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175.アップルパイとお茶会

「へぇーこれは面白い人形ですね」


「はい。この人形にドレスをこうやって着せて飾っておいて下さい」


「かしこまりました」


俺はリッチモンドに転移してここ数日の間に土魔法で作ったマネキンに着せ方を見せてショーケースに飾ってもらうようにお願いした。ちなみにトルソーにしようかと思ったが袖の感じがうまく出なかったのでマネキンにした。トルソーとマネキンって一緒じゃん?と思っていたがどうやら違うらしくそもそも各それぞれ語源が違うらしくてマネキンはフランス語でモデル、トルソーはイタリア語で胴体、ボディは英語で身体、胴体らしい。そしてその違いは頭、腕、脚の有無だとか。具体的にはマネキンは全身で頭と腕と脚がある人形でトルソーは胴体部分のみの頭と腕と脚がない物、ボディはほぼトルソーと同じで特に布張りのものを指すこともあるそうだ。さらに基本に収まらない物もあって頭のないマネキンはヘッドカットマネキンやら脚はないけど腕のついたトルソーは、そのまんま腕つきトルソー。頭と腕がついたトルソーはまた別の呼び方があるとか。逆にマネキンの脚なしマネキンという呼び方はそんなに聞かないらしくマネキンは全身、トルソーは胴体というのが一般的のようだ。とりあえず今回袖の感じを出したかったのでマネキンにした。


「では、あとはよろしくお願いします」


「かしこまりました」


俺は価格表も渡しマーガレットさんに実物を見せながら一通りの説明をして宿へと戻った。マーガレットさんもうっとりした表情でドレスを眺めていたのできっと成功するだろう。パニエについても初回サービスの話やドレスの発注のやり方などこの数日の間にマスターしてもらったし転送クローゼットも設置した。あまり広くないバックヤードなのでかなりギリギリな感じだったがなんとか収めた。これで一応今日からでも商売は始められるが、さてお客さんは買ってくれるかなぁ。



────翌日



「タクミさん、行って参りますわ」


「よろしくお願いします」


「はい」


俺はメアリーさんを見送り落ち着かないのでグリとポヨと市場に買い物に出かけた。


「タクミ、この赤いの買ってくれ」


「おお!りんごか!旨そうだな!」


「おっ!兄さん、これはシャリシャリしてて水分たっぷりな上に甘くて美味しいよ!ザマゼットの特産品だ!買わなきゃ損するぜ!」


「じゃあこれを一盛り下さい」


「毎度あり!」


チロリーーーーーーーーーン


「沢山買えたな」


「うん、1ペニーでこんなに買えるなんてこれは嬉しいぞ。早速あれを作ろう」


シャリシャリ…


「何か作るのか?」


「ああ、お菓子を作ろうと思うんだ。だからあんまり食うなよ」


「うむ、わかった」


俺は買い物を終えて誰もいない部屋でコンロと神の錬金釜を取り出し、早速釜に小麦粉の強力粉と薄力粉に水とバターを入れて蓋をした。あとはイメージをしてスイッチオン。



…チーーーーーーン




パカッ


「さすが神の錬金釜だ!普通なら粉をふったりこねたり冷蔵庫で冷やしたり寝かせたりなんだりとかなり工程が大変で面倒なのにできちゃったよ!やったね!」


「なんだ?その塊は?」


「グリ、シー!お前は部屋入っちゃダメなんだから。内緒で時間経過のあるアイテムボックスに入れて部屋まで連れてきた意味がなくなるだろ?とにかく静かに待ってな」


「ムムム、わかった」


とりあえず出来た中身をアイテムボックスに入れて保管する。次は買ってきたリンゴを切ってフライパンで砂糖とバターを入れて炒め煮する。水分がたっぷり出てくるから水分が無くなるまで炒め煮。この間にオーブンを温めておく。リンゴが冷めるまで待ってからさっき作ったものをアイテムボックスから取り出し、伸ばして皿に敷きフォークを使って穴を開ける。その上に冷ましたリンゴを乗っけて、残りを使って格子状にムフフフ最後に溶いた卵黄でツヤ出し。塗り塗り塗りっと。


