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18.茶飲友達できました

「いただきまーす」

 今日の朝食は目玉焼きにボイルしたウインナー、レタスとトマトのサラダ、そして食パンは軽く炙ってオリーブオイルを垂らしていただく。


「うん。旨い」


 油がなかったから目玉焼きは今まで出来なくて、卵はゆで卵が多かった。

 久しぶりの目玉焼きだ。

 ウインナーはボイルができるので、今まで油なしで作ることができた簡単定番おかず。

 サラダや食パンは材料は定番だが、オリーブオイルやココナッツオイル、さらに塩が我が家に登場した事により、今後の食事が劇的に変化するはずだ。

 締まりのない顔で、ニヤニヤしながらコーヒーを飲み、今日の予定を考える。


 あの熱帯エリアは食材の宝庫だ。

 だがその分危険も多い。

 心してかかろう。


 まずは昨日見かけた柑橘類の果実。

 それから新たな物の発見。

 午前中にある程度目処がついたら、一度戻ってランチだな。

 一応念のためにつまめる物を用意しておこう。

 こういう時には菓子パンや食パンは便利だ。

 食パンに、作ったココナッツバターを塗って、軽く火魔法を手に集中させ、手のひらで炙る。

 今まで思いつかなかったがよく考えたら、かまどの直火で炙らなくてもできてしまう。

 元々この世界に来るまで、魔法なんて使った事がないから、今まで思いつきもしなかった。

 この世界の住人は、きっとこういう使い方を生活の中に取り入れてるんだろうな。


 二枚の食パンから、ココナッツバターの温められた良い香りが広がる。

 よし、次は神の錬金釜で昨日作った、ココナッツクリームとグラニュー糖を入れて、ホイップクリームのイメージでスイッチオン。


 作り置きの鳥もも肉を焼いた物と、千切りキャベツを取り出しパンに挟む。

 あとデザート用で、できたホイップクリームを食パン二枚にふんわり塗って、ラズベリーやバナナ、コーヒーチェリーを

 ポイポイポイっとのせて挟む。


 挟んだパンを洗ったバナナの木の葉で包み、ランチの完成。

 そのままアイテムボックスへしまう。


 バナナの木の葉って殺菌作用があるから、色々使われるらしいんだけど、俺としては風呂敷代わりに使えないかと少しもらってきた。


 さて、マーニンビートの世話もしたし、浄化槽も綺麗にしたからそろそろ行くか。




『転移』




 ぐにゃーっと景色が曲がって視界が晴れると、そこはカラフルな食肉植物の森?ジャングル?についた。


「おっ!あったあった」


 ついてすぐにレモンらしき果実のついた、3メートルほどの木を発見。

 周りに食肉植物がないことを確認して、オークの木で作った梯子はしごを取り出し、木に立てかける。

 このハシゴは二本の太い木にくぼみをつけ、そのくぼみに足場になる木を差し込んで作ったもの。

 接着剤代わりに使ったのはグリーンキャタピラーの吐く白い糸。

 ベタベタして使えないと鑑定で出たあれだ。

 これを丸めて乾燥させたら固まった。

 しかし問題は魔法を使って処理できない事。

 魔法を使うとすぐ切れる特性のためか、丸めるにしても乾燥するにしても、魔法が使えないのでこればかりは時間がかかる。

 本来実用的ではないが、俺には接着するものが手元にないので仕方がない。

 改めて魔法の便利さを感じる。


 立てかけた梯子はしごに登って、枝を手繰りよせようと手を伸ばした瞬間!


 ギンッ!


