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192.面接

 結果発表後、働きたいと言ってきた人はポーションを飲んだりして抜けた人もいたけど、ほとんどが残っていた。

 その理由は単純でポーションをペニーが無くて買えないから。それとペニーがあっても買わなかった者もいる。

 その理由もごくごく簡単で庶民向け商品は希望があれば支給されるし高額商品は社割で購入できるようにしたため、少しでも安く買えた方が良いと買わなかった者もいる。

 一生のうちのたった一年ほど働くだけで安く自分の怪我が治るならばその方が良いと天秤にかけたようだ。

 社割購入してすぐには辞められないからね。

 という事で、あの、食材ハンターと護衛のカップルは残ったのでこの2人は面接で余程印象が悪くなければ合格だ。


「で、面接は明日なんですよね?」


「はい、というのも、遠方から来ている者、休みを取って受けている者がいると思いますので、できる限り落ちた後に現在の仕事に支障の出ないよう早めに面接をしてしまおうと思いましたのよ」


「そっかぁー。とりあえず、人数も揃ってるしここからが難しいよね」


「そうですね、頑張りましょう。主人は明日はどうなさいますか?面接に立ち会われますか?」


「うん、結界張って見てようかな。俺、顔バレしたくないし」


「それが良いかもしれません」


「んじゃ、グリとポヨも連れてきてもいい?特にグリの目利きはすごいから」


「わかりました。では、磁気パッドを使って丸、三角、バツと記号を描いて主人の意向もお知らせください」


「それいーね。じゃあよろしくねマーガレットさん」


「かしこまりました」




 ──── 面接日



「我はいくらなんでも人族の目利きなどできぬぞ」


「いーじゃん、最近メアリーさんのところで食っちゃ寝ばかりしてたのは知ってるんだぞ」


「チッ」


「たまには人族や獣人見物も悪くないぞ」


「フンッお前少し寂しかったのだろう?え?」


「そ、そんな事は…………とにかく行くぞ」


「図星か。ハッハッハッハ。タクミはまだまだ子供だのぉ」


「悪かったな、とにかく行くぞ」


  こうしてグリとポヨを連れていざ面接会場へ。転移する前から結界を張って見えないようにしてそのまま会場に転移をした。会場はこの前の発表した部屋と同じため、誰にも気がつかれずに転移ができて部屋に入ったら磁気パッドに丸を描く手はずとなっている。さっそく俺たちはマーガレットさん達の横にある空いてるスペースに、アイテムボックスから取り出した椅子を置いて見物する事にした。


「では、始めましょうか。まずは1番数の多い庶民派食事処の給仕から。こちらは5人ずつやっていきますね」


「「「「「「「はい」」」」」」」


「では入れてください」


  入ってきたのは、獣人や人族のちょっとゴツめのお姉さん達。その中で一際目立つ女性は年齢は少し高めで化粧っ気はなく髪はきちんと束ねた俺のウエスト程もあるかという太く逞しい腕の、つい、お母ちゃんと呼びそうになる風貌の女性だ。


「今までの経歴と商会の志望理由を教えてください。こちらの方から順にお願いします」


「あたしは宿屋で…………」


「はい次の方〜」


「私は隣町の酒場で…………」


「あたしは食事処で…………」


「私も宿屋で…………」


  きた!あのゴツい人だ!


「あたしは亭主が死んで飯屋をやってきたんだが息子が親方株を取得して八百屋を嫁とやる事になったんですよ。んで今まであたしが飯屋としてやってきた店を改装して譲る事になったんであたしは暇になったから、できればこちらで働けたらと思ったんですよぉ」


