2 目が覚めても夢の中?!
ピーッピーッピーッピーッピーッ。
「……うーーん────、アラーム……」
「ん?あれ?まだ夢の中?たまにやるんだよね。レム睡眠だったかな?ノンレム睡眠?まぁどっちでもいいか。早く起きないと遅刻決定だよ」
「転移者殿、お目覚めですね。どこか痛いところや気分の悪さ等、不調はございませんか?」
…なんだか、ものすっごい美人が話しかけてきてるけど何この夢。
リアリティーがあるんだかないんだか。
こんな美人に普段話しかけられることなんてまず無いし、お目にかかることすら難しいんじゃないかぁ?
あぁ美人さんと話そうとしたら夢覚めるパターンのやつかな。それなら……。
「どこも問題ありませんよ。ご親切にありがとうございます。 えっと…」
「失礼致しました。わたくしはイズンと申します。念のため回復魔法を使わせて頂きますがよろしいでしょうか?後から痛みなど出るとも限りませんので」
「え?回復?魔法?ごめんなさい。 えーっとよく意味がわからないと言いますか… そのぉ…なんというか」
おーーーーい!これは夢だよね?
ファンタジーな夢なのか?ゲームとかに出てくるやつか?
にしては会話しても夢さめないな。
これ会社に本当に遅刻するよ。俺いい加減に起きろよ。
「転移者殿?やはりどこかお加減が悪い所でも?すぐに回復魔法をおかけしますわ。失礼」
「えっ?あのっ」
美女が手をかざし1秒もしないうちに俺の体は穏やかで暖かい光に包まれた。
ポカポカした光は1分程体全体を発光させゆっくりと消えていった。
あれ?なんか体軽いぞ。
残業疲れの肩こりもスッキリして首とか背中とかも痛くないし目の疲れも無くなってる。
「とてもお疲れのようでしたね。転移する際に体力を奪われてしまったのでしょうか」
はい?今何かまた不思議な事言ったな。美人さん。
「これこれイズンや。そう急くでない。 転移者殿が困惑して固まっておるぞ」
お髭の立派なご老人、そうです。
そうなんですよ訳がわからないのです。
この状況誰か説明して下さい。
心の中の叫びが通じたのかご老人もとい創造神のオーデン様が今の現状を話し始めた。
「お主は今はまだ夢でも見ていると思っておるようじゃが、悪いがこれは現実であり夢ではないのじゃ。 まずこの世界とお主の地球との繋がりについて話さねばなるまい。まぁ立ち話もなんじゃ。かけて話そうかのぉ」
「は、はい」
先程の高級そうな椅子に案内され改めて話を聞く。
「ーーーお主の住んでおった地球と今ワシ達がおるこの世界は対になっていて、 互いに行き来は出来ぬがエネルギーのような形ない物は受け渡しする事ができる。 そちらの地球では自然エネルギーが枯渇しておるから、こちらの世界で使わない自然エネルギーを地球へ流し、地球では使われない魔力をこちらへ吸収し利用しておるのじゃ。そうする事でお互い枯渇しているエネルギーを供給しあい二つの世界の維持が成り立っておる」
「例えばそちらの世界で火山の噴火や地震、局地的な竜巻などありますでしょう?あれは魔力が溜まりすぎておこる現象です」
「少しの噴火や地震などは、それほどの被害が起こらぬし、時には必要な場合もあるが大きな物であればそうもいかない。なのでそちらの神とこちらでお互いエネルギーの循環をしながらコントロールをしておるのじゃ。ここまでの話はわかってもらえたかの?」
うん。全然わからない。
話がデカ過ぎて俺の脳みそでは処理しきれない案件だよこれ。
でも大人だからね、話をなんとか進めないと……。
「はい。申し訳ないですが話が壮大すぎてあまり実感が湧かないのですが、なんとなく僕の生活している世界と別の世界があって、お互いの必要なエネルギーの交換をしている仕組みがあるという事でよろしかったでしょうか?」
「うむ、その通りじゃ。その仕組みで使っておるのが、お主が吸い込まれた魔法陣じゃ」
「あっ!あのらくが・・・円陣ですね」
「ほっほっほっ。よいよい、そちらの世界では使われんからのぉ。 落書きにしか見えんのも致し方ないわい」
「────すみません」
「さて、この魔法陣だがの、未だかつて魔力以外を 吸収した事はなかったのじゃ。それが此度はおかしな条件がどうやら揃ってしまい、お主が転移してきてしもうた。申し訳ないがその条件が揃ったのもその一瞬で同じ状況も作れなければ向こうへ帰してやる方法もみつからない。だから悪いがこちらの世界で生きてみてはくれぬか?」
きましたよ!さすが神様!ぶっ込んで来たよ。
しかもめちゃくちゃ清々しい笑顔で恐ろしい事言ったよ。この人。
でも基本神様って強引なところあるよね。
だって一番偉い人だし。
日本の八百万の神様も日本神話読むと結構凄い話多いものね。
でも神様なんだから、もっと俺みたいな取り柄も何もない人間ぞんざいに扱いそうなものなのに凄く優しい神様な気がする。
どうにもならないならばこっちでやっていくしかないよな。
「わかりました。ただ僕の住んでいた所はとても平和な所でしたし 魔法もなかったのでやっていけるか不安です」