「うわっ!」


「あっぶねーなーこいつ」


 小枝にあったとげが突然ギンッと伸びて、サボテンの針みたいになった。


 結界魔法がなければ、今頃腕や手に無数の風穴が空いてるはずだ。


 油断禁物だな。

 グリフィンがいないんだから、近づく前に鑑定しないとダメだな。


【 名前 】リスボン(レモン) Fランク。

 耐寒性・耐暑性に優れる。

 基本は土の魔力を吸って成長し三ヶ月で開花。その後三ヶ月かけて果実を成長させる。


 多汁で香りと酸味が強い果実。

 果汁を絞ってそのまま食酢やドレッシングとして使用。

 リスボン水、リスボンエード、ポン酢やカクテル、ハチミツ漬けと様々。

 ビタミンCやクエン酸が多く含まれている。

 ビタミンC不足で起こる壊血病も、レモンの果汁を毎日摂取することで補うことができる。


 果実を取られそうになると棘を伸ばし抵抗する。

 リスボンの木の幹に魔力を注ぐと、注いだ分の見返りとして果実をくれる。

 強引にもぎ取ろうとすると大変危険。

 魔力さえ注げば子供でも簡単に手に入れられる。

 もし魔力を注がずに果実を取ると、その実は毒となる。

 しらずに食べると全身が針に刺されている様な痛みが走り、それは三日三晩治らない。

 リスボン自身が傷つけられると痛みを伴うのか、果実にその痛みが作用するらしい。


 こいつ、魔物だったのかよ。しかも魔物にしては良心的というか物々交換システム構築して、ちゃんと生き残ってるやつだな。

 リスボンエードはレモネードのことかな?

 それは後にして、どれどれ? 注いでみるか。


 まずは軽めにいってみよう。

 すると小枝がこちらに伸びてきて、土魔法で作った壺を差し出すと、その上で五つレモンを切り離した。


「おお!なかなか便利だな」


 んじゃ次は少し多めに。

 すると小枝が集まってきて、一つの場所に落ち着いたら

 パチパチパチパチッとレモンを切り離し、山の様になっていた。

 こんなに突然とってしまっても大丈夫なのかと心配するほどの量だ。

 だがそれは杞憂に終わった。


 小枝が元いた位置へ戻ると幹から魔力が流れてパッ!と花が咲いた。

 逆に花が咲いていたところにはレモンがなっていた。


「そうか!吸収した魔力をエネルギーにして、開花させたり果実を成長させたのか」


 鑑定を読み返すと基本は土の魔力を〜と書いてある。

 魔力を注いだ時の情報は割愛されたのか、当たり前すぎて載せていないのか、知られていないことなのか。

 まぁ、いいか。それよりこれは面白いなあ。


 しかもそんなに危なくないしなんか可愛いな。

 熱いエリアにあるけど、耐寒性に優れるってあるからな。

 こいつ魔物なんだよな。


「ちょっと試してみるか」


 その前に準備がいるな。

 土魔法でプランターを作りそこにここの土を入れる。

 そして水魔法で水をかけておく。


 よし、準備は整った。

 思っていた事を試してみる。


『リスボン、リスボン。さっきは果実をくれてありがとう。

 よかったらお前の一部分だけでも、俺の所で暮らさないか?

 もちろん魔力もちゃんと注ぐし、水やりだってきちんとしてお世話するからぜひ、我が家に来てくれないか?』


 グリフィンの時にやった、念話をリスボンに試してみた。

 俺、言語理解スキルっていう物を神様からもらったから、もしかしたらイケるかも?と試しにしてみた。


 すると


『ほぉ。人族が話しかけてくるとは珍しいのぉ。』


 念話が届いた!


『な、なぁリスボン。珍しいついでに、一部分だけでいいんだ。俺んとこ来ないか?』


『ほほぉ。小僧、面白い事をいうのお。儂なんか他の魔物と違って役には立たぬぞ。』


『ん?どういう事だ?』


『儂はただ魔力を地より吸う力はあるが、それだけでは足りん。そこで他から魔力を分けてもらう、非力な歩くこともできぬ木じゃ。そんな物がなんの役に立つというのじゃ。』


『お前の果実を分けて欲しくてな。しかも強引にとろうとするとトゲがギンッて伸びるだろ?家の防犯にもなるしかっこいいじゃん。ちゃんと魔力注げば果実もくれるし、家だって守ってくれる。お前凄いやつだよ。だから、できれば俺の家に来て欲しいと思って』