「息子さんの店は手伝わなくて良いんですか?」


「ええ、嫁さんがしっかり切り盛りしてくれるんでね、余計な事はしない方が2人も楽でしょうからもちろん同居はしてますけど働かないと体が鈍っちまうもんでね」


「そうですか。では皆さんに質問ですが、お客さんが暴れ出したらどうしますか?」


「護衛さんを呼びます」


「仲裁に入ります」


「護衛さんを呼びます」


「護衛さんを呼びます」


「担いで外に出します」


「わかりました。次に若い仕事仲間の女の子がお客さんに絡まれています。状況は女の子の体をベタベタ触ってかなり如何わしい感じです。どうしますか?」


「宿屋ではそれは仕事のうちですので放置します。それでお客さんが来れば店は儲かりますから」


「同じく放置です。上手くかわせないのが悪いですから」


「あたしは様子を見て護衛さんを呼びに行くかねぇ。食事処で色気を使ってもねぇ」


「私は放置です。下手に面倒ごとに関わり合いたくないし酔っ払いのやる事なんて次の日には忘れてますよ」


「あたしは二度と悪さができないよう腕をへし折るとは言わないがそれくらいの恐怖を与えるかね。飯屋の女は自分でかわす事も大事だが助け合いも大事だとあたしは思うよ」


「では最後です。身なりのあまり良くないお客様が先にすぐその後で身なりの良いお客様がいらっしゃいました。テーブルは一つしか空いていません。どちらを先にどのような理由で通しますか?」


「そりゃあたしなら身なりの良いお客さんから通すね当然だろ?理由はボロ衣服着てるやつは注文も大したものは頼まないだろうからねぇ」


「私も身なりの良い客からかなぁ。だってすぐ後なら身なりの悪い方もわかってくれるよ。もし貴族だったらそこで貴様!とか言って剣を振り上げてくる方がいらっしゃるからねえ」


「あたしは順番に案内するよ。身なりで判断してお忍びだったら困るからねぇ」


「私はもちろん身なりの良い方ですよ。あまり汚い格好だと他のお客に迷惑だからね」


「あたしは順番に通している間に、他の子達で皿を引いてもらって全部食事が済んでいるところなら場所を空けてもらうかね。せっかく楽しんでるお客には悪いが他のお客にも入ってもらいたいからね」


「ありがとうございました。合否は明日こちらでお伝えします。お疲れ様でした」


「はい、次の方入れてください」


  今度は若めなお姉さん達。派手めな方やゴツい方、元気いっぱいな女の子に色気のあるお姉さん、そして真面目そうなキリッとした感じの女性だ。共通点は皆獣人の猫耳を持つネコ科のお姉さん達。大まかな種族でいうとネコ科だがそれぞれどうも違うようだ。


「皆さんに質問です。ここのお店はセルフサービスでお客様にカウンターまで出向いて頂きペニーと交換で食事をお渡しするシステムです。料理もすぐにお出ししますので先にペニーを支払って頂き横で待っていてもらうシステムですが、横柄なお客様が貴女達を捕まえてお前が運べと言ってこられました。さて貴女はどう答えますか?」


「スプーンより重いもの持てないのごめんなさい。と言いますにゃ〜ん」


  かわいいかも…………


「お客さんを担いで列の最後尾に並べてあげます」


  この綺麗な顔に似合わず逞しい腕なら余裕かも…………


「ちゃんとにゃらんでとお願いしますにゃん」


  元気少女はお願いかぁ…………


「じっと見つめて自慢の爪を見せてネイルが剥がれちゃうといってみますわウフフフフ」


  とんでもない色気に凄い美人だけどネイルっていうよりそれ凶器だよね?しかも強そう…………


「決まりですからと一言お伝えします」


  ゾクッ


  物凄い冷たい視線…………


「ありがとうございます。では次に口説いてきたらどうしますか?」


「ありがとう、嬉しいにゃんとお礼はするにゃん。でも私はみんなの者だからみんなで応援してにゃんと伝えるにゃん」


「口説かれた事なんて無いからねぇ。うーん、なんか企んでるかも知れないからとりあえずシメる?」


「今は仕事が大事なのでしっかりお断りしますにゃん」


「下僕になってくれるの?と尋ねるかしら?」


「興味ないですと一言」


  なんかそれぞれめちゃくちゃ個性強くてなんか少し歪んでる気もする…………。


「最後にお客様が暴れた場合はどうされますか?」


「机は固定でしたよね?」


「そうです」


「では、テーブルの上の物を片付けますにゃん。お皿とか投げられると困るにゃん」


「担いで外に出すか他のお客に被害が出ないようにするね」


「護衛の人を呼びますにゃん。あと、買い物客が巻き込まれないように誘導するにゃん」


「自慢の爪を披露するわ」


「顔をきちんとチェックして次回の入店をお断りします。さらに壊した物の弁償もしてもらう為のチェックでしょうか?喧嘩の仲裁や暴れるのを止めるのはたぶん他の方が護衛さんを呼んだりしますのでどさくさに紛れて盗みを働くような輩がいないか注意しながら商品を守ります」