「よし、あとはオーブンで焼いて冷ますだけっと」


グリが声を潜めながら話しかけてきた。


「何ができるのだ?あのフライパンの中身でも充分旨そうだったぞ」


「あわせて食うともっとうまいぞ」


「うむ、待つ」


「よしよし」


────そして待つ事20分


「うーん!いい香りだ!」


「できたか!食わせろ!」


「ダメだよ!まだ熱いし火傷するよ!冷ましてからな」


「ムムムム」


ポヨーンポヨーンポヨーンポヨーン


「ポヨも待ってろよー」


「それにしても良い香りだ。甘い香りと香ばしい香り!ああ、たまらん!まだ冷めぬのか」


「ハハハそんな早く冷めないよ。もう少し待とうな。とりあえずフライパンの片付けしないといけないからポヨ頼む」


ポヨーン


「ポヨだけ味見できるなんてズルいぞ!」


「し────!!!味見じゃなくて片付けだよ」


「ムムムムこの時ばかりはスライムが羨ましいぞ」


「全くお前は何言ってんだか」


こうしてグリが散々ぼやいた後冷ましたお菓子をようやく食べる事になった。


「やっとか!よこせよこせ!」


「はい。どうぞ、アップルパイ」


「アップルパイというのか!ほっ!カリッとしていてなかなか旨いな!その後に来るこのリンゴとやらの甘みと酸味がまた旨い!シャリシャリしたそのまま食べるリンゴも旨いがこうして調理した物はまた格別の旨さだ!」


ピカピカピカピカ


「どれどれ俺も。うまーーーーーーーー!!!」


「もっとよこせ!」


「はいはい」



────その頃



「これはこれは公爵夫人、よくぞお越し下さいましたわ。奥様がいらして下さるなんて天にも昇る心地ですわ!お初にお目にかかります子爵夫人のスカーレットでございます」


「ご招待ありがとうございます子爵夫人」


『あの、輝くように美しいヘンリー様の奥様と聞いていたけど地味な女じゃない?フンッでもドレスは良い物着てるわね。悔しいわ』


「それにしても素晴らしいお召し物ですわ!さすがは公爵夫人!私の今日の為に新調した最上級の絹のドレスが奥様の前では霞んでしまいますわ」


『フンッ生まれが良いだけでヘンリー様と婚姻できた地味女、ザマーミロ。私のドレスを褒める番よ。さあ、褒めなさい地味女』


「あら?それは申し訳ない事をしましたね?ごめんなさい。良いドレスが手に入ったのでついお披露目したくて…私、お邪魔しない方がよろしかったかしら?」


『いや、これはまずいわ、ここはおだててこの地味女と仲良くなってヘンリー様に近づかなきゃ。こんな女ならきっとヘンリー様は私がアプローチしたらすぐに手に入るかもウフフ…ここは…』


「と、とんでもないですわ!多くのご婦人から知的で慎ましやかな内助の功で公爵様を支える素晴らしい才女と伺っておりまして是非お近づきになれればとご招待しましたの」


「あら?そうでしたの?私はてっきり気分を害されたかと心配してしまいましたわ」


「とんでもない事ですわ。それに私は何を着てもいつも変わらないんですのよ。たまには仕立て屋を変えてみようかしら?オホホホホ」


「いえ、子爵夫人のドレスは装飾品がとてもたっぷりとついていてとても豪華で華やかでまるで宝石箱が歩いているようですわオホホホホ」


『中身は空っぽのですけどウフフ』


「オホホホホ装飾品が余っておりますのでつい、つけ過ぎてしまいますのオホホホホ」


『地味女じゃ装飾品つけても地味でしょうけどね』


「そうなんですの?子爵夫人羨ましいですわぁ。子爵夫人の豪華なドレスも素敵ですが公爵夫人のドレスのデザインは新しいものでございますね?どちらの仕立て屋の物ですの?とても上品で美しく公爵夫人にピッタリですわ。それにお肌もとても自然で透き通るように透明感のある艶のあるお肌ですわね。」


『もう、地味女の肌なんていいから私のドレスを褒めなさいよ。この人はたしかどこぞの男爵夫人か。チッ私より下になるわけねふーん』


「本当にその通りですわ!とても自然なメイクに変わっていらっしゃるのに、以前よりも美しいお肌で羨ましいですわぁ。子爵夫人は装飾品は眩しいほど輝いていますわね。ところで公爵夫人、いつも素敵なドレスですが本日のドレスは生地もいつも以上に上質で素晴らしく美しい上品な輝きですけど、どちらの生地屋を扱いなのですか?」