『ほっほっほっ。人族に招かれるとは。』


 そう聞こえたと思ったら、目の前の木が光り出して、体の透けた爺さんが現れた。


「え?誰?」


『ほっほっほっ。儂じゃよ』


 レモン色の長い髪と長い髭、リスボンの木でできたであろう杖を持って、ニコッと笑いかけてきた。


『ーーーリスボンか?』


『いかにも。儂はリスボン。魔物と思われとるが儂らは魔物とは、ちぃとばかし違うのじゃ。エルフは儂らの事を精霊と呼ぶのお。』


『精霊か!初めて会ったよ俺。』


『ほっほっほ。そりゃそうじゃ。人族の前に姿をあらわす物好きなんぞ、きっと儂ぐらいなものじゃ。』


『そうなのか?現れてくれてありがとう。でも精霊って具体的にはどんな存在なんだ?お前、体透けてるけど大丈夫か?』


『ほーっほっほ。大丈夫じゃ。精霊を心配するとは、おかしなやつじゃ。もし儂がここから消える時はそうじゃのぉ。この木が枯れる時かのぉ。』


『そ、そうなのか?』


『まぁ、そうなる時には、また違うリスボンに宿るだけなので、消滅する事はほぼないがの。すごいじゃろ。ほーっほっほ。』


『ん?移動とかできるのか?』


『そうじゃのぉ。移動というのか、儂はリスボンのいろんな木に宿っておるから、好きな木のもとで、昼寝したり風を感じ涼んだり、まぁのーんびりしとるわい。』


『じゃあこの世界の木には、みんな精霊が宿ってるのか?』


『そういうわけでもないのぉ。人に育てられておる木には、あまり精霊が産まれんのう。』


『ん?精霊は木から産まれるのか?』


『木だけではないぞ。そうじゃのぉ。色んなものから産まれるわい。』


『ん?精霊ってそもそもどうやって産まれるんだ?』


『精霊はのぉ、大体500年くらいかのぉ。木や草、泉とか物でもそうじゃな。長生きしとると産まれるんじゃ。』


『長生き?』


『そうじゃ。儂が産まれた木もそんなもんじゃわい。』


『寿命の短いやつからは産まれんのぉ。』


『儂が産まれた木はたまたま、ある種族が大事に育て、子孫に受け継がれ今でもピンピンしておる』


『ん?人に育てられるのは産まれないんじゃないのか?』


『簡単に言うと人族はほれ、すぐ木を切るじゃろ、街作るだの、家建てたりだの、薪にするだのって』


『俺も倒木だけど薪でお世話になってます。』


『それは別にかまわんのじゃ。そちらも必要だから利用するわけだからの』


『じゃが精霊が産まれるかと言われると500年以上も大事に残しておかんじゃろ。』


 たしかに。御神木や天然記念物とか、自然遺産とかじゃないと、切るよな。


『儂が産まれた木はほれ、エルフが大事に育てたんじゃよ。あやつらは森を大事にするからの。それにあやつらは地に生えておる物の方が、口に合うらしく儂の果実は重宝されての。』


『あぁー。納得。たしかにそんなイメージだ。』


『でも、なんでそんなエルフに大事にされてるお前が、こんな所にいるんだ?』


『うむ、気分転換じゃな。ほっほっほ。わし、100年以上育ったリスボンの木なら宿れるんじゃ。簡単に言うと別荘じゃの。』


『この木、別荘なのかよ!優雅だなぁおい。』


『ほーほっほ。100年以上の木があれば、どこでも行けるし、感覚も共有しておるから色々便利なんじゃわい。』


『でもここの木、よく100年も生き延びてるなぁ』


『そうじゃの。この地はほれ、土の魔力量が他より少し多いから、木や草がよく育つんじゃ。』


『そうなのか?ここの土って他とは違うのか?』


『魔力量が豊富で木や草、魔物にとっては極楽の地じゃぞ。栄養満点ってやつじゃわい。』


『そっか。ちなみにお前の他にも、この島に精霊って居るのか?』


『そうじゃのぉ、ロカイならもしや、この地にもあるかもしれんのぉ。』


『そうか、なぁ気になったんだけど、葉っぱとか枝とか切られたら痛いのか?』


『ほっほっほ。心配せんでも儂らはそちらと違ごうての。そう言う感覚は持っておらんのじゃよ。』


『例えば俺が薬草として精霊の木や葉から一部をもらっても大丈夫なのか?』


『そうじゃのぉ、木の精霊であればそれは全く問題はないの。先ほども言うた通り、産まれた木が切られても別荘に移れば良いし、この地に全ての長生きな木が消えたら儂も消える。ただそれだけの事じゃ。例えて言うならば、そちの髪を一本切るくらいの程度じゃな。』