「ありがとうございました。あと、個人的な質問をしたいのですが、皆さんの前でもよろしい方は残っていただいて個別の方が良いという方は後でまた、お呼びしますがどうしましょうか?」


「「「「「ここで結構です」」」」」


「かしこまりました。ではあなた、かなり腕っぷしに自信があるようですがなぜ護衛ではなくこちらを?しかもブランクはあるようですが元Cランク冒険者のようですが、なぜ給仕に?」


「子供ができて引退したんだけど、旦那が冒険に出て行方不明になったんで稼がなきゃいけなくなったけど子供が小さいからどっかに預けるのも不安があるし冒険に出てあたしが死んでも子供が可哀想だから地道に稼ごうと思ったのと、ここには託児もついてるって聞いたからそれで応募しました。あと、護衛じゃなくて給仕なのは実家が獣人用の飲食をやってたから子供の頃から給仕や酒場のバカ騒ぎにもなれてるし、それに護衛のくせに命がかけられないようじゃ護衛の意味がないので給仕に応募しました。もちろん腕っぷしに自信はあると言ってもブランクがあるから現役の護衛にはきっと叶わないと思います」


「ありがとうございます。次に貴女も元Cランク冒険者ですね?しかも物凄く強いのになぜお辞めになったんですか?」


「冒険に出るとお風呂は入れないじゃない?それに他の冒険者とパーティー組むと相手の勝手な思い込みで面倒事がよく起こるのがうざくて。特に私の奪い合いとかかなりウザいわ。それに汗臭いのも苦手だし、どうやら私、才能はあっても性格的には冒険者に向いていないみたいなの。でも獣人だと、冒険者か力仕事かあとは娼婦に給仕くらいしか仕事ないじゃない?貴族用のお高い店は基本飲食店でも獣人は雇ってもらえないし。だからここに来たの。ここはあの化粧品が庶民用なら支給してもらえてしかも従業員割引もあるっていうじゃない?他の変な所で働くより絶対ここ!って思ったの!」


「あの、護衛でもよかったのでは?」


「わかってないのね?汗臭いの嫌いだし、それだと冒険者の仕事内容と変わらないじゃない?それよりもここでのんびり給仕するのもありかなって思ったのよ」


「なるほど、ありがとうございました。最後にあなた、商人でDランク持ってますけどどうしてここへ?」


「私は獣人で女ですから努力して資格を取りましたが、奉公先の息子に辱めを受けそうになり拒んだら店のペニーを使い込んだとハメられまして、ここに残りたければ息子の玩具になるか、使い込んだペニーを支払えといわれました。どちらにせよ玩具にした後はきっと売り飛ばすつもりのようでしたから、貯めたペニーをその場で支払いすぐに店を辞め短期の仕事で食いつなぎながらこちらに応募しました」



「失礼ですが、よくそんなにペニーがありましたね?」


「はい、私は元々そちらの亡き大旦那様に拾われた孤児でしたから仕送りをする相手もおりませんので独立する為にしっかりとペニーを貯めておきなさいという大旦那様の教えに倣い、独立の際に必要な元手のペニーを貯めていたので、もしかするとそれを狙われたのかもしれませんが今となっては分からずじまいです」


「そうですか。なぜ給仕に?資格を活かした仕事もあると思いますが?」


「はい、ですが同じ二の舞は踏みたくないので資格を活かした仕事は短期で行なっていました。こちらは特許状を賜った方のしかも急成長しているお店なので商品について学ぶ事も多いと思いましたし特許状を賜るような人物であれば、よっぽど先の話のような事は起こらないと判断して倍率の事も考え獣人でも雇ってもらえそうな給仕に応募しました」