『この人は伯爵夫人か。私よりも上になるけどこの女も大した事ないわね。』


「本当に素敵ですわ公爵夫人。子爵夫人も装飾品は豪華で綺麗ですね。公爵夫人、私の悩みを聞いて下さる?最近シーズン用に生地を選んでいるのですが、中々良い生地が見つからなくて…そんな中のお茶会で私驚きましたの!本日の公爵夫人のドレスは今までに見たどの生地よりも美しいですし見たこともないデザインで羨ましいですわぁ。ぜひどちらの生地屋の物で仕立て屋もどこのメゾンをお使いなのかお教え願いたいですわ公爵夫人」


『こちらは子爵夫人だけど元々はどこかの伯爵家の娘よね。でもこれもただのガキね。この辺りで話に入らないと不味いわ』


「あらそれは私も伺いたいですわ公爵夫人。この私の新調したドレスを霞ませるほどのドレスですからさぞ素晴らしい生地で一流のメゾンなのですわよね?」


「あらあら困りましたわ。では今日お茶会にいらしておいでの方だけ特別に内緒でお知らせしようかしら?」


『ケチケチしないでさっさと言いなさいよ地味女!クー!悔しいわ!』


「「「「ぜひ」」」」


「まず、お化粧品はリッチモンドにお店のある異世界商会の物ですのよ。今までの白粉だととても美しく白くなりますけど透明感がなくてべたっと厚塗りになってしまうけどここの物は肌に透明感を与えてさらにお肌に良い成分も沢山含まれているから、お肌がとーっても綺麗になりますのよ」


『異世界商会なんて聞いた事ないわ』


「聞いたことがありますわ。リッチモンドに高級化粧品はもちろん安価なものまで取り扱う商会で家までは来てくれないお店だと聞きましたわ」


『何よそれ。随分と生意気な商会ね』


「そうですのよ。店舗での販売スタイルという新しい形を打ち出した商会ですわ」


「あーら?そんな無礼な商会なんですの?家まで来ないだなんて何様かしら?」


「あら?でもかなり好評だと聞いてますわ」


『好評ってどこ情報よ、私なんて名前すら聞いた事ないわ』


「私はそこで商品を購入していますわ。リッチモンドの親戚にお願いして私の肌の状態とかを詳しく伝えて、それを親身になって肌に合う化粧水を店員が勧めてくれたと聞いておりますわ」


「どうです?使い心地は?」


「はい、とても良いですし不思議なのですけどレディーキラーが最近無くなりましたのよ。それにシミも無くなって私にとっては無くてはならないお店ですわ」


『何言ってんの?この女。レディーキラーが化粧品なんかで治るわけないじゃない。バカねコイツフフフ』


「そうなの。よかったですわ。領地の商会だからやはり厳しい目で見ないといけませんからね」


『厳しい目ってもしかして賄賂でももらっているのかしら?』


「さすが公爵夫人ですわ。でも安心してくださって大丈夫ですわよ。親戚もとても素晴らしいお店でぜひ店舗に一度来店すべきだとまるであちらの従業員かのように勧めてきましたから、よほど接客も良いのですわ」