『そ、そうか。』


『そちとて、髪を切られても痛くないじゃろ。』


『たしかに。全部引っこ抜かれたら最悪だけど、切るくらいなら、問題ないな。』


『ほっほっほ。そうじゃ、そういう感覚じゃ。』


『それなら少し安心したよ。今後、精霊のいる植物とか何かもらったりするかもしれないからな。痛みとかあったら流石に悪いからな。』


『ほっほっほ。やはり面白いやつじゃの。』


『それで、俺の所に一部来てもらいたいだがどうだ?ここより涼しい所だから難しいか?』


『そうじゃのぉ。この木より儂の産まれた木を分けてやろう。』


『え?いいのか?っていうかそんな事できるのか?』


『ほっほっほ、これでも一応精霊じゃからの。じゃが、特別じゃよっ。他のものには内緒じゃ。話して欲しがられても困るからの。』


『わかったよ。約束する。』


『ちなみに儂の一部をやるからのぉ。100年経ってなくても別荘にできるんじゃ。だからお前さんの家にも、ちょくちょく遊びに行くわい。その時には美味い茶菓子でも用意しておくれ。ほっほっほ』


『えぇぇぇぇぇ!お前、茶菓子とか食えるのか?』


『ほっほっほ。供物として用意してくれたら、なぜか知らんが食えるのじゃ。別にものを食わんでも、お前さんと違ごうて死なんがの。』


『わっわかった。ちなみに水やりとか、どのくらいしたらいいんだ?』


『別に水やりなんかせんでも儂の一部じゃから勝手に育つぞ。他の土地じゃ難しいがこの土地は特別魔力量が多いからのぉ。』


『家の中の暖かい場所で育てようかと思っていたが、外の方が良いか?』


『外でも良いが、儂の果実を取りに来る奴が現れるとお前さんが困るんじゃないか? それを思えば室内の方が安心じゃろ。』


『お前優しいなぁ。ありがとう。じゃ室内で育ててみるよ。元気が無くなったりしたらどうしたら良い?』


『そうじゃな。そういう時は、お前さんの魔力を与えてくれれば元気になるはずじゃ。あと、困ったことがあれば、木に話しかければよい。儂は感覚が繋がっておるから昼寝しておらなかったら答えてやるぞ。』


『それは助かるな!ありがとう。』


『そいじゃその土の中に植えればよいかの?』


『あぁ。むしろこれで良いか?もっとこうして欲しいとかあればすぐ用意するぞ。』


『いやいや。十分じゃよ。それでは……ほれっよっこいせっと。』


 プランターに閃光が走った。


『おぉぉぉー。』


『どうじゃ。立派なもんじゃろ。』


 3メートルくらいの木が植えられている。


『ものすごく立派だけど、お前の産まれた木の方は大丈夫なのか?』


『お前さん心配性じゃの。問題ないわい。これならお前さんが魔力を注げばすぐ果実が取れるぞ。本来ならばこの状態まで育つのに時間がかかるんじゃが出血大サービスじゃ。』


『そ、そうなのか。ありがとう!』


『別荘での茶菓子が楽しみじゃわい。ほっほっほ。』


『ちなみに好みはなんだ?甘いものとかなのか?』


『そうじゃのぉ。甘い物は高価らしいからお前さんでは用意するのは大変じゃろて。なんでも良いぞ。茶飲み仲間ができただけ、わしゃ〜嬉しいんじゃ。ほっほっほ。』


『じゃあ、それまでに何か旨いもの用意しとくよ。』


『そうかそうか。楽しみにしとるぞぉぉぉ』


 爺さんがスーーッとリスボンに溶け込むように消えていった。


 もらった木を大事に抱えてアイテムボックスに入れる。


 それにしても精霊って随分砕けた感じなんだな。

 近所の爺ちゃんと話してる気分だったぞ。


 よし、次はあっちのオレンジっぽいのをとろう。


 鑑定かけて……。






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