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199.バースの行く末

遡る事温泉計画を進め出した頃、アーロンさんは俺から水質の事や温泉の効果効能について一通り話を聞くと、ある人物に声をかけて書を発行させた。その人物とはジョン・ジョージというお医者さん。この温泉を随分前から調べ天然のポーションとして街の者に飲む事を推奨していた先生だ。

入浴についても世論とは反対で不健康になるなど勘違いも甚だしい!温泉入浴は健康につながる!と、いつも話をする変わり者と言われていたお医者様。(この国はヘンリーさんのお父さんの時代から風呂に入ると病にかかると言われてるからね)

アーロンさんはこのお医者さんの事を知り、出資するので是非バースの効用を説く書を著しませんかと声をかけ、書の発行が実現し、この書はバース周辺だけでなく王都まで広がり、なんと女王陛下の耳にも届いたのだ。


ちなみに書には火傷や美肌の効果だけでなく不妊治療にも効果があり〜と俺なんかよりももっと詳しくわかりやすく事細かに効果の説明をした書で、その内容は海を渡り遠い異国の地の温泉まで出かけていた上流階級の目がバースに向けられるのに十分な物だった。


そしてそこにオープンの女王陛下の演出である。

もちろん兄だからといって贔屓して特許状を送ったのではない。医師の書と他の者からの意見を参考にし、効果がきちんとあると判断された事と、未だに消えぬ父王から続く間違った入浴行為の世間の常識を覆すため…ひいては黒死病などの流行病への予防医療として役立つとグランド王国でも納得し常識を変える良い機会と考えた為、特許状という特別な権利を与え、国民に王が温泉入浴を認めるという印象を全国放送で流したというわけだ。もちろん公爵もといヘンリーさんに設備の安全とお湯の責任を義務付けた事で、他の者が勝手に源泉から湧き出るお湯を奪えないようにしてくれたともいえる。


これはヘンリーさんにも領主として利があるが何より一番ラッキーなのは俺ね。エステやマッサージに個人宅での風呂の問い合わせやフットバスの問い合わせが凄いらしいのよ。という事でリッチモンドでまもなく販売されるそうですと宣伝してもらい、ここでも注文ができるようにマーガレットさんと相談して磁気パッドと転送装置を置くことにした。俺が作る特別な奴は在庫をコピーして、あとの物はアリシアさんの工房に頑張ってもらってる。これはオープンで下手すると売り切れるかもな。楽しみだ。


とにかく順風満帆!リッチモンドも皆やる気に満ち一生懸命トレーニングや接客の勉強など研修を行っていてオープンも間近に迫っている。

第2弾のカタログでの販売方法もマーガレットさんに伝えたし、あとの新たな店舗展開もほぼ俺がやらずともマーガレットさんができるようになってるし、俺は品物を納品するだけで今後は良くなりそうだ。


ここまで駆け抜けてきてもちろん俺一人の力じゃ全然ないけど異世界でよくここまでやってこれたと自分を褒めてやりたい。もちろんまだ、ダンジョン行ったりもしたいしグリ達と旅行もしたい。それにバースのリゾート計画も始まったばかりだしどこまで凄い街になるのかも見守りたい。王都にも行かなきゃいけないしな。その辺りはあまり考えたくないけど、とりあえずここで一息って感じだな。これからはもう少しゆっくりのんびりと暮らせるだろう。


あっ、できれば俺も彼女とか欲しいな…。



────数年後



これまで教会しか観光目的が無く、それも政により解散して街はさびれ、もちろん娯楽と呼べるものすらなかったバースに、まず温泉施設のローマン浴場とパンプ・ルームという社交場の建設を進めオープンしたが、さらなる発展の為、ザマゼット公爵はローマン浴場の収益を全てバースの観光都市改革につぎ込み、街中を徘徊して金品をたかる浮浪者の拘束や就職の斡旋、さらに不真面目な者には市外への強制退去を進めた。さらに道路の整備を行い、夜まわりをおいて夜間の安全確保を行い宿屋から温泉までの移動に使われていた馬車の値段表示の義務づけからサービスの改善を要求した。


また、バースを洗練された社交の中心にするようドレスコードを決めたりセレブの模範的な1日というタイムスケジュールを組んだりと風紀を乱す者が出ないように努力した。その中でも一番力を注いだのが紳士の定義だ。紳士たる者、庶民、獣人に対し差別的な態度をとる行為は教養の無い者がする事であり恥ずべき行為だという認識を徹底し常識とした。こうする事で礼儀を欠いた者は周りから白い目で見られ遠く離れた王都でも誰からも相手にされなくなるという社会現象まで起こった。


次に上流階級の人々がつどってダンスをする場としてアッセンブリー・ルームをつくらせた後、さらに上流階級の娯楽の重要な位置を占めていた演劇に公爵側近のアーロンが目をつけ、劇場の建設を推進。こうした多くのプロジェクトにより、バースはグランド王国中に社交都市として名前を鳴り響かせ、王都から多くの人々がバースを目指してやってくるようになり、バースが単なる温泉街からお洒落なリゾートへと生まれ変わる事となったのだ。