「あら、それは安心ですわオホホホホ」


『何がオホホホホよ。そんな事より生地屋とメゾンはどこなのよ!地味女め!もったいぶって』


「それはすぐに手を尽くして購入しないと次のシーズンで恥をかいてしまうかもしれませんわ。素晴らしい情報をありがとうございます公爵夫人それと…」


「ええ、生地と仕立て屋でしたわね?」


『やっとだわ!』


「「「「はい!」」」」


「実はね同じ商会なの」


「「「「はい?」」」」


「異世界商会が新たに生地と仕立てを行う新たなスタイルのお店をするそうなのよ。まだ口コミやリッチモンドのお客様にしか案内してないそうなの」


『はっ?またその商会?ますます怪しいわ』


「生地と仕立て?という事はこの生地はそちらでしか手に入らないのですか?」


「そうね」


「デザインもそちらでしか?」


「そうよ。デザインは登録済みだから他では真似もできないわね。でも有料で公開できるそうだから大きいメゾンなら新たに出るかもしれないわ」


『何よそれ!ボロ儲けじゃない!』


「生地と仕立てという事は生地を持って行っても作ってもらえるのですか?」


「今のところはこの生地でしか仕立てはしてないんじゃないかしら?デザイン画があってすでに生地も装飾もドレスの形も決まっていますのよ」


「あら?では、自由に装飾品をつけたりできませんの?」


「別料金で生地の色を変えたり装飾品をつけたりはできるようですわよ」


「あら、それは随分ですわね。生地が自由に選べないだなんて」


「私は有難いですわ!だってこの上質な生地で違う形のデザインなんて素敵ですわ。それに生地と装飾品を探すのってかなり大変ですから」


「そうですわね。でも同じドレスを選んでしまったら悲しいわね」


「それは言えていますわね」


「そうねぇ。ただ色んなドレスの形や色のバリエーションも豊富だったし刺繍もそれぞれ何パターンもあったから同じドレスを選ぶ可能性はもしかすると少ないかもしれませんわ」


「そうなんですの?ぜひご紹介下さい」


「ただ、少し高いんですの。私も他にも欲しいドレスがありましたけど泣く泣く断念したんですのよ」


『公爵夫人って言ってもそんなにペニー持ってないのかしらウフフ可愛そう』


「え?公爵夫人がですか?いったいどれほどのペニーなんですの?」


「ウフフ。こちらのドレスはお茶会用に仕立てたのですけど804ペニーで夜会用の物はパニエという物が必要でそれと合わせて4720ペニーですわ」


「4720ペニー!それはかなり高価ですわね」


『するわねぇ。でもお父様に頼めば買ってもらえない事もないわ。でも高いわね、ちょっと揺さぶってみようかしら?』


「たしかに、この生地なら仕方がありませんが、それにしても高価ですわ!」


「本当に、生地だけでもお譲りいただけないのかしら?」


「4720ペニーですか?それほど価値のあるものなんですの?」


「ええ一目惚れのドレスですわ。生地は一反780ペニーで生地を4反使ったそれは豪華なドレスですのよ。パニエは1600ペニーですがこのパニエはこのラインのドレスならどれでも使い回しがきくんですの。ですから次の夜会用のドレスもその次もずっと長く使えますのよ」


「そんなに持つのかしら?虫に食われたりしてダメになりそうですわ」


「オホホホホそうですわよね。普通の絹ならそうなんですけど…」


「普通の絹なら?何か違いますの?」


「皆さま幻の生地はご存知かしら?」


「え、ええ、火にも水にも強く虫食いにもあわない幻の生地でそれは絹よりも手触り肌触りの良い生地と聞き及んでおります」


「ですが、あの生地はかなりスキルが高くなくては織れないからこその幻の生地と聞きますわ」


「まさか!そのドレスの生地が幻の生地ですの?」


「もしそうなら破格ですわ!最上級の絹と同じ価格ではないですか?!それにあの生地を使った絹鎧という物が有名ですがそれでドレスなんてそれは価値がありますわ!」


「ウフフ、失礼。公爵夫人、才女との呼び声高い貴女がそんな悪徳商会に騙されるなんて、そんな幻の生地なんてまがい物ですわよ。ウフフあら、誤解しないでくださいね。決して公爵夫人を見下したりしているんじゃないんですのよ。これは商会で育った私だからわかる事ですがあのアラクネーの糸を織れる者などそう簡単には見つかりませんわ。高い勉強代だったかもしれませんが今後はそんな悪徳商会と関わりを持つのはおやめになった方がよろしいんじゃなくて?これは貴女様の名誉を守る為の友人としての言葉ですわ」


「ま、まあ確かに幻の生地なんてそう簡単に出てこないかもしれないわね。でも生地は他の生地屋で集めるよりも光沢も美しいのですから例え違ったとしても購入を考えてみても良い品ですわ」


「そうですわねぇ。上質な絹で素晴らしいデザインなのは間違いないですわ。夜会用は無理でも茶会用にぜひ私は注文したいですわ」


「確かにその通りですわ。私もぜひ注文したいです」


「ウフフ、忠告ありがとうございますわ。えっとお水を頂けるかしら?」


「はい、こちらに」


「ありがとう、あと拭くものも頂ける?」


「は、はい、こちらに」


「ありがとう」


バシャ!!!!