「そうかそうか。こちらに居てくれるか。それを聞いて安心したわい。 確かにお主は平和な場所に住んでいたようじゃの。こちらの情報は魔法で直接お主に授けるとして魔法も初めからある程度使えるようにするというのでどうかの?細かい魔法は魔力操作といって毎日魔法を使っておれば上達するので慣れればすぐに使いこなせるようになるわい」
「お心遣いありがとうございます」
「ではこの世界についてご説明致しますわ」
この異世界では俺のような人族だけではなく、獣人やエルフにドワーフそして魔物のいる世界で、大きく分けて人族の王様が統治する王国とエルフの治める公国と人族が統治する帝国や商人の多い共和国があり今の所大きな戦争はなく比較的安定しているとのこと。
この世界の地球と大きく異なるところは魔法であり魔力だ。
魔力が土地の気候の変動から農作物や鉱物、特産物や食料に至るまで影響して作られている。
魔物もその一つだ。
生活用品も魔石という魔力を溜め込んだ鉱物を利用して便利な物が作られているとも。
この魔石は鉱物として産出もされるが、多くを魔物から得ている地域もあるらしい。
俺の考えだと魔物は危険だし悪いものというイメージだったが、こちらの世界では危険だが必要な存在のようだ。
まず食料としての活用。
単純に魔物のお肉は美味しいらしい。
次に剣士や兵士、冒険者に欠かせない武具の材料。
そして魔力回復や怪我や病気を治す回復剤に毒の解毒剤になるポーションの材料。
その他にも多くを魔物から賄っている。
────そんな話を色々と聞きその後、魔法の使い方を教えてもらう。
「ワシが今からそなたに魔力を流すので、それをまずは感じ取ってほしい」
オーデン様が俺の手を取り手元が光り始めた。
その直後手から順に温かい物が流れてくるのを感じそれは次第に全身へと伝わっていく。
「おぉ。何か温かい物が体に流れてきました」
「そうか成功じゃの。それではその力を指先に集中させる事はできるかの?」
指先に集中?なかなか難しいな。
でも出来ない事はないな。
「おやおや。お主なかなか素質があるのじゃな。初めてにしては上手いものじゃ。次は反対の手の指に集めてみなされ」
ん?反対か。こうかな、うん。できたぞ
「ほほぉ難なくこなせるか。ふむ、この調子ならば魔法を使いこなす事ができるじゃろ」
そうなのか?これだけで大丈夫なのか?
「毎日そうやって魔力の操作をすることにより、どんどん魔力が集約され使いやすくなり、大きいものから細かいもの複雑なものまで使えるようになるからの。その鍛錬を怠ると魔力量が多くても扱う事ができぬので注意が必要じゃ。だが毎日使っとればさほど心配することもないわい」
そうですか。
でもまぁ元々使えないものだったしやっぱり練習あるのみだよね。
「だがのぉ。全く使えないというのも不便だし固有スキルであれば今すぐ使えるのでいくつか授けてしんぜよう。あとはお主の世界と多少近くなるように必要な魔法も授けようと思うがどんなものが良いかの?」
こうしてこの世界で生きやすいよう神様達から魔法を使えるようにしてもらい、さらに不便がないようにとスキルももらった。
神様達も俺がどんなことができたら元の世界に近い生活ができるかとこちらの意見を取り入れながら魔法やらスキルを与えてくれたようだ。
その後この異世界の地理や風土、魔法の使い方などありえない程大量の情報を俺のスキルに追加してくれた。
初めての右も左もわからない異世界。
ゆえに土地勘ももちろんないのでオススメの土地を紹介してもらった。
なるべく人の少なそうな所に移住してそこから生活を始め慣れていった方が良いだろうということで候補はいくつかあったが地図で見た二つの大陸に囲まれた内海の中にポツンと浮かぶ 小さな島に決定。
人が多いと人さらいとか、人さらいとか、人さらいとか、
あはは……そんな人がいるらしい。
異世界怖い…。やっぱり奴隷とかあるんだろうね。
うん、気をつけよう。
最後に神様達から魔力制御や魔力操作、生活魔法から攻撃魔法に結界魔法 空間魔法や回復魔法のありとあらゆる魔法の説明やアレンジの仕方からこの異世界の情報をワールドディクショナリーというスキルに魔法で追加してくれた。
魔導書にすると何十万、何百万冊の量であり、異世界では閲覧禁止や国宝級の物神しか知らないエクストラ魔法まで入れてくれたらしい。
追加された魔法などはワールドディクショナリーで閲覧でき、使用した魔法も使うごとに自分のステータスに追加されるそうだが今の時点ではよくわからない。
最後にマジックアイテムもおまけでもらった。
何でも神様の世界で一時大流行したらしく、色んなデザインの物が沢山あるからと一つわけてくれた。
一通り準備が整ったので神様達に感謝して
別れの時がやってきた。
「不安も多いですが神様方のおかげで新天地でも頑張れそうです」
「巻き込んでしまい申し訳なかったのぉ。お主ならこの世界でもやっていけると信じとるぞ。それでは別れの時じゃ。達者での」
神様が別れの言葉を言うと神様達の体が輝き始め、そのうち 光輝な光と白い霧に包まれ辺りは真っ白に。
神様達のいた場所とは別の方から穏やかな光が漏れさし、不思議と吸い寄せられるようにそちらへ歩いて行くと、今度は突然フラッシュのような閃光に襲われる。
咄嗟のことで身構えたが目の前には自然豊かで美しい緑の草原が広がっていた。