これだけ見ると貴族や富裕層の為だけに税が使われているように見えるが、寂れていた市場は活気を取り戻し、宿は満員御礼、ドレス発注も今までの何十倍にも膨らみ雇用も増え、観光客を迎え入れるための接客を学ぶ為の施設やお針子になる為の施設に観光客を迎え入れる為の従業員育成の為の施設を商人ギルド協力のもと庶民が通えるグランド王国初の職業訓練校!というキャッチコピーで学校を開設。ザマゼット領民は無料で通えるという特典付きの施設を作り庶民にも大変喜ばれている。


さらに多くの人が街に滞在するようになり思わぬ嬉しい発見もあった。

コーンウォール出身のある紳士がバース近辺に転がっていた蜂蜜色の石灰質の石に目をつけ、これを建築用石材として使用できないかとひらめいた。当初、建築向きでないと罵倒されていた石材を王都の有名な建築家の協力の下、自らの邸宅を人気のある建築スタイルで美しい豪邸を建てることに使うことで石材の優秀性が実証されこの紳士は富を得てバースはさらに洗練された建築物が注目を集め、もちろん税収も益々右肩上がりに増えた。


この事でバースの街並みをさらに美しい景観にするべきだと多くの意見が出た為、この石材を用いて全長180メートルの三日月型のテラスハウスやザ・サーカスと言う名の集合住宅(こちらの見た目はローマのコロッセオにとても似ている)を造り、迫力ある芸術性の高い建築物をバンバン立てて多くの人々を魅了した。


もちろん人が押し寄せる流れをよみ教区教会として建物を再利用できないかと国に掛け合い、今では修繕費を国庫から頂き、廃墟と化していた教会を修復して多くの巡礼者や観光客を迎え入れる事に成功しバースリゾート計画は誰もが認める一大リゾート地として国内外の多くの者に長年愛され、年月を経ることにより獣人と人族が最も仲の良い差別のない地へと変貌を遂げるのであった。


 そして国に貢献した一人のタクミという男の名前が国中に知れ渡ったが今はどこで何をしているのかはわからない……。

 噂で彼は相変わらず彼女なんて人は居ないが、従魔とのほほんとした日々を送っているという。

 突如公爵と王都に現れたが堅苦しいのは苦手と言って結局女王の許可をもらいマーニン島に住んでるとか。

 

 彼が経営している異世界商会は相変わらず大盛況で人材を募集し生産ラインを作り雇用を増やしグランド王国の弱者と言われた貧困層を救い出しさらには魔法適性がないと言われていた者の秘められた力を見出し人材として雇用したとか。


現在では彼が作っていた商品も集めた人材がかわりに生産し彼は名前だけ残して経営にはほとんど参加していないそうだ。


 のんびり暮らしているのかと思いきや各地のダンジョンから彼の目撃談が寄せられる。

 破竹の勢いで魔物を倒す獅子とスライム、その後ろでアイテムをどんどん回収する男……どうやら異世界商会のタクミらしいと。

 

 グランド王国のダンジョンを一通り回り終えると破竹の勢いでダンジョンを制覇する獅子とスライムの噂は海の向こうからも伝わってきた。


 一体彼は何者なのだろうか。


 国に富をもたらし冒険者としても活躍し消えたタクミという名の黒髪の男…。

 今ではその名も聞かなくなったが魔力量が誰よりも多くきっと寿命も長いはず。どこかで人知れず従魔達と仲良く暮らしているのでしょう。


「マーガレットお婆様、その人は今も生きてるの?」


「ええ、きっとモフモフした美しいグリフィンとぷよぷよのスライムときっと楽しく暮らしているはずよ」


「ふーん。なんでそんな活躍したのに居なくなったのかなぁ?」


「さあ?あの人は神様が遣わしたこの国を発展させる為の人だったのかもしれないわ。あまりペニーにも興味を持たず、人助けにペニーを惜しまず使っていたから。さあ、もうお話はおしまいよ。もう寝ましょうね。明日はあなたの5歳のお披露目会があるのだから」


「はーい」


 おしまい


今日までお付き合い頂きました皆さま、ありがとうございました。

毎日1話更新を目指して今年中に完結を200話までいかずに切り上げようと決め、少し強引ではありますが完結をさせる事ができました。

ダンジョンなども書きたかったのですが、

やはり少し疲れてしまいここで完結に致しました。

初めて書いたものが多くの方に読んで頂けたようで

とても嬉しく思っております。

タクミの恋愛を期待していた方には大変申し訳ないのですがタクミの恋人のイメージが全く浮かばず結果最後まで独り身で幕を降ろしました。

感想を頂き、それから作品の話を考えた事も沢山ありました。

途中で辞めようかと思った時も皆様の感想に何度励まされたかわかりません。

本当にありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 2回目の完読達成。 やっぱり面白いです。
[良い点] 一気読みさせていただきました。 のほほんとしていて楽しかったです。 本当にご馳走様でした m(_ _)m [気になる点] いろいろフラグが(つω;) [一言] 終わってしまった orz 終…
[良い点] 大変面白く、テンポも良く、最後まで一気に読ませていただきました。 [気になる点] 本筋には関係ないのでしょうが、いろいろ冒険?して、主人公のステータス(特に体力!)がどの程度に育って行った…
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