「「「「キャア!!!」」」」


「さてと拭くもので拭き取りますわよ」


「え?まさか?」


「そんなぁ!」


「嘘でしょ」


「なんて事なの?!信じられない」


「どうぞみなさん、触ってみて」


「「「「濡れてない」」」」


「なんなら火魔法も浴びてみようかしら?」


「いえ、公爵夫人結構ですわ。疑ってしまった事をお詫びいたします」


「いえ、お顔をあげてください。皆さん信じられないのは無理もないわ。あの幻の生地だなんて普通思いませんもの。しかも最上級の絹と同じペニーだからまがい物と思っても当然ですわ」


「しかし、それならなぜもっと高くないのかしら?」


「それはあまりに高いと売れないからだそうですわ。ちなみに初回に限り各必要なデザインのパニエはサービスで無償で提供して下さるそうよ」


「え?タダ?」


「ええ、だからつい、私興奮してしまいましてパニエを差し引いた分、もう1着違うパニエの必要なシンプルなラインのドレスを購入してしまいましたの」


「あのそのパニエのペニーは?」


「もちろん違うラインなので無償でしたわ」


「「「ぜひ、その商会をご紹介して下さい公爵夫人!」」」


「ええ、喜んで。子爵夫人はよろしくて?」


「素晴らしいお話ですが注文方法はどういう流れですの?メゾンもまだないようですが?」


「ウフフ、そこは口コミですから私が責任を持って担当者を連れてまいりますわ」


「でしたら是非、我が家にお越しください!他の皆さんもよろしければ、あの、公爵夫人?他にもお友達を連れてきても構いませんか?」


「ええ、ごめんなさいね。領主の妻なのにお屋敷を借りてしまって」


「とんでもないですわ!各地域に別邸がある方なんていませんわ!それこそ、領民が許しませんわ」


「そうですわよ!楽しみにしていますわ!」


「あの、私もお友達を連れてきても構いませんか?内緒という事ですけど…」


「そうですわね。私も是非お友達を…」


「わ、私も是非参加しますわ!なんでしたらうちで開いてもかまわなくてよ!」


「あら?子爵夫人はあまりこの生地の良さを感じていらっしゃらなかったように思えますけど?ドレス受注会は当伯爵家が責任を持って開きますわ」


「そうですわね。それにデザインもあまりお気に召していらっしゃらなかったようです」


「それにご自慢の装飾品がつけられませんわよ?よろしいの?せっかくその眩しいほどの装飾品をつけなくてよろしいの?もったいなくてよ?」


『こいつら、何よ公爵夫人のかたばかり持って!今日のお茶会の主催者は私なのよ!もっと気を遣いなさいよ!どうせ貧乏貴族のくせに。こんな高級な紅茶も出してやってんのに!悔しい!』


「皆さん、今日はこちらの会を開いて頂いたんですし、これを良きご縁だと思いましょう?子爵夫人もせっかくですから是非お越しになってくださいまし。きっと一番豪華で高価なドレスを注文されるんでしょうね?羨ましいですわ」


『何よこの地味女!虫も殺せないような顔して良い女ぶって!みてなさい!この場をひっくり返してやるわ』


「そ、そうですわね。装飾品がつけられないのは残念ですがまあ、1着くらい庶民に貢献してもよろしくてよ。きっと商会になりたてで売り上げも少ししかないのでしょうしね」


「あら、嬉しいですわ!」


「どうして公爵夫人が喜ばれるのかしら?まさかその商会と癒着なんてことはありませんわよね?もしそんな事になったら大問題ですわよ」


「何を言ってるのかしら子爵夫人?あなた随分失礼な事を仰るのね?」


「いえ、伯爵夫人。ただ商会との癒着はよくある事ですので公爵夫人が他の方から白い目で見られないようにとつい心配で…」


「伯爵夫人、子爵夫人はまだ貴族になって浅いので貴族なら当たり前のことを知らないのですわ」


「そうですわね。子爵夫人はもう少しお勉強が必要かもしれませんわね」


「まあまあ皆さん、子爵夫人は大商会のお生まれですからきっと裏の事もよくご存知なのよ。そういう癒着したりする貴族もきっといるのでしょうね」


「そ、そうですわ。ですから私は公爵夫人の事を思って…」


「子爵夫人、異世界商会がどのような商会か商会生まれの貴女がご存知ないなんて残念ですわ。私がなぜ親戚を頼ってまで、異世界商会の化粧品を購入するかをこの美味しいお紅茶を出して下さったお礼に教えて差し上げますわ」


