さらに前に偶然湖の近くで発見したほんの少しの鉱石があるのだが、これがホウ砂といってガラスの材料に使うと耐熱ガラスになるらしい。
もし火を噴くような相手でも多少は持ちこたえてほしいからな。
それも俺の結界が破られたらの話になるからまず、大丈夫だと思うしそんな火を噴く奴なんてきっと建物ごと踏み潰してくるだろう。
とにかく普通に生活して壊れない耐久性があれば俺は良しとしている。
ガラスに必要な他の素材もなんとかなりそうだしな。
・貝殻や卵の殻から抽出する炭酸カルシウム。
・砂浜で集めた中から珪砂だけを取り出す。
・湖の少し手前にある洞窟で見つけたホウ砂。
こんな感じだ。
これらを全て揃える。
よし、やるか。
────1時間後
なんとか全てのものが用意できた。
量が足りないものは複製をして増やし分量を調整した。
そしてこれらを神の錬金釜に全部入れてとりあえず外に出る。
外に出たのは出来上がるものがたぶん、とんでもない熱い温度になるからと家を創造し直すためだ。
実際、成功するかはわからないが試してみようと思う。
それでは神の錬金釜のスイッチを入れる。
……チーン
よーし、慎重に行くぞ。
できているならとんでもない熱さだ。
神の錬金釜をあける。
そしてすぐさま イメージを浮かべ我が家に向かって…
『リクリエイト』
唱えた直後から我が家が光に包まれさらに神の錬金釜の中身がそこに吸い込まれていく。
ゴゴゴゴゴ!
プシューッ!
ゴゴゴゴゴ!
今回は前回にも増して大掛かりだ。
輝きに強弱が出ている。
そしてひときわ眩しい閃光が走ると次第に光は薄らいでいき建物が完成したようだ。
「ぉおおおおおおおお!できたぁ────!成功だ!」
俺はすぐさま出来立てホヤホヤの我が家に駆け寄る。
するときちんとできてる。ちょっと叩いてみる。
ゴンっ!
うん割れないな。
これで一安心だ。
鑑定をかけてみるとどうやら問題なくイメージ通りに仕上がったようだ。
前よりも魔力操作のレベルが上がっているのか、建物自体も頑丈になってるし少し広くした。
というのも、エントランスではあるがそこには暖炉も作るわけだし、お茶が飲めるスペースがあるといいなぁ。
さらに茶飲み友達ができたし頼もしい姉ちゃんもいる。
なんならグリフィンも呼んで、みんなでお茶をしてもいいかなぁと思ったんだ。
そこで少し以前より広くした。
まあ、半分アイテムボックスになってるから奥行きとか天井とかは高くて広い設計だがそこに新たに先ほどの材料を使ってガラスを組み込んだ。
しかもめちゃくちゃ大きいサイズのガラス。
ちょっと憧れたことがあるんだ。
大きな窓ガラスに。
うちは防犯のために開閉はできないけど日当たりも良くなるし俺的にはオシャレに感じる。
完全自己満足だ。
天井近くまであるガラスのおかげで夜は満天の星も楽しめる。
もちろん暖かい暖炉の光もだ。
うん。最高。
正直失敗するかと思っていた。
というのも形が真っ直ぐではなくこの建物は前回と変わらず
かまくらスタイルである半円形の建物。
そこにガラスをはめ込むので上手くいかないかもと思っていたが、そこはイメージがものを言うこの世界。
美しいカーブを描いた透明度の高い素晴らしいガラスの窓ができた。
これでまた、この家が快適になったな。
じっくりと完成した外観を眺め次は中へ入る。
うん。広くなったなぁ〜。
ちょっとしか広さは変わってないがやはり違うな。
窓のおかげだろうな。そして新たに加わった暖炉。
すっかり、かまど生活に慣れた俺は今ではかまどがない生活は考えられないようになっていた。
そこで暖炉を追加して部屋を暖める効果と今後発見するかもしれない、鉄の鉱石のことを考えた仕様にした。
鉄鉱石が見つかれば鉄板くらいなら俺にも作れるはずだ。
はめ込み型というか材料を流し込めるように、くぼみをつけておけば魔法で作れるはずだ。
魔法でなければ無理だけどな。
その他の機能は変えてないが一応今まで通り使えるか動作確認。
部屋の半分からアイテムボックスに繋げて作ったので切り離して外の世界とつながるエントランス部分だけを作り替えるイメージで魔法をかけたから、たぶん問題ないとは思うが…。
アイテムボックス化した扉には変わった要素は見当たらない。
鑑定で見てみると問題なさそうだ。
扉を開けてみたが実際に目で確かめても今までのままなので、この改築は成功したようだ。
さてと、そろそろ昼飯にするか。
今日のランチは何を食べようかな?
読んで頂きありがとうございます