「話し難い内容なのにありがとうございます」


「いえ、大した事はありません。獣人軽視はよくある事ですので、多かれ少なかれ皆嫌な思いはしているものと思っています」


「そうですか。皆さん以上ですありがとうございました」


「はい。次の方入れてください」


  こうして似たような質問を皆にしながら面接を行なっていった。十人十色とはよく言ったもので様々な回答が得られた。次の5人は人族で若い女の子で皆、容姿端麗な人達。こちらも宿屋や、酒場、食事処での経験があると言う。


『グリ、あの子達どう思う?』


『あやつらはダメだ。全員から嘘の匂いがするぞ。獣人達はなかった』


『そうか』


『うむ、それにあやつらからは飯の匂いがしない。始めの逞しい女どもは良いパンの香りがしたし、獣人どももここいらの市場で売ってる飯の匂いがした。だがあやつらからは飯の匂いがしない。どこかで今の服に着替えたのではないか?かすかに石鹸の香りがするぞ』


  なるほど。人族の若く容姿端麗な方々は石鹸が使えるような高給取りということか。うーん。マーガレットさんが言っていたスパイ的な人達なのかな?もし違うにしても嘘をついているのは頂けないな。それにしても、やっぱりグリを連れてきて正解だった。こんなモフモフ嘘発見器こういう時に使わない手はない!今日は美味いもの作ってあげよ〜っと。


「はい、ありがとうございました。次の方お願いしま〜す」


  次も人族の若い女性だな。この人達はさっきの人達とは違って綺麗な人達だけど着てる物とかは質素だな。


「皆さんに質問です。こちらでは獣人の従業員も分け隔てなく雇用しますが仲間として共に助け合いながらお仕事ができますか?当然託児所内も獣人の子供と一緒に育てることになりますが大丈夫ですか?」


「はい。大丈夫です」


『おっ。早速嘘の匂いだ』


『やっぱり抵抗があるんだな』


「私は貧困層の低家賃住宅で育ちましたので獣人とは今でも兄妹のように付き合いをしています」


『こいつは嘘の匂いはないな』


「私も大丈夫です。ただできれば託児のお世話担当の方に1人は獣人の方がいらっしゃると安心します」


「おや?それはなぜですか?」


「獣人の子供は人族の子供より力も強いし運動能力も抜群なので、その反面子供同士のちょっとしたハプニングで大怪我になる事もあります。ですから力の使い方を教えてあげられるような、しかも獣人の子供達も伸び伸び遊べて構ってくれる方がいるとこちらも安心できます」


『半分本音で半分は嘘という所か。確かに獣人の子供と一緒というのは力の差があり過ぎる場合は弱い者は恐怖と感じるという所か』


『うーん。力の強い獣人ばかりじゃないけどな。確かに自分の可愛い子供に何かあったら困るというのはわからなくもないがな』


『我が子とは尊い者で子育て中の親はいつも我が子を守るため気を張るものだ。それは人族も獣人も魔物もかわらぬ。それが子への愛情という事だろう』


『そうだな。うーん。俺としては獣人の子供と育てた方が差別とかしない大人に育つかなとも思うんだけど、ちょっと難しいのかな』


『どうであろうな?あの者が言うように獣人の世話係を入れれば良いのではないか?そう難しく考えるな。寄り添いの心があればうまくいく』


「それぞれご意見ありがとうございました。ちなみに託児内では人族、獣人のお世話は分ける事なく共に遊ばせる予定ですので、もしそれが嫌な方がいらっしゃいましたらご辞退下さい。こちらも怪我などさせないように注意を払いますが人族の子供が獣人の子供を傷つける事ももちろんありうるのでもし雇用された場合はご家庭でもきちんと子供さんに教えて下さい。人種が違ってもお互いを尊重できるような関係作りを是非作って行きましょう」


  とりあえずこれで食事処のウェイトレスの面接は終わった次は…

読んで頂きありがとうございます。

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