「はい?」


「異世界商会の主人は特許状を賜ったタクミさんという方が開いた商会ですのよ。つまりエリザベス女王陛下が認めて出しているお店です。そしてそのお店はリッチモンドにありますの」


「まあ、あの特許状の方のお店でしたの!それならば信頼に足るお店ですわね」


「そうですわ。もしそこを疑うなんて女王陛下に異を唱えるのと同じ事になりますわ」


「そ、そんな…」


「さらに、リッチモンドにあるという事はもちろんその売り上げの一部は税収にもなるので領地経営としては多く税収が入る事はとても望ましい事であり逆に癒着なんてすれば特許状も取り消しになる可能性も高くなりますから絶対にそんな愚かな事はしませんわ。だってそのお店が繁盛すればするほど寝ていたって税収が入ってくるんですから」


「そうですわね。癒着なんてする方が損ですわ。それにもしそんな不正が女王陛下のお耳に入れば間違いなく貴族の身分は勿論剥奪。さらに陛下の顔に泥を塗った罰で死罪は逃れられませんわね。そんな危ないハイリスクな行動を才女の公爵夫人がするかしら?子供でもしないと思いますけど?」


「もう少しお勉強が必要ですわね子爵夫人。シーズンの前にこうしてお茶会を開いてよかったではありませんか?社交の夜会でそんな事を話したら二度と王都へ足を運べなくなりますわ」


「いえ、私は例え話をしただけですわ」


「まだ、わからないようですわね。例え話でも人の話は尾ひれがついて簡単に首と胴が離れてしまいますのよ。口は災いの元。もっと気を使われた方がよろしくてよ」


「これからお勉強すれば良い事ですわ。あらもうこんな時間。伯爵夫人、今度遊びに行っでよろしいかしら?その時に是非ドレス会のお話をさせて下さい」


「はい、公爵夫人是非お待ちいたしております。あの、私は明日も明後日も空いておりますが夫人のご予定は?」


「私は毎日暇ですのよ。是非遊んでくださいまし。図々しくてごめんなさいね」


「とんでもないですわ!大歓迎です。では明日、お待ちしておりますわ」


「公爵夫人、とても素敵なご縁をありがとうございました。それではご機嫌よう」


「「「ご機嫌よう」」」


「ご機嫌よう」


ガチャ



「な────にがご機嫌ようよ!地味女め!良いわ!あの女になんて頼らないわ!幻の生地?そんな物が簡単に手に入ってたまるものですか!デザインは公開してるって言ってたわよね?いったいいくらなのかしら?あ────悔しい!なんとかギャフンと言わせたいのに!でもたしかに良い生地だったけど少し光沢がこれよりあって肌触りがいいくらいではた目にはそんなにわからないわ!よしそれなら装飾品で勝負よ!見てなさい!シーズンで必ずヘンリー様を振り向かせて見せるわ!その為に貧乏貴族の子爵なんかに嫁いだのだから!これも全て社交界にデビューして夜会に参加しヘンリー様と出会い、振り向かせる為にお父様に頼み込んだ作戦なのよ!大丈夫!夜会でヘンリー様が私を見てくれればきっと目を覚ますわ!あんな地味女になんか負けはしないわ!見てなさい!」



くしゅんっ!


ゾワッ


「ヘンリー様大丈夫ですか?」


「何だろう?くしゃみの後に軽く背中がゾワッと寒気がしたよ」


「水浴びの後にきちんと髪を乾かさないからですよ全く。ちゃんと乾かさないと触れ合いタイム禁止にしますよ」


「アーロンそれだけはやめてぇ〜!!!」


「では、きちんと乾かしましょうね」


「はい」


とんだとばっちりを受けたヘンリー様でした。


読んで頂きありがとうございます。

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